自分にぴったりの取崩し率戦略を見つける方法

以下の6つのステップで、自分に合った支出管理方法を見つけましょう

アイコンや図形を組み合わせた、クリスティン・ベンツのフォトコラージュイラスト

「4%引き出しルール」は、退職後の資産取り崩しの文脈でよく引用される目安です。また、退職後の貯蓄が十分かどうかを判断する上で、良い出発点となります。

しかし、これはあまりにも大雑把な指標です。市場における最悪のシナリオを想定して作られており、ほとんどの退職後の期間において、そのような最悪のシナリオは現実には起こりません。低い取崩し率から始めて変更せずに続けていると、ほとんどの退職後の期間を極端な緊縮支出で過ごすことになる傾向があります。

さらに、4%ルールのように、退職者が毎年インフレ調整後で同じ額だけ引き出すという考え方は、現実的ではありません。なぜなら実際の支出は変動があり、年齢を重ねてもインフレ率に合わせて増加する傾向はありません。また、引き出し額を決めるときにポートフォリオの残高を気にかける人も多いと思いますが、それは誰にとってもごく自然なことです。私の著書『How to Retire』でジョナサン・ガイトンが指摘しているようにこれは経済的な観点から見て最善の行動と合致する、稀有な衝動です(人はたいてい経済的な合理性に反する行動を取るものなので)。

モーニングスターが毎年調査している『退職後の収入の状況』における主要な結論の一つは、退職者とそのファイナンシャル・アドバイザーは、それぞれの人の目標、個人の特性、資産配分を考慮した引き出し計画を作るべきだということです。

以下に、実効に役立つ重要な手順を紹介します。

ステップ1:目標を明確にする

退職後の資産からの引き出しを最大限に活用したいと考えるか、それとも人生の終わりに相続のために残すことを最優先事項とするか?退職後の資産引き出し計画では、この2つの目標は相反するものです。

ポートフォリオの資産額が下がっているときは引き出し額を抑え、大きく値上がりしているときや年齢を重ねるにつれて引き出し額を増やすという「動的な引き出し」方式なら、当初の引き出し額を少な目に設定し、インフレ分だけ調整して引き出し続ける基本的な戦略よりも、生涯引き出せる総額はより多くなる可能性が高くなります。

私たちの退職後の支出に関する調査では、生涯の引き出し額を大幅に増やす可能性のあるいくつかの戦略が目を引きました。ポートフォリオの成功確率を毎年確認し、必要に応じて引き出し額を増減して調整を行う「確率ベースのガードレール戦略」は、調査対象としたどの戦略よりも、生涯引き出し額が多くなりました。また、ポートフォリオの評価額を平均余命で割る「RMD(必要最低引出し額)方式」(※一定年齢に達したら毎年必ず一定額以上年金から引き出さなければならない、RMDを模したもの)も、生涯の引き出し額を増加させました。

一方、固定の実質引き出し額(「基本シナリオ」)と、退職者の「実際の支出パターン」に基づいた戦略(これはインフレ率よりも少ないペースで支出を増やし、退職者の実際の支出パターンに沿ったものです)では、正反対の結果になりました。つまり、生涯引き出し額が最も低く、30年後の残高の中央値が最も高く、より多く残せました

しかし、引き出し額を抑えることで資産を残そうとするのは、相続のための資金を確保する上で最善かつ最も効率的な方法ではないということにも留意すべきです。たとえば、退職後に資産取り崩しをしている最中にマーケットが低迷した場合、十分な資産を残せるとは限りません。退職後の支出ポートフォリオから遺贈資金を切り離し、例えば「最後の資金」としてあらかじめ確保しておけば(クリスティンの「バケツ」戦略です)、より直接、確実に最期に資産を残せます。

ステップ2:引き出し額がどの程度変動してもよいかを明確にする

もちろん、タダで得られるものなどありません。生涯にわたる引き出し額は増えますが、「動的引き出し」方式には暗黙の欠点があります。それは、定期的に引き出し額を調整しなければならないということです。動的引き出し方式は戦略によって、調整の額と頻度がごく少額でごく時たまでよいものから、より頻繁で大きな額のものまで様々です。

安定したキャッシュフローを求める人にとっては、たとえ生涯引き出し額を抑えることになるとしても、「基本シナリオ」の定率引き出し方式のような方法が最適かもしれません。この方法なら、実質的な引き出し額が年ごとに変動することはありません。一方「実際の支出パターンベース」の方式は、実質的な引き出し額が毎年わずかに減少しますが、変動はごくわずかです。また、「インフレ調整を省く」方式も、引き出し額の変動は最小限に抑えられます。この方式は、ポートフォリオの資産額が下落した翌年は引き出し額にインフレ調整を行わないというものです。この方式における引き出し額の調整は、名目引き出し額を減らすのではなくインフレ調整を見送るだけなので、変動幅は小さいわけです。この戦略であれば、基本シナリオと比較して、初期の引き出し率をわずかながら増やすことができます。

一方、私たちが検討した戦略の中には、キャッシュフローの変動幅がより大きいものもあります。例えば、「RMD法式」は、調査した戦略の中で最も生涯引き出し額が多くなるものの、年ごとの引き出し額の変動が非常に大きいという特徴があります。こうした変動は、プラスになる面もあれば(ポートフォリオの価値が上昇すれば、高齢になるにつれて、退職者はより多くのお金を使うことができるようになります)、マイナスになる面もあります(ポートフォリオの運用が悪化した後は、平均余命が延びて引き出し額の減少が緩和されない限り、退職者は引出し金額を減らさざるを得なくなります。)。

どの程度の引き出し額の変動が許容できるかを判断するときには、ポートフォリオ以外の収入源が全体の支出に占める割合を考慮しましょう。社会保障や年金などの収入源で支出ニーズのかなりの部分を賄っているなら、ポートフォリオからの引き出し額に変動があっても必要な支出の一部にしか影響しないため、より大きな変動にも耐えられるでしょう。住居費、保険料、光熱費、食費などの固定費用項目を、固定収入源と連動させるという考え方も良いと思います。一方、社会保障や年金だけではこれらの支出に足りない場合、低コストの基本的な定額年金保険を活用して差額を補うことも有効な手段です。

ステップ3:退職後のグライドパス戦略を検討する

もう一つ考慮すべき点は、退職後の年月の進行につれて支出がどのように変わると予想するか、グライドパスを考慮して引き出し戦略を検討することです。あなたは退職後の初期段階の活動的な時期には、より多くの支出をするでしょうか?データによると、ほとんどの退職者はこのパターンをたどります。前述の通り、「実際の支出パターン」方式はこの傾向を反映するものですが、同時にこの方法は、検証したどの引き出し戦略よりも生涯の引出し総額が少なくなる要因にもなっています。それとは逆に、「RMD方式」のシステムでは、平均余命が短くなるにつれて引き出し額が増える傾向があります。

さらに、外的な要因によって支出がどのように変化するかも考える必要があります。社会保障の受給開始時期は重要な要素です。社会保障の受給を遅らせることは、生涯収入を増やす最良の方法の一つです。しかし、退職から社会保障の受給開始までの間、ポートフォリオからの引出しが唯一の収入源となる場合、退職後の引き出しについての意思決定でジレンマが生じます。

一方で、「柔軟な戦略」を採用することは、このシナリオにおける主要なリスクである「シークエンス・リスク(※)」に対抗するための確実な方法です。一方で、その期間中に他の収入源がない場合でも、支出を大幅に減らすことは受け入れがたいかもしれません。社会保障の受給開始を待つ間、仕事や賃貸物件などの収入がない退職者にとっては、例えば5年分の支出をカバーする米国物価連動債(TIPS)を満期をずらして保有するラダー戦略など、何らかの「つなぎ」戦略を活用することは有効でしょう。

※ Sequence of Return Riskは「順序リスク」とも言われ、退職後の初期に保有資産額が大きく減少するような市場変動に見舞われると、資産が初期に減少することで生涯収益額が打撃を受け(資産寿命が短くなる)るが、同様の下落が退職後期に起きても打撃はそこまで大きくないことを指す。平均リターンが同じでも、市場変動の「順序」によって投資資産への打撃が異なるリスク。

ステップ4:許容できる成功率を決定する

引き出し計画においてあまり議論されない点の一つは、どのような「成功率」を採用するかということです。私たちの研究では90%の成功率を目標としています。つまり、ある引き出し方法とその割合について、1,000回のモンテカルロ・シミュレーションのうち900回で、退職後の取り崩し期間の終了時に少なくとも1セントが残っていれば、その成功率は90%となります。

これはリスクが高すぎるように聞こえるかもしれませんが、100%の成功率を目標とすると、初期の引き出し率が非常に少なくなってしまいます。例えば、30年の期間を想定した場合、成功率90%の基本シナリオの引き出し率3.9%に対し、わずか2.5%となります。また、100%の成功率を目標とすることは、非常に保守的な資産配分につながることも示唆しています。

一方、成功率の低下を許容する姿勢は、初期の引き出し率の上昇につながります。例えば、成功率を80%で想定すると、当社の基本シナリオにおける初期の引き出し率は4.4%に跳ね上がり、70%の場合には5.0%となります。理想的には、初期の成功率を低く設定する退職者は、成功確率が致命的なほど低下していないことを確認するために、定期的に成功確率をチェックする引き出し方法を採用するべきでしょう。

「確率ベースのガードレール」方式はまさにそれを実現するもので、毎年成功確率を測定し、方針の修正が必要かどうかを判断します。この手法を成功確率75%の閾値で適用したところ、当社の検証では素晴らしい結果が得られ、極端なキャッシュフローの変動を伴わずに、生涯を通じて最高の取崩し率を実現しました。

ステップ5:投資期間と資産配分を考慮する

ここまでは、目標や希望を明確にすることについてお話ししてきました。それに加えて、投資期間やポートフォリオの資産配分についても考慮する必要があります。

まずは、予定している退職日から死亡年までの年数を把握することから始めましょう。退職後の生活期間が長いほど、当初の引き出し率は低く設定すべきです。一般的な計画の目安は30年ですが、50代で健康な状態で退職される方は、少なくとも35年または40年を目標とすべきです。ご夫婦の場合は、より若い方の、あるいは寿命が最も長い方の平均余命を使用してください。個人の健康状態や家族の寿命の傾向を反映した平均余命計算ツールは、オンラインで探すことができます。

ポートフォリオの資産配分も重要な要素となります。長期的には通常、株式が債券を上回るパフォーマンスを示すことを考えると、やや直感に反するかもしれませんが、一般的に、最も高い安全な引き出し率は、最も高い株式比率とは一致しません。最も保守的な引き出し方法――当社の基本シナリオのようにキャッシュフローの安定性を重視するもの――は、株式比率を低く抑えることを推奨しています。なぜなら、債券は長期的な期待リターンは低くても、より安定した収益をもたらすからです。2025年の調査では、株式の比率がわずか20%から40%のポートフォリオが、30年間の期間において、基本シナリオの引き出し計画で最も高い安全な引き出し率を実現しました。

一方、初期および生涯の引き出し額は高くなるものの、引き出し額の変更頻度が高くなる戦略は、株式の比率を高める傾向があります。

ステップ6:「自分に続けられるか?」と自問してみる

最後に、理論上は最も優れているように見える引き出し方式が、自分が実際に継続できるものかどうかを検討することが極めて重要です。「4%ルール」が広く一般化したのには理由があります。実行方法が極めてシンプルだからです。インフレ調整を省く方法、実際の支出に基づく方法、RMD(最低引き出し額)方式、一定割合方式といった他の戦略も、同様に非常に分かりやすく、実践するのに公認ファイナンシャル・プランナーの助けを借りる必要はありません。 一方、引き出しに上限と下限を設ける「2つのガードレール戦略」やバンガードの「天井・床法式」といった他の引き出し戦略は、特に高齢になるにつれて、計算のサポートをしてくれるファイナンシャルプランナーを頼りにできる退職者に最も適している傾向があります。◇

※ 本稿はモーニングスターの「How to Find Your Perfect Withdrawal Rate Strategy」をモーニングスター・ジャパンが翻訳したものです。原文と翻訳に相違がある場合は、原文が優先されます。

著者はこの記事で言及されたいかなる有価証券も保有していません。詳細はこちらをご覧ください: モーニングスターの編集方針