DBiのアンドルー・ビア氏が語る、しぶとく生き残るマネージド・フューチャーズ戦略の本質

3つのトレンドが追い風に:ドル安・非米国株市場の好調・弱含みの円

レスリー・ノートンをフィーチャーしたイラストは、疑問符と電球の吹き出し、盾のようなアイコン、そして「Q&A」というテキストを含むグラフィックで囲まれています。

聞き手:モーニングスターのレスリーP.ノートン

ゲスト:ヘッジファンドDBiのアンドリュー・ビア氏

今年は波乱の幕開けとなりました。ドナルド・トランプ米大統領がグリーンランドの買収と欧州諸国への関税賦課に言及したことで株式市場は動揺し、金価格は1トロイオンス当たり5,000ドル近辺という史上最高値を記録(※その後も更新し続け1月29日時点で5400ドルを突破)、一方でドルは急落しました。同時に、減税と支出拡大の計画が、世界で最大の債務を抱える政府に対する不安を引き起こし、日本国債の利回りは急上昇しました。

これらの状況は、リキッド・オルタナティブ戦略と呼ばれる分野のひとつで、さほど有名ではない「マネージド・フューチャーズ戦略」と呼ばれる投資手法にスポットライトを当てています。このヘッジファンドのような戦略は、先物取引を用いて市場トレンドの新たな兆しを捉えます。トレンドフォロー型ファンドとも呼ばれるマネージド・フューチャーズは、トレンドが育ちつつある最中に、その新たな情報に投資家が反応するのが遅すぎるという特性を利用して利益獲得を目指します。

モーニングスターのアナリスト、ラン・アン・トランとライアン・ジャクソンは次のように述べています。「マネージド・フューチャーズは、従来型ポートフォリオのリスク分散において長年の実績を示している。その分散効果は、市場の下落局面でポートフォリオにおける存在意義を正当化する」。

今回はヘッジファンドのベテランであり、投資会社 DBi の経営メンバーであるアンドルー・ビア氏に話を聞きます。同社は、10 の主要市場における先物契約に投資する iMGP DBi Managed Futures Strategy ETF DBMF を運用しています。

このETFは年初来で5%上昇しています。一方、Morningstar 米国株指数が示す市場の上昇は1.4%でした。もちろん、このようなアウトパフォーマンスが常に続くわけではありません。2025年は、このETFの上昇率は13.8%でしたが、米国株指数は17.4%上昇しました。それでもなお当ETFは、モーニングスターがシステマティック・トレンドに分類したファンドの2025年の平均上昇率である3.7%を大きく上回っています。

下のグラフは2020年年初を起点とする同ETF(青)と同指数(赤)の動きを示しています。

活発なインタビューの中で、ビア氏は注目しているトレンドと、長期ポートフォリオにおけるマネージド・フューチャーズ・ファンドの意義について語ってくれました。

※ 本対談は時間の都合と明瞭さを考慮し、編集・要約されています。

非米国株式に強気、日本円には弱気のポジション

ノートン:現在、市場ではどのようなトレンドがあるとお考えですか?

ビア:マネージド・フューチャーズ市場は素晴らしい年初を迎えました。多くのテーマが同時に注目を集めています。2026年も好調でトレンドに乗ることを願っております。

マネージド・フューチャーズは、インフレの再燃など世界的な大きな変化を予測しようとする投資戦略です。こうした転換期は、多数の投資家やウェルス・マネジメントのプロにとって上手く対応することはとても難しいものです。世界が大きく変化することは滅多に無いからです。しかし変化が起きたときには、「慌てずポートフォリオを調整しない」という教科書通りの対応策では不十分な場合もあります。

われわれのファンドは、世界が変化している兆候を早期に察知するために、株式・債券・通貨・様々な商品などを研究しています。洗練された知識を持つ誰かが世界の変化に気づいているという兆(きざし)を探します。その兆候を捉えると、即座に動き出します。現在、われわれは円に対して大きなショートポジション、S&P500に対して少しのショートポジションを、そして非米国株式に対して大きなロングポジションを取っています。

多くのトレンドにとって、今年は非常に良い年となる可能性があります。ドル安傾向は複数年継続する見込みです。これは絶好調の金相場にも引き続き影響を与えるでしょう。株式は割高感があるにもかかわらず依然として大きな追い風があるという点で、幅広いコンセンサスが形成されています。米国株と比較すると、米国以外の株式市場でその傾向がさらに顕著です。外国為替市場においては、日本が多額の借金を抱えた状態であるにもかかわらず恐ろしい(scary)経済政策の実験を行っているため、円相場の急落も見られる可能性があります。

トレンドは、既知のリスクが急激に増大し始める際に形成されることがよくあります。例えばユーロに対してドルが急落する可能性があります。円に対しては、これは難しい問題です――ドルは下落傾向にありますが、円はそれ以上に下落しています。こうしたトレンドは通常、6か月から18か月ほどの期間をかけて展開します。ファンドにはトレンドを特定し、資産を保有する十分な時間があるため、こうしたトレンドはマネージド・フューチャーズ戦略にとって最良の投資機会となる傾向があります。

マネージド・フューチャーズ戦略の仕組み

ノートン:これらはトレンドフォロー型ファンドとも呼ばれます。ファンドがトレンドフォロー型でありながら、同時に逆張り型であることは、どのように可能なのでしょうか?

ビア:質問にぴったりの例をお話ししましょう。2020年6月、パンデミックが猛威を振るっている最中、10年物米国債利回りは50ベーシスポイントまで低下しました。ウォール街の賢明なマクロ経済アナリストの大半は、当時、金利がマイナスに転じると予想していました。それほど深刻な景気後退だったのです。ところが9月までに金利は70ベーシスポイントまで回復しました。この動きは投資家にとって「金利がマイナスになることはない」という十分なシグナルとなり、その後2年間金利は上昇を続けました。また、金価格が3,000ドルを下回っていた時期にも同様の論理が適用できます。当時、世界情勢の変化を示唆する十分な動きがあり、米国政府がドル安誘導に向けた包括的な取り組みを行うだろうという見方が広がっていたのです。

「トレンドフォロー」という表現は、狭義の形容としては正確です。ただし最も価値があるのは、1か月単位で変化するものではなく、1年、2年といったスパンで変化する潮流を捉えることです。

ノートン: 御社のファンドは他社とどのように 異なりますか?

ビア: われわれが2019年にETF分野に参入した当時 、マネージド・フューチャーズ・ファンドは2本だけで、運用資産額は合計で3億ドルしかありませんでした。今では約50億ドルに達し、BlackRock、INVESCO、Fidelityなどから新商品が次々と登場しています。おそらく今は十数本のマネージド・フューチャーズETFが存在しています。

それぞれのETFが、各種モデルや金融商品の最適な組み合わせについて似て非なるアプローチを取っており、こうした要素は多くの資産配分担当者(アセット・アロケーター)を死んだ魚のような目にすることでしょう。当社では「ヘッジファンド・レプリケーション(複製)」と呼ばれる手法を採用し、この分野の主要プレイヤーがマネージド・フューチャーズを通じてどんな投資を行っているかを分析し、複雑性のノイズを排除して彼らの行動を統合しようとしています。

われわれの戦略は、主要な10市場における先物契約に投資するものです。具体的には、1.米国株式(S&P 500)、2.先進国市場株式(米国を除く)、3.新興国市場株式、4.短期米国債(2年物)、5.中期米国債(10年物)、6.長期米国債(30年物)、7.為替:ドル対円、8.為替:ドル対ユーロ、9.商品:金、10.商品:原油の10市場です。各市場において、価格上昇または下落のいずれかを予測して投資を行います。これらの市場間でのエクスポージャーは、折々に変動します。

これは非常にダイナミックな戦略です。なぜなら、世界情勢が変化したとどこかで公表されるわけではありません。変化は予告なく現実となるので、伝統的な投資家やアロケーターは不意を突かれることもあります。DBiの目標は、分散投資を容易にし、市場が逆風の時でも良好な成果を上げ、魅力的なコストでETFのような顧客に優しい商品形態で、可能な限り節税効果の高い方法で、投資機会を提供することです。 ETFであれば、S&P 500(連動商品)が株式への直接的なエクスポージャーを提供するのと同様に、投資家が直接エクスポージャーを得るために利用できます。

ノートン:実例をお話いただけますか?

ビア:2022年のような年を例に挙げましょう。当ファンドは20%以上の上昇を記録しました。下落を示す赤一色の市場の中で、われわれのETFは緑の灯台のような存在でした。ロシアのウクライナ侵攻後のインフレ再燃により、株式と債券がともに15~20%下落したことは、大半のアロケーターにとって衝撃だったでしょう。伝統的な分散投資は、株式と債券が同時に下落しないという前提に依存していますから、両方が同時に下落すると、投資家は従来の戦略を転換せざるを得ません。ロシアの侵攻後は原油価格が急騰し、金利は上昇、ドルは特に円に対して急激に強くなりました。しかし、平均的な投資家はこうした資産へのエクスポージャーはありませんでした。そして何が好調だったかと言えば、マネージド・フューチャーズでした。

トランプ政権の関税政策にどう対処したか

ノートン:あなたにとって「解放記念日」はどのようなものでしたか?

ビア:多くのマネージド・フューチャーズ・ファンドにとって、2025年は非常に厳しい年でした。世界が変化する局面では優れた成果を上げる一方、乱高下が繰り返されるとこの戦略は苦戦を強いられます。驚くべきことに、2025年は世界は大して変化しませんでした。景気は後退せず、インフレの暴走もなく、DeepSeekが米国のAIへの資本投入を吹き飛ばすこともなく、債券市場の伝染的な暴落もありませんでした。(巨大な権力を持つ)世界有数のノイズ発生装置から、途方もない量のノイズばかりが生み出されたのです。

市場の激しい乱高下は、この戦略にとってしばしば地獄のように厳しい状況をもたらします。複数の市場がそれぞれ異なるトレンドを見せていましたが、それは「解放記念日は来ない」という前提に基づいていました。ところがその後、異なる市場で同時に急激な反転が起こりました。こうした局面を経験するのは辛いことですが、どんな投資戦略であっても避けては通れない苦境があるものです。

それでも2025年、われわれは大局的な視点に集中したことで、市場全体よりもはるかに良い結果を得ることができました。株式市場には強力な追い風が吹いており、「解放記念日」騒動で一時的に乱れましたが、その後は年間を通じて再び勢いを回復しました。米ドルは下落傾向にありましたが、下半期には一時的に上昇しました。金価格は歴史的な上昇を続けています。私たちは複雑に考えすぎず、年間を通じて金をロングし続けました。

「解放記念日」以降、我々は株式市場に積極的に投資しました。当時は多くの人が関税によって景気が後退し、インフレが加速すると予想していました。

ノートン:さて別の投資手法の話ですが、ここまでの所リキッド・オルタナティブ戦略はあまり良い結果を残していません。そして今、政府はプライベート資産への投資を一般の人々の確定拠出年金(401(k)プラン)にまで開放しようとしています。

ビア:リキッド・オルタナティブ商品は全体として、過去15年間にわたり緩慢な崩壊を続けてきました。ウィルシャー・リキッド・オルタナティブ指数は年率2~3%の収益率にとどまる一方、株式市場は10~15%の上昇を記録しています。 さらに深刻なことに、これらの戦略のほとんどとS&P500指数との相関性は高く、60~90%にも達しています。リキッド・オルタナティブ戦略分野は、基本的に資産運用会社が顧客を犠牲にして手数料を稼ぐ手段に過ぎません。一方、マネージド・フューチャーズは分散投資戦略です。

プライベート市場は、普通の投資とは全く様相が異なります。公開市場のように時価評価を行うことを「しない」という前提に基づいているため、手遅れになるまでポートフォリオのリスクは分かりません。われわれは、顧客に日々の流動性を提供する商品や、顧客フレンドリーな商品を求めるアロケーターを対象とした運用をしています。これは流動性関連商品では提供できない運用です。

アドバイザーがマネージド・フューチャーズ・ファンドについて知っておくべきこと

ノートン:アドバイザーにとって、マネージド・フューチャーズを選択肢とする際の最大の障害は何でしょうか?

ビア:第一に、ETFを活用する大多数のアドバイザーは、顧客に超低コストのインデックス連動型商品に目を向けるように助言してきました。マネージド・フューチャーズ分野のETFの多くは0.7%~1.0%の手数料がかかり、アクティブ運用商品として位置付けられています。そのため、(ファイナンシャル・アドバイザーが活用する)多くのETFモデルにはうまく当てはまらないのです。

第二に、運用会社はしばしば、いかに複雑で高度な運用能力があるかをRIAやアドバイザーにアピールしようとしますが、これは構造的に逆効果です。というのも、アドバイザーは、顧客の長期的な資産形成にどう役立つのかを説明することが最優先だからです(※長期でのコスト優位性の効果や指数のように分かりやすい過去データがあるものの方が説明が楽なので)。

つまり、コストと説明の難しさが最大の障壁となってきました。われわれは明らかに前進していますが、その進歩の大部分はモデルポートフォリオによるものです。

マネージド・フューチャーズというカテゴリは、25年前のプライベート・クレジットや35年前のプライベート・エクイティに似ています。アロケーターは、優れた設計の商品とそうでない商品を識別する方法、そして顧客への説明方法などの知識を深めつつあります。

マネージド・フューチャーズが人々のポートフォリオの10%を占めるようになるとは考えていませんが、3%から5%程度になるかもしれません。これは現在のゼロ%と比較した場合の数字です。ETFモデルポートフォリオの規模は4.5兆ドルに上りますが、その中でマネージド・フューチャーズが占める割合は今のところわずか数十億ドル程度です。

アロケーターとしてこの戦略で成功を収めるには、上手くいった2022年のみならず、「解放記念日」直後のようにマネージド・フューチャーズのパフォーマンスが振るわなかった時期や、2023年の下り坂で2022年の利益の一部を返上した時期についても、時間をかけて考えるべきでしょう。

過去25年間にわたり、マネージド・フューチャーズ戦略では下落局面が発生しましたが、壊滅的なものはありませんでした。株式市場における最悪のドローダウン(ピークから底値までの下落率)は、S&P500指数がドットコムバブル崩壊時に記録した50%で、次いで深刻だったのは世界金融危機時の40%でした。われわれの戦略では、過去25年間で最大の下落幅は16%を超えておらず、直近では2024年4月から「解放記念日」後の底値までの期間が該当します。ちなみに、債券はこの期間において16%を超える下落を記録しました。

マネージド・フューチャーズ戦略は、長期的に見て株式や債券との相関性が全くないという点でほぼ唯一無二の投資戦略です。流動性の高い戦略でもあります。誰かが返済を求めて電話をかけてくるようなレバレッジは内在せず、壊滅的なポジション解消も発生しません。アドバイザーが顧客のためにより耐久性のあるポートフォリオ構築を目指す場合、株・債券いずれの方向にも相関性を持たない資産を導入することで、困難な市場環境下でも良好な成果を上げる可能性が高まります。ですから、この戦略を実際に採用するとどのように働くかを理解することは、より幅広いな選択肢を得るための重要な要素です。私は券を片手に(不退転の決意で)、この戦略とともに進んで行きます。◇

※ 本稿はモーニングスターの記事「Why Managed-Futures Funds Are Here to Stay, Says DBi’s Andrew Beer」をモーニングスター・ジャパンが翻訳したものです。原文と翻訳に相違がある場合は、原文が優先されます。

※ 本稿は情報提供のみを目的としており、いかなる特定の投資対象、投資商品、投資手法をも推奨するものではありません。投資についての判断は、ご自身の投資目的、投資期間、投資資金の性格、投資への姿勢などを勘案して、ご自身の責任で慎重に行ってください。

著者はこの記事で言及されたいかなる有価証券も保有していません。詳細はこちらをご覧ください: モーニングスターの編集方針