人工知能に対する熱狂は、この1年でAIによって企業の競争優位が揺らぐかもしれないという不安へと変化した。この「AI発展への恐怖」を背景とした2026年の売り圧力で、ソフトウェアは最も大きな打撃を受けた代表的な業界だが、その他様々なセクターの株式も同様に打撃を受けている。
以下は年初をゼロとして3月20日までの代表的なソフトウェア・データ関連企業の株価の推移である。
モーニングスターのエクイティ・リサーチチームが、AIによる事業変革リスクにさらされていると考える130社以上の企業を精査した結果、モーニングスターは「AIがエコノミック・モート(企業の競争力)を無条件に破壊するものではない」という結論に達した。AIの台頭にもかかわらず、大きな競争優位性が今後も持続すると予想される企業が20社以上あることが示されたのである。
AIの影響を受けにくい企業27選
AIの影響を受けにくい企業の選別条件は以下の通りである。
- AI発展によるリスクについてモーニングスター・エコノミック・モート・レーティングを再評価した132社を選別対象とした。
- この再評価プロセスを経て、エコノミック・モート・レーティング「広い(wide)」を維持した、あるいは「広い(wide)」へと格上げされた企業をリストアップした。
- 米国の証券取引所で取引されており、モーニングスターのエクイティ・アナリストが調査対象としてカバーしている企業である。
以下は、選別された全27社のリストである(※最後の7件は2頁目へ、表右肩の「〉」をクリック)。
このリストに掲載されている企業の株式の多くは、4つ星(割安)または5つ星(非常に割安)の評価を受けており、現在割安な水準にあることを示唆している。
AI台頭の脅威にあって競争力が上昇した2社
特に注目すべきは、このリストに掲載されているサイバーセキュリティ分野のCloudflare (NET)とCrowdStrike(CRWD)である。この2社は、AIによるリスクを再評価した結果、エコノミック・モート・レーティングが引き上げられた。これら2社のモーニングスターによる主要指標と、各社を担当するアナリストのコメントを以下に紹介する(※データは2026年3月20日時点)。
Cloudflare
- モーニングスター・株式レーティング:★★★(中立)
- 不確実性レーティング:「非常に高い(Very High)」
- 適正価値推計値:235ドル
- エコノミック・モート・レーティング:「広い(Wide)」
セキュリティに重点を置いたコンテンツ配信ネットワーク(CDN)であるCloudflareは、増加し続けるサイバーセキュリティ関連支出の恩恵を受ける企業である。現在、世界のインターネットトラフィックの20%以上がCloudflareのネットワークを経由しており、世界の全ウェブサイトの3分の1以上がCloudflareを利用している。サイバー攻撃の頻度と深刻さが増え続けており、世界中の企業にとってサイバーセキュリティは常に最優先事項となっている。モーニングスターは、Cloudflareはセキュリティ分野にとどまらず、エッジコンピューティングや発展し続けるAI関連インフラが、同社にとって大きなビジネスチャンスになると考える。
CloudflareはCDN(コンテンツ配信ネットワーク)として、発信元から配信先まで迅速かつ効率的なインターネットトラフィックを提供している。同時に、同社は膨大な量のインターネット上の活動を監視して差し迫った脅威を分析し、トラフィックを適切に振り分けることで、速度とセキュリティを確保している。ユーザーから生成されるデータは、Cloudflareがネットユーザーの活動を追跡し、ウェブパフォーマンスやセキュリティに関するサービスを改善するために活用されることで、さらに多くのデータがCloudflareのネットワークを経由するサイクルを形成している。
エッジコンピューティングは、企業がデータ関連のワークフローを管理する方法に、やがてパラダイムシフトをもたらすであろう。現在大型データセンターで処理されているワークフローは、エンドユーザーに近いエッジノードで処理することで平均応答時間が短縮されるようになる。 CloudflareはエッジでのAI推論処理を可能にするインフラを備えており、AI導入において魅力的なインフラやサービスを提供できる企業であると考える。企業が集中型クラウドAI処理に代わる、低遅延かつコスト効率の良い選択肢を求める中で、Cloudflareはその需要を取り込む態勢を整えている。
セキュリティとエッジコンピューティングは、いずれも競争が激しい分野ではあるが、Cloudflare独自のインフラ、顧客の定着率の高い製品ポートフォリオ、そして営業と研究開発への積極的な投資戦略は、両分野において同社に強固な競争力をもたらしている。
また、大口顧客をターゲットとし、チャネルパートナーとの連携を強化するというCloudflareの戦略も、われわれは高く評価している。こうしたチャネルを通じて獲得した顧客を含め、大口顧客は離反率が低く、年間契約額も大きくなる傾向があるからだ。
モーニングスター シニア・エクイティ・アナリスト、マリク・アーメド・カーン
モーニングスターのCloudflareに関するレポート全文はこちら。
CrowdStrike
- モーニングスター・株式レーティング:★★★(中立)
- 不確実性レーティング:「非常に高い(Very High)」
- 適正価値推計値:460ドル
- エコノミック・モート・レーティング:「広い(Wide)」
CrowdStrikeはエンドポイントセキュリティのリーダー企業である。エンドポイントセキュリティは、企業のエンドポイント(端末/PC、ラップトップ、タブレット、スマートフォンなど)を悪意のある活動から保護するサイバーセキュリティ・スタックの不可欠な要素である。企業のデジタルトランスフォーメーションやクラウド移行が進むにつれて、企業のセキュリティ予算の中でエンドポイントセキュリティはさらに大きな比重を占めるようになるだろう。この成長市場を牽引する企業としてCrowdStrikeは確固たる地位を築いており、同社が提供するFalconプラットフォームの顧客定着率の高さにもその強さは明確に表れている。
CrowdStrikeはエンドポイントだけでなく、セキュリティ関連の事業ポートフォリオを大幅に拡大し、クラウドセキュリティ、IDセキュリティ、セキュリティオペレーション、そしてAIネイティブ機能をFalconプラットフォームに次々と追加している。特に注目すべきは、CrowdStrikeの言う「エージェント型セキュリティプラットフォーム」へとFalconが進化したことである。AIを活用した検知機能、自律型エージェント、統合データレイヤーなどは、同社がいかに顧客の広範なセキュリティエコシステムに浸透しており、長期的に顧客をつなぎとめているかを示唆している。
AIを悪用して攻撃を加速させるなど脅威は急速に複雑化しており、ITセキュリティチームは、意図せずデータサイロ化を生み出しかねないポイントソリューションではなく、包括的なソリューションを提供するプラットフォームを求めている。こうした統合への流れは、ひとつのプラットフォームで複数のセキュリティ分野をカバーするCrowdStrikeのようなサイバーセキュリティベンダーにとって追い風となっている。エンドポイント、クラウド、ID、セキュリティオペレーションを統合することで、CrowdStrikeは増大する顧客のツールセット管理の負担をも軽減している。
CrowdStrikeが顧客基盤の獲得と拡大を続けていることは、我々の予測に自信を与えている。典型的な顧客は、CrowdStrikeの顧客となった後、時間経過とともにFalconの追加モジュールを導入していくという「アップセル」戦略通りの行動を見せている。この「導入・浸透(Land-and-expand)」戦略は非常に効果的である。導入されたプラットフォームの利用を深化させることで、CrowdStrikeは顧客のITエコシステム内での地位をさらに強化し、時間の経過とともに顧客のスイッチング・コストを高めているからだ。
モーニングスター シニア・エクイティ・アナリスト、マリク・アーメド・カーン
モーニングスターのCrowdStrikeに関するレポート全文はこちら。◇
※ 本稿はモーニングスターの「27 Companies With Wide Moats That Won’t Be Snuffed Out by AI」をモーニングスター・ジャパンが翻訳したものです。原文と翻訳に相違がある場合は、原文が優先されます。
※ 本稿は、情報提供のみを目的としており、特定の金融商品、銘柄などを推奨するものではありません。投資における判断は、ご自身の投資目的、投資期間、資金性格、投資への姿勢などを勘案して、ご自身の責任において慎重に行ってください。

