<今回のポイント>
- アメリカの「政府閉鎖」(シャットダウン)は、議会が政府機関への資金供給を継続する法案を可決しない場合に発生する。
- 1974年に「議会予算法」が制定されて以来、政府閉鎖は何度か発生しているが、その期間や影響は様々であった。
- 金融市場は政府閉鎖に対して、通常、典型的な「リスクオフ」の反応を示す。過去の事例では、こうした反応は比較的軽微であり、短期間で収束する傾向がある。
政府閉鎖で何が起こるのか?
アメリカの「政府閉鎖」は、連邦政府機関が業務を継続するために必要かつ十分な資金を確保するための予算を、議会が可決しない場合に発生する。こうした対立は大抵の場合、政治的な思惑の違いや、特定の問題をめぐる意見の衝突や、妥協の意思や解決に歩み寄る能力の欠如に起因する。
現在の政府予算は9月30日の深夜に終了する。政府閉鎖を回避する方法はいくつかあり、議会は短期資金調達法案(継続決議)と呼ばれるつなぎ資金を可決するか、個別の1年間の資金提供法案を承認することが可能だ。しかし、時間的な制約と現状で事態の進展が見られないことを考慮すると、期限までに完全な予算案が成立する可能性は低く、今回も政府閉鎖が起こる可能性が高まっている。
9月22日の週の初め、行政管理予算局(OMB)は政府機関に対し、政府閉鎖が発生した場合に備えて、連邦職員の一部解雇の準備を整えるよう指示した。過去の例では、政府閉鎖によって職員が一時的に休職(furlough)となるケースが多く、解雇(layoff)されたことはない。もし今回、解雇が恒久的なものになれば、政府サービスの低下や経済活動の弱体化への懸念が現実のものとなるかもしれない。
今回の対立の主要な論点のひとつは、民主党が資金提供法案に「医療保険制度改革(ACA)」の税額控除の延長を含めるよう主張していることである。この税額控除は2025年末に期限切れとなる予定であり、共和党は延長に反対しているからだ。
議会予算法が1974年に制定されて以降、政府閉鎖はたびたび発生した。これらの閉鎖には様々な解釈があるが、「重要な政府閉鎖」と見なされるのは約10〜12回程度である。数時間で終わったものもあれば、最長では2018年12月から2019年1月にかけての閉鎖は35日間続いた記録がある。
政府閉鎖が与える影響もさまざまだ。一般的に、国立公園や博物館などの「(人の生存に直接)必要不可欠でない」職員が最も影響を受ける。政府閉鎖が長期化すると、経済活動や政府の歳入に悪影響を及ぼす可能性がある。
政府閉鎖は市場にどんな影響を与えたか?
過去の事例では、政府機関の閉鎖が起こると、金融市場はそれを「ミニ危機」と捉え、典型的なリスク回避的な反応を示してきました。
- ボラティリティ(価格変動性)が市場全体で上昇し、資金の流れが鈍化する傾向がある。
- 株式市場は売りが優勢になるが、それほど大きな影響はない。
- 米国債は安全資産としての魅力が高まり、価格が上昇する傾向がある。
- 国際市場参加者は、安定性の低下と金利低下を背景に、米ドルを下落させる傾向がある。
長期的な影響としては、経済指標の発表が遅れることがあり、これが投資家に不安を招き、FRBなどの政策決定者を難しい立場に追い込む可能性がある。企業収益の観点では、政府機関と契約している企業は、契約先の政府機関が閉鎖されると支払いの遅延や減額に直面する可能性がある。
これまでの政府閉鎖のほとんどは短期間で終わり、混乱や影響も極めて一時的なものだった。今回も同様の結果になる可能性が高いが、不確実性の高まりは市場にとって好ましいものではない。最近の政治情勢を踏まえると、今回の政府閉鎖が社会・経済にこれまで以上に大きな影響を及ぼす可能性も十分にある。
今回の事象は、投資家がニュースや市場の動きに対して冷静に規律ある姿勢を保ち、自身のリスク許容度に見合った思慮深い分散投資戦略を維持すべき、もう一つの機会である。こうした戦略は、政府閉鎖のような避けようのないイベントから生じる影響を軽減する助けとなるものである。 ◇

