市場概況:この指標は、ドットコムバブルを超える極端な水準にある

モメンタム主導の市場に潜む下落リスク、ブラックロックのリー氏が語る「新興国AI関連取引の縮小」と「米国市場での投資方針維持」について。

alt=""

ここ数年で屈指の好調な四半期(一部のAI関連指数は史上最高)を終えた今、当然ながら、この上昇が持続するのかどうかが問われている。AIはバブルだという指摘もあるが、市場は依然としてAIインフラ関連への投資に強気な姿勢を示している。

今週は、予定されているニュースや経済指標が例年より少ない週となっている。注目すべきイベントの一つは、6月のFRB(米連邦準備制度理事会)会合の議事要旨の公表である。これによって、ケビン・ウォーシュ新議長の下での議論の雰囲気がうかがえる可能性がある。もう一つの大きなイベントは、韓国のSKハイニックス(000660)によるADR(米国預託証券)の新規公開(IPO)が予定されていることだ。同社の株式は、現地通貨ベースで過去1年間に684%という驚異的な上昇率を記録している。

経済指標の発表が比較的少ない今週、多くの投資家は、6月の消費者物価指数(CPI)や決算シーズンの幕開けを控えた来週以降の動向に注目することになるだろう。

今週の「市場概況」では、株式市場に関する2つの見解を取り上げる。1つ目は、モーニングスター・ウェルスによるもので、株式市場の極端なモメンタム(勢い)に対する警戒的な視点を示す分析である。2つ目は、ブラックロック・インベストメント・インスティテュートのグローバル・チーフ・インベストメント・ストラテジストであるウェイ・リー氏によるもので、新興国市場におけるAI関連の投資について一定の慎重な姿勢を示している。それでも同氏は、チームが掲げる「希少性」というテーマの一環として、米国市場に対しては引き続き強気な見解を維持している。

株式市場における強力なモメンタム

6月にも指摘した通り、今年は株価上昇率が100%を超える企業が多数みられる。このような上昇局面では、モメンタム戦略(上昇している株式はさらに上昇し、またその逆も同様だと予想する投資戦略)も利益を生む可能性がある。しかし、モメンタム戦略のこうした動きは、市場が極端な状態にあることを示す指標と捉えることもできる。

モーニングスター・ウェルスの米州担当最高投資責任者(CIO)であるフィリップ・ストレールは、S&P 500モメンタム指数の最近のリターンに注目している。同指数は4月から5月にかけて34%のリターンを記録したが、これは過去30年以上で最も好調な2か月間となった。「これに匹敵する急騰が最後に起きたのは、インターネットバブルのピークに近い1999年終盤でした」と同氏は述べている。

ストレールは、投資家にとっての示唆として、「急上昇したものは、その後大きく下落する可能性がある」と指摘する。「当社の調査によると、モメンタムが急加速する局面では、その後トレンドが反転する可能性が高まることが示唆されています」と同氏は述べている。「市場サイクルはそれぞれ異なりますが、モメンタムが極めて強まる時期は、投資家の楽観的な見方が強くなり、投機的な行動が見られる時期と重なることがよくあります。これが必ずしも差し迫った反転を示唆するわけではありませんが、市場の一部が極めて楽観的なシナリオを価格に織り込んでいる可能性があることをあらためて認識させるものです。このような環境下では、より選別的な投資アプローチが妥当だと考えています」。

新興国対米国:AI関連投資の動向

米国株式市場は15.5%の上昇率を記録し、過去6年間で最も好調な四半期となったが、一部の新興国市場で見られた高騰はそれ以上の勢いがあった。この四半期、モーニングスター・韓国株式指数は75%以上、台湾株式指数も48%という急騰を示した。この爆発的な上昇の原動力となったのはAI関連の投資(AIトレード)であり、両国の主要な半導体企業の株価を押し上げた。

2026年を迎えた当初、ブラックロックはこうした理由からアジアの新興市場を「オーバーウェイト」としていた。しかし現在、リー氏によると同社は資産配分を「ニュートラル」に変更したという。リー氏は、これはバリュエーション(株価評価)の問題ではなく、ボラティリティとリスク調整後リターンの特性を考慮した判断だと述べている。「ポートフォリオ構築においては、リターンとリスクへの寄与の両方を常に考慮する必要があります」と彼女は述べ、両市場ともボラティリティが著しく高まっていると指摘している。「現時点では、オーバーウェイトを維持するよりも、少し様子を見つつニュートラルに戻したいと考えています」。

しかし、ブラックロックは「AIトレードが終わる」と見ているわけではない。先週行われた年央のグローバル見通しに関する議論の中で、リー氏らチームメンバーは、投資テーマとして「希少性(scarcity)」を挙げた。その代表的な例が、AIインフラ構築をめぐる競争で生じている供給不足である。彼女は、こうした状況こそが米国株式への「オーバーウェイト」戦略につながると述べている。

「米国市場への投資においては、2つの考慮すべき点があります。1つは、ボトルネックや供給不足を見極めることです」と彼女は説明している。「米国は、最先端の半導体チップやAIモデル、エネルギーの自給、そして資本市場の厚みと広がりなどにおいて、大きな優位性があります。したがって、有望な企業を見極めるのは簡単ではありませんが、将来の勝者となる企業の多くは、依然として米国市場で見つかる可能性が高いでしょう」。

そうした有望な企業を市場のどこで見つけるかについて、彼女は次のように述べている。「私たちは、あらゆるAIシステムに不可欠な『希少なインフラ』に投資したいと考えています。具体的には、電力や送電網、半導体、そしてフィジカルAI(ロボティクスや自動運転など現実世界でAIを活用する分野)まで対象となります。フィジカルAIについても、米国にはバリューチェーンと技術スタックが存在します。そのため、素材、資本財、情報技術、公益事業、エネルギーなど幅広いセクターに投資機会が広がっています」。

さらにリー氏は、小型株はAI分野において見過ごされがちな投資機会であると指摘する。例えば、小型株全体に占めるメモリ関連株の割合はわずかだが、それらの企業がリターン創出の原動力となっている。「一部の投資家は小型株を『アンチAIトレード』であると捉えていますが、より積極的な観点から言えば、小型株やバリュー株といった従来あまり注目されてこなかったエクスポージャーの中に、興味深い機会を見出すことができるという主張も成り立ちます」と述べている。 ◇

※ 本稿はモーニングスターの「Markets Brief: This Market Indicator Is at a Bigger Extreme Than During the Dot-Com Bubble」をモーニングスター・ジャパンが翻訳したものです。原文と翻訳に相違がある場合は、原文が優先されます。

※ 本稿は、情報提供のみを目的としており、特定の金融商品、銘柄などを推奨するものではありません。投資における判断は、ご自身の投資目的、投資期間、資金性格、投資への姿勢などを勘案して、ご自身の責任において慎重に行ってください。

著者はこの記事で言及されたいかなる有価証券も保有していません。詳細はこちらをご覧ください: モーニングスターの編集方針