シン・パッシブ投資 - 第2回

インデックス投資をめぐる5つの誤解(後編)

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前回は、インデックス投資とパッシブ投資の概念の違いを、2つの誤解を通じてお話ししました。今回は、インデックス・ファンドに関する3つの誤解を通じて、インデックス・ファンド間での違いについてお話しします。

誤解3:同じインデックスに投資するなら、運用の差はない

同じインデックス(指数)に連動するファンドであれば、どの商品を選んでも投資成果はほとんど同じになると考えられがちです。

確かに、パッシブ投資はインデックスに連動するリターンを目指すものであり、アクティブ・ファンドのように運用成果に大きな差が生じるわけではありません。そのため、インデックス・ファンド間のリターンの違いは、アクティブ・ファンド同士と比べれば小さくなる傾向があります。

しかし、実際には同じインデックスを連動対象とするファンドであっても、運用成果には差が生じます。ファンドはインデックスに連動することを目指しますが、現実には完全に一致することはありません。運用コストや売買のタイミング、資金の流出入への対応などにより、インデックスとの間には一定のズレが生じます。

このズレのうち、ファンドのリターンとインデックスのリターンとの間に生じる差は、「トラッキング・ディファレンス」と呼ばれます。モーニングスターでは、パッシブ投資の分析においてこの差を重視しており、それが単に運用費用(総経費率)によるものなのか、それ以上の要因によるものなのかを見極めます。また、リターンの変動がどの程度インデックスと一致しているかというブレ幅を示す「トラッキング・エラー」も評価のポイントとなります。

TE and TD image JP

Tracking error and tracking difference

したがって、「同じ指数に投資しているから結果も同じになる」と考えるのは適切ではありません。パッシブ投資においても、「どの程度正確にインデックスを追随できているか」という運用の質は重要な判断要素となります。

誤解4:インデックス・ファンドはコストの低いものを選べばよい

パッシブ投資においては、「コストの低さ」が最も重要であると強調されることがよくあります。実際、信託報酬などの運用コストは投資成果に直接影響するため、運用費用の低いファンドが有利であるという考え方には一定の合理性があります。

しかし、コストだけを見てファンドを選べばよいかというと、必ずしもそうとは言えません。

前述のとおり、インデックス・ファンドの運用成果は、総経費率だけで決まるものではなく、インデックスとの乖離(トラッキング・ディファレンス)にも影響を受けます。インデックス・ファンドの運用では、トラッキング・ディファレンスを小さくするために、ファンドにおける株式の売買(トレーディング)を工夫したり、レンディング(貸借取引)を活用して、投資家が得るリターンを高めようという取り組みを行っています。

たとえば、同じインデックスに投資する2つのファンドがあるとします。AファンドはBファンドよりも総経費率が0.05%低いとします。コストを重視すればAファンドが選ばれやすいでしょう。しかし、トラッキング・ディファレンスがBファンドのほうが0.05%小さい(つまり指数との乖離が小さい)とすれば、最終的に指数に近いリターンを得られるのはBファンドです。なお、ファンド間で比較をするのであれば、運用費用と同時にトータル・リターンを見るとよいでしょう。以下に、S&P500に連動するファンドでの比較例を示します。なお、運用費用については、信託報酬の引き下げが行われたファンドについては、総経費率は引き下げ前の時期を含む場合がありますので、最新の実質信託報酬も見るとよいでしょう。

S&P500に連動する主なインデックス・ファンド

ファンド名
運用会社
総経費率日付
総経費率
実質信託報酬
年初来リターン
1年リターン
ステート・ストリートS&P500インデックス・オープンステート・S11/17/20250.140.0712.2736.41
楽天・プラス・S&P500インデックス・ファンド楽天投信7/15/20250.090.0812.3036.49
eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)三菱UAM4/25/20250.100.0812.3036.50
つみたてiシェアーズ 米国株式(S&P500)インデックス・ファンドブラックロック5/2/20250.070.0912.2036.42
はじめてのNISA・米国株式インデックス(S&P500)野村AM6/3/20250.120.0912.3136.48
たわらノーロード S&P500AM-One10/14/20250.120.0912.2736.42
SBI・V・S&P500インデックス・ファンドSBI AM9/16/20250.100.0912.1936.25
My SMT S&P500インデックス(ノーロード)三井住友トラスト3/26/20250.130.1012.2836.44

出所: Morningstar Direct, 2026年6月末時点

このように考えると、「低コストであること」は重要な条件ではあるものの、それだけでファンドの優劣を判断することは適切ではありません。パッシブ投資においては、運用費用に加えて「どれだけ効率的にインデックスに連動できているか」という観点で総合的に評価することが重要です。

誤解5:インデックス・ファンドはアクティブ・ファンドに勝てる

インデックス・ファンドはアクティブ・ファンドより優れている、という説明を目にすることは少なくありません。確かに、運用コストの低さを背景に、長期的には多くのアクティブ・ファンドが市場平均を上回ることができなかったという調査結果があるのも事実です。

しかし、この点についても注意が必要です。インデックス・ファンドは、「インデックスのリターンをそのまま得ること」を目指す投資手法です。パッシブ投資は、市場の動きをそのまま受け入れる性格を持っています。そのため、市場の状況や対象とする資産によっては、アクティブ運用が相対的に有効となる場面もあり得ます。

例えば、市場参加者が相対的に少ない日本の中小型株などでは、アクティブ・ファンドがインデックス・ファンドに対して優位となる傾向がみられるという結果もあります。また、インデックス・ファンドが相対的に優位とされる市場であっても、アクティブ・ファンドには多様な投資対象や戦略があり、すべてが劣っていると考えるのは適切ではありません。

このように考えると、「インデックス・ファンドは常に優れている」「必ず勝てる」といった理解は適切ではありません。パッシブ投資とアクティブ投資がそれぞれ異なる特徴と役割を持つ投資手法であると理解することが重要です。

まとめ

これまで見てきたように、インデックス投資は「市場全体に低コストで投資できる、わかりやすい手法」として語られることが多い一方で、実際にはどのインデックスを選ぶか、そしてどのファンドを選ぶかによって、投資の中身は大きく異なります。

パッシブ投資は、単にインデックスに連動することにとどまらず、どの市場を対象とするのか、その市場の動きをどの程度正確に取り込めているのかを意識する投資でもあります。この前提を理解することが、ファンド選択の出発点となります。

次回からは数回にわたり、国内外の代表的な株式インデックスについて解説します。

著者はこの記事で言及されたいかなる有価証券も保有していません。詳細はこちらをご覧ください: モーニングスターの編集方針