世界のサステナブル投資ファンドに異変?
2025年第3四半期、世界のサステナブル投資ファンドは551億ドルもの資金流出を記録しました。これは、第2四半期に見られた62億ドルの資金流入からの急激な反転です。ただし、この大部分はブラックロックの英国籍ファンドから約480億ドルが流出したことによるもので、欧州のある年金基金がカスタムのESG運用を行うため、投資一任契約へ資産を移管したことが主な要因です。
この特殊要因を除いても、世界全体では72億ドルの資金流出となっており、サステナブル投資に対する投資家の姿勢に変化の兆しが見られます。
地域・資産クラス別の動向
欧州では第3四半期に31億ドルの資金流出となり、前四半期の113億ドルの流入から大きく反転しました。一方、米国では51億ドルの資金流出を記録し、12四半期連続の流出が続いています。資金流出が続いているにもかかわらず、米国のサステナブル投資ファンドの運用資産残高は3,670億ドルに達し、2021年に記録した過去最高水準に並びました。これは、世界的に好調な株式・債券市場を背景にしたものです。世界全体でも運用資産残高は、前四半期末の3.6兆ドルから4%増加し、9月末時点で3.7兆ドルに達しました。
サステナブル投資ファンド地域別資金フロー
地域別の運用資産残高を見ると、欧州が全体の85%超を占め、米国が10%、その他の地域が残りを占めています。特に欧州では、全ファンドの約19%をサステナブル投資ファンドが占めており、その普及度の高さが際立っています。一方、米国ではその割合はわずか1%に留まっています。
サステナブル投資ファンド地域別運用資産残高
資産クラス別で見ると、債券型のサステナブル投資ファンドが約125億ドルの資金流入を記録し、新規資金を集めた唯一の資産クラスとなりました。株式市場が好調だったにもかかわらず、投資家は債券型のサステナブル投資ファンドを選好する傾向が見られました。
日本の状況:流出が加速
日本のサステナブル投資ファンドは13四半期連続で資金流出が続いており(※)、第3四半期には8.4億ドル(約1,258億円)の流出を記録しました。これは前四半期の1,845万ドル(約28.5億円)の流出から大幅に加速したことを示しています。
日本のサステナブル投資ファンド資金フロー
(※)2025年第2四半期は、速報値では若干の純資金流入となっていましたが、今回のレポートで遡及修正を行い、同四半期は純資金流出となりました。
日本のサステナブル投資ファンドへの資金流入は全体的に低調ですが、1ファンドが健闘しています。「NEXT FUNDS MSCIジャパン気候変動指数(セレクト)連動型上場投信」は、今四半期に1.2億ドル(約172億円)の資金流入を記録し、設定来では合計8.8億ドル(約1,298億円)の流入となっています。
日本のサステナブル投資ファンドの運用資産残高は233億ドル(約3.4兆円)で、前四半期から横ばいとなりました。これは市場の上昇が持続的な資金流出を相殺したためです。
新規設定は世界的に低調
世界全体で第3四半期に新規設定されたサステナブル投資ファンドはわずか26本に留まりました。これは前四半期の92本から大幅に減少しています。日本では第3四半期に新規設定はありませんでした。
また、欧州証券市場監督機構(ESMA)のファンド名称に関するガイドラインが5月に発効した後、前四半期まで活発だったリブランディングの動きは落ち着きを見せ始めています。
ESG投資は多様化へ
サステナブル投資ファンドからの資金流出が続いていますが、これは必ずしもサステナブル(ESG)投資への関心低下を意味するわけではありません。一部のESG投資に積極的な投資家は、ファンドから資産を移管し、よりカスタマイズされたESG投資を行いはじめています。
特に年金基金といった機関投資家は、真のアセットオーナーに対してスチュワードシップ責任を負っており、その責任にはサステナビリティに関する要求への対応が含まれます。こうした背景から、機関投資家には、投資戦略や運用プロセスにおいて、より高度なサステナブル投資を行い、透明性の高い説明責任を果たすことが求められています。
また、債券型ファンドへの資金流入などは、投資家が自身のESG投資目的に合った商品を選別していることを示唆しています。
日本では、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)がESG投資の種類を拡大する可能性があり、機関投資家レベルでのESG投資への取り組みは進みつつあります。個人投資家としても、サステナブル投資を行うのであれば、短期的なトレンドに惑わされることなく、長期的な視点でじっくりと投資を行うことが重要でしょう。
※ 本稿は情報提供のみを目的としており、特定の投資手法、投資商品などを推奨するものではありません。投資における判断は、ご自身の投資目的、投資期間、投資資金の性格、投資への姿勢などを考慮して、ご自身の責任において慎重に行ってください。

