マーケット概観:市場はあとどれだけの不確実性に耐えられるのか?

そして、プライベート・クレジットのリスクは伝染性があるか?間近に迫るFRBの決定は?

霧の雲の中へ入っていくクマを描いたフォトコラージュのイラストで、背景には上下を指す矢印が描かれています。

イスラエル・米国とイランとの戦争は3週目に入ったが、現時点でこの紛争について唯一明らかなのは、いつまで続くのか、どんな展開になるのかが「不透明である」という点だけである。

当初、ウォール街では戦争は長く続かず、原油や天然ガスの輸送への混乱も一時的なものに留まるだろうという、非常に強い確信が広がっていた。そうなる可能性はまだ残されているものの、アナリストはその可能性が狭まってきたと指摘している。

これまでのところ、米国株式市場は不確実性にさらされながらも、比較的軽微な下落にとどまっている。戦争が始まって以来、Morningstar 米国株式指数は4%以上下落したが、過去1年でみれば依然として20%弱の上昇を維持している。しかし同時に、プライベート・クレジット市場の亀裂だけでなく、AIが幅広い産業のビジネスモデルに与える影響についても懸念が高まっている。さらに、雇用情勢は停滞しており、インフレ率はFRB(連邦準備制度理事会)の目標を大幅に上回っている。

下のグラフはトランプ大統領がイラン攻撃を開始して以降の米国株式市場の推移である。

問題の大小を問わず、投資家にとって現在の環境は大きな不確実性に満ちている。「政治や軍事に関わる事柄は分析がはるかに困難なため、非常に難しい状況です」と、T. ロウ・プライスのマルチアセット部門で資本市場ストラテジストを務めるティム・マレー氏は述べている。「私たちは、想定されるシナリオがどれほど現実味を帯びているかを評価しようとしているところです」。

原油価格の今後の見通しは?

株式市場は、あとどれほど持ちこたえられるのだろうか。戦争勃発時に指摘した通り、世界の注目は地図上のひとつの海域に集まっている。「すべてはホルムズ海峡がどうなるかにかかっています」とマレー氏は指摘する。平時において世界の原油・天然ガス輸送量の20%を占めるこの海峡をどれだけの船が通過できるかが、原油価格の高止まりが続く期間や、経済への打撃の程度を左右することになるだろう。

その点に関して状況は芳しくない。原油価格の世界的なベンチマークであるブレント原油は、先週、1バレルあたり100ドル台で取引を終え、戦争開始以来40%近く上昇した。米国のベンチマークであるWTI(ウェスト・テキサス・インターミディエート)原油は、約45%とさらに大幅な上昇となり、3月9日の週は1バレルあたり97ドル前後で取引を終えた。

「イランとの戦争が米国経済に与える主な影響は、原油価格を通じてのものです」と、ゴールドマン・サックスのアナリストらは先週のレポートで記した。「当社のコモディティ戦略担当者は現在、ブレント石油価格が3月と4月に平均98ドル(2025年の平均価格から40%上昇)となり、その後第4四半期までに71ドルまで下落すると予想しています」という。

個人支出と失業保険申請件数に注目

現時点では、原油・ガス価格の見通しが2週間前の予想より高止まりしているにもかかわらず、株式市場も米国経済も大きな打撃を受けないだろうという見方をアナリストの大半が依然として支持している。

ストラテガス・リサーチ・パートナーズのチーフエコノミストである、ドナルド・リスミラー氏は、ポストコロナ時代に米国経済は景気後退に陥ることなく、幾度かのショックを乗り超えてきたと指摘する。たとえば、ロシアのウクライナ侵攻後の原油価格の高騰や、それに続くインフレの急上昇、2023年の金利の急上昇と、地域銀行の破綻などが挙げられる。リスミラー氏は、この一連の出来事を通じて一貫していた重要な要素を一つ指摘する。「消費動向は、全体を通してかなり安定していたのです」。

「それは(消費者が)安心していたという意味ではありません」と彼は述べ、景況感の低下を指摘した。「しかし、インフレ調整後の個人支出をみると、2021年以降かなり安定しています。おかげで、我々はショックを乗り切れたのです」。

リスミラー氏によれば、経済ショックの前兆は、毎週木曜日の朝に発表される新規失業保険申請件数のデータに現れる可能性が高いという。申請件数はここ数か月、週平均20万件~24万件の間で比較的安定している。「もし26万件を超えたら、経済の見通しは崩れ始めるでしょう」と彼は述べている。

下のグラフは、米国の週間新規失業保険申請件数(青)と、その4週間移動平均(赤)である。

プライベート・クレジットのリスクは伝染するのか?

一方、金融関連ニュースの見出しは、依然としてプライベート・クレジット市場の貸し手や資産運用会社が直面している苦境に関する報道で溢れている。

ここには二つの側面がある。一つは、機関投資家や富裕層に限られていたプライベート・エクイティやプライベート・デットという世界への投資を、小口投資家にも広げようとした資産運用会社による動き、つまり曖昧になる公開市場と非公開市場の境界をめぐる反動である。投資家はこれらのファンドから急いで資金を引き出そうと殺到したが、場合によっては、ファンドの償還規定によって出口が閉じていることに気づかされた。(※モーニングスターのマネージャー・リサーチはこの件について、例えばこちらの記事などで詳しく取り上げており、ピッチブックの同僚であるアレクサンダー・デイビスも同様に報告している。)

もう一つの根本的な問題は、AIの急速な台頭により将来が突然不透明になったソフトウェア企業への投資比率が高いプライベート・ローンのポートフォリオに対する懸念である。

T. ロウ・プライスのマレー氏によれば、ソフトウェア企業向けプライベート・クレジット・ローンの評価額に対する懸念や、投資家がプライベート・クレジット・ファンドから資金を引き揚げる動きが見られるにもかかわらず、これが金融市場の他の分野に波及する兆候、いわゆる「伝染」現象は、今のところ表れていないという。

「プライベート・クレジットの貸付機関以外に波及する可能性は低いでしょう」とマレー氏は述べ、その理由の一つとして、ファンドが投資家の資金引き出しに制限を設けていることを挙げている。しかし、関係する企業にとっては、「解約騒ぎを避けるための取り決めは整っているものの、当然ながら反発は避けられないでしょう。その影響はおそらく相当な期間続くき、プライベート資産運用機関は事業上の逆風に直面することになる可能性が高い」と指摘した。

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FRBの会合では目立った動きはないと予想されている

中東以外の問題で、3月16日の週の市場における最大の注目イベントは、18日に終了するFRBの2日間の政策会合だろう。金利の方向性に関する先物トレーダーの予想を反映するCMEの「FedWatch」ツールによると、市場ではFRBがFF金利の目標レンジを3.50%~3.75%で据え置くとの見方がほぼ一致している。これは、FRBが10月末に利下げを実施して以来、3回連続の政策据え置きとなる。

最大の焦点は、FRB当局者が原油価格の急騰をどのように見ているかである。そのため、トレーダーやアナリストは、ジェローム・パウエルFRB議長による会合後の記者会見に注目している。原油価格の高騰と、すでにFRBの目標である2%を上回っているインフレ率を背景に、今年に入ってFRBによる今後の利下げへの期待は大幅に後退している。戦争前は、トレーダーたちは今夏中に利下げが行われると予想していたが、現在市場では、少なくとも9月まではFRBの政策が据え置かれるとの見方が広がっている。

下のグラフは、CME FedWatchによる9月16日のFRB会合でのFFレートレンジの予測である。棒グラフの色が薄い順に、2月27日時点、3月6日 時点、3月12日時点を示している。◇

※ 本稿はモーニングスターの記事「Markets Brief: How Much More Uncertainty Can the Markets Take?」をモーニングスター・ジャパンが翻訳したものです。原文と翻訳に相違がある場合は、原文が優先されます。

著者はこの記事で言及されたいかなる有価証券も保有していません。詳細はこちらをご覧ください: モーニングスターの編集方針