<重要なポイント>
- 働き盛りで資産形成に取り組んでいる方にとっては、株式への配分の中で、大きな偏りが無いか目を光らせておくことが重要です。単一銘柄への投資比率が5%から10%になる場合は、偏っていると判断できます。
- キャリアの中盤にある多くの人にとって、3~6か月分の生活費を流動性の予備資金として確保しておくことは良い目標です。ただし、高収入の方は、より多くの流動資産の余裕を確保することを目指すべきでしょう。
- 退職が近づいている方は、自身の退職資産の保有配分が適切な水準にあるかどうかを測る目安として、(退職時期と同時期をターゲットとする)ターゲット・デート・ファンドの資産配分が良い参考になります。
- 退職後の方が流動資産の確保を計画する場合、「バケツ方式」の考え方がポートフォリオを期間別に区分するのに役立ちます。
- どのライフステージにある投資家でも、ポートフォリオにかかるコストをチェックして、過剰な手数料を支払っていないか確認する必要があります。
マーガレット・ジャイルズ:こんにちは。モーニングスターのマーガレット・ジャイルズです。株式市場が不安定な状況にある今、モーニングスターのクリスティン・ベンツは、ポートフォリオのリスク診断を行う絶好の機会だと考えています。今回は、その具体的な方法についてお話しを聞きたいと思います。クリスティン、どうぞよろしくお願いします。
クリスティン・ベンツ:マーガレット、貴重な機会をいただきどうもありがとう。
ボラタイルな市場で、資産形成に取り組む:キャリア初期~中堅世代にとって資産配分上のリスクとは
ジャイルズ:クリスティンは、注意すべきリスクの種類は、その人のライフステージによって大きく異なると考えておられますよね。では、まず退職まで10年以上ある方、つまりキャリア初期~中堅世代の資産形成を行っている方について伺います。彼らはポートフォリオにおいて、どのような点に注意すべきでしょうか?
ベンツ:この世代の人は、たいてい株式に大きく比重を置いていますが、特に20代・30代・40代の方にとって、それは問題ありません。むしろ適切な資産構成だと思います。ただし、株式の中で『大きな賭け』をしていないかと言う点には注意を払うべきだと思います。今日、よく見られるのは、スタイルボックスの「大型成長株」の領域に大きく偏っているケースです。もちろん米国株市場は「大型成長(グロース)株」にかなり集中していますが、スタイルボックス全体にわたる分散投資が必要で、割安(バリュー)株も保有すべきです。また、中型や小型株も保有したほうがいいでしょう。さらに、ホーム・バイアス(自国市場への偏り)にも注意を払う必要があります。
米国の投資家にとって最も抵抗の少ない投資法は、単に米国株式をそのままずっと保有し続けることでしたが、最近では市場はやや違う方向へと動きつつあります。米国以外の株式の力強い上昇がみられます。ですから、グローバルな投資という観点で分散方法を探している人は、現在の世界の株式の時価総額を見るといいでしょう。約60%が米国、約40%が米国以外となっています。これは資産形成世代の人にとって、非常に良いベンチマークになると思います。米国以外の株式への投資比率を増やせば、大型成長株への集中投資の解消にも役立ちます。つまり、ポートフォリオの地理的な分散を見直すことで、一石二鳥の効果が得られるわけです。
個別企業の株式の場合、どのくらいで集中投資になるのか?
ジャイルズ:先ほど、集中投資リスクについて触れられ、個別株に投資している場合には注意が必要だとおっしゃいましたね。単一銘柄への投資比率は、どの程度で「多すぎる」と思われますか?
ベンツ:そうですね、1企業への投資比率が5%から10%程度になると、かなり高いと言えるでしょう。特に、個人投資家が個別株だけでなく、投資信託やインデックス・ファンド、ETFも利用している場合は、少し調べてみることをお勧めします。
実際に個人のポートフォリオを見ると、保有している株式がファンドの構成銘柄とひどく重複していることがよくあり、その結果、本人の想定以上に集中投資のリスクが高くなっている場合があります。また、集中リスクのもう一つの大きな要因として、勤務先の株式があります。多くの人が勤務先の株式をインセンティブとして受け取ったり、購入を促されたりしていますが、集中リスクの大きな原因になりかねないので、これには注意が必要です。あなたの経済的基盤は勤務先からの給与に大きく依存していることをしっかり認識する必要があります。その上で勤務先の株式に過度に投資すれば、生活と資産、両方で同じリスクを抱えて人生のリスクを増幅させてしまいますから、意識をして避けたいことです。
ジャイルズ:それはチェックする価値がありますね。
キャリア中盤の資産形成者にとっての流動性予備資金について
ジャイルズ:さて、流動性資産についても確認する良い機会だと思います。もし私が現役で仕事をしていて、退職までにまだ時間がある場合、日常的にどれくらいの流動性資産を確保しておくべきでしょうか?
ベンツ:それは重要なポイントです。一般化して言うなら、3か月~6か月分の生活費を目標にしておくのが良いと思います。ただ、世帯の稼ぎ手が一人だけという場合や、収入が標準より多いという場合もよくあります。そのようなケースでは、私ならおそらく、もっと多くの流動性の予備資金、おそらくは1年分の予想支出相当額を目標とするでしょう。重要なのは、住居や車、ペットなどに関する予期せぬ出費はもちろんですが、予期せぬ失業に対しても確実に身を守るということです。
また、この点に関連してもう一つ付け加えるならば、若い世代は、一般に退職後のためだけに貯蓄をしているわけではありません。彼らには、短期や中期の目標もあります(※)。ですから、たとえ若い方であっても、短期的な支出や中期的なニーズを満たすために、株式よりも少し安全な資産に資金を確保しておくことが重要です。つまり、その資金、あるいはポートフォリオのその部分の運用期間が、例えば5年未満、あるいは10年未満である場合は、株式市場ではない場所に資金を置いておくほうがいいでしょう。現金と短期・中期債を組み合わせた形で保有するのが望ましいと思います。
※ 子供の入学や教育資金、住み替えや車の買い替えなどライフイベントに必要な資金など
ジャイルズ:そうですね。そうした中・短期的な資金の需要という視点は、往々にして見過ごされがちだと感じます。
変動性の高まる市場で、退職に備える:リタイアメントを控えた世代のポートフォリオリスクとは
ベンツ:周りの人は私が若いと思ってくれているので、私のポートフォリオも若く見えるべきだと考えているようですが、必ずしもそうとは限りません。
ジャイルズ:その通りです。それでは、退職を控えている人について考えてみましょう。リスクの観点から、彼らはポートフォリオの資産配分をどのように評価すべきでしょうか?
ベンツ:そうですね、この点において、ターゲット・デート・ファンドは、退職資産の資産配分が適切な水準にあるかどうかを測るための、手軽で実用的なベンチマークになるでしょう。例えば2040年、つまり今から約15年後に退職する人を対象としたターゲット・デート・ファンドを見ると、現在の株式比率は約75%です。この75%の部分も世界に分散投資されていますが、時間経過とともに債券の保有比率が徐々に増えていきます。
私が特に注目している統計の一つは、米国の平均退職年齢が現在は62歳だということです。中には予定より早く(資産形成の)目標額を達成して、もっと早く退職して幸福な生活を送る人もいます。一方で、できればもっと長く働き続けていたいと考える人もいるでしょう。つまり平均は目安であって、個人の希望や事情もあるわけです。
年齢を重ねるにつれて、より安全な資産や予備的に使える資産を増やしていくという考え方は、『未来を完全に予測することは不可能だ』という事実に基づいています。健康上の問題やリストラなど、様々な事情で予想よりも早く仕事を続けられなくなる可能性もあります。
ですから、50代、そして間違いなく60代前半にかけては、より安定的な資産への投資比率を高めていくべきだということです。何故なら、万が一、退職後の初期の時期が株式市場の低迷期と重なった場合でも、安定的な資産から資金を引き出せるようにしておく必要があるからです。
退職者は安全な資産をどれくらい保有すべきか?
ジャイルズ:なるほど、あなたも退職者が流動性資産を保有すべきだとお考えなのですね。では、彼らにとってどのくらいの額があれば十分なのでしょうか?
ベンツ:ええ、これは私がよくお話ししている「バケツ方式」とよぶ戦略です。ポートフォリオを資金需要の時間軸で分割する手法です。私は、ポートフォリオから支出する金額の1~2年分を安全資産で保有することを推奨しています。
少し計算をしてみましょう。総支出額から、社会保障や年金からの収入を差し引くと、残った金額がポートフォリオからの支出額となります。その金額に、安全のための予備資金として妥当と思われる年数を掛けます。こうして、最低でも5年分、最大で10年分程度を、流動性資産や中期・短期債の組み合わせで保有するのが理想的だと考えています。ですから、流動性資産(安全資産)として1~2年分の資金を確保しておき残りを債券ポートフォリオで持つというのが、多くの退職者にとって良い目安になると思います。
全ての人に重要な、市場変動期におけるコストチェックの実施方法
ジャイルズ:最後に、あらゆるライフステージの人にとってコストの確認が重要だとお考えですよね。具体的にはどのような点に注目すべきでしょうか?
ベンツ:その通りです。ご自身の保有資産を見直してみてください。手数料を払い過ぎていないか確認しましょう。
インデックス・ファンドやETFを利用すれば、手軽にコストを抑えることができます。債券投資や債券ファンドを見ると、リスクの取り方とコストの間にはかなり明確な相関関係があります。つまり、高い経費率が足を引っ張っている高コストのファンドは、その分のリターンを稼ぐだけのためにも、余分なリスクを取らざるを得ないのです。ですから、ポートフォリオに安定的な資産として債券ファンドなどを保有している場合、高い運用コストを補うために余分なリスクを取らざるを得ない状況を避けるためにも、コストを削減することが絶対に必要です。
まずはファンドの経費を確認しましょう。自分がいくら支払っているかは、経費率などを見れば簡単に調べられます。また、今まで何度も議論してきましたが、税務コストにも注目してください。資産の置き場所、つまりどんな種類の資産を保有しているか、またどのような口座区分で管理しているかにも、十分にご注意ください。
理想を言えば、税制上の優遇措置が受けられない課税対象口座の場合、税効率の悪いファンドを保有していないか確認する必要があります。つまり、多額のインカムや大きなキャピタルゲインの分配が発生するような資産は、できるだけ課税対象講座で保有しないことを確認すべきです。課税対象口座内では、それらを最小限に抑えるよう努めるべきです。
そして最後に、ファイナンシャル・アドバイスに支払っている金額について考えてみましょう。ファイナンシャル・アドバイスにお金を払うことは、十分に価値のある支出になり得ると、私自身が真っ先に主張する一人ですが、その対価に見合った価値が得られているかどうかを確かめる必要があります。
ですから、もし誰かにアドバイスを受けるのであれば、単にポートフォリオの話だけで終わるのではなく、あなたの人生設計全体についてアドバイスを受けるべきです。そのファイナンシャル・アドバイスに実際にいくら支払っているのか、ざっと計算してみて、その出費に見合う価値があるかどうか、確かめてください。
ジャイルズ:なるほど。コストとリスクの両面で、注意すべき重要なポイントを把握しておくことは大切ですね。クリスティン、時間をいただきありがとうございました。
ベンツ:マーガレット、こちらこそありがとうございます。
ジャイルズ:モーニングスターのマーガレット・ジャイルズでした。ご視聴ありがとうございました。
※ 本稿はモーニングスターのビデオコンテンツ「A Life-Stage Guide to Volatile Markets」のスクリプトをモーニングスター・ジャパンが翻訳したものです。原文と翻訳に相違がある場合は、原文が優先されます。
クリスティン・ベンツとマーガレット・ジャイルズによる「納税期限の準備はできていますか?申告前に知っておくべきこと」をご覧ください。

