<重要なポイント>
- 市場の変動性が高くなる時期には、ポートフォリオを頻繁に調整したくなります。しかし長期的な視点では、そうした行動はかえって悪い結果を招きがちです。
- 資産運用については、ライフステージと運用できる期間に基づいて判断する必要があります。
- 資産形成の初期~中期にある方は、市場変動によって生じる損失を挽回する十分な時間があります。株式比率を高く保ちつつ、ポートフォリオに耐性を持たせていくことが可能です。
- リタイアメントを控えた方は、シークエンス・リスク(悪いタイミングで大きな市場の下落が生じるリスク)を避けるために、ポートフォリオをより安定的な資産へと移行させる必要があります。
- リタイアメント後の方は、資産配分、ポートフォリオの管理、支出の選択という3つの対応が、老後のための資産を守るのに有効です。
マーガレット・ジャイルズ:こんにちは。モーニングスターのマーガレット・ジャイルズです。
変動の激しい市場への適切な対応は、「誰にとっても正解」という一つに収束する答えがあるわけではありません。今回は、さまざまなライフステージにある人々がどのように対応すべきかについて、クリスティン・ベンツと考えてみましょう。クリスティンはモーニングスターのパーソナル・ファイナンス・退職計画担当のディレクターです。
クリスティン・ベンツ:マーガレット、どうぞよろしくお願いします。
頻繁な変更を避け、市場のボラティリティに対処する
ジャイルズ:クリスティンは一般的には、市場の変動性が高まる時期にも、ポートフォリオに大きな変更を加えることを控えるようにと、人々に勧めていますね。それはなぜでしょうか。また、どのようなアプローチがより良いのでしょうか。
ベンツ:ええ、「戦術的」と私たちは呼びますが、タイミングを図る短期的な売買判断は得策ではないと考えています。
一つは、それを正しく実行するのが非常に難しいからです。市場が下落している時に投資から撤退すれば、下がり続けるポートフォリオの赤字を見る必要がなくなり、そのときはある程度安心感を得られるかもしれません。しかし、その安心は、すぐに「あれ、状況が好転し始めたみたいだ。市場に戻るべきだろうか?」といった懸念に変わります。結局うまく実行するのは難しいのです。
実際、市場動向に応じて資産配分を頻繁に変更するマーケット・タイミング型のファンド、いわゆる戦術的資産配分(TAA)ファンド全体を見ると、必ずしも、低コストの株式60%・債券40%の固定資産配分ポートフォリオを上回る成果を上げているとは言えません。
そしてもう一つの大きな理由は、より根源的な真理で、米国株式の長期的な成長を、特に非常に長い期間で眺めれば、極めて着実な上昇軌道を描いていることが明らかだからです。
たとえば2007年から2009年にかけての時期や、皆さんもご記憶の通り2020年のように、当時は本当に辛く感じられた景気後退も、結局のところ、長い目で見れば画面上の小さな揺らぎに過ぎません。長期的な株式ポートフォリオでこうした一時的な変動をノイズとして無視できれば、投資家としてとても有利になります。
20代~30代:資産形成初期の人は市場のボラティリティをどう乗り切るか
ジャイルズ:その通りですね。さて、人生のさまざまな段階についてお話ししたいのですが、まず20代、30代のキャリア初期段階で資産形成を目指す人から始めましょう。若い人たちは変動の激しい時期にどのような対策を講じればよいでしょうか?
ベンツ:特に投資初心者の方にとっては、直感に反することだと思いますが、投資家として不安を感じる時こそ、市場が熱狂し、誰もが投資に浮かれている時よりも、投資に適した時期なのです。直感と気持ちに反するので、この考え方を自分の運用プロセスに組み込み、実効するのは非常に難しいことです。
このライフステージで最善の策は、日々の市場の動きに振り回されず、自動的に積立を継続する仕組みを整えることです。そうすれば、成功への土台を築くことができます。老後資金については、ポートフォリオの大部分を株式とするなど、適度に株式比率の高いポートフォリオを設定し、あとは自動積立に仕事を任せてしまいましょう。
積立を自動化することの利点は、投資をすることが不安な時期に、わざわざ自分で積立額を減らしたりしにくくなることです。おそらく、他に忙しいことがたくさんあるでしょう。やがて、これが素晴らしい投資方法だと明らかになるでしょう。また、このライフステージの人は、退職後の目標以外のために確保しておくお金についても考えることをお勧めします。
当然のことながら、新居の購入、家のリフォーム、長期休暇、結婚など、さまざまなことを皆さんお考えでしょう。つまり、お金を使って実現したい短期的な目標があります。もし、そのお金が5年、あるいは10年以内に必要であるなら、株式市場に投資すべきではありません。 たとえ若くても、近い将来の支出ニーズに充てる資金についてはより安全な資産、たとえば現金と高格付け債券の組み合わせなどで保有しておくべきです。
ジャイルズ:そうですね。単に年齢だけでなく、そのお金が必要となるまでの時間軸も考慮する必要があるということですね。
ベンツ:その通りです。
40代~50代:損失を回復する時間がある場合の市場ボラティリティへの対処法
ジャイルズ:では、40代、50代といった、キャリアの中盤にある人について考えてみましょう。おそらく、彼らはキャリアを始めたばかりの人たちほど株式比率の高いポートフォリオは望まないでしょう。では、彼らはどのような対策を講じるべきでしょうか?
ベンツ:この世代にとっての朗報は、退職までまだかなり長い時間があり、そしてここまでにおそらくいくつかの異なる市場サイクルを通して、市場の変動を経験してきたことです。たとえ非常に不安に感じる時でも、株式はたいてい回復するということを知っています。ですから、株式の比率をある程度高めに維持すべきでしょう。
たとえば2040年に退職する人であれば、ポートフォリオの4分の3程度を株式に配分するのが良いでしょう。グローバルに分散された株式ポートフォリオは若い世代はもちろん、あらゆるライフステージの人、このミドル世代の人々にも適していると思います。
ただしミドル世代では、ポートフォリオに安全資産を補完的に組み入れ始め、徐々にそれらの安全資産を積み増していくことが望ましいでしょう。このライフステージでは、ポートフォリオの大部分を株式に配分している場合でも、退職後のポートフォリオに、高格付け債券を補完的な資産として保有し始めたいと考えます。
退職間近の人:変動の大きな局面でポートフォリオをうまく運用する方法
ジャイルズ:なるほど。そうすると、退職があと数年という射程距離に入った人にとって、リスク管理は特に重要だということになりますね。では、なぜそうお考えなのか、また、退職が近づくにつれて、どのような対策を講じるべきでしょうか。
ベンツ:率直に言って、このライフステージにある人たちのことが心配です。私自身がこの世代の方々と話した限りでのことですが、彼らは株式投資で素晴らしい成果を上げてきた経験があり、長年にわたる株式市場の好調から、その自信がさらに強くなっています。そのため、多くの人が株式比率の高いポートフォリオのまま運用を続けているようですし、たしかに退職後の生活が20年、30年、あるいはそれ以上続くのであれば、ポートフォリオに十分な株式を組み入れるべきでしょう。
しかし、このライフステージで特に注意すべき重要なことは、いわゆる「シークエンス・リスク(順番リスク)」が、退職初期における最大の敵となるということです。もし退職後すぐに市場環境が悪化し、ポートフォリオの少なくとも一部をリスク低減する措置を講じていなければ、急速に価値が下落していく株式ポートフォリオから必要な資金を取り崩すしか選択肢がなくなるため、本当に困った状況に陥ります。これを避けるために、退職が近づいてきたら、5年から10年分の生活費に相当するポートフォリオを、より安全な資産、つまり高格付けの短期債・中期債の組み合わせなどで積み立てていくことをお勧めします。
そして、もし退職が目前に迫っているなら、2022年のように株式と債券が同時に下落するような事態に備えて、ポートフォリオにある程度の現金を保有しておくのが賢明でしょう。
退職後の人:ボラティリティの激しい市場から資産を守る方法
ジャイルズ:なるほど、株式ポートフォリオが下落後に回復するまで待つ間、より安定した資産や現金から取り崩せるように備える必要があるということですね。では最後に、すでに退職されている人について考えましょう。ここでは、資産の引き出しが主題となると思いますが、生活費のためにポートフォリオから資金を引き出す際に、どのような点に注意すべきでしょうか?
ベンツ:このライフステージでは、変動の激しい市場から身を守るための手段がいくつかあります。
その一つが、先ほどお話しした資産配分です。より安全資産の割合を一定に維持し、必要に応じて補充することが重要です。もしそこから積極的に取り崩しをしているなら、補充する必要があります。理想的には、年に1回、年末に少しメンテナンスを行い、ポートフォリオから支出を行った結果、安全資産の価値が下落している場合は、資金を補充して元に戻すことが望ましいでしょう。
一方、退職後に極めて厳しい市場環境が訪れた場合には、資金を引き出している最中であっても、もう一つの防御策があります。これについてはこれまで何度も記事や講演で触れてきましたが、困難な時期には可能な限り少しでも支出を抑えることができれば、市場が最終的に回復した際に、その回復力を支えるための「老後資金」を守ることができるのです。
ジャイルズ:そうですね。ライフステージという観点から考えると、とても参考になります。クリスティン、時間をいただきありがとうございました。
ベンツ:マーガレット、こちらこそ、どうもありがとう。
ジャイルズ:モーニングスターのマーガレット・ジャイルズでした。ご視聴ありがとうございました。◇
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