The Long View: マーク・フリードマン氏が語る「アンコール・キャリア」

~職場における年齢の多様性がもたらす恩恵、人生後半に生きがいのある仕事を持つ重要性、中年期に「ギャップイヤー」を考慮すべき理由~

ロングビュー」ポッドキャストのホスト、クリスティン・ベンツが登場する画像

ゲスト: マーク・フリードマンEncore.org創設者、プレジデント兼CEO

聴き手:クリスティン・べンツ Morningstar, パーソナル・ファイナンス/リタイアメント・プランニング・ディレクター

エイミ-・アーノット Morningstar Research Services, ポートフォリオ・ストラテジスト

ベンツ: 今日のゲストは、作家であり企業家でもあるマーク・フリードマンさんです。フリードマンさんは「Encore.org」の創立者であり、社長兼CEOです。Encore.orgは、人生の後半に生きがいのある仕事を求める人々を支援することを目的としています。

フリードマンさんはまた、『How to Live Forever: The Enduring Power of Connecting the Generations』の著者でもあります。米国22都市で、50歳以上の人々の力で低所得層の小学生の学業成績を向上させ将来の可能性を広げることに取り組む「Experience Corps」を共同設立しました。また、「Encore Fellowships」プログラム創設の陣頭指揮を執りました。同プログラムは、中年期の個人が、蓄積したスキルを社会にインパクトを与えることに焦点を当て、人生の第2幕に活かすための1年間のフェローシップです。「Purpose Prize」は、人生後半期にある社会起業家を対象に毎年10万㌦を授与する賞です。

フリードマンさんはスワースモア大学で学士号を取得され、イェール大学経営大学院でMBAを取得されています。フリードマンさん、「The Long View」へようこそ。

想定外に長くなった「老後」

ベンツ: あるプレゼンテーションで、あなたは米国における退職の変遷と、高齢期を変革する上で社会保障制度が果たした極めて重要な役割について論じていました。高齢化がどのように変化し、高齢化に対する私たちの考え方が長年にわたってどのように変わってきたかについてお話しして頂けますか。というのは、これらは非常に示唆に富む歴史の教訓だと思うからです。

マーク・フリードマン氏(以下敬称略):1935年に制定された米国社会保障法の主な目的は、高齢者の経済的安定を図ることでした。これは、米国史上、最も偉大な政策の勝利のひとつであったと私は考えています。一方で、当時は若者の失業率が非常に高く、高齢者を離職させるためのインセンティブを与えるという意図もありました。社会不安が現実のものになる懸念があったからです。その時点では、人々が社会保障の「小切手」を受け取りながら過ごす時間はそれほど長くはないだろうと考えられていたのです。

実際、この法律を成立させた若い「ニューディーラー」(ニューディール政策の推進者)たちは、オットー・フォン・ビスマルクが制定した19世紀後半のプロイセンの軍人年金をもとに年金支払い開始年齢を65歳とし、年金は一度も支払われることはないと確信していました。しかし、驚いたことに社会保障法は1935年に成立し、1941年、アイダ・メイ・フラーというバーモント州ラドローの簿記係の女性が退職し、最初の社会保障受給者となりました。

彼女の人生は100歳まで続きました。ビートルズが米国に来るのを見ましたし、人類が月面に着陸する瞬間も見ました。そして彼女は、おそらく米国史上最高金額の宝くじ当選者の一人でもありました。なぜなら、本当にわずかな掛け金を支払っただけで、数万㌦の年金を受け取ったと考えられるからです。

ある意味で、「長寿革命」が勃発するという予感は、人々がこれほど長生きするようになる前のこの時点ですでにあったのです。つまり、65歳以降は、当然与えられるべき数年間の安息期間ではなく、人生という本のひとつの完全な「章」を占める可能性があったということです。

年齢層の多様化

アーノット: そのことは、次の質問へ移るためのの恰好の話だと思います。米国のような豊かな先進国で深刻な高齢化が進んでいることは、誰もが聞いたことがあるでしょう。必要とされている若い労働者の数が圧倒的に少なく、若者が多くの高齢者を支えています。例えば2030年代に、米国では65歳以上の人口が18歳未満の人口を上回ると予想されています。この急速な高齢化についてどのようにお考えですか、また、高齢化が社会におよぼす影響についてあなたは何が重要だとお考えでしょうか。

フリードマン: 先ほどの社会保障制度の話に戻りますが、私たちはあまりにも長い間、人生は70年程度だという考え方に縛られていて、今のような、それよりはるかに長い人生を想定していませんでした。しかし、2000年以降に先進国で生まれた子どもの半数は100歳の誕生日を迎えると予想されています。ですから、人生の最初の20年かそこらですべての教育を終え、次の20年から30年ですべての仕事を終え、それから半世紀にわたって莫大なお金を余暇に費やして余生を送るという考え方は、ほとんどの人には通用しないでしょう。

おっしゃる通り、少数の若い人が他の人たち全員を支えるような社会は、明らかにあり得ません。しかし、ここ数年私が驚きをもって学んだいくつかのことをお話ししましょう。私たちが「長寿革命」、つまり人生100年時代に注目するのは自然なことです。高齢者数の増加について理解することも重要です。しかし、私がよく理解できていなかったと思うのは、実際に起きている大きな現象は「年齢の多様化」だということです。

出生から74歳までの人口のグラフは、100年前はスキー場の斜面を直滑降で滑り降りるような感じでした。ところが今は、同じグラフを見ると人口は12歳も61歳も37歳も同じです。0歳から74歳まで、どの年齢でも生きている人の数はおおむね同じです。そして、裾野がさらに広がっているのです。しかも、人口の4分の1は20歳未満で、4分の1は60歳を超えています。

境目を25歳と55歳とすると、社会における2つの大きなグループは高齢層と若年層で、その人数はほぼ同じであることがわかります。いろいろな年代層が共存する今、そして多世代が共生する未来の課題のひとつは、人生の異なる段階にある、年齢の異なる人たちと、いかにして共に働いていくかを学ぶことだと思います。

多様な年齢の人々の協働

ベンツ: フリードマンさん、あなたは職場における年齢の多様性の熱心な支持者であると伺ってます。若い人は年上の人から学ぶことができるし、その逆もまたしかり。なぜ実際に年齢の多様性がそれほど健全な職場づくりに必要なのか、また、職場において年齢の多様性を高めるために私たちができることについて、お考えをお聞かせください。

フリードマン: 年長者と若年者の能力、求めるもの、資産は、ジグソーパズルのピースのように本当にうまくかみ合うと思います。21世紀に私たちが直面している課題に、可能な限り生産性を高めて向き合うには、それらすべてのスキルが必要なのです。

両者の補完性を示す例として私が素晴らしいと思うのは、BMWが数年前に3つの組み立てラインで行った実証研究です。3つのラインとは、高齢労働者のライン、若年労働者ライン、年齢が多様化された混合ラインです。年齢差別を象徴しているような高齢労働者ラインは作業にミスはないが遅く、若年労働者のラインは作業は速いがミスが発生しやすいと示されました。混合ラインは、作業が早くて比較的ミスが少ない、つまり生産性向上への近道となりました。この結果は、何ができるかということを暗示していると考えています。

アーサー・ブルックス氏は『From Strength to Strength(人生後半の戦略書 ハーバード大教授が教える人生とキャリアを再構築する方法)』の著者です。彼は「アメリカン・エンタープライズ研究所」の元所長で、現在はハーバード大学のケネディスクールで教えています。この本は2022年前に出版されたのですが、彼はその中で、若年労働者は流動性知能が特に高く、高齢労働者は結晶性知性が高いとしています。私は、高齢者が持つパターン理解や先を見る能力である結晶性知性は、スピードをはじめ、若い労働者が持つ複数の資産を際立たせる役割を果たすと考えています。そして、ブルックス氏は、この両方のグループの共存なしでは職場は成り立たないと強く主張しており、私もまったく同じ考えです。

世代のアパルトヘイト

アーノット: あなたは、世代のアパルトヘイト(隔離)と呼ばれるものについても書かれていますね。それが何を意味するのか、またなぜこれほど定着し、これほど有害なのか、少し詳しく話していただけますか?

フリードマン: その話題を取り上げて頂いて本当に光栄です。私はこの考えに取り憑かれています。事実、私は今、新しい本の構想を練っているところですが、そのタイトルは『End Age Apartheid(アパルトヘイトの終焉)』のようなものになる予定です。

背景を説明すると、米国は、世界で最も世代が統合されている社会の一つとして20世紀の始まりを迎え、最も世代が分離されている社会の一つとして20世紀を終えました。19世紀には、人々は年齢をまったく意識しておらず、自分が何歳なのかさえ知りませんでした。誕生日を祝うこともなく、あらゆる制度、日常生活のあらゆる場面で、世代が統合されていました。私たちは農業経済の中で生きていました。高齢者も若年層も、農場で肩を並べて働いていました。米国はどの家庭も多世代が共生していました。学校には教室は一つしかなく、4歳の子供と40歳の大人が机を並べて文字を学んでいました。

しかし、その後の数十年間で、すべてが変えられることになりました。年齢別に社会を再編すればより効率的になると考えたのです。それはしばしば、政策主導の大きな飛躍となりました。児童労働に関する法律が制定され、国民皆学を目指す中で、若者は一緒に学校に通うようになりました。社会保障制度は、先述の通り失業者の多い時期に高齢者を労働力から排除するという目論見通りの効果を上げました。そして次々と、それは見事な創造力によって、高齢者が同年代の仲間と集うシニアセンター、老人ホーム、退職者向けコミュニティ、生涯学習プログラムなどが考案されました。

こうして異なる世代は交流しなくなりました。確かに効率的でした。しかし、その結果、現在私たちは危機的な状況を目の当たりにしています。世代のアパルトヘイト状態にある社会で、人々が「はい、はい、分かったよ団塊世代」「まぁそうだね、ミレニアル世代」などと呼び合い、世代間の対立について話したり、孤立や孤独のまん延について話したりするのは当たり前になりました。

年齢差別は拡散しています。私は、このような社会の組織化や世代のアパルトヘイト状態は、前世紀には機能しなかったと思います。そして、人類史上最も年齢が多様化している社会、つまり今日の米国にふさわしくないのは明らかです。

高齢者を包括する社会

ベンツ: あなたは、1970年代の「Gray Panthers」の活動や、1956年にジョン・F・ケネディ元大統領が高齢者の潜在的能力の活用を呼び掛けるなど、高齢者を社会に統合するための初期の取り組みについて書かれていますね。では、そうした取り組みが立ち消えになったのはなぜだと考えていますか?

フリードマン: 彼らは時代の一歩先を歩んでいたのでしょう。高齢者が社会に可能な限り貢献するために、米国社会のあらゆる場面に参画するというこの考え方が、新しい発想ではないということを私は心強く思います。人々は長い間そう言い続けてきました。ジョン・F・ケネディ元大統領は、「我々は、人生を何年も伸ばした。今はこの長寿で得た年月に命を吹き込む時である」と語っています。そして、私の個人的な英雄である(Gray Panthersの創立者)マギー・キューン氏は、高齢者について、「無駄にしていい人は一人もいない」と言いました。

高齢世代は膨大でただ増え続けるだけではなく、間違いなく米国で唯一増え続ける天然資源です。この国の中で最も経験豊富な人々を切り捨てる余裕はありません。この考え方には長い歴史があますが、新たな人口動態、長寿化、健康寿命の延びによって再び注目され、無視できないものとなっています。

社会とのつながりと働く意志

アーノット: ここまで、全体的な人口動態や、社会全体で異なる世代がより多くの交流とつながりをもって共に働くことの必要性についてお話しを伺ってきました。しかし、長く働くことが、経済的な面や生活の質の面でどのように人々の助けになるのか、少しお話ししていただけますか?

フリードマン: ご指摘の通り、経済的な面は非常に重要です。私は昨年65歳になりましたが、まだ8年生、10年生、12年生の子供がいます。ですから、退職は私にとって近い将来の話でないのは確実です。

しかし、長く働くことには、経済的安定という生きるのに必要不可欠な理由と同じくらい重要な理由がいくつかあります。その多くは、生きがい、朝起きる理由、仕事がもたらす社会とのつながりや絆に関係しています。フロイトは、人生において最も大切なのは愛と仕事だと言いました。つまり、朝起きる理由と社会との絆です。

私たちは10年前の退職者を対象とした調査で、「仕事を辞めて最も寂しいと思うことは何か」と尋ねました。朝目覚ましを止める必要がないのは寂しくないが、生産的な関係、つまり重要なことを成し遂げるために他の人々と共に働くという考え方がなくなったことに寂しさを覚えると言っています。私は、経済面での必要性とともに、これらの社会面での必要性、ある意味では精神面での必要性も仕事が解決してくれると考えています。

ベンツ: それでも、人々の長く働きたいという願望と、それを実現する能力との間には乖離があるようです。データによると、多くの人が「65歳を過ぎても働きたい、70歳を過ぎても働きたい」と言います。しかし、総じて人々は自分が考えていたよりも早く引退する傾向があります。このような逆風、実際に退職する際に、残念なことにその先を自分で完全にコントロールできないという状況についてお話ししていただけますか?

フリードマン: このことは、何らかの状況にある人たち、例えば、定年が近くなり、しばらくの間、これまで続けてきた仕事をするのをやめようとしているような人たちを支えることの重要性を浮き彫りにしています。しかし、引退しない人もたくさんいるし、あるいは、引退しないことを計画している人もたくさんいます。問題は、それを実行するのがとても難しいということです。

それは、DIY(日曜大工)のようなものです。いろいろな理由、例えば介護、あるいは本当の意味で必要な休息を取るために、仕事を辞めようとしている人も大勢います。ただし、だからといって永久に引退すると決めているわけでありません。多くの場合、彼らは職場に戻る必要があり、戻りたいのです。問題は、我々がそれを難しくしてしまったことです。「働きたい」という本人の努力と勇気と行動力に頼るところが大きいのです。

ですから、いい言葉が見つからないのですが、人生の後半に職場に出入りできるような社会的制度の整備がもっと必要だと思います。この面では、実に着実な進展がみえ始めています。ハーバード大学の「Advanced Leadership Initiative」に始まり、ノートルダム大学、スタンフォード大学、シカゴ大学、テキサス大学へと広がってます。私はイェール大学でこれらのプログラムの一つの立ち上げに携わってきました。これらは基本的に、人生の後半を生きるためのプログラムで、人々はそこに戻って1年間過ごし、自分の目的を再び見つけ、その過程で人生の休暇を過ごすことができます。

私たちの組織は、15年前にフェローシップ・プログラムを創設しました。職場で積んだ経験とは違う方向に進みたいと考えている人たちのための1年間のインターンシップです。この「Encore Fellowship」プログラムでは、新しい役割に挑戦することができます。「Encore Fellowship」プログラムのようなインターンシップや教育プログラムは、青年期から大人になろうとする若者たちに対して日常的に行われているものとほぼ同じものです。学校とインターンシップでの経験を通じて、人々は多くを学び、それを人生の後半期に活かすことができるのです。

中高年の「ギャップイヤー」と新たな「年代」の存在

アーノット: 中年期のどこかで「ギャップイヤー」(猶予期間)を取りたい人、じっくり考える時間が欲しい人、いろいろなことに挑戦したい人のために、より多くのリソースやプログラムが用意されてきているようですね。しかし、大学進学前や社会人になる前に「ギャップイヤー」を取る人に比べれば、それはまだ一般的ではないでしょう。中年期に猶予期間を取ることに対する障壁は何だと思いますか?

フリードマン: 文化的なものがあると思います。働き続けるか退職するか、どちらかを選択することを迫られているようなものです。しかし、人生が長くなる中で一旦休みをとるという考えは非常に魅力的なものだと思います。それでも、まだ多くの人はそれを当たり前とは思っていないのでしょう。繰り返しになりますが、一歩下がって今起きている大きな進歩に取り組むことは、若い人たちの経験に学ぶことができると思います。

中年期の終わりから本当の退職時期が近づくまで、あるいは老齢になるまでの間に、まだ名前はないですが、100年前の「青年期」の発見に非常によく似た、人生の新しい段階が発見されて、今目の当たりにしているのです。我々は、「若者」が急増する時代を経験しました。子供でも大人でもない彼らを、どう扱えばいいのかわかりませんでした。私たちは彼らを「ティーンエイジャー」と定義し、彼らのために学校や青年組織を考案しました。

現在、私たちは寿命を延ばし、人生の長さに見合う人生の新たな地図を描いています。中年期と晩年期の間にはまだ地図に載っていない領域があります。それを「中年の思春期-ミドレッセンス」と呼ぶ人もいます。私が敬愛する義理の母に聞いてみたところ、自分は「最後の一つ手前の段階」にいると思っているようです。彼女は人生のこの時期をそう考えているようです。

いずれにせよ、人生のその段階が可視化されてきました。「アメリカ心理学会」の創設者であり、心理学で最初の博士号を取得したグランヴィル・スタンレー・ホール氏は、1906年にその著書のなかで「青年期-アドレッセンス」についての研究を発表しました。興味深いことに、その20年後、彼はこう言いました「私は大きな過ちを犯した。(「青年期」ではなく)中年期と老年期の間にある、人生の新しい段階を発見すべきだった」。

人生後期ならではの長所とは何かというあなたの質問への答えですが、スタンレー・ホール氏は、「人間は、人生に陰りが見えるまで生涯最大の能力を発揮することはできない」と言いました。つまり、中年期以降になると、別の視点が持てるようになるということです。人生は永遠に続くわけではありませんが、それ故に集中力を高め、目的意識を与えてくれれます。同時に、その洞察力を使って何かをするのに十分な時間があります。

それは人生において特別な期間なのです。命名はされていませんが、何千万人もの人々が、この独自の視点と膨大な経験をもってこの期間に流れこんでいます。そして社会は、その思いがけない恩恵にあずかる好機を得ようとしているのです。

アンコール・キャリア

ベンツ: 「アンコール・キャリア」という考え方について教えてください。あなたは、人々が自分自身を再創造し、それまでのキャリアを土台にして、人生の後半に意義のある仕事をする「アンコール・キャリア」という考えの先駆者であり、考案者ですね。あなたが「アンコール・キャリア」をどのように定義しているのか、また、晩年に近づく人々が自身の「アンコール・キャリア」ついてどのように考えているのか教えてください。

フリードマン: 私たちは、ジミー・カーター元大統領に代表されるように、情熱と目的を持って第2の人生を歩んだ多くの著名人から刺激を受けました。第2の人生は彼らの中年期の仕事ほど長くなかったかもしれませんが、人生への貢献を考えると、同じだけの重みと意義がありました。私たちは、それを称えるために「アンコール・キャリア」という考え方にたどり着きました。これを広めるために私たちが使った言葉が『より大きな善のための第2の人生』です。ジミー・カーター氏と同様、第2の人生は多くの人々にとって、それまでに積み上げた経験を活かし、人々の生活の質を向上させるために課題に応用して、実際に解決に取り組むことだったからです。

私たちは、「アンコール・キャリア」は決して元大統領や億万長者だけのものではないことを伝えたかったのです。そこで、60歳を過ぎて、自身が最も重要だと思う仕事に取り組んでいる人に毎年(合計で)50万㌦を授与する「Purpose Prize」を創設しました。当初は、十分な人数の候補者が集まるのか、カーター氏と数人しかいないかもしれない、と私たちは心配しました。しかし、すぐに心強いしらせが届きました。最初の年には、5つの賞に対して1,200件の推薦があったのです。過去10年で、「最も重要な仕事をしている高齢者」として延べ1万件もの推薦をいただきました。

そこから見えてきた教訓のひとつは、こうした「アンコール・キャリア」がまったく新しい種類の仕事であることは非常に稀だということです。私たちは、銀行員だった人が退職後にブドウ園やB&B(Bed & Breakfast)を開き、太陽は輝き、汗をかくこともなく、すべてが魔法のように展開するイメージを持ちがちです。しかし実際には、この賞を受賞した人や何千もの候補者のほとんどは、中年期に行っていたことを地道に積み上げてきた人々でした。

一例を挙げると、ゲーリー・マックスワージー氏は、若い頃に発展途上国の教育や農業を援助する「平和部隊」に入りたかったのですが、家庭があり、叶いませんでした。彼が60代のときに妻をガンで亡くしました。そこで彼は人生を仕切り直し、新たな挑戦をしようと決心しました。中年期に食品流通事業に携わり、フードバンクが加工食品や缶詰しか配らないことに気づきました。しかし、数十年にわたる食品流通業の経験から、農場や生産者が見た目が悪いという理由だけで生鮮食品を大量に廃棄していることを知っていました。そこで彼は「Farm to Family」というプログラムを立ち上げ、農家や生産者とフードバンクをつなぐ流通網を構築しました。これは、経験と革新がいかにうまく融合できるかを示す好例です。

「アンコール・キャリア」についてのあなたの最初の質問ですが、私たちが発見したのは、その時点で500万人の米国人がすでに「アンコール・キャリア」を行っており、さらに2,100万人がその道を歩むことを最優先事項としていた、ということでした。そして、彼らは皆、「アンコール・キャリア」の期間は10年程度とみていると答えました。もし次のキャリアに進むことが容易になれば、2,500万人が10年間、つまり2億5,000万年分の潜在的な人的・社会的資本が生み出されることになります。

第2の人生への架け橋

アーノット: 「アンコール・キャリア」とは本来、より広範な目的で自分の強みを生かして他の人々を助けるものと考えていますか?それとも、それまでの社会人生活で力を注いできたこととはまったく違うことをやりたいという人の例もあるのでしょうか?

フリードマン: その通り、より広い範囲の現象です。私たちは、教育や地域社会、環境といったものを改善するために、使われていない人的資本や社会を活用することに注力している非営利団体です。ですから、私たちは「アンコール・キャリア」の定義の軸足を「社会により大きくポジティブな影響を与える第2の人生」に移しました。私たちが定義した方法以外にも、人々ができることはたくさんあるますし、人生の早い時期と同じか、それ以上に充実したライフステージに移行することもできます。50代や60代になったら、「最盛期を過ぎた、最高の仕事は過去のものだ」という考え方は、人々が健康寿命が短かった時代に生まれた迷信だと思います。

一例を挙げると、シカゴ大学経済学者のデヴィッド・ガレンソン氏は、創造性と天才についての研究に取り組み、さまざまな年齢の画家が描いた絵画の価値について研究しました。彼が発見したのは、創造性と天才には2つの大きな開花時期があるということです。若くして才能が顕現する早熟な天才、たとえば8歳で最初の交響曲を作曲し、協奏曲が頭から自然に湧き出すモーツァルトのようなタイプがあります。一方で、芸術家の中には、試行錯誤を重ねて成長し、完全に開花するのに長い時間がかかる人々が居ます。人生の後半に開花する遅咲きの天才も多く、ガレンソン氏は彼らを「実験的天才(experimental genius)」と呼びました。

ガレンソン氏は、私たちは往々にしてこの遅咲きの天才を評価していないと主張し、実は早熟な天才の創造性と同じくらい大きな才能の宝庫であるとしています。人々の能力、貢献、創造性についての世間の認識は、偏っているのです。「Purpose Prize」を通じて、私たちは人々の並外れた創造性を目の当たりにしました。多くの人々が2度目のチャンスをつかみ、夢にも思わなかった様々なことをする機会を得て、遅咲きの才能を発揮しているのです。

アーノット: しかし同時に、先ほどアーサー・ブルックス氏の話をされましたが、彼は中年期に多くの人が経験する行き詰まり感、キャリアが失速しているように感じたり、創造性が求められる分野で大きな進歩がなく、以前のように突破口が開けないという現象についても書いています。そのような状況にある人たちが、創造性や生産性の第2の開花に自分で踏み出すことができるような架け橋について、何かアドバイスはありますか?

フリードマン: あなたが仰った橋を架ける、というのが重要です。しかし、ご指摘の通り、人々は自分でそうすることを余儀なくされまが、そんなに簡単なことではありません。青年期の大きな試練を終えたばかりの若者たちに「5年以内に大人になってほしい」と言うことを想像してみてください。多くの年配の人々に求めているのは、そういうことです。

彼らは、最終章が終わったという行き詰まりを感じていますが、彼らの貢献力、創造性、発想が終わりを迎えたわけではありません。彼らに学習し、インターンシップに参加し、探求し、休息して新たな人生の段階に備える機会をもっと提供する必要があります。そして、現時点ではそれはとても困難です。

最終的には想像力が必要になります。ロールモデルや、そのような移行期を経験した人々の実例が必要です。イノベーションも必要です。人生のこの段階にある人々が目的を見つけるための道筋が必要であり、そのための投資も必要です。人口規模と機会に見合った規模で実現できるように、資源を投入しなければなりません。

社会保障制度から今日の話を始めたので、選択肢の中からひとつアイデアを挙げましょう。50歳代の人たちが学校に戻って学ぶ機会を得るために、社会保障を1年分だけ早期に受給できる機会を設けたらどうでしょうか。そのかわり、その後保険数理に基づいて調整された一定の期間、働いて保険料を積み立てます。人生の後半にある人たちのための「G.I. 法(復員軍人援護法)」のようなものです。誰もが「バウチャー(用途限定の引換券や権利)」を持つことになり、高等教育は大きく変わると思います。そうすれば、この世代のための多くのプログラムが創設されるでしょう。これですべてが解決するとは言いませんが、効果的な規模で実現するにはどうすればいいかという議論すら始まっていないのが現状です。

もうひとつ例を挙げましょう。私が良いと思うプログラムのひとつに「Troops to Teachers」というものがあり、退役軍人が公立学校の教師になるのを支援するものです。このプログラムには、砂漠の真ん中で18歳の未成熟な兵士と一緒に過ごした経験があるのだから、17歳の未成熟な子どもたちと教室でもうまくやっていけるだろうという洞察があります。

18歳で入隊する青少年の多くは、学校教育を受ける機会がないためにその道へ進むので、彼らが退役後に教育機会を得れば、社会的流動性(所得階層間の移動)が進む可能性もあります。「Troops to Teachers」のようなプログラムは、人々がキャリアアップに必要な教育を受けるように支援しますが、積み上げた経験を活かしながら、新たな方法でその経験を活用し、新たな目標を達成しようとするものです。

格差の課題、時間の問題

ベンツ: この分野と富という観点において、所得と教育が果たす役割について教えてください。所得や教育水準が高まるほど、選択肢が増えるように見えます。所得や学歴が高ければ将来の計画をより容易に描くことができます。この領域における富の役割について論じていただけますか。

以前、ウィスコンシン大学のアニタ・ムカルジー教授をゲストにお招きし、平均寿命の延びや長寿の恩恵は主に裕福な人たちにもたらされていると聞きました。その恩恵を受けた人々は、より長く働き、退職後も長生きし、より長く健康に恵まれ、人生の後半により幸せな歳月を過ごしているそうです。「アンコール・キャリア」がすべての人のためのものなのか、それとも現時点では裕福な人たちのためのものなのか、その点について教えて頂けますか?

フリードマン: これは大きな問題で、今のようなDIYの世界では、富裕層に不公平に利益がもたらされています。先ほどハーバードやスタンフォード、ノートルダムなどの高等教育プログラムの話をしました。素晴らしいプログラムですが、授業料は年間6万㌦も7万㌦もしますし、これには、ノートルダム大学のあるサウスベンドやスタンフォード大学のあるパロアルトに引っ越すのにかかる費用は含まれていません。非常に創造的な取り組みであると私が考えているのは、チップ・コンリー氏がメキシコのバハに設立した「Modern Elder Academy」で、もうすぐサンタフェでも開校される予定です。

しかし、これらの取り組みのすべてが、より恵まれた環境にいる人々を惹きつけているにすぎません。つまり、私が今説明した「Troops to Teachers」プログラムのように、機会を広げ、銀行口座を持てない膨大な数の人々が学校に戻り、再教育を受け、技術を身に着け、新たな役割に挑戦するための支援ができるかどうかが課題なのです。私たちはこの分野で優れた人材を十分に確保できていないのです。

アーノット: もしあなたが50代や60代で、「アンコール・キャリア」という考え興味はあるけれど、安定した給料を手放すことに少し不安を感じているなら、決断をする際に何を検討すべきですか?また、現在の仕事にあと数年留まること、第2の人生を選択すること、それぞれのメリットは何でしょうか?

フリードマン: 的を射た質問だと思います。今の仕事を続けるという選択肢は短期的な視点です。もし本当に、充実感や朝起きる理由、社会との強いつながり、長期にわたり所得を得られるような、まったく新しい段階に進みたいなら、別の視点、別の時間軸が必要です。時間は本当に重要だと思います。この先10年、20年、何をしていくかを考えるなら、我慢して仕事をするよりも、一歩退いて自分のスキルに再投資し、インターンシップやフェローシップに参加しする方がいいでしょう。ボランティア活動でもいいと思います。

ただし、最初から簡単に「アンコール・キャリア」への道が成功することは滅多に無いと認識する必要があります。数年かかる可能性もあり、時間軸を正しく把握することが重要です。10年、20年先を見据えて、移行には1年、2年、3年かかるかもしれないと認識していれば、それに合わせて計画を立てるべきです。

トレードオフとして検討に値するのは、老後のプランから資金を引出し、その一部を「アンコール・キャリア」に移行するために使うかどうかだと思います。自分に投資し、インターンシップに時間を割くなどです。新たなライフステージに進む準備をするために資産を再配分することは、長寿化、労働寿命の延伸に応じる選択の一つだと思います。ただ現状に甘んじて茫然と老後の深淵から逃れようとするのではなく、そこに数々の新たな章があると人々が認識することができるでしょう。

働き続けるメリットと世代間の交流

ベンツ: では、少し話を戻して、仕事を続けることのメリットについて教えて頂けますか?身体的な活動や人間関係など、多くの恩恵があるように思えますが、データからはどのようなことが言えるのでしょうか?

フリードマン: 主なメリットは、経済的な安定、社会とのつながり、生きがいの3つでしょう。ここ数か月放送されている『Blue Zones』シリーズ(NETFLIXの長寿コミュニティ・ドキュメンタリー)をはじめ、生きがいと健康が密接な関係にあることが多くの研究によって示されています。また、社会とのつながりについても、公衆衛生局長官のヴィヴェク・マーシー氏によれば、孤独がまん延する世の中で誰もが孤立している状態にあります。現在、多くの人が職場を通して社会的なつながりを得ており、働き続けることで、所得の安定・社会とのつながり・生きがいの実感というある種の三位一体のメリットを得ているのです。

詩人マージ・ピアシーの『To Be of Use』という詩の結句、 「水差しは運ぶ水を求め、人は仕事を求めるのが真の姿」が私は大好きです。それは何才までと決められたものではなく、働き盛りに限るものでもありません。60代、70代、それ以降でも、人々が深く感じていることでしょう。ですから、生きがい、絆、安心感、これらすべてが、長く働き続けることの恩恵と密接に結びついていると私は考えています。

アーノット:人には「役に立ちたい、意義のある仕事をしたい」という強い願望があるというのは、 素晴らしい指摘です。もし、やりがいのある仕事を追求し続けたいけれど、職場や学校に戻ることで年齢差別に悩まされる懸念を抱いているとしたら、何か対処法はありますか?あるいは、年齢を重ねるにつれて、より社会に貢献できる存在となり、年齢差別を受けにくくするためにできることはありますか?

フリードマン: これほど多くの人が時代遅れの常識にとらわれず、何らかの形で役に立ちたいと努めていることで、社会全体をより良いものにしていると思います。それは、1970年代の女性たちを彷彿とさせます。それまで締め出されていた職業に果敢に挑戦し、阻まれることを拒否して、前へと歩み続けた女性たちです。ですから、時代遅れの考え方やその他の障壁を乗り越えて前進する人々は、若い世代にとっても良い社会を作っていると思います。

とはいえ、それは多くの人にとって慰めにもならないでしょう。継続的な学習と成長に焦点を絞ると、認知機能をはじめとして人々の健康に良いだけでなく、私たちがどのような人間であるかという強力なメッセージにもなるでしょう。また、若い同僚との関係を築くことは、従来のメンタ制度以上に、共同メンタリングとも言える世代の両端にいる人たち相互に学び合う機会を提供します。

世代間で相互に学び合うことは、時代に即した存在となり、学び続けるための良い手段です。世代の分断によって色々な面で失ったものを取り戻すことにも繋がるでしょう。社会に貢献しているのは誰なのか、という世の中の暗黙の認識を変え、長い人生全体を俯瞰する感覚です。

ベンツ: 以前のゲストで、仕事とお金、人生について著書があるケリー・ハノン氏は、パンデミックによってリモートワークが常態化し、高齢者に良い環境となったと指摘されました。通勤の必要が無くなり、住みたい場所に住めるわけです。年齢差別は、直接会わなければあまり問題にならないかもしれないとも示唆されました。ちょっと悲しい気がしますが、これはあなたの考える年齢の多様性とは相反するようにも思えます。完全にバーチャルな環境で、年齢の多様性は実現できるのでしょうか?実際に対面することは重要ですか?

フリードマン: 重要だと思います。若い人たちに、将来何が起きるのかを知ってもらうためにも、私たちは自分の年齢を受け入れる必要があります。一方で、カルチャーの世界で起き始めている変化、とても勇気づけられています。

ポップカルチャーは、長年、年齢差別の温床だと考えられてきました。しかし、先日放映されたグラミー賞の授賞式では、80歳のジョニ・ミッチェルが、長い間彼女を支えてくれたブランディ・カーライルとともに出演していましたが、ブランディの年齢はジョニの半分くらいです。トレイシー・チャップマンとルーク・コムズもいました。トレイシーはもうすぐ60歳、ルークは30歳になったばかりです。ビリー・ジョエルの出演も、彼の曲に心酔した若者がきっかけで、再び作曲を始めたためです。

映画『The Intern』、ドラマ『Only Murders in the Building』や『Hachs』などでも同様の例が見られます。私たちが目にするのは、高齢者が貢献し続けるだけでなく、若い世代と高齢者が協力して、どの世代も単独ではできないことを成し遂げようとする姿です。

私たちが昨年シカゴ大学と共同で行った調査では、高齢者と若者は、特に気候変動やメンタルヘルスのような問題において、互いに協力することに高い関心を持っていることが明らかになりました。さらに注目すべき点は、世代を超えた協力に最も高い関心があるのは若者層と非白人系の若者だったということです。

長年にわたる年齢差別との闘いの末、映画やドラマ、そして現実の世界で、高齢者を受け入れ、協力し、一緒に働きたいと考える新しい世代が育ってきているのです。年齢差別はもはやないと言うほど楽観はしていませんが、私たちは変化の真っ只中にあり、それは頼もしい変化だと言えます。

自身のアンコールキャリアについて

アーノット:あたな自身にも、ここ数年で仕事に変化があったと思います。どのように変わったのか、そしてその理由についてお話いただけますか?

フリードマン: 昨年、私は65歳になりました。ショックでした。私はリンドン・ジョンソン(元米国第36代大統領)政権で保健教育福祉長官を務めたジョン・ウィリアム・ガードナー氏とともに組織を立ち上げました。彼は1965年に「メディケア」(65歳以上の高齢者や身体障害者を対象とする米国の公的医療保険制度)を導入した人物です。そして突然、私はメディケアカードを受け取る年になり、同時に我々の組織も25周年を迎えました。

そろそろ私も「アンコール・キャリア」に進む時期かもしれないと考え始めました。そこで私より25歳若い同僚、ユニス・リン・ニコルスに後継者にならないかと相談しました。彼女はノーと言い、一緒にこの仕事をやらないかという提案をしてくれました。私は彼女をとても尊敬しており、その言葉に感銘を受けました。

私たちはこの世代を超えた協働リーダーシップ・モデルを通して、年齢の多様性の力を核とする組織の理念を体現できるのではないかと考えました。就任から1年が経ちましたが、今ほど自分の仕事が楽しいと思ったことはありません。そして、私たちがしばしば直面する、「働き続けるか引退するか」、「経営陣にとどまるか身を引くか」といった二者択一の選択肢が全てではないということを改めて実感したのです。

協働、共創、決定権の共有といった分野には計り知れないほどのチャンスがあります。我々が、このような協調体制を構築できるはずの他のリーダーたちのモデルになれることを願っています。

ベンツ: 非営利セクターは、「アンコール・キャリア」に適していると書かれていますね。その真意を教えていただけますか?

フリードマン: 心からそう考えています。私自身、この分野に25年間働いてきましたが、こうした分野では優れたマネジメントに対する評価や尊敬、強いニーズが非常に高まっています。戦略、マーケティング、財務などの専門知識を持つ他の分野から来た人々は、他に類を見ないほどこの活動を強化する上で重要な役割を果たしています。

実際、私たちが「Encore Fellowship」プログラムを創設した理由はそこにあります。このプログラムでは、2,300人のフェローが非営利団体で1,000時間のボランティア活動を行ってきました。彼らはそれまでと全く異なる仕事をするわけではありません。たとえば、インテルでマーケティングに携わっていた人は、その地域の「ボーイズ・アンド・ガールズ・クラブ・オブ・アメリカ」でマーケティングを担当します。つまり、ベテラン社員が持つ経験と、その経験を活かせる新たな環境とをマッチングさせるプログラムです。

高齢者に適した役割とは

これは新たな発明ではなく、むしろ再統合していく活動です。そこで、特に教育について紹介したいことがあります。フィナンシャル・タイムズ紙のコラムニストであるルーシー・ケラウェイ氏の娘が、英国で「Teach for America」(米国で大学卒業生を学校現場に派遣するプログラムを実施しているNPO)と同様の活動を行っていました。これは英国でもアメリカと同じようにとても人気があります。母親のルーシー・ケラウェイ氏は、60歳になって娘の足跡をたどりたいと思い立ち、「Now Teach」という組織を設立しました。これは、STEM(Science、Technology、Engineering、Mathematics)のうち特に科学、技術、数学の教師として高齢者を募集しています。英国全土で話題となり、1人の募集枠に対して40人の応募者があったと記憶しています。

カリフォルニア大学の人類学者、マイケル・ガーヴェン氏と話していて知ったのですが、進化論の考え方によると、教えることは高齢者にとって最も自然な役割だそうです。ガーヴェン氏は狩猟採集民の部族の2万人を対象に調査を行い、それらの部族では長老たちが教育者の役割を担っていることを明らかにしました。シャチに関する新たな研究もあり、”祖母”のシャチが若いシャチに教える役割を果たしていることが示されています。彼らの主張は、我々が高齢者がどのような役割を果たすべきかと思案している一方で、進化は既に答えを出している、ということです。シャチでさえ、教育には重要な機会があることを理解しているのです。

アーノット: 教育や教職は、多くの人が探求したい道かもしれません。でも、もしこの話を聞いている人が、どのような「アンコール・キャリア」を選ぶべきか少し迷っているとしたら、どのように考えたら良いのか、あるいは他の人からインスピレーションを得るためのヒントなどあれば教えていただけますか?

フリードマン: いくつかアイディアがあります。ひとつは、私の同僚マーシー・アルボアーが書いた『The Encore Career Handbook』を読んでみることです。彼女は長年ニューヨークタイムズのキャリア・コラムニストを努めており、ブロガーでもあります。同書は「アンコール・キャリア」に踏み切った人々のエピソードを満載しており、彼らがどのようにそれを実現したかが記されている素晴らしい本です。

また、「Purpose Prize」の受賞者を見ることもお勧めします。「Purpose Prize」は、今は「AARP Purpose Prize」としてAARP(旧アメリカ退職者協会)が運営しています。人生の第2幕で本当にやりがいのある仕事をしている人々の物語を何百も見つけることができます。これも素晴らしいインスピレーションの源になると思います。

また、新しい高等教育プログラムを提供し、将来の可能性を探求を支援する取り組み、たとえば「Modern Elder Academy」などについて知ることも良いと思います。

ベンツ: フリードマンさん。あなたのお話しにとても刺激を受けました。今日はお時間を割いていただき、本当にありがとうございました。◇

※ 本稿はモーニングスターの「Marc Freedman: The Case for Encore Careers」をモーニングスター・ジャパンが翻訳したものです。原文と翻訳に相違がある場合は、原文が優先されます。

<マーク・フリードマン氏についての参考・著書など>

Background

Bio

CoGenerate

Experience Corps

How to Live Forever: The Enduring Power of Connecting the Generations, by Marc Freedman

Age Diversity

Overcoming Age Segregation,” by Marc Freedman and Trent Stamp, Stanford Social Innovation Review, March 15, 2021.

Will 2023 Be the Year That We Begin to Make the Most of Age Diversity in the Workplace?” by Ramona Schindelheim, WorkingNation, Dec. 27, 2022.

Harnessing the Power of Age Diversity,” by Alene Dawson, John Templeton Foundation, Oct. 31, 2023.

America Is Arguably the Most Age-Diverse Society in Human History—It’s High Time to Prepare for Our Increasingly

Multigenerational Workforce,” by Ramona Shindelheim, WorkingNation, Dec. 10, 2023.

Encore Careers

Encore Career: What It Is, How It Works, Prevalence,” by Julia Kagan, Investopedia, Jan. 16, 2022.

Encore: Finding Work That Matters in the Second Half of Life, by Marc Freedman

The Case for Putting Seniors in Charge of Universal Pre-K | Opinion,” by Marc Freedman and Carol Larson, Newsweek, Nov. 29, 2021.

The Purpose Prize

Work/Life Across Generations

Kerry Hannon: Remote Work Trend Benefits Older Workers,” The Long View podcast, Morningstar, Oct. 20, 2020.

Is America Ready to Unleash a Multigenerational Force for Good?” A National Opinion Survey From Encore.org With NORC at the University of Chicago.

Other

The Globe: How BMW Is Diffusing the Demographic Time Bomb,” by Christoph Loch, Fabian J. Sting, Nikolaus Bauer, and Helmut Mauermann, Harvard Business Review, March 2010.

From Strength to Strength, by Arthur Brooks

Maggie Kuhn

Harvard Advanced Leadership Initiative

Encore Fellowships

David Galenson

Troops to Teachers

Modern Elder Academy

Live to 100: Secrets of the Blue Zones

Dr. Anita Mukherjee: Exploring the Link Between Wealth, Longevity, and Quality of Life,” The Long View podcast, Morningstar, Oct. 10, 2023.

Now Teach

Michael Gurven

The Encore Career Handbook, by Marci Alboher

著者はこの記事で言及されたいかなる有価証券も保有していません。詳細はこちらをご覧ください: モーニングスターの編集方針