シン・パッシブ投資 - 第3回

日本株式の代表的なインデックスを読み解く

alt=""

前回までは、インデックス投資とパッシブ投資の考え方の違いや、インデックス・ファンドを選ぶ際に注意すべき点についてお話ししてきました。今回からは数回にわたり、代表的なインデックス(指数)を取り上げていきます。まずは、身近な存在である日本株式のインデックスから見ていきます。 

日本株式のインデックス・ファンドと聞くと、多くの方が「日経平均株価(日経225)」や「TOPIX(東証株価指数)」を思い浮かべるのではないでしょうか。ここに「JPX日経インデックス400」を加えた3つが、日本を代表する株価指数です。今回は、この3指数の違いを整理するとともに、各指数に連動する戦略に対するモーニングスターの運用プロセス評価も手がかりに、インデックスを選ぶ際に押さえておくべきポイントを確認していきます。

日本株式の代表的なインデックス

まず、それぞれのインデックスの基本的な仕組みを整理します。

日経225(日経平均株価)は1950年から算出されている歴史のある株価指数です。東京証券取引所プライム市場に上場する企業の中から、流動性やセクター・バランスを考慮して選定された225社の株式で構成されます。最大の特徴は、時価総額ではなく株価をもとに構成比率が決まる「株価平均型」であることです。株価水準の高い企業ほど、指数の動きに与える影響が大きくなります。

TOPIX(東証株価指数)は、1969年から算出されている時価総額加重型の株価指数です。各社の時価総額に応じて構成比率が決まるため、規模の大きな企業ほど指数の動きに与える影響が大きくなります。約1,700社の株式で構成され、日本株式市場を幅広くカバーする、市場代表性の高い指数です。現在は、市場代表性を維持しながら、流動性などを考慮して指数としての機能性を高めるための段階的な見直しが進められています。 

JPX日経インデックス400は、2014年から算出されている比較的新しい株価指数です。株式の流動性が高い企業を対象に、ROE、営業利益、時価総額などをベースにスクリーニングを行い、ガバナンスや情報開示の観点も加味して400社を選定します。時価総額だけでなく、資本効率や収益力、コーポレート・ガバナンスなど、企業のクオリティに着目している点が特徴です。

日経225
TOPIX
JPX日経400
算出開始年1950年1969年2014年
算出方式株価平均型時価総額加重型時価総額加重型
構成銘柄数225銘柄約1,700銘柄約400銘柄
主な銘柄選定基準流動性やセクター・バランスなどを考慮移行措置中。第2段階の見直しでは、東証全市場を対象に流動性基準で選定ROE、営業利益、時価総額を定量評価し、ガバナンスや情報開示の観点も加味
特徴株価水準の高い銘柄の値動きを反映しやすい時価総額が大きい銘柄の値動きを反映しやすく、日本株式市場を幅広くとらえる資本効率・収益力・ガバナンスなど、企業のクオリティに着目
モーニングスター運用プロセス評価平均平均以上

モーニングスターでは、インデックス・ファンドの運用プロセスを評価する際、運用会社が参照インデックスへの連動をどのように実現しているかだけでなく、参照インデックスが投資機会をどの程度幅広く、合理的に捉えているかも重視しています。各指数に連動する戦略の運用プロセス評価は、TOPIXが「高」、JPX日経400が「平均以上」、日経225が「平均」となっています。

ここからは、評価の背景となる3指数の違いを、具体的に見ていきます。

市場代表性から見える3指数の違い

3つのインデックスはいずれも日本の株式市場を代表する指数として広く使われていますが、それぞれがどの範囲の市場をどのようにとらえているかは大きく異なります。ここでは、「市場代表性(どこまで幅広く日本株式市場をとらえているか)」の観点から3指数を比較してみます。

TOPIXは約1,700社の株式で構成され、日本株式市場の時価総額約98%をカバーしており、3つのインデックスのうち最も幅広く日本株式市場を反映しています。構成比率は時価総額に応じて決まり、市場全体の動きを反映しやすい構造になっています。今後の指数見直しにより構成銘柄数は減少しますが、市場カバー率はほぼ維持される見通しです。モーニングスターでは、日本株式市場を広範かつ分散された形で捉え、市場全体の動きを反映している点を評価し、TOPIXに連動するファンドの運用プロセス評価を「高」としています。

日経225は、225社の株式で構成されていますが、主要な大型株を多く含み、時価総額ベースではTOPIXの約8割をカバーしています。ただし、各社の構成比率は時価総額ではなく株価水準に応じて決まるため、TOPIXに比べると、株価水準の高い一部の企業の影響を強く受けやすい構造になっています。また、以下に述べる上位銘柄への集中も留意が必要です。同指数は日本株式市場の動きを伝える代表的な指標として、新聞やテレビなどでも広く使われていますが、「幅広く使われている=良いインデックス」とは限りません。モーニングスターでは、日経225が抱える課題などを踏まえ、同インデックスに連動する戦略の運用プロセス評価を「平均」としています。

JPX日経400は、時価総額だけでなく、ROEや営業利益などの定量項目、ガバナンスや情報開示などの定性項目を加えて400社を選定します。企業の質を加味してインデックスを構築する点が特徴で、一般的な時価総額加重型インデックスとは異なります。モーニングスターでは、同指数が時価総額ベースでTOPIXの8割超をカバーしており、幅広い日本株式市場をカバーしている点は評価しています。一方で、質の高い企業を選定する基準は比較的緩やかで、時価総額加重型インデックスに対して付加価値を生み出せるかはやや懐疑的に見ており、同指数に連動するファンドの運用プロセス評価を「平均以上」としています。

上位銘柄への集中が進む日経225

第1回では、「組み入れ社数の多さが、そのままリスクの分散を意味するわけではない」というお話をしました。その例として、日経225では上位10銘柄で指数の5割超を占めることにも触れました。ここではこの点をさらに掘り下げ、日経225で上位銘柄への集中が生じる仕組みと、足元の状況を見ていきます。

日経225は株価平均型の指数であるため、株価水準の高い企業の株式(いわゆる「値がさ株」)の影響が大きくなります。TOPIXでは企業規模(時価総額)に応じて構成比率が決まりますが、日経225では株価水準が構成比率を左右します。そのため、値がさ株が上昇すると、その影響が指数全体に波及しやすくなります。この特性は近年さらに顕著になっており、2026年6月末時点では、上位3銘柄だけで指数の約32%、上位10銘柄では約52%を占めています。

日経225では上位10銘柄が過半を占める(2026年6月末時点)

日経225の上位3銘柄の構成比率(2026年6月末時点)

ここで注目すべきは、日経225で大きなウェイトを占める企業の顔ぶれが、日本株式市場の時価総額上位企業とは必ずしも一致しない点です。時価総額上位の三菱UFJフィナンシャル・グループやトヨタ自動車は、TOPIXでは構成比率上位に入る一方、日経225では上位10銘柄に入っていません。一方、日経225では、アドバンテストや東京エレクトロンなど、いわゆる値がさ株のウェイトが大きくなっています。

株価平均型では、株価水準の高い銘柄がさらに値上がりすると、指数内での構成比率も一段と高まります。足元では、アドバンテストなど既存の値がさ株の株価上昇に加え、2026年4月に新規採用されたキオクシアが、わずか数カ月で約3%の構成比率まで上昇し、上位5銘柄に入っています。指数の分散度合いを見る際には、構成銘柄数だけでなく、上位銘柄が指数に占める割合にも目を向けることが重要です。

段階的な見直しが進むTOPIX

TOPIXでは、市場代表性を維持しながら指数としての機能性を高めるため、段階的な見直しが進められています。

第1段階の見直しは、2022年10月から2025年1月にかけて実施されました。流通株式時価総額が100億円を下回る銘柄のウェイトが段階的に引き下げられた結果、TOPIXの構成銘柄数は、従来の約2,200銘柄から約1,700銘柄に減少しました。その後も構成銘柄数は変動しており、2026年4月末時点では1,650銘柄となっています。

第2段階では、東証の全市場区分を対象に、流動性を重視した銘柄選定へと移行します。2026年10月から2028年7月にかけて段階的な移行が行われ、2026年3月末を基準とした試算では、構成銘柄数は約1,050銘柄となる見込みです。2028年10月以降は、毎年、定期的な銘柄入れ替えが実施される予定です。

構成銘柄数は大きく減る一方、市場カバー率は、現行TOPIXの約97.5%に対して次期TOPIXでは約96.6%と、ほぼ維持される見込みです。銘柄数を絞り込みながらも、日本株式市場全体を幅広く映す指数としての位置づけは、引き続き保たれる見通しです。

モーニングスターでは、流動性を重視した銘柄選定と定期的な銘柄入れ替えにより、TOPIXがインデックス・ファンドにとって運用しやすくなる点を前向きに評価しています。構成銘柄数は減少するものの、市場カバー率は概ね維持されることから、日本株式市場を幅広く捉える代表的な指数としての役割も維持されると考えています。

まとめ

日経225、TOPIX、JPX日経400はいずれも「日本株式市場を代表する指数」として広く知られていますが、その中身は大きく異なります。市場全体の動きを幅広くとらえるTOPIX、株価水準に応じて各銘柄の影響度が決まる日経225、資本効率や収益力、ガバナンスなど企業のクオリティに着目するJPX日経400では、それぞれが表す日本株式の姿は同じではありません。指数設計の違いは、各指数に連動するファンドに対するモーニングスターの運用プロセス評価にも表れています。特に日経225は、株価平均型という仕組み上、上位銘柄への集中度が高まりやすいため、運用プロセス評価はTOPIX、JPX日経400に比べると低くなっています。

日本株式のインデックス・ファンドを選ぶ際には、指数の知名度だけでなく、どの範囲をカバーし、各銘柄の構成比率がどのように決まるのかを確認することが大切です。また、特定の銘柄や業種にどの程度集中しているのかも踏まえ、自分の投資目的に合ったインデックスかどうかを見極めることが、ファンド選びの第一歩となります。

次回は、S&P 500をはじめ、日本の投資家にも身近な海外の株式インデックスを取り上げ、それぞれの特徴や違いについてお話しします。◇

※ 本稿は、情報提供のみを目的としており、特定の金融商品、銘柄などを推奨するものではありません。投資における判断は、ご自身の投資目的、投資期間、資金性格、投資への姿勢などを勘案して、ご自身の責任において慎重に行ってください。

著者はこの記事で言及されたいかなる有価証券も保有していません。詳細はこちらをご覧ください: モーニングスターの編集方針