サステナブル投資を行う投資家は、データセンターに関する課題に直面している。長年にわたりテクノロジー株式は概して環境負荷が軽微だとみなされて、多くのサステナブル投資戦略で主要な保有銘柄であった。ところが、巨大テクノロジー企業をはじめ多くのテクノロジー企業が先を争ってAI(人工知能)ブームの波に乗るにつれて、広く保有されているテック企業の多くがデータセンターに起因する環境リスクを抱えるようになったのである。
いわゆる「ビッグ・テック」は、再生可能エネルギーの活用や排出量削減目標の策定などを通じて、温室効果ガス排出の面では重工業と比較して良い実績を示してきた。そのため、サステナブル投資戦略において、ビッグ・テックは選好されてきた。しかし、AIモデルの学習や運用に供される大規模なデータセンターは、稼働や冷却のために莫大なエネルギーと水が必要なため、各企業の排出削減目標の達成が危ぶまれている。さらに、こうした巨大施設の建設に対して、生活の質を損なうとして多くの地域社会が反対している。
モルガン・スタンレー傘下の投資会社カルバートで責任投資戦略担当マネージング・ディレクターを務めるアンソニー・イームズ氏は、「エネルギーを大量に消費するデータセンターと責任投資を行う投資家の間には、本質的な葛藤があります」と述べている。
問題は、AI関連のインフラ投資が経済成長を牽引する要因となっているため、どんな投資家であれ、市場に追随または市場を上回るためには、これらの企業を組み入れる必要があるということだ。さらに、莫大な電力需要によって、地熱発電から蓄電池に至る代替エネルギーソリューションや省エネ製品への関心が再び高まっている。
こうした背景から、多くのサステナブル・ファンドの運用者は、データセンター建設の中核を担う企業への投資を「避ける理由」より、「保有する理由」の方が多いと考えている。また、彼らは企業に対し、排出削減目標の履行や、地域社会やその他のステークホルダーへの影響など、追加的なリスクについて開示するよう働きかけているとも述べている。さらに、株式市場を代表する主要企業の多くを含むこれらの企業の株式を保有しなければ、運用における競争で極めて不利になる可能性がある。
実際、サステナブル・ファンドが市場平均を上回るパフォーマンスを記録した局面では、ハイテク株の保有比率の高さが要因となることが多かった。「私たち投資家の使命は、顧客のために利益を上げることです」と、パルナッソス・インベストメンツのサステナブル投資戦略担当マネージング・ディレクター、マリアン・マキンドー氏は述べている。
サステナブル・ファンドは、データセンター関連エクスポージャーは従来型ファンドより低い
サステナブルな投資戦略で重要な論点となるのは、巨大なグローバルデータセンターを所有・運営するクラウドサービス事業者、いわゆる「ハイパースケーラー」への投資である。サステイナリティクスによると、Amazon(AMZN)、Alphabet(GOOGL)、Microsoft(MSFT)は、今後数年間でデータセンターを合計78%拡大する計画であるが、建設計画のうち63%は水の供給が不足している地域であるという。Meta Platforms(META)は、今後数年間でデータセンターに6,000億ドル投資すると計画しており、これは上記4社の中で最大の投資規模である。「こうした動きによって、今後、これらの企業は相当な事業リスクや世間からの厳しい監視にさらされる可能性があります」と、サステイナリティクスは指摘している。
大型株を対象とするサステナブル・ファンドにおける巨大テクノロジー企業の平均的な組入れ状況(ウェイト)は以下の通りである(ESGリスク・レーティングはLowがリスクが低く、Highがリスクが高いことを示す):
サステナブル・ファンドは、ハイパースケーラーへのエクスポージャーが一般的なファンドよりも低いが、それはMetaの平均組入れ比率が低いことが一因となっている。実際、一般的なファンドではMetaは組入れ比率9位であるが、大型株を対象とするサステナブル・ファンドでは16位となっている。
サステナブル投資家にとって、テクノロジー関連銘柄への投資は極めて重要だ。一般的なファンドに比べて、サステナブル・ファンドのリターンへの同セクターの寄与度はより大きいからだ。モーニングスターのデータによると、2026年7月8日までの1年間において、テクノロジー株は「モーニングスター・米国サステナビリティ指数」の構成比の31.7%、リターンの40.0%を占めている。一方、「モーニングスター・ 米国株式指数」では、テクノロジー株は構成比の33.8%、リターンの31.3%を占めている。
サステナブル・ファンドがデータセンター関連株式を保有し続ける理由
環境に対する懸念があるにもかかわらず、サステナブル・ファンドの運用担当者たちは、こうした株式を保有すべき理由が複数あると述べている。まず、ハイパースケーラーは、カーボンニュートラル(温室効果ガス排出実質ゼロ)の目標を掲げ、再生可能エネルギーを積極的に利用しているため、他の上場企業に比べてサステナビリティへの取り組みが優れている傾向があるという。サステイナリティクスによると、Google、Microsoft、Amazon、Metaはいずれも、サステナビリティに対するリスク管理において、ソフトウェア・サービスセクター内で相対的に高い評価を得ている。例えばGoogleは、2025年12月31日までの9年間において電力消費量の100%相当を再生可能エネルギー購入によって相殺している。
「これらの企業の多くは、再生可能エネルギーの活用において優れた成果を上げています。再生可能エネルギーの利用は、排出量削減を最も容易に行える手段だからです。しかし、AIデータセンターのエネルギー消費量は、かつてないほど膨大です」と、サステイナリティクスのアナリスト、メリッサ・バードは述べている。
投資家は、環境以外のリスクについても開示するよう企業に求めている。カラモス・インベストメンツのサステナブル戦略担当副社長、サイモン・レベッキ氏は、「物理的な問題については測定できますが、人々を本当に悩ませているのは、データセンター建設に対する社会的合意を難しくする、より広範な経済的懸念やその他の不安といった厄介な問題です」と指摘する。
エネルギーと水の効率化が重要な焦点
エネルギー効率の向上も重要な鍵となっている。データセンターのコストの3割~4割をエネルギーが占めており、「これはエネルギーと水の効率化を進める大きな原動力となっています」と、カルバート社のテクノロジー・アナリスト、ジェイソン・チー氏は述べている。例えば、Nvidia(NVDA)は、1ワットあたりの演算性能を向上させる「Blackwell」などのプラットフォームを提供することで、データセンターのエネルギー効率向上を支援している。チー氏によると、Microsoftは、サーバーと冷却装置の間で水を循環させる閉ループシステムを採用しており、これによって「水の消費量は実質ゼロである」と主張している。
「エネルギー転換が広く進むにつれ、イノベーションと効率性で勝る企業が台頭すると私たちは考えています」と、カルバート社のイームズ氏は述べている。
RBCキャピタル・マーケッツのグローバル・サステナビリティ戦略・リサーチ責任者であるサラ・マハフィー氏は、「今年、サステナブル・ファンドは、AIインフラのサステナビリティとレジリエンスを高める企業を積極的に買い進めています」という。たとえば、半導体専門企業のAdvanced Micro Devices(AMD)、ストレージ大手のSeagate(STX)、エンジニアリング企業のEaton(ETN)などである。 さらに同氏は、「送電網、原子力発電、デジタルセキュリティといったテーマへのサステナブル・ファンドの投資比率は、2026年第1四半期時点で過去最高水準に達しており、これらはすべてAIやデータセンター関連の動向を反映したものです」と記している。
カルバート社の公益事業アナリスト、ジョナサン・プラゲル氏は、「炭素排出量について、電力市場は転換点を迎えています」と述べている。その恩恵を受ける可能性がある企業のひとつが、Xcel Energy(XEL)である。同社は炭素排出量の削減を着実に進めており、石炭を天然ガスや風力発電に置き換えている。2007年以降、Xcel Energyは23基の石炭火力発電ユニットを閉鎖した。「これは『公正な移行(just transition)』におけるゴールドスタンダードです」とプラゲル氏は述べている。同氏は、石炭火力から天然ガスへの転換を2030年を目標に進めつつ、料金を全国平均より25%低く抑えているIdacorp(IDA)にも注目している。同氏は、「これにより2045年までに排出量を75%削減できる見込みであり、これは『業界最高水準の脱炭素化』です」と述べている。
さらに、運用者はデータセンターのエネルギー需要を満たすため、原子力発電が再び注目されていると指摘している。Meta、Alphabet、Amazonは、データセンター向けの原子力発電に関する契約を締結している。「2030年に向けて、(データセンター向け)原子力電源が商業ベースで本格的に普及する可能性が高いと見ています」と、プラゲル氏は述べている。
投資家は大手ハイテク企業に、環境目標の達成を求める
また、運用者は、データセンターに関するガバナンスや、より広範な環境問題について企業に働きかけていることも強調している。AIガバナンス方針の策定を企業に求めることや、膨大な水や電力の需要を踏まえ、企業がサステナビリティに関する公約をどのように達成するかを開示するよう求めるなどである。
パルナッソス・インベストメンツは、AI関連の取り組みに関するエンゲージメント(企業との対話)を行っている。そのひとつは、ハイパースケーラー各社と、気候・エネルギー・水資源への影響について話し合うことだ。もう一つは、その技術を導入・活用している企業との対話である。パルナッソスや他の投資家との排出量目標に関する協議を重ねた結果、Microsoftは1月、「地域社会を優先するAIインフラ(Community First AI Infrastructure)」イニシアチブを立ち上げた。Microsoftはこの取り組みについて、「当社の社会的責任感に加え、広範かつ長期的な視点から何がAIインフラストラクチャ事業を成功に導くかが反映されている」と述べている。
運用者は、議決権の代理行使によっても自らの意見を表明している。サステイナリティクスのアナリスト、マッテオ・フェレッカは、「Amazon、Meta、Alphabetに対して提出された、気候変動対策の実行状況や、ネットゼロ目標の達成計画を明確にするよう求めた2025年の株主提案は、『米国でその年最も多くの支持を集めた気候変動関連決議案の一つ』でした」と述べている。また、いずれの提案も過半数の支持には至らなかったが、「比較的高い支持率が得られたことから、投資家がデータセンターに起因する排出量を同セクターにとって喫緊の気候変動課題と捉えており、企業が気候変動への取り組みを維持しつつ、増大する需要とどう折り合いをつけるのかを知りたいと考えていることを示唆しています」と指摘している。◇
※ 本稿はモーニングスターの「The Data Center Problem for Sustainable Investing」をモーニングスター・ジャパンが翻訳したものです。原文と翻訳に相違がある場合は、原文が優先されます。
※ 本稿は、情報提供のみを目的としており、特定の金融商品、銘柄などを推奨するものではありません。投資における判断は、ご自身の投資目的、投資期間、資金性格、投資への姿勢などを勘案して、ご自身の責任において慎重に行ってください。

