非公開企業が上場市場を侵食している3つの状況

小型株投資は様変わりし、非公開企業に食われるのか?

錠前をイメージしたコラージュイラスト。背景には街並みとグラフの要素。

<今回のポイント>

  • 非公開市場の拡大によって、小型株の置かれる状況が変化し、小型株投資について再考する必要が出てきた。
  • 高い潜在成長力を持つ企業が、小型株式として株式市場に上場されず、非公開市場に留まる傾向が強くなっている。
  • 上場企業が非公開企業によって買収され、非公開化されるケースが増加しており、買収価格も上昇している。
  • 非上場企業がより積極的に上場企業とビジネス競争を繰り広げるようになり、業界によっては競争環境が変化している。特に小型株に属する小規模な企業は、競争激化の影響を最も受けやすくなっている。

米国では、プライベート市場が公開市場を根本的に変えつつある。高い成長可能性を持つ企業がより長く非公開のままでいる傾向が強まっており、公開企業・非公開企業間のビジネス競争が激化し、非公開化される公開企業が増加している。

こうした変化は、投資環境を大きく変えつつあるが、小型企業は大企業に比べてファンダメンタルズが弱く、競争上の優位性も低いため、特に小型株式が最も深刻な影響を受けている。

以下のグラフはモーニングスター・米国大型株式インデックス(青)を1とした場合の、モーニングスター・米国小型株インデックス(赤)の推移を示している。

【米国大型株に対する米国小型株の推移】

(米国大型株=1とする)

Relative Growth of Morningstar US Small Cap Index

米国小型株式は近年、米国大型株式を下回っている。実際、モーニングスター・米国小型株インデックスは、1992年から2025年8月までの期間で、モーニングスター・米国大型株インデックスに年率49ベーシス・ポイント下回り、累積で401%の差がついた。このアンダーパフォームの差は、過去10年間では年率6.2%に拡大している。

また、小型株インデックスはいずれの期間でも、大型株に比べてボラティリティ(変動性)がはるかに高かった。これは、「よりリスクの高い小型株はより高いリターンを投資家にもたらすと期待される」という長年信じられてきた言説に反する事実である。

ある議論では、プライベート市場の拡大が小型株の上昇余地を損なったと指摘されている。もしそれが事実だとすれば、「今日の小型株が明日の大型株となる」という小型株投資の根幹を担ってきた仮説は無意味になる。明日の超大型株はすでに大型株であり、明日の大型株はもはや小型株の中から見出すことはできないかもしれない。

ただし、考慮すべき微妙な点もある。小型株のパフォーマンスは歴史的に好調・不調の波があり、近年の低迷が単にその不調の波なのか、それとももっと本質的な変化が招いたものなのかは、まだ明らかではない。

モーニングスターの新たなリサーチでは、変化しつつある市場環境、小型株の不振、そして投資家が小型株や小型株ファンドへの資産配分を見直すべきか否かについて検証している。

プライベート市場が公開市場をどう変えるか

プライベート・キャピタルの増大によって、小型株投資は再考を促されている。プライベート市場が小型株投資に与えている3つの影響を挙げると:

  • ベンチャーキャピタルによる資金調達が、高い潜在成長性を持つ企業を非公開のままにしており、その大部分は、一般投資家には手の届かない所で成長している。
  • 小型株に属する小型企業が、プライベート・エクイティ・ファンド等によって公開市場から次々と買収され、非公開化されている。
  • ベンチャー・キャピタルやプライベート・エクイティ等による資金供給が記録的に拡大して、資金を得た非公開企業が上場企業に積極的に競争を仕掛け、業界によっては競争環境が大きく変化している。

さらに、2025年8月にドナルド・トランプ大統領が署名したプライベート市場へのアクセス拡大を目的とした大統領令は、こうした影響をさらに加速する可能性がある。

その結果、小型株指数の対象となる公開企業数が減少し、それらの企業の総合的な成長可能性や相対的な質が低下している。

以下のグラフが示すように、総合クオリティスコアに基づいて見たモーニングスター・米国小型株インデックスは、同大型株インデックスと比較すると急速に悪化している。こうした状況が小型株に対する投資家心理の悪化を招き、先に述べたアンダーパフォーマンスの一因となっている可能性がある。

【小型株と大型株の総合クオリティスコアによる比較】

Relative Quality (Small Minus Large)

※小型株のスコアから大型株のスコアを差し引いて表示。総合クオリティスコア算出には資産利益率、自己資本利益率、純利益率、債務/資本比率などを含むデータを使用した)

有望企業は非上場にとどまるのか?

経験から見ても、ベンチャーキャピタルが資金を提供した場合、有望な企業がより長期間、高い評価額のまま非公開企業として留まる傾向があることは明らかだ。

現在最も重要な企業の中には、株式市場で一度も取引されたことがないにもかかわらず、ほとんどの上場企業よりも規模が大きいものもある。PitchBookのデータによると、OpenAIは2025年3月31日時点で3000億ドル、スペースXは8月13日時点で4000億ドル、Anthropicは9月2日時点で1830億ドルと評価されており、こうした企業は他にも多数ある。

もしこれらの企業が上場していれば、いずれもモーニングスター・米国大型株指数の上位組入銘柄になっていただろう。

ただし、データは変化しつつあり、「有望企業が上場しなくなっている」という考えを完全に裏付けるものではない。

PitchBookによれば、2022年から2024年の間に167社の米国企業が上場し、2021年にはベンチャーキャピタルやプライベートエクイティ・ファンド等に支援された企業による新規株式公開が、過去最高の313社を記録した。2025年もすでに、Figma FIGやCircle CRCLなど、上場初日に急騰した注目すべきIPOが複数あった。

以下のグラフは、2006年以降の新規上場企業数(赤:右軸)とその評価額の中央値(青:左軸)の推移を示している。

2006年以降の新規公開件数と評価額(中央値)の推移

(※データはPitchBook9月15日時点)

IPO Activity and Median Size

しかし、これらの事例から見逃しがちなのは、IPOの大半は依然として時価総額の小さな企業だという点だ。毎年数十社の小型株企業が上場しており、「IPO市場が完全に枯渇した」という見方には反論の余地がある。

小型株投資家にとっての課題は、最も高い潜在成長力を持つIPO企業が小型株として存在しない可能性があることだ。

例えば、FigmaとCircleは公開初日に500億ドルを超える時価総額で取引された。また、たとえばモーニングスター・PitchBook・ユニコーン30インデックスの上位組入銘柄が上場したとすると、小型株の領域でデビューするものはほとんど、あるいはまったく無いだろう。

非公開化される公開企業

プライベート・キャピタルが小型株投資の環境を歪めているもう一つの要素は、非公開企業が買収によって小型株式に属する企業を公開市場から引き抜くという新たな潮流である。

以下のグラフは、2006年以降に非公開化された公開企業の数(赤:右軸)と、非公開化後の評価額の中央値(青:左軸)を示している。

非公開化された公開企業の数と評価額(中央値)の推移

(※データはPitchBook9月15日時点)

Public Companies Taken Private

上場企業が非公開化することはめったにないが、以前より頻繁になり、非公開化される企業の規模も大きくなっている。現時点では、小型株投資への影響は限定的だが、プライベート・エクイティ市場が拡大するにつれ、小型の非公開企業がレバレッジド・バイアウト(借入金を活用した買収)の対象となる可能性は高まるだろう。そして、ひとたび買収されれば、資金注入によって上場企業との競争が激化し、競争力の低い企業からビジネスを奪うことになるかもしれない。

最近の米国の政策変更は、こうした動きにとって追い風になるだろう。Investment Company Institute(ICI、米国投資信託協会)によると、2025年3月31日時点でアメリカ人は、企業型確定拠出年金401(k)プランで8.7兆ドルを保有している。これは、非公開企業にとって未開拓の巨大資金である。

仮に401(k)プランによるプライベート・エクイティ投資がわずかでも増加すれば、すでに拡大し、さらに成長を続けているプライベート・エクイティ・ファンドを、大いに利するだろう。

ホワイトハウスの8月7日の大統領令は、プライベート企業による買収をさらに活発にし、新たな資金を手にしたプライベート・エクイティ・ファンド等による公開企業買収の増加につながる可能性がある。

<プライベート市場のリターンに関する重要なメモ>

もしプライベート市場が小型株市場のリターン不振の原因になっているとしても、それがプライベート市場のアウトパフォームにつながるかどうかは、まだ分からない。また、もし仮にそうであるとしても、そのプライベート市場のリターンは、やはりほとんどの人にとって手の届かないものだろう。

調査によると、プライベート・エクイティやベンチャー・キャピタルのリターンには大きなばらつきがあり、一見「平均」リターンが良好に見えても、実際にその平均リターンを手にすることはほぼ不可能だと考えられる。

Steven Kaplan, Robert Harris, Steven Neil, そしてTim Jenkinsonによる、2015年の論文「プライベート株式への投資は上場株式と比べてどのようなパフォーマンスを示すか(How Do Private Equity Investments Perform Compared to Public Equity?)」の中で、プライベート株式は平均してS&P500をアウトパフォームしているが、リターンには非常に大きな正の歪み(ポジティブ・スキュー)があり、つまりごく一部の投資家が莫大な利益率でアウトパフォームしているだけであることを示している。

プライベート・エクイティやベンチャー・キャピタルでは、このように結果の分布に大きな偏りがあるため、ファンドや証券の選択が公開株式市場以上に重要になる。

変化する環境でポートフォリオをどう構築するか

プライベート市場が公開市場をますます侵食する環境で、投資家は(プライベート市場や小型株市場に飛びつくのではなく)慎重になる必要がある。小型株のバリュエーションは依然として平均的に低水準にあり、この市場にはまだ投資妙味が存在している。ただし、投資家は小型株や小型株ファンドの選択において慎重な姿勢で臨むべきである。

質の高い小型企業は、質の劣る小型企業に対して優位性が増大しており、今後もアウトパフォームし続けると考えられる。なぜなら、収益性の高い企業は、激化する競争に対してより強い耐性を持つ可能性が高いからである。

多くのアクティブ運用戦略の小型株ファンドマネジャーは、より質の高 い企業に注目し、非公開となる買収可能性の高い企業を特定し、投資する各業界の公開・非公開企業間の競争状況を評価している。

小型株インデックスファンドに投資する場合は、平均時価総額が大きく、より質の高い戦略(指数)を採用しているファンドを選ぶべきである。

モーニングスター・メダリスト・レーティングでは、このようなファンドに「金(Gold)」「銀(Silver)」の評価を付与しているので、参考になるだろう。それらの小型株インデックスファンドは、変化する環境による悪影響を最も受けにくい株式を保有する戦略を採用しており、少なくとも、現時点ではそのように考えられる。

※ 本稿はモーニングスターのマネジャー・リサーチ アナリストのザカリー・エヴァンスによる記事「3 Ways Private Companies Are Reshaping Public Markets」をモーニングスター・ジャパンが翻訳したものです。原文と翻訳に相違がある場合は、原文が優先されます。

※ 本稿は、情報提供のみを目的としており、特定の金融商品、銘柄などを推奨するものではありません。投資における判断は、ご自身の投資目的、投資期間、資金性格、投資への姿勢などを勘案して、ご自身の責任において慎重に行ってください。

著者はこの記事で言及されたいかなる有価証券も保有していません。詳細はこちらをご覧ください: モーニングスターの編集方針