イラン戦争の解決に向けた期待が徐々に高くなり、株式市場は開戦前の水準を回復し上向いている。投資家はこの一連の出来事を過去のものとして受け止めようとしているが、問題は今後何が起きるかである。
今回の戦争は、一部のストラテジストや運用者が「今後も続く可能性がある」と指摘する長期的なトレンドを浮き彫りにした。一方で、新たな投資機会を探っている人々もいる。今回は、金、原油価格の上昇、生産の自国回帰など、投資家が注目すべき5つのポイントを紹介する。
株式のリスク・リターンのバランスが改善
「イラン情勢が有意義な形で解決し、エネルギー市場が正常化すれば、経済や企業収益の先行きは市場にとって好材料となるだろう」と、ネイションワイドのチーフ・マーケット・ストラテジスト、マーク・ハケット氏は記している。
4月16日、LPLリサーチは戦術的資産配分(TAA)の指針を更新し、「株式をややオーバーウェイト、債券をアンダーウェイト」とした。同社は次のように述べている。「この調整は、以前に決定されていたウェートであり、市場のボラティリティ上昇への事後対応ではない。最近のボラティリティ上昇によって、株式への追加的なリスクに対する将来のリスク・リターンのバランスが改善している。そのため、我々が戦術的枠組みに基づいて備えていたポジションを実行する好機が訪れたと考え、行動に移したのである」
石油価格は長期で高止まりの見込み
4月17日、ホルムズ海峡が再開通すると伝えられると、直後に原油価格は急落した。しかし、アナリストらは多数のエネルギー生産施設が被害を受けたことなどから、この戦争が原油市場の見通しを変えたと指摘している。Bank of Americaが4月に実施したグローバルなファンドマネージャー調査によると、投資家は2026年末までに原油価格が1バレルあたり84ドルまで下落すると予測している。
T. Rowe Priceの「グローバル・アロケーション」、「バランスファンド」、「スペクトラム・ファンド」などを運用するチャールズ・シュライバー氏は「在庫と生産能力の両方が市場から失われた」と述べている。エネルギー価格は「2月末の水準には戻らないだろう。地政学的リスクプレミアムが上乗せされるからだ。エネルギー価格は80ドル台後半から90ドル台前半で推移するだろう。これは景気への重石になるが、景気後退につながるほどではない。しかし、もしエネルギー価格が120ドル、あるいは140ドルまで急騰するような劇的な局面があれば、それは市場にとって明確な逆風となるだろう」。
以下は、イラン戦争開戦以降の原油価格の変動を示している。
よみがえるエネルギー効率と再生可能エネルギーへの注目
原油価格の高騰により、エネルギー効率の重要性が高まっている。サステナビリティに重点を置く投資顧問会社HIP Investorsが運用する個別口座で第1四半期に好成績を収めたのは、Trane Technologies(TT)やJohnson Controls(JCI)などだった。いずれもエネルギー効率関連企業であり、市場平均に近い利回りを実現している。「エネルギー価格高騰によるコスト上昇が緩和されるまでは、天然資源の効率的な利用とエネルギー消費量の削減が重要だ」と、HIPのCEOポール・ハーマン氏は説明している。
加えて、データセンターや電力インフラへの需要増加という構造的な要因も、再生可能エネルギー関連株式を下支えしている。Callaway Climate Insightsのマーク・ハルバート氏は、「この戦争の最中は従来型エネルギー株式に後れを取ったとしても、代替エネルギー株式は今後、優れたパフォーマンスを示す可能性がある」と述べている。
Lazardによる2025年6月の調査報告によると、再生可能エネルギーは従来型発電とコスト面で十分競争できる水準になっている。この調査では、1メガワット時あたりの発電コストについて、太陽光発電は81~217ドル、ガス火力発電は149~251ドルと推計している。
「サステナブルエネルギー企業も、ホルムズ海峡の封鎖による供給の混乱や、それに伴う化石燃料価格の乱高下から恩恵を受けている」と、ハルバート氏は4月15日に記した。「たとえ海峡が直ちに開かれ、原油価格が戦争前の水準に戻ったとしても、今回の紛争は、サステナブルエネルギーの生産が、予測不能な世界の地政学や世界の指導者の気まぐれに左右されないことを、私たちは改めて痛感した」。
以下は、2026年年初を起点としたモーニングスター北米エネルギー指数(赤)、モーニングスター北米再生可能エネルギー指数(青)、モーニングスター米国株指数(黄色)の推移である。
金価格が反発する可能性
投資運用会社VanEckは、現在、過去最高値を付けた後大幅に下落した金価格が回復する可能性があるという。金現物スポット価格は2026年1月28日に1オンスあたり5,589ドルでピークをつけた。しかしその後急落し、イラン戦争の影響で乱高下を繰り返している。3月30日に底を打って以来、金は6.7%上昇し直近では1オンスあたり4,790ドルとなっている。
VanEckは、戦争関連支出の増加がインフレを加速させるため、金価格は上昇すると見ている。「最大の要因は原油価格ではなく、財政状況だ」と、VanEckのCEO、ヤン・ヴァン・エック氏は説明する。「2024年度に米国の財政赤字がGDP比6.4%に達した時に、私は声を大にして警鐘を鳴らした。今や、米国史上最悪の財政赤字に突入しているのが分かるだろう」。
実際、原油価格の上昇に伴い、VanEckのマルチアセット・ポートフォリオは原油へのエクスポージャーを減らし、金を増やし始めた。VanEckのマルチアセット・ソリューション部門責任者であるデビッド・シャスラー氏は次のように述べている。「市場は早期の解決を想定しており、非常に楽観的になっている。しかし、過去の紛争から学べば、基本シナリオは『長期で燻る』であり、紛争は常に高くつき、時間を食うものだと分かる……金価格の上昇要因が変化したかといえば、 むしろ悪化している」。
以下は、開戦以降の金価格の推移である。
生産拠点の国内回帰という潮流
「今回の戦争は『脱グローバル化』という潮流の、兆候の一つとして捉えている」と、Janus Hendersonのマクロ投資部門グローバル責任者であるリチャード・バーンスタイン氏は述べている。「兆候は他にも見ることができる。関税もその一つであり、戦争もまた然りである」。同氏は、この潮流が人々の予想以上にインフレを招くと考えている。
デビッド・シャスラー氏は、より多くの企業が国内回帰(リショアリング)、再工業化、脱グローバル化に投資すると予想している。これは新しいことではなく、新型コロナウイルスのパンデミック中にすでに『脆弱なサプライチェーン』は課題となっていた。「今回の戦争は、私たちにその事実を再認識させた」と彼は述べている。「国内回帰は、国家安全保障の一環として必然的に起きるだろう」。
シャスラー氏のモデルポートフォリオは、VanEck Real Assets ETF(RAAX/下のグラフ赤)を用いてこのテーマに投資している。このETFは、「エネルギー、銅、銀などの重要な原材料や、インフラ開発企業に投資を行う」ものである。投資先には、エネルギー、貴金属、工業用金属の先物契約を保有する「VanEck Commodity Strategy ETF(PIT)」が含まれる。「VanEck Real Assets」は第1四半期に16.5%上昇し、一方、Morningstar 米国株指数(グラフ青)は4.2%の上昇にとどまった。◇
※ 本稿はモーニングスターの「5 Trends to Watch in a Post-Iran War Landscape」をモーニングスター・ジャパンが翻訳したものです。原文と翻訳に相違がある場合は、原文が優先されます。
※ 本稿は、情報提供のみを目的としており、特定の金融商品、銘柄などを推奨するものではありません。投資における判断は、ご自身の投資目的、投資期間、資金性格、投資への姿勢などを勘案して、ご自身の責任において慎重に行ってください。

