スペースXはさておき――SKハイニックスの記録的な米国IPOが、AI関連株ブームの試金石となる

メモリ関連株が急騰後に急落している状況で、SKハイニックスは米国市場で280億ドルの調達に挑む。

SKハイニックス本社ビルの様子です。
Seung-il Ryu/NurPhoto 通じて Getty

2026年の株式市場で最も注目を集めている半導体分野は、IPOの試練を乗り越えられるだろうか。AI向けインフラ投資は、今年上半期を通じて、メモリ半導体株やその他のハードウェア企業の株価を大幅に押し上げてきた。そして現在、韓国の半導体メモリ大手SK Hynix(KRX 000660)が、今週にも米国市場で280億ドルという記録的な資金調達に乗り出す。同社の株価は年初来で3倍以上に急騰し、3年前と比べると約20倍(2,000%)に達している。

金曜日から「SKHY」のティッカーシンボルで取引が開始されるSK Hynixの米国預託株式(ADS)の売り出しは、同社、業界、そして株式市場全体にとって重要な局面で行われる。韓国市場に上場している同社株式は、過去1年間で700%以上上昇したが、6月下旬以降は25%下落している。

以下は、SK Hynix(折れ線グラフ青)をはじめとする半導体メーカーの株価とモーニングスター米国株式指数(同黄色)の年初来推移である。

一方、韓国の電子機器大手であるSamsung Electronics(005930が6月7日に行った暫定決算の公表によってメモリ価格の上昇ペース鈍化が明らかになると、株価は7%下落した。先月の最高値からは18%の下落となっている。一方、米国株式市場は今年上半期を通じて活況を呈してきたが、Micron Technologies(MU)、SanDisk(DSK)、Western Digital(WDC)といったハードウェア各社の株価は、ここ数週間でいずれも2桁台の下落となっている。

SK Hynixなどのメモリ関連株の投資家にとって、製品への旺盛な需要による製品価格の急激な上昇と大きな利益という追い風は、現在、逆風に変わりつつある。これは、近々半導体生産における供給増加が実現し、供給不足の緩和と価格下落につながる可能性が高いと警戒する声があるからだ。実際、SK HynixのADS売出しは、2つの重要プロジェクトのための資金調達を目的としている。

「米国の投資家は依然としてハイテク株式を非常に好んでいますが、ほんの数週間前ほど確実な投資先ではなくなっていると思います」と、インタラクティブ・ブローカーズのチーフストラテジスト、スティーブ・ソスニック氏は述べている。

SK Hynixの記録的な米国上場

今年はすでにIPOが活況を呈しているが、SK Hynixの株式公開に加え、今後も巨大テック企業の大型IPOが予想されている。6月にはスペースXが話題を独占し、IPOで過去最高の750億ドルを調達し、さらに引受会社が追加株式を購入できる「グリーンシュー・オプション」を通じて、約100億ドルを追加調達した。投資家は、AnthropicやOpenAIによる超大型IPOの可能性に注目しているが、報道によるとOpenAIのIPOは2027年まで延期される可能性があるとされている。

ルネッサンス・キャピタルによると、SK Hynixの今回の上場案件は史上2番目の規模となる見込みである。米国市場で取引される非米国企業の株式(ADSを含む)の中では、SK Hynixは、2014年のAlibaba(BABA)による210億ドルの調達を上回る規模となる見込みである。

モーニングスターの株式アナリスト、ユィ・ジンジエ(余靖杰)は、SK Hynixが米国で株式を発行する狙いについて、韓国市場で取引される企業に比べて米国企業に一般的に付与されるプレミアム(割高な評価)を享受することにあるだろうと指摘する。「私は、今回の資金調達を、主に韓国と米国のメモリ関連企業間の評価額の格差を埋めるための手段だと見ています。韓国のメモリ企業の評価額は、歴史的に見て米国の同業他社よりも低く抑えられてきたからです」とユィは述べている。

新たな半導体工場建設の資金調達

同社が米国でIPOを行う理由は、調達した資金を、以前に発表された2つの主要な生産・パッケージング施設の建設費に充てるためである。SK Hynixは、世界第2位のメモリ半導体メーカーであり、最近、同社はAIサーバー向け高帯域幅メモリチップ(HBM)で特に大きな成功を収めている。AIハードウェアを専門とする他の企業と同様、膨大な需要により供給が追いつかず、SK Hynixの製品価格は急騰している。

ユィによると、2つの半導体プロジェクトのうち、1つは2027年上半期中に稼働を開始する予定である。「この最初の工場だけでも、2030年までにSK Hynixの公称生産能力は、現在比で約60%増加することになります」とユィは述べている。「われわれの基本シナリオでは、新たに建設される龍仁(ヨンイン)工場とSamsung、Micron、そして中国の新規参入企業による生産能力拡大が進み、今後2年間で需給バランスが大幅に改善すると見ています。その結果、メモリ製造企業が現在顧客に対して持っている価格決定力が低下する可能性があります」。彼は、これが業界を循環的な低迷期へと導く恐れがあると指摘している。

ルネッサンス・キャピタルのリサーチ・ディレクター、ニック・アインホーン氏は、これが半導体株の特性を如実に表していると説明している。同氏は、SK Hynixは2023年に総利益率がマイナスとなり、最終赤字を計上したが、2025年第3四半期以降で同社の売上高は2倍に拡大したと指摘する。「課題となるのは、この業界が非常に循環的な影響を受けやすいという点です」と同氏は述べている。

株価上昇余地は限定的との見方

こうした状況を踏まえ、モーニングスターのユィ氏は慎重な見通しを示している。SK Hynixの株価はモーニングスター・株式レーティングで3つ星(中立)の評価となっており、これは株価が適正価値推計値の範囲内で取引されていることを意味する。「リスク・リターンの観点から、現在の価格水準では上昇余地は限定的だと見ています」と同氏は述べている。「市場は、これら(半導体関連)企業の収益性を、構造的に高く安定したものとして株価に織り込んでいるようですが、われわれはその見解には同意しません」。

SK Hynixなどのメモリ製造企業は現在、大幅な価格引き上げを可能にする強力な価格決定力を享受しているが、ユィは「それは、今のような深刻な供給不足によって成立しているに過ぎない」と述べている。2027年から2028年にかけて新たな供給体制が整うにつれて、「需給バランスは劇的に改善し、メモリ企業の価格決定力は低下し、メモリサイクルの転換を迎えることになるでしょう」。

IPOは市場心理の試金石となるか

ルネサンスのアインホーン氏は、現在のIPO市場環境がSK Hynixの売出しを後押ししていると述べている。「今回の案件はSpaceX(SPCX)のIPOに続くものです。SpaceXのIPOが大きな関心を集め、取引も好調だったことを考えれば、今回また別の大型案件が登場したのは偶然ではありません」。 同氏は2026年はIPO市場全般が好調だったとし、ルネッサンスIPO指数の上昇率が約28%に達しているのに対し、米国株式市場全体では11%にとどまっていることを指摘した。「米国株式市場への関心は全般に高まっており、米国のIPOに対する関心も高まっています」と同氏は述べている。

しかし、インタラクティブ・ブローカーズのソスニック氏は、もしこのIPOが不調に終わったり、メモリ関連株が続落したりした場合、市場全体への波及効果は、通常のセクターや業種間の資金ローテーションよりも大きくなりかねないと指摘している。 「通常の状況で、それまでは銀行株が市場を主導していたが、今は資本財株が取って代わった――と言われれば、それはそれで受け入れられます」と同氏は述べている。 しかし、今回の場合は、メモリ関連株が市場全体のリターンを押し上げる主な要因となってきた。ここで重要なのは、これらの株式には、レバレッジ型ETFを含む「短期志向の投資資金(ファスト・マネー)」が流入しており、Micronなどの個別銘柄の上昇を急速に増幅させてきた点である。「もし、一般的なセクター間の資金ローテーションではなく、レバレッジのポジション解消に向き合わざるを得なくなれば、市場心理に変化が生じる可能性があります」と彼は指摘している。◇

※ 本稿はモーニングスターの「Forget SpaceX—SK Hynix’s Record US IPO Tests the AI Trade’s Hottest Corner」をモーニングスター・ジャパンが翻訳したものです。原文と翻訳に相違がある場合は、原文が優先されます。

※ 本稿は、情報提供のみを目的としており、特定の金融商品、銘柄などを推奨するものではありません。投資における判断は、ご自身の投資目的、投資期間、資金性格、投資への姿勢などを勘案して、ご自身の責任において慎重に行ってください。

著者はこの記事で言及されたいかなる有価証券も保有していません。詳細はこちらをご覧ください: モーニングスターの編集方針