もしイラン戦争が短期間で終わらなければ、経済はどうなるか?

長期化する紛争は、当然ながらエネルギー市場とインフレに深刻な影響を及ぼすかもしれない

赤と緑の株式表示が並ぶ株式表示板の横に、ペンタゴンが配置されています。その上に、白色の上昇線と矢印が重ねて表示されています。

<重要なポイント>

  • アナリストは、イランでの戦争が長期化すれば、エネルギー価格の上昇と、インフレの脅威を再燃させる可能性があると指摘している。
  • 市場では既に、FRB(連邦準備制度理事会)がここ数週間よりもインフレリスクに一層注意を払うと予想している。
  • アナリストによると、原油価格への衝撃が長引くほど、経済への影響はより深刻になるという。

イスラエル・米国とイランとの戦争は、株式市場を下落させ、原油価格上昇を招いたものの、多くの点でその反応はやや控えめに見える。これはウォール街の投資筋が、この紛争は短期間で終結し、エネルギー市場や世界経済の見通しへの影響は最小限に留まると予想しているためである。

しかし、もしそうならなかった場合はどうなるのだろうか?

アナリストは、数か月以上戦争が続けば、影響はエネルギー市場に最も深刻に現れると指摘し、原油価格は1バレルあたり100ドルを超え、3月3日の水準から30%以上上昇するだろうと見ている。その影響は世界経済の他の分野にも波及し、インフレ率の上昇や経済成長の鈍化をもたらす可能性がある。

T.ロウ・プライスのセクター・ポートフォリオ・マネジャーであるリック・デ・ロス・レイエス氏は以下のように述べている。「地政学的緊張による原油価格の高騰は、混乱が比較的短期間であれば、不確実性が和らぎ始めればすぐに収束する可能性があると、歴史が示している。しかし、もし生産や輸出が持続的な混乱に直面するならば、真の供給ショックとなり、インフレ、金利見通し、そして世界経済の成長に影響を与えるだろう」。

この戦争は長期化するのか、短期戦で終わるのか?

2025年にイスラエルとイランの間で紛争が勃発した時には、戦闘は約12日間続いた。原油と天然ガスの価格は、イランへの攻撃前の数日間と戦闘勃発時に急騰したが、停戦が発表されるとほぼ開戦前の水準まで値を戻した。

今回は、3月2日月曜日の朝、市場開始とともに原油価格が急騰し、その後も上昇を続けた。国際的な原油価格の指標であるブレント原油は3日に1バレルあたり84ドルとなり、前週比15%上昇した。北米の原油指標であるWTI原油は、3日の取引を1バレルあたり74.81ドルで終え、戦争勃発前と比べて約11%上昇した。

以下は2026年末から3月3日までのWTI原油価格の推移である。

しかし、ここ2日間の上昇にもかかわらず、原油価格は、ロシアのウクライナ侵攻を受けて2022年5月に記録した1バレルあたり114ドル超の高値を、依然として大きく下回っている。

株式市場は下落しており、欧州とアジアでの下落幅は米国よりも大きくなっている。米国株式は月曜日の取引でほぼ下落分を回復し、火曜日には前日比わずか1%安で取引された。債券市場では、10年物米国債の利回りが小幅に上昇し、金曜日の終値直前の4.00%弱から火曜日の取引中には4.11%まで上昇した。

この市場の反応の背景には、ウォール街の大半の投資家が、現在の戦争が長びくことはないと見ていることがある。ウェルズ・ファーゴ投資研究所のグローバル投資戦略責任者、ポール・クリストファー氏は「これは一時的なものであり、限定的なものになるだろう」と述べている。同氏は数週間での決着を見込んでおり、「これは供給の問題ではなく、ボラティリティの問題だ」と指摘している。

ほとんどの観測筋は、この戦争のインパクトは数週間以内に終わると見ているが、そうなると断言はできない。ドナルド・トランプ米大統領は2日、ソーシャルメディアへの投稿で、米国の「事実上無制限」にある兵器備蓄について言及し、紛争の長期化を示唆している。大統領は、中級・中上級レベルの兵器を使用すれば、「われわれは戦争を『永遠に』、そして非常に成功裡に戦える」とつぶやいたのである。

長期戦はどんな影響をもたらすのか

「もしも」のシナリオは、長期化する戦争がエネルギー価格に及ぼす影響に焦点を当てている。ゴールドマン・サックスによると、平時には世界の液化天然ガス供給量の5分の1が、イランと国境を接するホルムズ海峡を通っている。しかし、週末に戦闘が勃発して以来、船舶の航行は停止している。

「この状況が数週間あるいは数か月続くようであれば、世界の海上輸送による原油供給の20~30%が止まることになり、何らかの大きな反動が生じるのは避けられない」と、GMOのリソース・気候変動・クオリティスペクトラム戦略の主任ポートフォリオマネジャー、ルーカス・ホワイト氏は述べている。「当社はコモディティ価格の予測には踏み込まず、私自身も価格予測は行いません。なぜなら、それは予測不可能だからです。しかし、もしこの状況がしばらく続けば、石油価格が100ドルを超えても、驚きはないでしょう」。

エネルギー供給途絶の可能性は「現時点で最大の経済的懸念であり、リスクです」と、ニューバーガー・バーマンのマネージング・ディレクター兼ウェルス部門最高投資責任者であるシャノン・サッコシア氏は述べる。原油価格の上昇が、インフレと経済成長に深く関わる事象であるからだ。

以下は2月27日の市場が開いた時点を起点としたモーニングスター・USマーケット指数(赤)とモーニングスター・欧州株指数(青)の3月3日までの推移である。

原油価格ショックはインフレとFRBにどんな影響を与えるのか?

サッコシア氏は、投資家は原油価格が高騰する可能性を、戦争前の主要な世界経済状況を踏まえて捉えるべきだと述べている。同氏によれば、ニューバーガーは安定あるいは低下する金利という成長を促す経済環境を想定していた。例えば米国では、FRBが2026年に2回~3回の利下げを行うという見通しであった。

しかし状況は変化し、「市場はすでに、潜在的な原油価格の上昇を根拠として、1~2週間前よりもFRBがインフレに対して警戒を強めると予想しています」と、エデルマン・フィナンシャル・エンジンズのチーフ・インベストメント・ストラテジストであるケイティ・クリンゲンスミス氏は述べる。

エネルギーコストは変動が激しいため、政策担当者がインフレ見通しを考える際に除外されがちだが、エネルギー価格が持続的に上昇すれば、経済全体のインフレ動態が変化するかもしれない。「エネルギー価格が持続的に高い状態になれば、当然ながら商品やサービスの価格にも影響が及びます」とサッコシア氏は指摘する。そして「エネルギー価格が需要破壊を引き起こし、ある時点で、それが成長鈍化へと経済の流れを変えるでしょう」と述べる。特に欧州では、暖房用燃料として天然ガスへの依存度が高いため、影響は大きいという。「結局、オイル・ショックがどのくらいの期間続くかにかかっています」と彼女は語る。

J.サフラ・サラシン・サステナブル・アセット・マネジメントの国際エコノミストであるラファエル・オルシナ=マジス氏は、「最悪のシナリオ」では、「原油価格が1バレルあたり100ドルを超えた状況が続く場合、欧州のインフレ率を2パーセントポイント以上押し上げ、多くの経済圏を景気後退に追い込む可能性がある」と述べる。

米国の状況はやや異なるが、世界的な原油価格変動に対する脆弱性は依然として米国にもある。ウェルズ・ファーゴのポール・クリストファー氏は「米国でも原油価格が上昇するかもしれないが、景気後退に陥ることはないでしょう。米国は経済を維持するのに十分な量の原油を自国で生産しており、それが多くの資金を呼び込むことになるでしょう」と語る。

それでも、一部のアナリストは、インフレ再燃リスクが中央銀行の判断を大きく変える可能性があると指摘する。ストラテガスのチーフエコノミストであるドン・リズミラー氏は火曜日の顧客向けレポートで「米国経済には依然としてインフレの種が残っている」と記し、「持続的なインフレ懸念が生じれば、金利引き上げなどの政策選択は、より大きな混乱を招くかもしれません」と述べている。◇

※ 本稿はクリスチャン・メイズとレスリー・ノートンが寄稿したモーニングスターの記事「What If the Iran War Is Not Short-Lived?」をモーニングスター・ジャパンが翻訳したものです。原文と翻訳に相違がある場合は、原文が優先されます。

著者はこの記事で言及されたいかなる有価証券も保有していません。詳細はこちらをご覧ください: モーニングスターの編集方針