これまで5回にわたって、日本株、米国株、世界株式の代表的な指数を取り上げ、その仕組みや特徴、評価のポイントを紹介してきました。今回は、指数を使って実際に運用を行う運用会社について解説します。具体的には、モーニングスターのアナリストが実際に調査・評価している国内の運用会社を取り上げ、各社のインデックス運用の体制や特徴、評価、主な商品ラインアップを紹介します。
モーニングスターが見るインデックス運用の体制とプロセス
インデックス・ファンドの評価は、連動対象となる指数だけで完結するものではありません。どれだけ優れた指数でも、実際に投資するファンドがその指数にきちんと連動できていなければ、投資家はその指数の良さを十分に享受することはできません。この点で、運用会社における運用体制やプロセスは、実際のファンドが指数へどれだけ安定して連動できるかという点で重要な要素となります。
インデックス・ファンドでは、日々の資金の出入りや指数の構成変更に対応しながら、指数との乖離や組入銘柄の売買コストを抑えることが求められます。モーニングスターでは、運用を支える体制とプロセスについて、以下のような点を確認しています。
インデックス運用の体制とプロセスに関する主な確認項目
| 確認する分野 | 主な投資対象 |
|---|---|
| 運用体制 | 運用チームの人員や経験、役割分担、バックアップ体制 |
| 運用システム | ポートフォリオ管理、売買案の作成や発注などにおける、自動化と運用担当者による判断の組み合わせ |
| ポートフォリオの構築 | 指数構成銘柄のファンドへの反映方法、指数の定期見直しや構成銘柄の変更への対応 |
| 資金管理と売買執行 | ファンドへの資金の出入りに応じた組入銘柄の売買、売買コストや市場への影響の管理 |
| モニタリングとリスク管理 | 指数とのリターンの差やそのばらつきの把握・分析、乖離を抑えるための対応、運用部門から独立した部門による確認体制、証券貸付を行う場合の取引相手や担保に関するリスク管理 |
| コストと収益還元 | 信託報酬などの費用水準、証券貸付による収益のファンドへの還元 |
指数への連動を支える主な仕組み
指数の再現方法
指数への連動を目指す方法には、「完全法」や「最適化法」などがあります。
「完全法」は、原則として指数のすべての構成銘柄を指数と同じ比率で保有する方法です。指数の構成をそのまま反映しやすい一方、銘柄数が多い場合や流動性の低い銘柄を含む場合には、売買の手間やコストが増えることがあります。
「最適化法」は、指数の値動きやリスク特性に近づけるよう、保有銘柄や組入比率を調整する方法です。流動性の低い銘柄の売買などを抑えやすい一方、ポートフォリオが指数の構成と完全には一致しないため、指数とのずれが生じる可能性があります。
どの方法が一律に優れているというわけではありません。指数の構成や流動性、ファンドの規模に応じて適切な方法は異なり、指数への安定した連動を実現できているかが重要です。
売買コストの抑制
インデックス・ファンドでは、指数の定期見直しやファンドへの資金流出入に合わせて、組入銘柄を売買します。売買では、手数料や市場価格への影響によるコストが生じ、ファンドの運用成果を押し下げる要因となります。そのため、運用会社は取引のタイミングや方法を工夫し、市場価格への影響を抑える必要があります。
たとえば、社内のトレーダーとリバランス時の取引条件を事前に調整するほか、ブローカーと直接交渉したり、複数の注文を集約したりする取り組みがあります。運用判断と売買執行を分け、専任のトレーディング部門が執行を担う運用会社もあります。指数の構成変更時には、市場への影響を見ながら、売買の時期や数量、執行方法を調整します。指数の構成や銘柄の流動性によって、必要となる売買上の対応も異なります。
運用規模の活用
複数のファンドの資産をひとつのマザーファンドに集約することも、運用効率を高める方法のひとつです。同じ指数への連動を目指す複数の商品をまとめて運用することで、個々のファンドを別々に運用するよりも売買を集約しやすくなり、運用規模を生かした効率化が可能になります。海外株式インデックス・ファンドでは、公募投信やETFを含む複数の商品がマザーファンドを通じて運用される例があります。
また、保有株式を貸し出す証券貸付を行う場合には、得られた収益をどの程度ファンドに還元しているかに加え、取引相手や担保に関するリスクをどのように管理しているかも重要です。運用規模はコスト効率や収益機会につながる一方、それを投資家の利益に結びつける仕組みまで確認する必要があります。
証券貸付(レンディング)
保有する株式などの一部を証券会社などに貸し出し、品貸料を受け取る取引です。得られた収益の一部はファンドに還元され、投資家の実質的な負担を軽くする効果があります。海外では広く使われている手法で、国内でも取り組みが広がりつつあります。
一方で、貸出先が破綻して株式が返ってこないリスクがあるため、運用会社は取引相手の信用力を確認し、貸付評価額を上回る担保を受け入れるなどの管理を行っています。確認すべきは、得られた収益をどの程度ファンドに還元しているか、また信用リスクをどのように管理しているかの両面です。
運用会社によって、何がどう違うのか
今回紹介するのは、モーニングスターのアナリストがカバーする国内の大手運用会社です。各社は、経験ある運用チームに加え、売買執行やリスク管理、担当者不在時のバックアップ、システムや自動化など、指数への安定した連動を支える体制を整えています。これらの点を踏まえ、各社の株式インデックス運用に対する運用担当者評価はいずれも「平均以上」となっています。以下では、各社が提供する主なファンドと、その運用を支える体制やプロセスの違いを見ていきます。
ただし、力を入れてきた分野や商品の広がり方は各社で異なります。まずは各社の顔ぶれを簡単に押さえたうえで、実際のファンドラインアップを見ていきます。(運用会社50音順)
アセットマネジメントOne
低コストの「たわらノーロード」シリーズを軸に、国内株式から先進国株式、全世界株式まで幅広い指数をカバーしています。運用チームと、売買執行や日々の資金管理を担う部門の役割を分け、運用担当者がポートフォリオ管理に注力できる体制を整えています。
アモーヴァ・アセットマネジメント
国内ETF市場の草分けとして知られ、インデックス運用の経験を長く積み重ねてきました。公募投信では「インデックスファンド」シリーズのほか、全世界株式の「Tracers」などを提供しています。 経験豊富な運用チームを中心に、システムによる効率化と、指数の構成変更時などにおける運用担当者の判断を組み合わせています。
野村アセットマネジメント
ETFの「NEXT FUNDS」シリーズに加え、「はじめてのNISA」シリーズなど、幅広い投資家層に向けた商品をそろえます。株式インデックス運用を資産クラス全体で一貫して手掛け、多数のファンドを支える運用体制とシステムを備えています。
三井住友トラスト・アセットマネジメント
国内最大級のインデックス運用チームを抱え、「My SMT」「SMT」シリーズで国内株式・先進国株式を中心に商品を展開しています。国内最大級の株式インデックス運用チームを擁し、経験豊富なメンバーによる役割分担とバックアップ体制が安定した運用を支えています。
三菱UFJアセットマネジメント
「eMAXIS Slim」シリーズを中心に、S&P500や全世界株式などの代表的な指数に連動する商品を幅広く提供しています。チーム運用とシステムを活用して規模の大きなファンドを管理するほか、証券貸付の対象拡大など、費用以外の面でも投資家への還元を図っています。
対象運用会社の主なファンド
ここからは、今回取り上げる運用会社が、どのようなインデックスファンドを提供しているかを見ていきます。同じ指数に連動する商品でも、運用会社によって商品規模や費用水準は異なります。以下では、TOPIX、日経平均株価(日経225)、JPX日経インデックス400、MSCIコクサイ、MSCI ACWI、MSCI ACWI(除く日本)に連動する各社の公募投信のうち、購入可能で相対的に費用水準の低い代表的なファンドを取り上げ、純資産総額と総経費率を示します。
<TOPIXに連動するファンド>
| ファンド名 | 運用会社 | 総経費率日付 | 総経費率 | 純資産総額 (億円) |
|---|---|---|---|---|
| たわらノーロード TOPIX | AMOne | 10/14/2025 | 0.19 | 389 |
| インデックスファンドTOPIX(日本株式) | アモーヴァ | 02/12/2026 | 0.48 | 469 |
| はじめてのNISA・日本株式インデックス(TOPIX) | 野村 | 06/03/2026 | 0.14 | 97 |
| My SMT TOPIXインデックス(ノーロード) | 三井住友トラスト | 10/20/2025 | 0.17 | 282 |
| eMAXIS Slim 国内株式(TOPIX) | 三菱UFJ | 04/27/2026 | 0.14 | 8,161 |
<日経225に連動するファンド>
| ファンド名 | 運用会社 | 総経費率日付 | 総経費率 | 純資産総額 (億円) |
|---|---|---|---|---|
| インデックスオープン・日経225 | AMOne | 03/05/2026 | 0.14 | 82 |
| インデックスファンド225(日本株式) | アモーヴァ | 06/16/2026 | 0.25 | 456 |
| はじめてのNISA・日本株式インデックス(日経225) | 野村 | 06/03/2026 | 0.14 | 430 |
| My SMT 日経225インデックス(ノーロード) | 三井住友トラスト | 10/20/2025 | 0.17 | 788 |
| eMAXIS Slim 国内株式(日経平均) | 三菱UFJ | 04/27/2026 | 0.14 | 5,263 |
<JPX日経400に連動するファンド>
| ファンド名 | 運用会社 | 総経費率日付 | 総経費率 | 純資産総額 (億円) |
|---|---|---|---|---|
| インデックスファンドJPX日経400 | アモーヴァ | 02/09/2026 | 0.65 | 168 |
| 野村インデックスファンド・JPX日経400 | 野村 | 09/08/2025 | 0.43 | 188 |
| SMT JPX日経インデックス400・オープン | 三井住友トラスト | 04/20/2026 | 0.41 | 225 |
| eMAXIS JPX日経400インデックス | 三菱UFJ | 01/26/2026 | 0.44 | 156 |
<S&P500に連動するファンド>
| ファンド名 | 運用会社 | 総経費率日付 | 総経費率 | 純資産総額 (億円) |
|---|---|---|---|---|
| たわらノーロード S&P500 | AMOne | 10/14/2025 | 0.12 | 2,937 |
| インデックスファンドS&P500(アメリカ株式) | アモーヴァ | 07/08/2025 | 0.55 | 1,336 |
| はじめてのNISA・米国株式インデックス(S&P500) | 野村 | 06/03/2026 | 0.11 | 1,500 |
| My SMT S&P500インデックス(ノーロード) | 三井住友トラスト | 03/26/2026 | 0.12 | 1,821 |
| eMAXIS Slim 米国株式(S&P500) | 三菱UFJ | 04/27/2026 | 0.08 | 125,481 |
<MSCIコクサイに連動するファンド>
| ファンド名 | 運用会社 | 総経費率日付 | 総経費率 | 純資産総額 (億円) |
|---|---|---|---|---|
| たわらノーロード 先進国株式 | AMOne | 10/14/2025 | 0.10 | 13,295 |
| インデックスファンド海外株式(ヘッジなし) | アモーヴァ | 10/27/2025 | 0.64 | 356 |
| 野村スリーゼロ先進国株式投信 | 野村 | 12/22/2025 | 0.00* | 692 |
| My SMT グローバル株式インデックス(ノーロード) | 三井住友トラスト | 10/20/2025 | 0.10 | 604 |
| eMAXIS Slim 先進国株式インデックス(除く日本) | 三菱UFJ | 04/27/2026 | 0.10 | 13,306 |
*2031年1月1日以降の信託報酬率は年0.11% (税込)以内の率となる。
<MSCI ACWI全世界株式に連動するファンド>
| ファンド名 | 運用会社 | 総経費率日付 | 総経費率 | 純資産総額 (億円) |
|---|---|---|---|---|
| たわらノーロード 全世界株式 | AMOne | 10/14/2025 | 0.11 | 3,755 |
| Tracers MSCIオール・カントリー・インデックス(全世界株式) | アモーヴァ | 05/18/2026 | 0.06 | 126 |
| はじめてのNISA・全世界株式インデックス(オール・カントリー) | 野村 | 06/03/2026 | 0.06 | 1,744 |
| eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー) | 三菱UFJ | 04/27/2026 | 0.06 | 135,086 |
<MSCI ACWI(除く日本)に連動するファンド>
| ファンド名 | 運用会社 | 総経費率日付 | 総経費率 | 純資産総額 (億円) |
|---|---|---|---|---|
| 野村つみたて外国株投信 | 野村 | 05/12/2026 | 0.21 | 2,762 |
| eMAXIS Slim 全世界株式(除く日本) | 三菱UFJ | 04/27/2026 | 0.06 | 12,249 |
*純資産総額は2026年9月16日時点。総経費率の基準日はファンドによって異なります。
これらの表が示すように、同じ指数に連動するファンドでも、費用や規模には差があります。一方、指数の再現方法や売買コストの抑制に向けた取り組みにも各社の特徴が見られます。
たとえば野村アセットマネジメントは、銘柄数が多く直接売買の負担が大きい中国A株について、現地株式を直接保有せず海外のETFを通じて投資しています。ETF自体の費用はかかるものの、売買の負担を抑えることで、指数への安定した連動につなげています。
また、三菱UFJアセットマネジメントは、保有資産を貸し出して品貸料を得る証券貸付について、従来の日本株式から対象を広げ、純金ファンドや米国株式を対象とするファンドでも導入しています。得られた品貸料は半分超がファンドの収益となり、投資家の実質的な負担を軽くします。
まとめ
第3回から第5回までは、指数の仕組みや特徴を見てきました。今回は、その指数への連動を実現する運用会社に焦点を移しました。指数の再現方法は一様ではなく、指数への安定した連動を支える体制や取り組みにも、各社それぞれの特徴があります。
次回は、日本で販売されるインデックス・ファンドを手掛ける海外の運用会社を取り上げます。グローバルな運用基盤や、複数のETFを組み合わせる手法など、国内の運用会社とは異なるアプローチを紹介します。◇
※ 本稿は、情報提供のみを目的としており、特定の金融商品、銘柄などを推奨するものではありません。投資における判断は、ご自身の投資目的、投資期間、資金性格、投資への姿勢などを勘案して、ご自身の責任において慎重に行ってください。

