世界のサステナブル投資ファンドは37億ドルの純流入
2026年第2四半期、世界のサステナブル投資ファンドは、中国(※)を除くと、推定37億ドルの純資金流入を記録しました。地域別では、米国が2022年から続いていた資金流出を脱し、純資金流入へ転じたことが注目されます。一方、カナダ、オーストラリア・ニュージーランド、日本、アジア地域(除く日本)では資金流出が続きました。米国における純流入が「その他」地域からの純流出を相殺した形であり、世界全体のサステナブル投資需要が全面的に回復したとは、まだ判断しづらい状況です。
サステナブル投資ファンド地域別資金フロー
米国は2022年以来初めて純流入へ転換
2026年第2四半期に、米国のサステナブル投資ファンドは約30億ドルの純資金流入を記録し、14四半期続いていた純流出から純流入へ転じました。
背景には、生成AIやデータセンターの拡大に伴う電力需要の増加があります。AIの普及により、投資家の関心は半導体やソフトウェア企業だけでなく、送配電網、電力設備、蓄電、再生可能エネルギーなど、AIを支える電力インフラへ広がりました。特に、次世代送配電網や電力インフラ関連企業に投資する「First Trust Nasdaq Clean Edge Smart Grid Infrastructure Index ETF」には、第2四半期だけで約31億ドルが流入しました。この金額は、米国のサステナブル投資ファンド市場全体の純流入額を上回っており、同ファンドが市場全体を純流入へ押し上げた形です。
地政学的な緊張やエネルギー安全保障への関心の高まりも、電力網の強化やエネルギー源の多様化を重視する投資テーマを後押ししました。AIによる構造的な電力需要の増加と、安定供給を確保する必要性が重なったことで、再生エネルギーだけでなく、それを支える送電網や電力設備も成長分野として再評価されています。
しかし、今回の純資金流入の回復をサステナブル投資ファンド市場全体のものとみなすのは早計です。資金流入は、主にパッシブ運用ファンドや、電力インフラ、エネルギー転換をテーマとする一部のファンドに集中しており、ESG全般への資金回帰というよりも、AIや電力需要、エネルギー安全保障などの成長テーマへの投資需要を反映したものと考えられます。
日本では16四半期連続の純流出
日本では、2026年第2四半期もサステナブル投資ファンドからの資金流出が続き、16四半期連続の純流出となりました。純流出額は2.3億ドル(373億円)で、流出ペースは第1四半期からおおむね横ばいでした。一方、日本のファンド市場全体の純流入額は5.6兆円であり、サステナブル投資ファンドとは対照的な動きとなりました。
運用スタイル別では、アクティブ運用ファンドから507億円が流出し、17四半期連続の純流出となりました。パッシブ運用ファンドは引き続き資金を集めたものの、純流入額は第1四半期の約半分に減少し、アクティブ運用ファンドからの流出を補うには至りませんでした。
日本のサステナブル投資ファンド資金フロー
市場の上昇を受け、運用資産残高は増加
2026年第2四半期末、世界のサステナブル投資ファンドの運用資産残高は3.7兆ドルとなり、前四半期末の3.5兆ドルから増加しました。運用資産残高の増加額は約2,300億ドルと、同四半期の純資金流入額(37億ドル)を大幅に上回っており、資産残高の増加は主に市場上昇によるものとなります。
日本籍サステナブル投資ファンドの運用資産残高も、純資金流出が続くなか、2026年6月末時点で3.7兆円となり、前四半期比13%増加しました。2026年第2四半期にMorningstar日本株式指数が14.5%上昇したことから、日本でも市場の上昇が資産残高を押し上げた主因となります。
サステナブル投資ファンド地域別運用資産残高
AIは日本のサステナブル投資ファンド再活性化の材料となるか
今後の日本市場では、AIなどの成長テーマとサステナビリティをどのように結び付けるかが、一つの焦点となりそうです。AIを単なる成長分野として捉えるのではなく、省エネルギー、再生可能エネルギー、電力インフラの高度化、医療サービスや労働生産性の向上など、環境・社会課題の解決と結び付けることで、新たなサステナブル投資商品の可能性が広がります。一方で、AIを支えるデータセンターは大量の電力と水資源を必要とするため、その普及自体が新たな環境負荷を生むというジレンマもあります。
個人投資家は、「AI」や「ESG」といった名称だけで、商品のサステナビリティ特性を判断することはできません。AI関連企業を組み入れているというだけでなく、ファンドがどのような課題の解決を目指し、電力と水使用量、脱炭素、個人情報の保護、AIガバナンスなどのリスクをどのように評価しているかを確認することが重要です。モーニングスターのウェブサイトでは、各ファンドの詳細画面から、サステナビリティ特性やカーボン指標に加え、倫理的、文化的、社会的、環境的に問題視される特定の商品や事業活動に、保有銘柄がどの程度関与しているかを示す指標を確認することが、商品の見極めに役立ちます。
運用会社には、AIがどのような環境・社会課題の解決に貢献するのかを、投資対象や銘柄選定基準へ具体的に落とし込むことが求められます。同時に、AI関連企業がもたらす環境と社会面の負の影響をどのように分析し、企業との対話や投資判断に反映するのかも明確にする必要があります。特に、データセンターの電力と水使用量、エネルギー調達源、排出削減目標、AIガバナンス方針について、一貫性のある情報を継続的に開示することが重要です。データセンターの需要増加を背景に、AIインフラをより持続可能かつ強靱にする企業をサステナブル投資ファンドが選好する動きもみられますが、投資対象の実態を検証できなければ、サステナブル商品としての説得力は高まりません。
また、ファンドレベルでのサステナビリティ投資に関する指標は、運用会社による保有銘柄の情報開示が必要不可欠です。日本の場合、多くの運用会社は年1回または6ヵ月毎の運用報告書で情報開示を行っていますが、より開示頻度を高めることで、ウォッシングの批判を回避しサステナブル投資への信頼を高めることにつながります。運用会社にもより透明性を高める取り組みが期待されます。
したがって、AIを一律にサステナブルとみなすのでも、環境負荷を理由に一律に排除するのでもなく、成長機会と負の影響の両方を評価することが重要です。こうした投資プロセスとリスク管理を分かりやすく説明できる商品が、日本のサステナブル投資ファンド市場に新たな需要を生み出す可能性があります。◇
※ データ収録タイミングの差異により、オーストラリアおよびニュージーランドは2026年5月31日までを対象としています。一方、中国については第2四半期から除外しており、運用資産残高は前四半期末時点の数値を使用しています。この収録のタイミング差異は、本レポートに掲載するすべてのグローバル数値に影響しています。なお、中国の資金フローを追加反映した結果、第1四半期の純流入額は8億ドルへ修正されています。
※ 本稿は情報提供のみを目的としており、特定の投資手法、投資商品などを推奨するものではありません。投資における判断は、ご自身の投資目的、投資期間、投資資金の性格、投資への姿勢などを考慮して、ご自身の責任において慎重に行ってください。

