今週も引き続きイラン戦争がニュースのトップを飾っている。イースター休暇中に中東のインフラへの脅威がさらに高まったことを受け、原油価格は上昇を続けている。
イラン戦争の開始以降エネルギー価格はすでに急騰しており、インフレだけでなく、経済成長についても先行きはますます不透明になっている。
インフレ率の上昇見通しと、経済成長の鈍化予想とが一緒に語られることが増えており、「スタグフレーション」という言葉も散見されるようになった。しかし、現状をスタグフレーションと表現するのは適切ではないだろう。
インフレ率上昇と成長鈍化――ただし1970年代とは違う
モーニングスターの米国担当チーフエコノミスト、プレストン・コールドウェルは原油価格の急騰を受けて、2026年の個人消費支出指数(PCE指数/FRBが重視するインフレ指標)を年初予測の2.6%から、3.6%に引き上げた。なお、2月のPCEインフレ率は4月9日に発表される予定である。
同時に、コールドウェルは2026年のGDP成長率予測を2.2%から2.1%に引き下げた。「イラン戦争が個人消費に与える影響や、人口増加率鈍化についての最新の予測を反映し、足元のGDP成長率の見通しを引き下げた。これらは消費と住宅投資の重石になるだろう」とコールドウェルは述べている。
インフレ率上昇とGDPの低下。しかし、彼は米国経済が1970年代のような状況、いわゆる「スタグフレーション」に陥るという見方には、以下のように反論している。「1970年代との比較は的外れだ。石油製品への支出が個人消費総額に占める割合は2025年では約3.3%であり、1970年代当時の平均8.3%と比べると半分以下になっている」とコールドウェルは説明する。
さらに、「エネルギー価格の高騰が収まれば、インフレ率は低下傾向に転じると予想している。労働市場と経済全体に十分な余剰があるため、2026年のインフレ急上昇の後、インフレ率はFRBの目標である2%へと再び収束していくはずだ」と述べる。
こうした状況を踏まえ、コールドウェルは、FRBが金利を長期間据え置くと予想しているが、次の段階では金利引き下げに踏み切るだろうと言う。「FRBは2026年は金利を据え置き、その後2027年から2028年にかけて累計1.25%の利下げを実施すると考えている」と述べている。
以下のグラフは原油(緑)と関連商品(黄)がPCE(個人消費支出)に与える影響を示している。1970年代と現在とではインパクトが異なっていることが分かる。
PCEインフレへの石油の寄与度(%)
CPI発表を控えて
4月3日、聖金曜日の休場中に予想外に堅調な雇用統計が発表された。続く今週の経済イベントは6日に発表される3月のCPI(消費者物価指数)である。
これは、中東情勢の影響がエネルギー価格の上昇として明確に表れる最初の政府レポートとなる。JPモルガンのエコノミストらは、CPIのエネルギー部門が11%上昇したことを受け、CPIが2月の年率2.4%から3月は3.4%に跳ね上がると予想している。
食料品とエネルギーを除いた場合でも、状況は芳しくない。JPモルガンはコアインフレ率が2.5%から2.7%に上昇すると予測しており、しかもこれらは、輸送費や肥料価格の上昇など二次的な影響がまだ経済に及ぶ前の話である。
戦争の影響で、すでに厳しい住宅市場はさらに悪化
米国では住宅価格の高騰と、それが住宅市場に及ぼす逆風について、すでに多くの議論がなされている。最近の債券利回りの上昇と、それに伴う住宅ローン金利の上昇が、この問題をさらに深刻にしている。
モーニングスターの資本財・サービス担当のエクイティ・リサーチ・ディレクター、スリヤンシュ・シャルマは、「ここ数週間の地政学的混乱は、経済全般、消費者心理、住宅市場に重大な影響を及ぼす可能性がある」と述べている。シャルマは、住宅ローン金利が2月下旬の6%未満の水準から大幅に上昇していることを指摘し、こうした状況を総合的に判断すると、「2026年は米国の住宅市場にとって、またしても厳しい年になるだろう」という。
下のグラフは、米国の住宅ローンの平均金利の推移を示している。
それでも住宅関連株に投資機会があるかもしれない
厳しい状況ではあるが、シャルマは住宅関連株式に長期投資家にとっての好機があると指摘している。「特に、住宅ローン金利が低下すれば、米国の若年層の世帯形成や住宅所有率がさらに向上する余地は今もある」と彼は述べている。
注目すべき企業は、大手住宅建設会社のLennar(LEN)や、住宅改修リフォーム製品メーカーのMasco(MAS)などである。いずれも、モーニングスター・株式レーティングで5つ星(非常に割安)の評価となっており、2026年の住宅市場の低迷により株価は大幅な割安水準で取引されている。Lennarの株式は、モーニングスターの適正価値推計値を大きく下回って取引されており、株価/フェアバリュー倍率は0.57である。Mascoの株価/フェアバリュー倍率は、週末終値時点で0.67である。
Lennarは米国第2位の住宅建設会社であり、シャルマは、同社が資本効率性向上に向けて最近戦略転換したことがプラスに働く可能性が高いと考えている。2025年に60億ドル規模の土地ポートフォリオをMillrose Propertiesへスピンオフしたことで、バランスシートの流動性が高まった。「Lennarの株式には長期で見ると大幅な上昇余地がある。現在のバリュエーションには、同社の資産軽量化戦略への転換がまだ十分に織り込まれていない」とシャルマは述べている。
Mascoは、住宅改修・建築資材を製造している。シャルマは、「関税コストの増加や景気後退懸念を背景に、消費者が住宅修繕やリフォームへの支出を控えているため、同社の売上高は伸び悩んでいる」と指摘している。一方で、「米国の住宅ストックの老朽化が進み、消費者のスマートホームや省エネ製品志向が強まるにつれ、ひとたび経済環境が好転すれば、Mascoは成長する修繕・リフォーム市場に対応できる有利なポジションにある」という。「より確かな貿易政策と健全な経済環境の下で米国の消費者が自信を取り戻せば、Mascoは一貫して売上高で5%前後の成長率と、10%台後半の営業利益率を達成すると考えている」とシャルマは述べている。◇
以下はLennar(青)とMasco(赤)の株価/適正価値推計値倍率の推移を示している。
※ 本稿はモーニングスターの「Markets Brief: Don’t Call It Stagflation」をモーニングスター・ジャパンが翻訳したものです。原文と翻訳に相違がある場合は、原文が優先されます。
※ 本稿は、情報提供のみを目的としており、特定の金融商品、銘柄などを推奨するものではありません。投資における判断は、ご自身の投資目的、投資期間、資金性格、投資への姿勢などを勘案して、ご自身の責任において慎重に行ってください。


