Intel 【臨時レポート】:NVIDIAとの提携は歓迎すべきプラス材料。ただしIntelへの大規模な生産移管は表明していない。

フェアバリューを21ドルから28ドルに引き上げ

The Intel logo can be seen at the headquarters of the chip company.
Andrej Sokolow/picture alliance 通じて Getty

2025年9月18日、Intel とNVIDIA はカスタムデータセンターおよびPC関連製品を複数世代にわたり共同開発すると発表した。この提携に当たり、NVIDIAはIntelの普通株式を1株あたり23.28ドルで50億ドル(約7400億円)分取得する予定である。

<重要なポイント>

この提携は、Intelの製造受託事業である「Intelファウンドリ」の資金調達において大きな意味を持つが、NVIDIAが主要な半導体チップの生産をTSMC TSMからIntelファウンドリに大規模に移管することを表明したわけではないため、現時点ではモーニングスターのIntelについての見通しに大幅な変更は無い。

  • この提携によって、注入される資金がファウンドリ事業を支援するほか、Intelの製品事業の強化も期待できる。特に、データセンター向けx86 CPUにおけるNVIDIAとの緊密な連携や、PC CPUにNVIDIA RTX GPUチップレットを統合することで、近年AMD AMDに押されているCPU市場でのシェア巻き返しにつながる可能性がある。

<結論>

Intelはモーニングスター・エコノミック・モート・レーティングで「なし(None)」の評価であるが、我々は製品部門に対する長期的な支援について楽観的な見通しを強めているため、Intelの適正価値推計値を21ドルから28ドルへと引き上げた。一方、不確実性レーティングは「非常に高い(Very High)」を維持する。足元で株価が20%以上上昇したことで、現在の株価はやや割高と見ている。

  • 引き続きIntelにおける強気シナリオは、製品事業を強化しつつ、外部からの支援を受け健全にファウンドリ事業を運営するという構図である。ただし、今回の提携は両事業において前進ではあるものの、劇的な起爆剤とはならず、依然として多くの課題が残されていると考えている。

<考察と展望>

Intelにとってゲームチェンジャーとなるのは、将来NVIDIAがGPU生産の大部分を「Intel 14A」プロセスに委託することである。しかし、NVIDIAはTSMCと長年良好な関係にあり、TSMCが米国内での製造拡大計画を進めている現状では、実現は難しいだろう。

  • とはいえ、IntelとNVIDIAの関係がより緊密になることで、NVIDIAが将来的にIntelファウンドリに生産を一部委託する可能性を検討するのではないかという楽観的な見方が広がっている。例えばGPUやNVIDIAが開発中と噂されているPC向けの次世代CPUなどがその対象となり得る。

また、NVIDIAの財務規模からみれば、50億ドルという今回の投資の重要性は限定的であり、NVIDIAのビジネス戦略を変えるほどの事案であるとは考えていない。実際、NVIDIAは、Intelへの完全移行ではなく、GraceやVeraといったARMベースのデータセンター向けCPUへの注力を強調している。

皮肉なことに近年のIntelの苦戦こそが、NVIDIAがIntelをもはやIPCやデータセンター事業において脅威ではないと見なして、パートナーとなる道をひらいた。AMDとIntel、NVIDIAにとっていずれとの提携が「よりましな選択」かと言えば、自社に匹敵するAI事業の構築を目指しているAMDより、x86 CPUにおけるIntelとの提携に軍配が上がった。

NVIDIAは長年、自社のGPUサーバーにIntelのx86 CPUを組み合わせてきた。かつては、この組み合わせはx86サーバーCPUにおけるIntelの優位性を示していたが、今では、他の条件が同じであれば、IntelはAMDほどNVIDIAにとって脅威ではないことが、提携においてより大きな意味を持つのかもしれない。

Intelは、NVIDIAやAMDと同等のラックスケールAIソリューションを将来構築することを検討しているが、Intelは数年単位の大きな遅れを喫しており、我々は追いつく見込みはほぼ無いと考えている。今回の発表により、この計画は頓挫する可能性があり、Intelはデータセンター向けのx86 CPUに注力する一方で、AIアクセラレーター分野では中立的な立場を維持することになるだろう。

今回の提携において、NVIDIAは将来の高容量・高付加価値製品についても、あるいは一般の製品についても、Intel ファウンドリを製造委託先として利用すると思わせるいかなる表明もしていない。

Intel ファウンドリは、Intel製品のみの製造では14Aノードで現実的に採算の取れる事業として成り立つ可能性は低いため、外部顧客の獲得が必須である。NVIDIAはまだ外部顧客というわけではないが、今回の提携によってIntel ファウンドリで製造可能な製品が生まれる可能性があり、そうなれば14Aノードの採算を確保するために必要なNVIDIA以外の外部顧客の受注規模が下がることになる。

総じて、この種の提携はIntelの株主にとって大きなメリットであり、新CEOのLip-Bu Tan氏が掲げるAI戦略とも合致している。IntelはAI分野でNVIDIAとの提携を模索していたと我々は考えており、今回の発表は協業を明確に示した。

しかし、Intelはファウンドリ事業を支えるためにさらなる投資を必要としており、今回の投資は同構想の進展ではあるが、完結には至っていない。おそらく、今回の提携で最も重要な点は、NVIDIA の投資が呼び水となって、他のテクノロジー企業や投資家に Intel の ファウンドリ事業計画への投資を促す効果が今後現れるか否かであろう。◇

<モーニングスターによる指標>

エコノミック・モート・レーティング:「なし(None)」

適正価値推計値:28.00ドル

モーニングスター・株式レーティング:★★★(中立)

不確実性レーティング:「非常に高い(Very High)」

資本配分レーティング:「標準的(Standard)」

<Intelの財務概要および主要指標>

2023年 実績
2024年 実績
2025年 予想
2026年 予想
収益(100万ドル)54,22853,10152,24952,048
収益成長率(%)-14.0-2.1-1.6-0.4
営業利益(100万ドル)31-4,708-1,869944
営業利益率(%)0.1-8.9-3.61.8
調整後EBITDA(100万ドル)9,695-2997,59814,007
調整後EBITDAマージン(%)17.9-0.614.526.9
1株当り利益(希薄化後・ドル)0.40-4.38-1.15-0.08
調整後1株当り利益(希薄化後・ドル)1.05-0.130.150.69
調整後EPS成長率(%)-43.0-112.6-213.2359.0
PER47.9-154.2166.036.1
PBR2.00.91.01.1
EV/EBITDA倍率24.3-377.819.210.4
FCF利回り(%)

出所:Morningstar Valuation Model. データは2025年9月18日時点

※ 本稿はモーニングスターのエクイティ・アナリスト、ブライアン・コレロによるアナリスト・ノートを基に、その概要をモーニングスター・ジャパンが翻訳したものです。原文と翻訳に相違がある場合は、原文が優先されます。

※ 本稿は、情報提供のみを目的としており、特定の金融商品、銘柄などを推奨するものではありません。投資における判断は、ご自身の投資目的、投資期間、資金性格、投資への姿勢などを勘案して、ご自身の責任において慎重に行ってください。

著者はこの記事で言及されたいかなる有価証券も保有していません。詳細はこちらをご覧ください: モーニングスターの編集方針