世界のサステナブル投資ファンドの動向―2025年第4四半期

資金流出が止まらず、ESGを巡る逆風が投資家心理に影

Coin stacks with sustainability and finance icons amidst a backdrop of clouds

ESG投資は過去の物?──2025年の資金動向から見えること

2025年第4四半期、世界のサステナブル投資ファンドは272億ドルの資金流出となり、第3四半期と比べると流出額は半減しました。しかし、2025年通年では約840億ドルの資金流出を記録し、計測を開始した2018年以降で初の年間の純資金流出となりました。サステナブル投資ファンドへの資金の流れが変わってきています。

地域別でみると、世界のサステナブル投資ファンド全体の86%を占める欧州では、初めての年間の純資金流出となりました。2025年下半期の英国の大口機関投資家による大規模な資金移動の影響を除いても同様です。米国では3年連続の純資金流出となりました。

サステナブル投資ファンド地域別資金フロー

資金はなぜ流出したのか?

背景にはいくつかの要因があります。まず、地政学リスクの高まりや、米国を中心とした「反ESG」の政治的な動きです。政策の先行きが見えにくくなる中で、投資家が慎重姿勢を強めたことは自然な流れと言えるでしょう。

また、パフォーマンス面も逆風となりました。2025年の株式市場は、一部の超大型株が指数全体を押し上げる展開となり、あわせてエネルギー関連や防衛関連など特定セクターが好調でした。一方で、ESG投資はリスク分散を重視する傾向が強く、またこれらのセクターや企業への投資比率が相対的に低いケースが多く見られます。その結果、市場全体が限られた銘柄やセクターに牽引される局面では、ESG投資のパフォーマンスが相対的に見劣りする場面が目立ちました。

それでも運用資産残高は増えている

2025年第4四半期も資金流出が続いたにもかかわらず、世界のサステナブル投資ファンドの運用資産残高は3.9兆ドルと、前四半期から増加しました。これは、株式市場が好調だったためです。

長い目で見ると、サステナブル投資ファンドの資産規模は2018年末から6倍以上に拡大しており、短期的な資金の出入りと、構造的な成長トレンドは分けて考える必要があります。

サステナブル投資ファンド地域別運用資産残高

日本の状況:流出が継続しても、残高は微減

日本でも状況は厳しく、2025年第4四半期は、15億ドル(2,374億円)の資金流出を記録し、14四半期連続で資金流出となりました。特に株式型のサステナブル投資ファンドからの流出が大きく、日本ファンド市場全体では約290億ドル(4.6兆円)以上の資金流入を記録したこととは対照的です。

アクティブ運用とパッシブ運用ともに資金流出となりましたが、パッシブ運用では、「NEXT FUNDS MSCIジャパン気候変動指数(セレクト)連動型上場投信」が約4.8億ドル(744億円)の純資金流出を記録し、パッシブ運用ファンド全体の純流出額の約4分の3を占めました。

2025年第4四半期末の運用資産残高は、継続的な純資金流出の影響を受け、前四半期ドルベース対比で7%減の215億ドル(3.4兆円)となりました。一方、同期間における日本株式市場は、Morningstar日本株式指数で測定すると8.9%上昇しました。

ただし、これは「日本でESGが完全に見放された」という意味ではありません。制度面では、2026年半ばに予定されているコーポレートガバナンス・コードおよびスチュワードシップ・コードの改訂に向けて、サステナビリティ情報開示の整備が進んでいます。制度面の整備が進むことで、企業の取り組みをより正確に評価できる環境が整い、投資家が再びESG投資を検討しやすくなる土台が中長期的に形成されつつあります。

日本のサステナブル投資ファンド資金フロー

ESG投資の先行き

ここで大切なのは、「ESG投資は終わったのか?」と極端に考えないことです。モルガン・スタンレーによる調査を見ると、世界の個人投資家の約9割が依然としてサステナブル投資に関心を持っており、特に若い世代ほどその傾向が強いことが分かっています。

短期的には資金の出入りや成績のブレがあっても、環境問題や社会課題がなくなるわけではありません。ESG投資は流行ではなく、「企業をどう評価するか」という視点の一つとして、これからも形を変えながら続いていくテーマだと言えます。

2025年は、ESG投資にとって試練の年でした。しかし同時に、期待が先行しすぎていた部分が調整され、「何を重視して投資するのか」を冷静に見直すタイミングでもあります。

短期の資金動向に振り回されすぎず、自分がどんな価値観で投資したいのかを考えることが、これまで以上に大切になってきているのではないでしょうか。

※ 本稿は情報提供のみを目的としており、特定の投資手法、投資商品などを推奨するものではありません。投資における判断は、ご自身の投資目的、投資期間、投資資金の性格、投資への姿勢などを考慮して、ご自身の責任において慎重に行ってください。

著者はこの記事で言及されたいかなる有価証券も保有していません。詳細はこちらをご覧ください: モーニングスターの編集方針