米国の輸出規制により、中国市場での主力製品の販売が制限されたエヌビディア。規制による逸失収益(本来得られていたはずの利益)は、第1四半期で25億ドル、第2四半期では80億ドルにのぼるとされる。一方、同社が5月28日に発表した第1四半期決算では、売上高441億ドルと四半期ベースで過去最高を更新。「王者」の底力を見せつけたが、その先には“避けられない戦い”が待ち受けている。
<Nvidia:モーニングスター主要指標による評価>
- 適正価値推計値:140ドル
- モーニングスター・株式レーティング:★★★
- エコノミック・モート・レーティング:「広い(Wide)」
- モーニングスター・不確実性レーティング:「非常に高い」
最高益ならずも好決算、を読み解く
Nvidiaの第1四半期の売上高は441億ドルで、予想を上回り、前年同期比69%増となった。第2四半期の売上高予想は450億ドルで、前年同期比50%増となる。いずれの数字も、米国の輸出規制による中国からの減収を織り込んだものだ。
<重要なポイント>
中国のAI市場向けにカスタム設計したH20製品の販売を禁じられているにもかかわらず、Nvidiaの売上成長が続いていることを、モーニングスターは好意的に受け止めている。この制限により、第1四半期には45億ドルの在庫評価損、第1四半期と第2四半期でそれぞれ25億ドルおよび80億ドルの逸失収益が発生した。
- 第1四半期のデータセンター売上高は391億ドルで、前年同期比73%増となった。売上のほぼ70%がNvidiaの最新Blackwell製品によるものである。この売上高のうち、46億ドルは2025年4月9日に規制が実施される前に中国向けに販売されたH20によるものである。
- ゲーム関連売上が好調で、前期比48%増、前年同期比42%増となった。Blackwellアーキテクチャーを採用した新たなゲーム製品が広く受け入れられたことが背景にある。
<決算を受けての変更は?>
Blackwellの供給(および売上高)が予想以上に急拡大しており、AI収益の増加を長期的に支えるとかんがえられることから、モーニングスターはモート評価「広い(Wide)」のNvidiaの株式について、適正価値推計値を125ドルから140ドルに引き上げた。一方で、モーニングスター・不確実性レーティングは変わらず「非常に高い(Very High)」を維持する。
- 第1四半期決算発表を受けて時間外取引で株価は約5%上昇し、現在の株価は適正水準と見られる。市場もBlackwellへの評価に好感を示し、中国への輸出規制がある中でも成長を維持するエヌビディアの実力に安心感を抱いたと考えられる。
<直近でどう動くか?>
Nvidiaの7 月期の売上高見通しは前四半期比約 3%増で、全セグメントで緩やかな成長が見込まれる。もしNvidiaが希望通りに80億ドルのH20製品を中国に販売できていれば、成長率は前四半期比14%、前年同期比77%増とっていただろう。
Nvidia株式のバリュエーションと今後の見通し
- 最新世代製品(Blackwell)の供給が予想より早く拡大したことから、株価は適正な水準にあると判断し、適正価値推計値を125ドルから140ドルに引き上げた。この急拡大のおかげで、Nvidiaは短期的により多くの売り上げを得ることが可能になるだろう。
- また、米国とサウジアラビア、アラブ首長国連邦との間で最近最近結ばれた政府間の契約についても、モーニングスターは前向きに見ている。
- Nvidiaは6月に欧州への巡回プロモーションを予定しており、Nvidia製チップを搭載したAI技術スタックを採用にした大規模な契約が新たに発表される可能性がある。とはいえ、これらの発表があったとしても、一夜にして収益が発生すると言うわけには行かないだろう。
【Nvidiaの株価推移】
Nvidiaの株価
適正価値推計値:Nvidiaの将来を左右する「2つの事業」の行方
Nvidiaの株価は、当社の長期的な適正価値推計値である1株当たり140ドル(株式価値にして約3兆3000億円相当)と比較して、現在の株価は適正な水準にあると考えられ、株式レーティングは3つ星である。この適正価値推計値は、2026年度(2026年1月終了年度、または実質的に暦年2025年)における調整後PER(株価収益率)が33倍、2027会計年度の予想調整後PERが26倍であることを前提としている。
モーニングスターの適正価値推計値とNvidiaの株価は、良くも悪くもデータセンター(DC)とAI 向けGPU事業の展望に左右される。
NvidiaのDC事業はすでに指数関数的な成長を遂げており、2020年度の30億ドルから2025年度には1150億ドルに成長した。DCの売上は依然として供給に制約があり、短期的には供給が増加するとともに売上高も増加すると見られる。
モーにkンぐスターでは、2026会計年度上期のDC売上をそ790億ドルと見積もっており、これは実績および見通しとほぼ同水準である。その後、2025年10月期および2026年1月期には、AI需要の高まりに対応したチップ供給の拡大によって、四半期ごとに約45億ドルずつの売上増加が見込まれると想定している。
【Nvidiaの株価とモーニングスター・適正価値推計値】
エコノミック・モート・レーティング :Nvidiaの強みはどこにあるのか
モーニングスターはNvidiaのエコノミック・モート・レーティングを「広い(Wide)」と評価しており、高い競争力を持つ企業であると見ている。これは、同社が持つグラフィックス・プロセッシング・ユニット(GPU)関連の無形資産と、開発者がNvidiaのGPUを使用してAIモデルを構築できるようにするAIツール向けのCudaプラットフォームなど、同社の独自ソフトウェアに関わるスイッチング・コスト(他社への切り替えにくさ)の拡大によるものである。
GPUはもともと、PCやゲーム機のグラフィック処理を軽減するために開発された。NvidiaはGPU市場の草創期からリーダーかつ設計者としての役割を果たしてきた。そして現在では、Nvidiaは、ディスクリートGPUビジネスにおいて明確な市場シェアリーダーとしての地位を確立している。
Nvidiaのリーダーシップの源泉はGPU設計関連の無形資産と、GPUを使用する際に開発者が必要とする関連ソフトウェア、フレームワーク、ツール群にあるとモーニングスターは考えている。レイトレーシング技術やゲームアプリケーションにおけるAI用Tensorコアの使用など、最近導入されたこれらの技術は、Nvidiaが依然としてGPU分野における主導的地位を保っていることを示す明確な証拠だと我々は見ている。
財務状態:配当は少ないが極めて健全
Nvidiaの財務状態は極めて健全である。2025年4月時点で、同社は現金および投資商品を537億ドル保有しており、これに対して短期および長期負債は85億ドルにとどまっている。
半導体企業は、業界特有の景気循環に対応するために、多額の現金を保有する傾向がある。景気低迷期には、こうした資金がクッションとなって、研究開発への継続的な投資を可能にする。それは、競争力や技術的優位性を維持する上で必要不可欠なものである。
Nvidiaの配当金は、同社の財務状況や将来見通しに照らすとごくわずかであり、株主への還元の大部分は自社株買いという形で行われている。
リスクと不確実性:AI市場の成長とライバルの動きが鍵
AI市場そのものがまだ初期段階にあるめ、Nvidiaの不確実性レーティングは「非常に高い(Very High)」としている。Nvidiaに対する評価は良くも悪くもAI分野でどれだけ成長できるかに強く左右されるだろうと、モーニングスターは見ている。
Nvidiaは、AIモデルの学習に使用されるGPU分野で業界リーダーであり、AI推論処理(モデルを実行して予測や出力を行う工程)に用いられるチップの需要においても大きなシェアを獲得している。
一方で、数多くのテック大手がNvidiaのAIにおけるリーダー的地位を奪おうと競い合っている。主要な超大型ベンダー各社が、Nvidiaへの依存を減らし半導体やソフトウェアの調達先を分散させたり、、自社開発ソリューションを進めたりしようとするのは、いずれにせよ避けられない動きであろう。
Bulls:Nvidia(NVDA)の好材料
- NvidiaのGPUは業界をリードする並列処理を提供する。この並列処理は、かつてPCゲーム用途で必要とされてきたが、暗号マイニング、AIなどに拡大しており、今はまだ生まれていない将来の用途へと拡大していくだろう。
- Nvidiaのデータセンター用GPUとCudaソフトウェア・プラットフォームによってAIモデルのトレーニングにおける圧倒的なベンダーとしての地位を確立している。AIモデルトレーニングは今後飛躍的に増加すると見られるユースケースである。
- Nvidiaは、業界トップクラスのGPUを供給だけでなく、ネットワーク、ソフトウェア、サービ分野にも進出し、AI分野で順調に事業を拡大している。
Bears:Nvidia(NVDA)の悪材料
- Nvidiaは現在、AIチップのトップベンダーであるが、他の強力なチップメーカーやハイテク企業も自社でのチップ開発に力を入れている。
- 現在、CudaはAIトレーニング用のソフトウェアおよびツールのリーダーだが、主要なクラウドベンダーはこの分野での競争激化を望んでおり、代替のオープンソースツールが登場すればそちらに移行する可能性がある。
- 地政学的な要因がAI分野にも影を落としている。中でも特に中国におけるNvidiaのAI事業が大きく制限されている。米国の政権がどう変わったとしても、Nvidiaの中国AI事業が回復することについてモーニングスターは懐疑的である。
※ この記事はGautami Thombareが編集したモーニングスターの「After Earnings, Is Nvidia Stock a Buy, a Sell, or Fairly Valued」を、モーニングスターの許可を得てITメディアが翻訳・再構成・掲載したものをモーニングスタージャパンが再編集したものです。翻訳と原文に相違がある場合は、原文が優先されます。

