シン・パッシブ投資 - 第5回

世界株式のインデックスを読み解く

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前回は、米国株インデックスを取り上げ、S&P 500やNASDAQ 100など、同じ米国株を対象とする指数でも、市場のカバー範囲や構成比率の決め方が異なることを見てきました。今回は投資対象を広げ、世界株式インデックスを取り上げます。

「世界株式」と聞くと、世界中の株式に幅広く投資する、分かりやすい選択肢に思えるかもしれません。しかし、同じ「世界株式」でも、インデックスによって対象となる国や構成銘柄数、市場のカバー範囲などは異なります。日本を含むのか、新興国まで対象とするのかによっても、投資対象の範囲は変わります。

例えば、MSCI ACWI(MSCI オール・カントリー・ワールド・インデックス)とFTSE All-World(FTSEオール・ワールド・インデックス)は日本と新興国を含む世界の株式を対象とする一方、MSCIワールドは日本を含む先進国、MSCIコクサイは日本を除く先進国の株式を対象とします。今回は、代表的な世界株式インデックスであるMSCI ACWIとFTSE All-Worldを中心に、それぞれの特徴や違いを整理し、モーニングスターの評価の観点も交えながら、投資家がファンドを選ぶ際に確認すべきポイントを解説します。

「世界株式」が示す範囲

世界株式インデックスは多く存在しますが、日本の投資信託で使われている主なインデックスについて、カバーする投資対象の範囲を以下の表にまとめています。

指数
日本
その他先進国
新興国
主な投資対象
MSCI ACWI含む含む含む先進国・新興国の大型株・中型株
FTSE All-World含む含む含む先進国・新興国の大型株・中型株
MSCIワールド含む含む含まない先進国の大型株・中型株
MSCIコクサイ含まない含む含まない日本を除く先進国の大型株・中型株
MSCI ACWI ex Japan含まない含む含む日本を除く先進国・新興国の大型・中型株

この中で、「全世界株式」を対象とするMSCI ACWIとFTSE All-Worldの二つの指数について、基本的な仕組みを整理します。

MSCI ACWIは、1990年に設定された時価総額加重型の株価指数です。米国や日本などの先進国23ヵ国と、中国やインドなどの新興国24ヵ国、計47ヵ国・地域を対象とし、それぞれの市場の大型株と中型株を組み入れています。構成銘柄数は約2,460で、各市場の時価総額のおよそ85%をカバーします。時価総額や流動性などの基準を満たした企業が、指数に組み入れられます。構成比率は各企業の時価総額に応じて決まるため、規模の大きい企業ほど指数の値動きに大きく影響します。指数の見直しは、四半期ごとに行われます。国別では米国が63.6%と最も大きく、日本が5.1%、英国が3.2%と続きます(2026年7月末時点)。

FTSE All-Worldは、2000年に設定された時価総額加重型の株価指数です。FTSE Russellが世界の株式市場を対象に算出する指数群の一部で、48ヵ国・地域を対象とし、MSCI ACWIと同じく大型株と中型株を組み入れています。構成銘柄数は約4,265で、各市場の時価総額の約90%をカバーします。組み入れにあたって時価総額や流動性の基準による絞り込みが行われる点も、MSCI ACWIと共通しています。年2回の包括的な見直しに加え、6月と12月にもIPOなどを対象とする見直しが行われます。国別では米国が61.7%、日本が6.0%、英国が3.3%となっています(2026年7月末時点)。

こうして並べてみると、この二つの指数はよく似ています。上位の組み入れ銘柄はどちらもNVIDIA、Apple、Microsoftなど米国の大手企業が占め、上位10銘柄で指数全体のおよそ24%を占める点も共通しています。国別の構成比も、米国が6割を超え、日本、英国、台湾が続くという並びは変わりません。「世界株式」といっても、米国の大型株から大きな影響を受けるという点は、どちらの指数にも当てはまります。

MSCI ACWIとFTSE All-Worldの比較(2026年7月末時点)

MSCI ACWI
FTSE All-World
設定年1990年2000年
算出方式時価総額加重型時価総額加重型
構成企業数2,460社4,265社
組み入れ企業の規模大型・中型大型・中型
市場カバー率約85%約90%
米国比率約64%約62%
モーニングスター運用プロセス評価平均以上平均以上

市場のとらえ方に見る2つの指数の違い

両指数には多くの共通点がある一方、組み入れの対象範囲や、国・地域の分類基準には違いがあります。

両指数とも浮動株調整後の時価総額加重ですが、FTSE All-WorldはMSCI ACWIより構成銘柄数が多く、相対的に時価総額の小さい企業まで組み入れています。その分、市場全体のカバー率もやや高くなっています。

また、国・地域の分類や採用範囲にも違いがあります。例えば、韓国はFTSEでは先進国、MSCIでは新興国に分類されます。アイスランドとルーマニアはFTSE All-Worldに含まれますが、MSCI ACWIには含まれません。反対に、ペルーはMSCI ACWIには含まれますが、FTSE All-Worldには含まれません。加えて、FTSEでは今後、ベトナムを新興国市場としてFTSE All-Worldへ組み入れる予定です。

これらの市場の多くは指数全体に占める比率が小さく、2026年7月末時点でFTSE All-Worldにおけるアイスランドの比率は0.01%、ルーマニアは0.02%にとどまります。そのため、現時点の国別配分や指数全体の構成に大きな差はありません。一方、市場分類や採用基準の違いは、指数リターンの差につながる可能性があります。ファンドを選ぶ際には、コストだけでなく、連動対象となる指数も確認することが大切です。

なお、モーニングスターでは、両指数に連動するインデックスファンドの運用プロセスを、いずれも「平均以上」と評価しています。構成国の分類や採用範囲に一部違いはあるものの、どちらも世界株式市場を幅広くカバーしており、世界株式への長期投資の対象として適した指数と考えています。

世界株式インデックスを選ぶ際の視点

世界株式インデックスを選ぶ際には、各指数がどの市場を対象としているかがひとつの判断材料になります。FTSE All-WorldとMSCI ACWIはいずれも日本や新興国を含む幅広い市場を対象としていますが、大部分は先進国株式で構成されています。なかでも米国株の比率は6割を超えており、指数全体の値動きは米国市場の影響を強く受けます。一方、両指数は時価総額加重型のため、新興国企業の時価総額が先進国企業に比べて拡大すれば、指数に占める新興国の比率も上昇します。投資家が配分を変更しなくても、市場の変化に応じて指数内の地域配分は変わります。

新興国には高い経済成長が期待される国が多い一方、政治や政策の変化、通貨変動などの影響を受けやすい特徴があります。新興国を含めず、投資対象を先進国だけに絞る場合は、MSCIワールドが選択肢になります。また、日本株を別に保有している場合には、日本を除く先進国で構成されるMSCIコクサイ(MSCI World ex Japan)も選択肢となります。一方、MSCI ACWIなどの世界株式インデックスとMSCIコクサイを併せて保有すると、米国をはじめとする先進国株式の多くが重複します。この組み合わせでは投資対象となる市場は増えず、米国を中心とする先進国株式の比率が高まります。各指数が日本、新興国、その他の先進国をどの程度組み入れているかを確認し、保有する指数同士の重複にも留意することが大切です。

世界株式インデックスの地域区分(指数提供者分類ベース)

分散の広さがもたらす運用上の課題

最後に、世界株式インデックスに連動するファンドの運用について、少し触れておきます。

インデックスファンドは指数と同じ値動きを目指しますが、対象とする市場が広がるほど、その再現は難しくなります。世界株式ファンドでは40を超える国・地域が含まれ、通貨も取引時間も決済の仕組みもそれぞれ異なります。新興国のなかには、外国人の株式保有に制限が設けられている市場や、売買コストが相対的に高い市場もあります。

S&P 500は、米国市場の約500銘柄で構成されます。一方、世界株式インデックスは40を超える国・地域の数千銘柄を対象とするため、指数と同じ構成を維持するには、より複雑な運用が求められます。こうした運用上の制約やコストの影響は、第2回で取り上げたトラッキングディファレンス(指数とのリターン差)とトラッキングエラー(乖離のばらつき)に表れます。対象市場が広い世界株式ファンドでは、取引コストや税、各市場の取引時間の違いなど、指数との乖離につながる要因も多くなります。

信託報酬はファンドを比べるうえで分かりやすい指標ですが、それだけでは実際の運用結果の差までは分かりません。トラッキングディファレンスやトラッキングエラーもあわせて確認することで、指数とのリターン差とそのばらつきを比較できます。

まとめ

同じ「世界株式」の指数でも、対象国の分類や市場のカバー範囲、構成企業数などには違いがあります。MSCI ACWIとFTSE All-Worldの足元の構成はよく似ていますが、指数によって「世界」としてとらえる範囲は異なります。

世界株式インデックスを選ぶ際は、まず「世界」をどこまでとらえるかを考えます。新興国を含めるか、日本を含めるかによって対象範囲を定めたうえで、MSCIやFTSEなど、各指数の分類や採用基準の違いを踏まえて選びます。

指数を決めた後は、その指数に連動するファンドを比較します。信託報酬などのコストに加え、トータルリターンや、指数とのリターン差とそのばらつきも確認することが大切です。◇

※ 本稿は、情報提供のみを目的としており、特定の金融商品、銘柄、指数などを推奨するものではありません。投資における判断は、ご自身の投資目的、投資期間、資金性格、投資への姿勢などを勘案して、ご自身の責任において慎重に行ってください。

著者はこの記事で言及されたいかなる有価証券も保有していません。詳細はこちらをご覧ください: モーニングスターの編集方針