前回は、日本株を代表する日経225、TOPIX、JPX日経400の特徴を整理しました。今回は、日本の投資家にも身近な米国株インデックスを見ていきます。
米国株のインデックス・ファンドを選ぶとき、その中身がどの指数に連動しているかは重要なポイントです。同じ米国株を対象としていても、市場全体に幅広く投資するもの、大型株を中心とするもの、ハイテク株の比重が高いものなど、連動する指数によって投資対象や銘柄の選定基準は異なります。
今回は、米国株の主要な指数であるS&P500、NASDAQ100、NYダウ(ダウ・ジョーンズ工業株価平均)、Morningstar US Total Market Index(旧CRSP US Total Market Index)を取り上げます。モーニングスターの見方も交えながら、それぞれの仕組みや市場のとらえ方を整理します。
米国の代表的な株価指数
まず、それぞれのインデックスの基本的な仕組みを整理します。
S&P500は、1957年に算出が始まった、米国大型株式市場を代表する時価総額加重型の株価指数です。時価総額や流動性、収益性など一定の基準を満たす約500社で構成され、米国株式市場の時価総額のおよそ8割をカバーします。構成比率は各社の時価総額に応じて決まるため、時価総額の大きい企業ほど指数への影響も大きくなります。
NASDAQ100は、1985年に登場した、時価総額加重型を基本とする株価指数です。ナスダック市場に上場する企業のうち、金融業を除く時価総額の大きい約100社で構成されます。構成比率は基本的に各社の時価総額に応じて決まりますが、少数の大型株に集中しすぎないよう、上位銘柄の比率を調整するルールが設けられています。ナスダック市場にはテクノロジー企業が多く上場しているため、ハイテク株の比重が高いことが特徴です。
NYダウ(ダウ・ジョーンズ工業株価平均)は、1896年に誕生した、世界で最も歴史の長い株価指数の一つです。委員会が選定する米国の代表的な企業30社で構成されます。算出方式は、第3回で取り上げた日経225と同じ「株価平均型」で、株価水準の高い企業ほど指数への影響が大きくなります。構成企業数が少ないこともあり、米国株式市場全体というより、代表的な大企業の値動きを示す指数です。
Morningstar US Total Market Index(旧CRSP US Total Market Index)は、米国株式市場全体を対象とする時価総額加重型の株価指数です。2011年に登場し、超大型株から超小型株まで約3,500社を組み入れています。一定の規模や流動性の基準を満たす企業を幅広くカバーし、米国株式市場全体の構成を反映する点が特徴です。この指数は、シカゴ大学証券価格研究センター(CRSP)が算出していたCRSP US Total Market Indexを前身とします。2026年2月にモーニングスターがCRSPを買収し、同年7月に現在の名称へ変更しました。名称変更に伴う算出方法の変更はありません。
| S&P500 | NASDAQ100 | NYダウ | Morningstar US Total Market Index (旧CRSP) | |
|---|---|---|---|---|
| 算出開始年 | 1957年 | 1985年 | 1896年 | 2011年 |
| 算出方式 | 時価総額加重型 | 時価総額加重型(調整あり) | 株価平均型 | 時価総額加重型 |
| 構成企業数 | 約500社 | 約100社 | 30社 | 約3,500社 |
| 主な選定基準 | 時価総額、流動性、収益性など一定の基準を満たす米国企業 | 時価総額や流動性の基準を満たす、ナスダック市場上場の非金融企業 | 5名の委員会が米国の優良企業を選定 | 一定の規模や流動性の基準を満たす米国株を幅広く組み入れ |
| 特徴 | 米国大型株式市場を代表し、米国株式市場の時価総額のおよそ8割をカバー | ハイテク株を中心に、特定のセクターが高い比重を占める | 株価水準の高い企業ほど指数への影響が大きい | 超大型株から超小型株まで、米国株式市場全体をカバー |
| モーニングスター運用プロセス評価 | 高 | 平均以下 | 平均以下 | 高 |
指数によって異なる「市場のとらえ方」
指数ごとに対象とする市場の範囲や企業の選定基準が違うことから、モーニングスターの運用プロセス評価も異なります。以下では、指数ごとに評価の背景を整理します。
今回取り上げる指数の中で、最も幅広く米国株式市場を対象としているのが、Morningstar US Total Market Indexです。超大型株から超小型株まで約3,500銘柄を組み入れ、時価総額加重方式によって市場全体の動きを反映します。モーニングスターでは、米国株式市場を幅広く分散した形でとらえていることに加え、銘柄の入れ替えが少なく、低コストで運用しやすい点を評価し、同指数に連動するファンドの運用プロセス評価を「高」としています。
S&P500は、米国の大手企業約500社で構成される時価総額加重型の指数で、米国株式市場の時価総額のおよそ8割をカバーします。モーニングスターでは、米国大型株式市場を的確にとらえていることに加え、幅広い分散と低い売買回転率によって、効率的に運用しやすい点を評価しています。一方、2026年6月末時点では、上位10銘柄が指数全体の4割弱を占めています。ただし、これは市場の姿を反映した結果ととらえており、指数の設計に欠陥があるとは考えていません。従って、同指数に連動するファンドの運用プロセス評価は「高」としています。
NASDAQ100は、ナスダック市場に上場する非金融企業のうち、時価総額の大きい約100社で構成され、テクノロジーセクター(ハイテク株)の比重が高い点が特徴です。一方、対象がナスダック上場企業に限られるため、規模の大きい企業でも、他の取引所に上場していれば組み入れられません。モーニングスターは、ナスダック市場という区分で銘柄を絞ることが、投資対象を狭め、テクノロジーなど一部のセクターや少数の企業への集中につながると考えています。このような選定方法は合理性に乏しいとして、同指数に連動するファンドの運用プロセス評価を「平均以下」としています。
NYダウは、構成比率が時価総額ではなく株価水準に応じて決まるため、株価水準の高い企業ほど指数への影響が大きくなります。また、構成企業が30社に限られており、上位銘柄への集中度も高く、2026年6月末時点では上位10銘柄が全体の55%超となっています。モーニングスターでは、株価水準に基づく構成比率に加え、構成企業が30社に限られることや主観的な銘柄選定によって、組み入れ対象や各社の比率が左右される点を懸念しており、同指数に連動するファンドの運用プロセス評価を「平均以下」としています。
米国主要インデックスの上位10銘柄比率(2026年6月末時点)
NASDAQ 100はテクノロジーセクターが6割を超える(2026年6月末時点)
株価指数の設計は、時代とともに変化してきた
これまで見てきた「株価平均型」と「時価総額加重型」には、指数が生まれた時代背景が関係しています。指数が生まれた背景や算出方式の成り立ちを知ることで、それぞれの特徴や違いも捉えやすくなります。
株価指数の起源は、19世紀末の米国にさかのぼります。金融ジャーナリストのチャールズ・ダウは、1884年に主要銘柄の株価をもとに指数を算出する手法を考案し、1896年にNYダウを発表しました。コンピューターが普及する前の時代、構成銘柄の株価水準をもとに算出する株価平均型は、実用的な方法でした。
その後、コンピューターの発達によって多数の企業データを集計しやすくなると、「時価総額加重型」が広まりました。1957年に登場したS&P500は、その代表です。企業の規模に応じて構成比率が決まるため、市場の構成を反映しやすい点が特徴です。NASDAQ100や、米国株式市場全体を対象とするMorningstar US Total Market Indexなど、その後に登場した指数の多くも、時価総額に基づく算出方式を採用しています。
NYダウや日経225は、現在もそれぞれ米国と日本の株式市場の値動きを示す代表的な指標として知られています。ただし、株価平均型では、企業の規模ではなく株価水準によって構成比率が決まります。そのため、モーニングスターでは、市場全体の構成をとらえる指数としては、時価総額加重型に比べて合理性に欠ける面があると考えています。
まとめ
今回は、日本のインデックス・ファンドでも採用されている、米国の代表的な株価指数を取り上げました。同じ米国株式の指数でも、米国株式市場のほぼ全体を対象とするもの、大型株式を中心とするもの、特定の市場や少数の企業に絞るものがあり、投資対象は大きく異なります。銘柄の選定基準や構成比率の決め方にも、それぞれの指数の特徴が表れています。
米国株のインデックス・ファンドを選ぶときは、指数の知名度だけでなく、投資対象や銘柄の選定基準、特定の銘柄やセクターへの集中度も確認する必要があります。指数の特性を理解することが、自分の投資目的に合ったファンドを選ぶうえで重要です。◇
※ 本稿は、情報提供のみを目的としており、特定の金融商品、銘柄、指数などを推奨するものではありません。投資における判断は、ご自身の投資目的、投資期間、資金性格、投資への姿勢などを勘案して、ご自身の責任において慎重に行ってください。

