AIの電力爆食が足を引っ張る二酸化炭素回収ビジネス

「クリーン・エネルギー獲得がビジネスの成否を分ける」とピッチブックのアナリストは言う

ロボットの認知プロセスを表す、頭部にある赤と青の回路により、ペンサーの訓練をしているロボットが表現するIAのイラスト。

レスリー・ノートン モーニングスター サステナビリティー・エディトリアル・ダイレクター 

生成AIの普及が急速に進む中、AIの学習や推論を担うデータセンターの電力消費が爆発的に増加している。このAIが電力を『爆食』する状況が、再生可能エネルギーをめぐる競争を激化させ、思わぬ影響を及ぼしている。AI隆盛の影で繰り広げられている再生可能エネルギー争奪戦の実態と、今後の影響はいかなるものなのだろう。

AI需要とともに高まる電力需要……その影で起きていること

「電力需要の急増により、製造業やエネルギー生産から排出される二酸化炭素を削減する技術、たとえば直接空気回収(DAC:Direct air capture)やグリーン・ケミカル生産などの技術開発が遅れる可能性がある」と米モーニングスターのプライベート市場調査部門であるピッチブックの新興技術担当アナリスト、ジョン・マクドナーは指摘している。

低炭素電力に対する需要、特にAI(人工知能)関連のデータセンターの成長によって爆発的に増大する電力需要が、再生可能エネルギーのコストを押し上げている。

炭素回収ビジネスの成否を左右する要素

大気から直接CO2を抽出することを目的とするDACは、ビジネスの性質上クリーン・エネルギーによる運営が前提となるため、低炭素電力に大きく依存している。DAC企業のビジネスモデルは、炭素回収に基づいて炭素クレジットを生成し、販売することであるからだ。

ピッチブックの『2025年再生可能エネルギー展望』でマクドナーは、「DAC技術への電力供給に従来型電力を使用することは、ネットゼロ・カーボン実現の目的に反する(中略)そのため、DAC企業は操業のために低炭素エネルギー電力購入契約が必要だ」と述べている。

同様に、低炭素化学物質(グリーン・ケミカル)の製造技術を開発しているスタートアップ企業も、回収した炭素から化学物質を製造する企業は特に、かなりのクリーン・エネルギーを必要とする。マクドナーはさらに「低炭素の投入がなければ、生産される化学物質はもはや『グリーン』な化学物質とは言えない」と述べている。

ベンチャー投資は好調も、課題は……

炭素回収技術分野のベンチャー投資は好調だ。2024年第1-3四半期の炭素回収技術の取引額は8億4230万ドルで、2023年通年の5億360万ドルを上回っている。

しかし、DAC企業は積極的な計画を立てているものの、その大半はまだ試験的な施設の計画や建設にとどまっている。「手ごろな価格のクリーン・エネルギーを手に入れることができるか否かが、こうしたプロジェクトの明暗を分ける可能性がある」とマクドナー氏は述べる。

また、カーボン・キャプチャーのスタートアップ企業が、クリーン電力を巡る争奪戦を理由に米ワイオミング州で建設予定だったプロジェクトの開発を断念したことにも言及している。

「気候対策技術関連のスタートアップ企業はたいてい、はるかに成熟した技術であるデータセンターと比べて、競争力が劣る。データセンターへの投資拡大が続けば続くほど、スタートアップ企業の環境はさらに厳しいものになる。データセンター事業者には高額なクリーン・エネルギー料金を支払う能力があることから、カーボン&エミッション技術、とりわけDACやグリーン・ケミカル分野のスタートアップ企業では、プロジェクトの遅延や移転、中止が出てくるだろう」とマクドナーは記している。

※ 本稿は、2025年1月8日付モーニングスター社の記事「AI’s Electricity Demands May Stall Carbon Capture Development」をもとにITメディアが翻訳・再構成し、モーニングスター・ジャパンが編集したものです。英語原文と相違がある場合は、原文を優先します。

※ 本稿は情報提供のみを目的としており、いかなる投資対象・投資商品も推奨するものではありません。投資の判断は、ご自身の経済状況・投資目的・投資期間・投資への姿勢などを考慮して、ご自身の責任において慎重に行ってください。

著者はこの記事で言及されたいかなる有価証券も保有していません。詳細はこちらをご覧ください: モーニングスターの編集方針