2026年、ファンドマネージャーの戦略

企業の二極化、アクティブ運用者は「格差」をどう捉えるか

2025年の日本株式市場は、前半は軟調な局面も見られたものの、年後半にかけては企業収益の拡大やAI投資を追い風に回復、国内の主要株価指数は史上最高値を更新しました。コーポレートガバナンス改革の進展により企業間の差が意識される中、資本効率や株主還元を重視する企業が増加しており、企業の差を見極めて投資先を選別するアクティブ運用の有効性が高まっています。

本稿では、こうした市場環境や構造的な変化を踏まえ、モーニングスターのアナリストがファンドマネージャーへの面談を通じて得た知見をもとに、2026年に向けた注目テーマと投資の視点を整理します。より詳細な内容については、以下の「2026年、ファンドマネージャーの戦略」をご参照ください。

国内株式・大型ブレンド型におけるアクティブ・ファンドの勝率推移

コーポレートガバナンス改革が日本企業の構造改革を牽引

東京証券取引所は、2021年以降、非効率な資本構成や低収益性が課題とされる日本企業に対し、コーポレートガバナンス改革を強化しました。この影響で、日本の株式市場ではPBR 改善や株主還元の拡大を期待した大型の割安株への関心が高まり、過去数年は割安株(グラフ:赤)が成長株(同:青)を上回るパフォーマンスを示し、成長株主導の米国株式市場とは対照的な展開となっています。

コーポレートガバナンス改革を追い風に、日本の割安株が成長株を大きく上回った

三井住友DSアセットマネジメントが運用する「大和住銀DC国内株式ファンド」の主担当である下西ノ園慎一氏は、日本企業で約20年ぶりの大規模な事業再編が進む中、資本効率を重視した経営判断の広がりを市場の健全化につながる前向きな変化と評価しています。また、日本銀行の利上げによる収益環境の改善や海外事業の強化を背景に、銀行セクター、とりわけメガバンクに注目しています。2025年12月時点で、みずほフィナンシャルグループ(8411)と三菱UFJフィナンシャル・グループ(8306)はポートフォリオの上位2銘柄を占め、合計で8.6%を構成しています。

スパークス・新・国際優良日本株ファンド(愛称:厳選投資)」を運用するスパークス・アセット・マネジメントの武田政和氏は、日本株式市場のコーポレートガバナンス改革を最重要テーマと位置付けています。改革は進行中であり、ROE向上が中長期的に日本株の投資魅力を高めると見ています。金融セクターでは、寡占構造と株主還元の余地がある損害保険業界に注目し、東京海上ホールディングス(8766)、SOMPOホールディングス(8630)、MS&ADインシュアランスグループホールディングス(8725)の3社を引き続き保有しています。

2026年には、金融庁によるコーポレートガバナンス・コードの改定が5年ぶりに予定されています。これにより、企業には内部留保や株主還元、人的資本への投資といったキャピタルアロケーションについて、より踏み込んだ検証が求められる見通しです。

中小型株、そしてAI関連に見る2026年の注目点

2025年の日本株式市場では、中小型株が堅調に推移する局面が見られました。東京証券取引所のPBR改善要請や開示強化を受け、大型株中心だったコーポレートガバナンス改革が中小型株にも波及しています。社外取締役の選任、株主還元方針の明確化、ROE向上を意識した経営施策が進展し、経営判断に影響を与えています。下西ノ園氏は、改革の成果が業績に反映される企業とそうでない企業で株価パフォーマンスの差が拡大すると見ています。

2025年は中小型株が大型株を上回る

中小型株に特化した運用を行う「スパークス・M&S/ジャパン・ ファンド(愛称:華咲く中小型)」の主担当であるスパークス・アセット・マネジメ ントの奥村剛成氏は、コーポレートガバナンス改革が中小型企業にも波及している点を指摘し、2025年前半には中型株の相対的な割安感が中小型株の堅調なパフォーマンスを支えたと分析しています。また、金利上昇を背景に地方銀行セクターの投資環境改善に注目しており、九州地域での新産業誘致による資金需要拡大を見込み、西日本フィナンシャルホールディングス(7189)を2025年12月末時点で上位組入銘柄としています。

また、ハイパースケーラーによる巨額のAIインフラ投資は引き続き拡大しており、中長期的な持続可能性については慎重な見方も一部で出ているものの、株価を押し上げる主要なドライバーとなっています。こうした環境を踏まえ、一部のファンドマネージャーは、AIを短期的な循環テーマとしてではなく、産業構造の変化を伴う中長期的な成長局面として位置付けています。

野村アセットマネジメントの福田泰之氏は、AI普及によるデータセンター投資拡大に加え、通信ネットワーク整備や電力需要増加を背景に関連分野への投資拡大を見込んでいます。同氏が運用する「ノムラ・ジャパン・オープン」では、通信分野で強みを持つ古河電気工業(5801)への投資を継続しており、2025年12月末時点で同銘柄は上位3位の組入銘柄となっています。

アモーヴァ・アセットマネジメントの鎌田憲彦氏は、AIデータセンター関連の非鉄金属株や自動化ロボット分野の電気機器株に注目しています。同氏の「年金積立Jグロース」は成長性と株主還元を重視した運用を行っており、2025年12月末時点の上位保有銘柄にアドバンテスト(6857)や住友電気工業(5802)を含みます。その一方で、生成AI関連銘柄には過熱感や企業間の二極化もみられ、今後は事業基盤や収益化の道筋を見極めた銘柄選別の重要性が、一段と高まると考えられます。

日本株式市場では、企業のファンダメンタルズの差を背景に、株価パフォーマンスの二極化が進んでいます。こうした環境では、ボトムアップによる銘柄選別の重要性が高まり、ファンド評価においても運用担当者や運用プロセスといった定性的な視点が欠かせません。将来の超過収益の可能性を多角的に評価する手法として、モーニングスター・メダリスト・レーティングをファンド選定の一つの基準として活用することが有効といえるでしょう。◇

※ 本稿は情報提供のみを目的としており、特定の投資手法、投資対象、投資商品などを推奨するものではありません。投資における判断は、ご自身の投資目的、投資期間、資金性格、投資への姿勢などを勘案して、ご自身の責任において慎重に行ってください。

著者はこの記事で言及されたいかなる有価証券も保有していません。詳細はこちらをご覧ください: モーニングスターの編集方針