シン・パッシブ投資 - 第1回

インデックス投資をめぐる5つの誤解(前編)

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近年、個人投資家の間でインデックス投資への関心が高まっています。新NISAの普及を背景に、資金を大きく集めているのは、「オルカン(全世界株式)」や「S&P500」といった低コストのインデックスファンドです。なかでも、「eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)」や「eMAXIS Slim米国株式(S&P500)」は代表的な商品であり、いずれも資産残高は10兆円を超える規模にまで拡大しています。今や株式ファンドにおけるアクティブ型とインデックス型の比率はほぼ半々です。

株式型ファンドのインデックス・アクティブ別資産残高の推移

(兆円)

これらのファンドは、資産形成の入り口として選ばれる機会が増えています。その中で、「インデックス投資」という言葉は広く浸透してきました。一方で、「パッシブ投資」という言葉も耳にしたことがある人は多いのではないでしょうか。多くの場合、この二つは同じ意味で使われているようです。しかし、本当に同じものとして理解してよいのでしょうか。

一見似ているこの二つの言葉ですが、その前提にはいくつかの重要な違いが含まれています。そして、その違いを理解するうえで鍵になるのが、インデックス投資に対して一般的に持たれている認識を一度整理することです。

本連載では、インデックス投資の基本をあらためて整理しながら、インデックス・ファンドの選び方を段階的に整理していきます。

連載のはじめとして、「インデックス投資」に関する代表的な誤解を取り上げながら、その前提にある「パッシブ投資」という考え方を読み解いていきます。取り上げる誤解は5つですが、今回はそのうち2つをお話しします。

誤解1:インデックス投資をすれば、市場全体をとらえられる

インデックス投資は、「市場全体をとらえる投資」と説明されることが多くあります。しかし、これは必ずしも正確ではありません。

そもそもインデックス(指数)とは、「一定のルールに基づいて銘柄を選び、組み合わせたもの」です。そのため、市場全体を適切に表しているかどうかは、指数の構築方法(メソドロジー)によって決まります。たとえば、S&P500は米国の大型企業を中心とした500社で構成される指数です。また、「eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)」の連動対象であるMSCI ACWIは、世界の2,000企業以上を含む指数です。これらは比較的広い範囲をカバーしており、市場全体を表す指数と捉えることができます。一方で、FANG+指数やS&P500トップ10指数のように、少数企業に集中した指数は、市場全体を表しているとは言えません。

代表的な株価指数の構成企業(銘柄)数

指数名
企業(銘柄)数
日本
東証株価指数(TOPIX)1,650
日経平均株価225
JPX日経インデックス400395
米国
S&P 500503
ダウ・ジョーンズ工業株価平均(NYダウ)30
ナスダック100指数101
CRSP USトータル・マーケット・インデックス3,440
世界
MSCI オール・カントリー・ワールド指数 (ACWI)2,513
FTSEグローバル・オールキャップ・インデックス10,137

2026年5月末時点、ただしTOPIXは2026年4月末時点、NASDAQ100は2026年3月末時点

ここで、「インデックス投資」と「パッシブ投資」の違いを整理しておきます。インデックス投資は、特定の指数に連動させる投資手法であり、必ずしも市場全体をとらえることを目的とするものではありません。一方、パッシブ投資とは、市場全体のパフォーマンスをそのまま取り込むことを目指す考え方です。そのため、市場全体を適切に表す指数に連動する投資を行うことで、その目的を達成します。

このように、すべてのインデックスが市場全体を表すわけではありません。したがって、すべてのインデックス投資を「市場全体をとらえる投資」と考えることは適切ではありません。市場全体の動きをとらえたいのであれば、その目的に適したインデックスを選ぶ必要があります。これがパッシブ投資への第一歩です。

なお、対象としている市場や構成が異なる指数同士のパフォーマンスを単純に比較することは必ずしも適切ではありません。たとえば、「S&P500よりもFANG+指数やS&P500トップ10指数のほうが成績が良い」などの比較は、前提が異なるため解釈には注意が必要です。

誤解2:インデックス投資は分散投資がよくできている

インデックス投資は、「分散投資が容易にできる」という点が大きなメリットとして挙げられることが多くあります。確かに、個別銘柄に投資する場合と比べれば、多くの企業に投資できる点で分散効果が期待できるのは事実です。しかし、ここにも注意すべき点があります。

多くの株式市場のインデックスは、時価総額に応じて組み入れ比率が決まる「時価総額加重型」という仕組みを採用しています。この場合、企業規模(時価総額)の大きい企業ほど指数への影響が大きくなります。また、日経平均やNYダウのような「株価平均型」も、株価水準が高い株式の影響が大きくなります。その結果、数百あるいは数千の企業を含む指数であっても、実際の値動きは一部の企業の影響を強く受けることになります。つまり、組み入れ社数の多さがそのままリスクの分散を意味するわけではありません。例えば、S&P500では上位10社の構成比率は40%近くに達しています。日経平均は50%を超えています。

代表的な株式指数に連動するETFの上位10銘柄比率

このように考えると、「インデックスに投資しているから十分に分散されている」という理解は必ずしも正確ではありません。実際には、「どのような方法で構成されている指数なのか」によって、分散の効き方は大きく異なります。パッシブ投資における分散を正しく理解するためには、単に組み入れ社数を見るのではなく、組み入れ比率や構成の偏りにも目を向けることが重要です。

これまでは、インデックスの違いについてお話ししました。次回は3つの誤解を通じて、ファンドの違いについてお話しします。

著者はこの記事で言及されたいかなる有価証券も保有していません。詳細はこちらをご覧ください: モーニングスターの編集方針