私の投資哲学―5つの原則。あなたはどう考えますか?

市場の雑音に惑わされないための、シンプルな信念

エイミー・アーノットによる、シンボルや形を取り入れたフォトコラージュ

ある読者からのメールをきっかけに、自分の投資哲学について改めて考えてみました。

「金融関連の専門家の人達は、よく『投資哲学』という言葉を使います。これは一体どういう意味なのでしょうか。また、投資哲学を確立するための原則とは何でしょうか?」

実に素晴らしい質問で、率直に言ってその質問に答えるために自分の投資哲学を明確に表現しようとすることで、私にとっても非常に考えさせられる機会となりました。そこで、その回答をより多くの方々と共有したいと思いました。

投資哲学と投資戦略

投資哲学とは、自分の計画や意思決定の指針となる一連のコアな信念・信条であり、判断や行動の基盤となります。一方、投資戦略とは、その哲学を実行に移すための方法です。例えば、小型株やバリュー株に重点を置き続けることもあれば、幅広い市場をカバーするインデックス・ファンドを活用して、極めてシンプルな運用を続けることもあるでしょう。さらに一歩踏み込んで、具体的な運用プロセスを明確に定めることもできます。たとえば、有望な小型バリュー企業を特定するためにどのようなスクリーニングを行うか、あるいは幅広い市場をカバーするインデックス・ファンドを利用する場合、資産クラスの構成比率をどのくらいの頻度でリバランスするかといった点です。

初めに投資哲学を確立することが重要なのは、それによって正しい方向を目指し続け、気を散らされずに済むからです。例えば、ここ数週間、SpaceX(SPCX)の新規株式公開(IPO)が話題を集めました。しかし、「積極的な銘柄選定は無意味である」という哲学に基づいて投資を行う投資家であれば、SpaceXが主要な指数に組み入れられる可能性にのみ注目すればよいのです。パッシブ投資家であれば、実際にはそれさえ考える必要はありません。

自分らしい投資哲学を確立する

投資戦略と同様に、投資哲学もできるだけシンプルであるべきです。実際、コアとなる原則が5つ以上ある場合は、必要以上に複雑にしている可能性があります。大局的な視点で考えてみてください。投資に関して、揺るぎない信念があり、それが自分の人格の一部と言ってもよいほど深く根付いている考え方はありますか?もしあなたの原則がそのような特徴を備えているなら、どんな状況でもその哲学を貫き通せる可能性がとても高くなるでしょう。

私の場合、自分の投資哲学についてじっくり考えた結果、次のような結論に至りました。でも、必ずしも私の考えに同意する必要はありません! 最高の投資哲学とは、他人のものを真似したものではなく、自分自身のものなのですから。

私の投資哲学における5つの原則

原則1:KISS(Keep It Simple, Stupid!/とにかくシンプルに)

これが私の基本的な信念です。投資対象の選択やポートフォリオ管理において無駄を省いたシンプルなアプローチは、複雑な方法よりも断然優れていると考えています。シンプルさを重視するなら、幅広い分散投資ができる投資信託、特に低コストのインデックス・ファンドやETF(上場投資信託)を組み合わせたポートフォリオが理想的です。

こうした運用商品を選定し、希望する資産クラスの構成比率に合わせてポートフォリオを構築するのはシンプルなことです。維持管理も簡単です。年に一度、ポートフォリオをしっかり見直し、リバランスが必要かどうかを判断するだけで十分です。これはいわゆる「これで十分(Good enough)」という定番の方法です。

シンプルに徹することのもう一つのメリットは、投資の世界にある多くの「雑音(ノイズ)」を無視しやすくなることです。世の中には「難しすぎる」運用商品の山があり、その数は増え続けています。こうした商品は、私たちにとって手間をかける価値がなく、たとえ保有していたとしても、資産運用プランにとってそれほど貢献しなかったであろう投資です。また、私は金融ニュースも気兼ねなく無視しています (CNBCの皆さん、申し訳ありません)。最新のインフレ率であれ、話題のIPOであれ、それらが私の投資に大きな影響を与える可能性は低いでしょう。私たちが暮らす世界に影響するので注目はするかもしれませんが、あれこれのニュースに応じてポートフォリオを調整することは決してありません。

原則2:十分な流動性を確保する

ポートフォリオに株式を多めに組み入れることには抵抗がありませんが、ある程度の現金を保有することで得られる安心感も大切にしています。投資理論上は、現金保有は必ずしも良いとは言えないことは理解しています。金利は数年前よりも高くなっているとは言え、インフレを考慮すると現金の利回りは微々たるものです。とはいえ、私の今のライフステージにおいて、現金は欠かせない「贅沢品」だと考えています。

突然の高額な出費にも即座に対応できる上に、積極的な投資方針の長期ポートフォリオにも安心感を持てるからです。私は退職が近づくにつれ、債券への投資を意図的に増やしてきました(ここ数年、新規投資分はすべて債券に充てています)。それでも、現金がもたらす安心感のために、今後も十分な現金の余裕を保ち続けるつもりです。

原則3:時間軸を指針とする

前項にも関連しますが、私のもう一つの基本的な考え方は、投資対象やリスクの取り方を決める際に、想定する支出の時期を目安にするのが最適だと考えています。たとえば10年以上先で使うつもりの長期軸の資金なら、合理的な選択は株式を保有することです。なぜなら、10年単位で見ると損失が発生することはさほど多くなく、過去のデータでは「10年間の株式投資」において90%以上のケースでプラスのリターンとなっているからです。しかし、支出時期までの期間が短い場合には、株式はリスクが高くなります。そうした短期軸の資金は、債券や現金で保有することが重要になります。

これが、退職後のポートフォリオ計画における「バケツ戦略」の基本的な考え方です。この方式では、予想される支出時期を目安に、3つの主要なバケツに資産配分を決めます。具体的には、①「今すぐ使う」バケツでは現金を保有する、②「近いうちに使う」バケツでは高格付けの短期債と中期債を保有する、③「将来使う」バケツでは世界に分散投資を行う株式ポートフォリオを保有する、というアプローチです。

「バケツ戦略」の優れた点は、手軽に柔軟なカスタマイズがきることです。当面の支出計画を基に、各バケツにいくらを割り当てるかを決めます。短期的な支出ニーズが確保されていて安心だと思えれば、リスクを取った長期投資も継続しやすくなるので、これは健全な資金管理手法でもあります。

原則4:コストに留意する

バンガード創業者であるジャック・ボーグル氏と知り合い、彼から学ぶ機会を得られたことは、私のキャリアにおける大きな喜びの一つでした。彼の珠玉の知恵の中でも特に印象的だったのは、インデックス・ファンドが素晴らしいのは、「市場が常に効率的だから」ではない、という指摘でした。インデックス・ファンドの優位性は、アクティブ・ファンドに比べてコストが低く、それが長年積み重なることでパフォーマンスの大きな優位性につながるという点にあると言うのです。実際、市場は必ずしも常に効率的というわけではありません。

ボーグル氏のメッセージは、投資全般にも当てはまります。コストは投資において、投資家がある程度コントロールできる数少ない要素の一つです。低コストの投資商品を選ぶことに加え、ファイナンシャル・プランニングや投資アドバイスに費用を支払う場合は、それに見合った価値を得ていることを確認しましょう。また、税制優遇口座(もちろん、手数料が安いことが前提です)を優先し、課税対象口座では税効率の良い資産を保有するなど、税効率にも注意を払いましょう。

原則5:重要なことに集中する

最後に、私にとっての重要な原則の一つは、計画の成否にあまり影響がない些細な決定に時間を割かないことです。私は長年にわたり、不動産株式に別枠で投資すべきか否か、あるいはIRA(個人退職勘定)と課税口座のどちらで外国株式を保有する方が良いのかといった議論に、投資家が執着する姿を見てきました。もちろん、そうした問題に興味があるなら時間を費やすのも構いませんが、どんな結論に達したとしても、あなたの資産運用の目標達成に対してそれが大きな影響を与える可能性は低いでしょう。

それよりも私は、もっと重要なことに専念して時間を使いたいと思います。たとえば、仕事を続けて収入を増やし、身の丈に合った生活をして着実に資産運用を続け、健全な資産配分を維持することなどです。こうした活動や決断に集中し続ければ、他のことはすべて自然とうまくいくはずです。◇

※ 本稿はモーニングスターの「Here’s My Investment Philosophy. What’s Yours?」をモーニングスター・ジャパンが翻訳したものです。原文と翻訳に相違がある場合は、原文が優先されます。

著者はこの記事で言及されたいかなる有価証券も保有していません。詳細はこちらをご覧ください: モーニングスターの編集方針