バッファETF(緩衝型ETF)は万人向けではない――どんな商品で誰が活用すべきなのか

拡大する確定アウトカムETF、その仕組みと、メリット/デメリット

「ETF」という文字を、時計と幾何学模様を背景にしたコラージュイラストです。

ETF(上場投資信託)で「ストラクチャード・プロダクト(仕組み商品)」が急増している。中でも「確定アウトカムETF」と呼ばれるバッファETF(緩衝型ETF)が人気を集めている。これらはオプション取引を利用して、一定期間における損失を特定の割合でカバーする一方で、上昇幅に上限を設ける仕組みである。これらの商品は、比較的手数料が高額なため、投資家は支払った費用でどのような効果を買っているのかを、十分に理解して利用する必要がある。

モーニングスターは新たに『確定アウトカムETFガイド』を公開し、急速に進化する市場動向を分析し、潜在的な活用事例を提示するとともに、確定アウトカムETFプロバイダー主要8社の概要をまとめている。

ここでは、バッファETFの台頭について考察し、その仕組みを概説するとともに、投資家がそれらをより有効に活用する方法について解説する。

「安心」のためにコストを支払う投資家たち

モーニングスター・カテゴリの「確定アウトカム」分類には2025年末時点で420本のETFがあり、すべてのカテゴリ中で最多となっている。また過去3年間の平均年間資金増加率(運用益を除く純資産成長率)は39%とこれも最高であり、同年末では純資産総額は780億米ドルに達している。

以下のグラフは棒グラフ赤が資金純流入額(左軸)青が純資産(左軸)、赤い折れ線がETFの本数を示している。近年の急増がよく分かるだろう。

確定アウトカムETFのグロース

ここ数年、ポートフォリオの損失を抑制できるという理由から、確定アウトカムETFの人気が高まっている。2022年の株式市場・債券市場の下落は、これらのETFが定着する絶好のきっかけだった。その年、債券は十分な安定化効果を発揮できず、債券が常に株式の損失をヘッジするとは限らない状況で、投資家は下落リスクを抑制する方法を模索せざるを得なかった。

そこで登場するのが、株価の下落に対して明確な防御ラインを提供するバッファETFである。ただし、バッファETFにもリスクが伴い、状況次第では損失を被る可能性がある。標準的なバッファETFは、「バッファ(緩衝)水準」を超えた後の下落は、まるごと投資家の損失となるのである。手数料控除前の損失を完全に回避できるのは、マックス・バッファETFだけだ。また、ETFが何%の損失を保護すると謳っていても、いずれのETFも利益をある程度制限するトレードオフの構造になっている。

バッファによる安心感は、一部の投資家にとって収益獲得の機会損失を上回る価値があるのかもしれない。しかし、長期的な視点で見ると、確定アウトカムETFのトータル・リターンは、収益に上限のない個別株式や分散投資ポートフォリオを大きく下回る可能性が高い。

つまり、確定アウトカムETFは投資期間を長くとれる投資家にとって最適な商品とは言いがたい。リスク回避志向が強く、投資期間が短く、多少の複雑さを気にしない投資家に向いている商品である。 ただし、その複雑さを理解しておく必要があるだろう。

バッファ構造の理解

確定アウトカムETFは複雑な商品であり、宣伝されている投資成果を達成するには、通常1年という提示された成果期間に従って売買する必要がある。これらのETFはオプション取引を使って運用される。確定アウトカムETFカテゴリ内には、複数のオプション構造が存在し、投資家はそれぞれのETFの構造によって異なる成果が生じ得ることを理解する必要がある。

例えば損失の最初の10%をカバーするタイプの標準的なバッファ構造が、最も一般的である。このような標準的なバッファー構造では、確定アウトカムETFは、S&P 500指数やナスダック100指数などの参照資産のパフォーマンスを、定められた上限値まで追従しつつ(それ以上のリターンはあらかじめ放棄している)、当該資産が下落した場合には一定の割合の損失(たとえば10%の下落までなど)を回避する。確定アウトカムETFはまた、分配金の支払いも行わない。

下図は、標準的なバッファー構造を用いた確定アウトカムETFの仮想的なモデルを示している。投資家は、定められた期間において20%を超えるリターンを得ることができないが、手数料控除前の指数下落分の損失のうち最初の10%を保護される。この例では、参照資産のリターンが0%~20%の間にある場合のみ、パフォーマンスは参照資産に連動した動きとなる。

以下のイメージ図では青が参照資産のリターン、赤がそれに応じたモデルETFのリターンを示している。上昇には20%の上限(キャップ)があり、下落は10%のカバーされている。

標準的な10%のバッファー戦略が利益を生む仕組み

そ例外の構造も登場し始めている。マックス・バッファーETFは下落に対して最も大きな防御を提供するが、一方で上昇余地はほとんどない。ラダー型やダイナミック・オプション戦略は、パフォーマンスを複数のアウトカム期間に分散するものである。エンハンスト型または加速型(アクセラレート型)の構造は、通常ある程度のダウンサイドバッファーを維持しつつ、定められた上限までリターンをレバレッジする仕組みである。これらはすべて標準的なバッファー構造とは異なる結果(アウトカム)を約束している。

それぞれのアウトカム構造は、潜在的に大きな機会費用を内包している。確定アウトカムETFの大多数はS&P 500指数の動きに連動しており、同指数の上昇をある程度(定められた上限まで)捉えつつ、下落リスクを様々な程度で軽減することを目指している。

バッファレベルを比較する

確定アウトカムETFのバッファ水準は、そのリスクの程度を示している。保護されるバッファが大きいほど、下落幅は小さくなるが、参照資産が上昇した場合のリターンは低くなる。

過去のパフォーマンスは、こうした潜在的なトレードオフを示している。S&P 500種指数は、1970年以降、1年の期間を切り取ってみると、そのうちわずか3.9%で20.0%以上の下落を記録ている。一方上昇を見ると、同じ期間のほぼ3分の1で20.0%以上の上昇を達成した。このデータからは、20%のバッファによる下落リスクの防御は、それほど頻繁に発動されないだろうと考えられる。

ETFのバッファ水準は、投資家が参照資産に対して特定の期間中に得られるリターンの水準を決定する要素である。以下のグラフは2022年のS&P500指数の動き(ブルーの面グラフが年間のドローダウン)と3本のバッファETFを示している。AllianzIM US Large Cap Buffer20 Jan ETF(折れ線グラフ赤、JANW)は、2022年にS&P500が記録した18%の下落を運用終了時点で完全にカバーした唯一のETFであった。これは同ETFが「指数の下落の最初の20%に対してのみ保護機能を発揮する」という前提に基づいている。一方、15%(黄色、PJAN)と9%(緑、BJAN)のバッファを前提とするETFは、市場の損失がバッファの保護水準を上回ったため、1年のリターンはマイナスに終わった。

小幅な値動きは、下落市場においてより大きな損失を意味します。

投資家は、確定アウトカムETFが株式市場の損失を分散してくれると期待すべきではない。市場が下落したときに、ETFが上昇するわけではない。標準的なバッファETFは、株式市場と正の相関関係にあり、オプション構造が作用するまで市場といっしょに下落する。保護機能は確かに意味があるかもしれないが、投資家は自分がどのようなリスクを負うことになっているかを理解しておかなければならない。

バッファーETFは保守的なポートフォリオの分散投資に利用できる

バッファーETFは株式と正の相関関係にありる。つまり、標準的なバッファーETFは、下落リスクの保護を確保しつつ、債券比率の高いポートフォリオの上昇ポテンシャルを高める運用を提供する。以下のグラフは、この点を示している。グラフは、年率20%のバッファー商品であるInnovator US Equity Power Buffer ETF (PJAN)を2020年から2025年にかけて、様々なリスクレベルの複数のポートフォリオに20%配分して組み入れた結果を表している。

保守的なポートフォリオ(グラフのブルー、株式20%、債券80%)は、Innovator US Equity Power Buffer ETFに資産の20%を配分したことで最も大きな恩恵を受ける結果となった。一方、それ以外の株式比率の高いポートフォリオでは、同ETFを追加したことでパフォーマンスが大幅に抑制されてしまった。

確定アウトカムETFは、債券中心の資産配分における分散投資を実現できます

20%のバッファー配分を有するポートフォリオの超過利潤

バッファーETFのメリットと活用例

確定アウトカムETFは、万人向けの商品ではない。適切な投資家が適切な状況で投資すれば、リスク管理に効果的なツールとして使うことができるものだ。それ以外の投資家は、近づかない方がいいだろう。

以下に、何を得るために、何を犠牲にするのか、考慮すべきポイントをまとめる:

メリット:

  • アウトカム期間を遵守できる場合、明確かつ確実なリスク管理が可能となる
  • アウトカムが明確なため、リスク回避志向の投資家は投資計画を堅持しやすい
  • 投資期間が短い(長く取れない)投資家は、ガードレールのように一定の保護を受ける株式投資からメリットを受ける可能性がある
  • アウトカムETFには多様なアウトカムの種類の商品があり、アドバイザーは投資家のリスク許容度に合わせてテイラーメイドの投資を構築することが可能となる

デメリット:

  • 特に長期的には、機会費用が高くなる可能性がある
  • コストが高額である。確定アウトカムETFの間手数料は平均で年0.75%である
  • 市場の大きなボラティリティや金利の大幅な変動は、上限額に影響を及ぼす可能性がある
  • 確定アウトカムETFでは、ほとんどの商品が制約を課している。提示されたアウトカムが保証されるのは、当該期間の開始時にETFを購入し、終了時まで保有した場合に限られている◇ 

確定アウトカムETFは、どんな人に向いているか

投資家の
向かない人
検討してもよい人
リスク耐久度リスク回避的ではない極めてリスク回避的
年齢より若いより高齢
想定投資期間長い短い
Source Line: 出典:モーニングスター。2025年12月31日作成

確定アウトカムETFの一般的な活用事例

使途
効果
差し迫った退職に備える資産の保護
近づいた退職に向けた資産の保護
将来の退職に向けた資産の保護
リタイアメント後のインカムが必要
差し迫った大きな支出のための資産保護
株式ポジションのリスク軽減
Source Line: 出典:モーニングスター。2025年12月31日作成

※ 本稿はモーニングスターの「Buffer ETFs Are Not for Everyone. Here’s How to Use Them in Your Portfolio」をモーニングスター・ジャパンが翻訳したものです。原文と翻訳に相違がある場合は、原文が優先されます。

※ 本稿は、情報提供のみを目的としており、特定の金融商品、銘柄などを推奨するものではありません。投資における判断は、ご自身の投資目的、投資期間、資金性格、投資への姿勢などを勘案して、ご自身の責任において慎重に行ってください。

著者はこの記事で言及されたいかなる有価証券も保有していません。詳細はこちらをご覧ください: モーニングスターの編集方針