投資家が低コストでポートフォリオを広く分散する最も手軽な方法の一つは、上場投資信託(ETF)である。
米国において資産規模が最大のETFはSPDR® S&P 500® ETF Trust SPYとVanguard S&P 500 ETF VOOの2つで、いずれもS&P 500種指数に連動を目指すパッシブ運用を行っている。
S&P500種指数は、米国株式市場の約80%に相当する米国の大手企業の株式約500銘柄を選び、時価総額をもとに算出している。(ただし、エイミー・アーノットが指摘するように、この指数に採用されるには他にも様々な基準を満たす必要がある)。多くの投資家はS&P500を米国市場全体のパフォーマンスを代表するものだと思って見ているが、大型企業のパフォーマンスのみを表していることに注意する必要がある。
さて、SPYとVOOを詳しく見て、どちらのS&P500連動ETFが投資家にとってより良い選択なのかを確認してみよう。
SPYとVOOは同じ戦略をとっている
モーニングスターでこの2つのETFの調査を担当するのアソシエイト・アナリスト、ブレンダン・マッキャンによれば、両ETFの運用戦略の根幹は(指数が採用している)時価総額加重にあるという。
「時価総額に基づく配分比率は、各保有銘柄の相対的な価値を市場という集合的な知恵を利用して計るもので、回転率が低く、取引コストが安いという利点がある。「市場は大型株式の値付けをうまく行う傾向があるため、これは賢明なアプローチです」とマッキャンは言う。
マッキャンは時価総額加重のアプローチを好むが、同時にこの戦略に潜在的なリスクがあることは認めている。
「市場が高く評価する少数の企業やセクターが市場上昇の大半を占める場合、株式時価総額ウェイトは、特定企業の株式や業種レベルの集中投資になるリスクにさらされる可能性があります」とマッキャンは指摘する。
「2024年末時点で、S&P500指数の組入銘柄上位10社が同指数に占める割合は、過去数十年で最大(37%)であり、テクノロジー株式への配分は34%(※同社の開示によると2025年4月9日時点では30.23%)と、ドットコム・バブル以降で最高となりました」。
「しかし、これは同指数の設計上の欠陥ではありません。S&P500は単に市場の構成を反映しているに過ぎないからです。長期的には、幅広い分散投資、低回転率、低手数料がこれらのリスクを十分カバーするでしょう」。
SPY対VOO:どちらのETFがより良いのか
モーニングスター・メダリスト・レーティングがその答えの一助となるだろう。
モーニングスター・メダリスト・レーティングは、投資戦略に関する将来性を加味した分析の概要を表すものである。レーティングは「金(Gold)」から「中位(Neutral)」、「下位(Negative)」までの5段階評価で示される。上位3つの「金(Gold)」、「銀(Silver)」、「銅(Bronze)」のレーティングは、投資商品(ファンドやETF)が長期的にモーニングスター・カテゴリー指数またはカテゴリー中央値に対して、リスク調整後ベースでアウトパフォームするとモーニングスターのアナリストが予想していることを示す。
以下はSPYとVOOに関するモーニングスターによるレーティングである:
SPYとVOOの主要指標
バンガード S&P 500 ETFに軍配が上がる
SPYもVOOも5つ星という高いモーニングスター・レーティングを獲得している。「ファンドの手数料は非常に安く、それこそが両ファンドの長期的な成功の秘訣です」とマッキャンは説明する。
2つのETFは同じS&P500指数に連動する戦略に従っているが、モーニングスタ・メダリスト・レーティングは異なっている。VOOはメダリスト・レーティングで最上位の「金(Gold)」を獲得しているが、SPYは2番目のランクの「銀(Silver)」である。
マッキャンによれば、その理由はSPYのETFとしての仕組みに起因する非効率性と、手数料の違いにあるという。
SPYは(※1993年1月に設定された米国初の上場投資信託であり)、ETFの初期に採用された形式であるユニット・インベストメント・トラスト(※)としてスタートしたため、他のETFが利用できる基本的な運用を行うことができない。
例えば、SPY のマネジャーは配当金を再投資したり、デリバティブを利用してキャッシュを株式化したり、ファンドに小刻みに追加インカムをもたらす証券の貸株取引を行うことができない。これらの慣行は多少のリスクを伴うものの、それは非常に限定的だ。モーニングスターのアナリストは、このような組成上の非効率性から、投資家にとってSPYよりVOOを選択する方が、ごく小さな、しかし明確な利点があると見ている。
※ Unit Investment Trustは固定的な有価証券のポートフォリオを保有するもので、配当金を再投資せず現金で留保する仕組み。
手数料に関しては、VOOは0.03%、SPYは0.0945%である。その差はわずかかもしれないが、あえて現金をテーブルの上に置きっぱなしにする理由はない。他のすべての条件が同じなら、手数料の安いETFの方が投資家の利益に合致している。◇
※ 本稿は、情報提供のみを目的としており、特定の金融商品、銘柄などを推奨するものではありません。投資における判断は、ご自身の投資目的、投資期間、資金性格、投資への姿勢などを勘案して、ご自身の責任において慎重に行ってください。

