ニューヨーク南部地区連邦検察局が、上場事業開発会社(BDC)であるBlackRock TCP Capital(TCPC)の評価方法について調査を行っていると報道されています。TCPCは、従来のクローズドエンド型ファンドに似たところもある投資ビークルですが、いわゆる非上場企業への直接融資に特化しています。
多くのこの種の投資ファンドと同様、TCPCも借入を活用して財務レバレッジをかけ、リターンの拡大を狙う投資を行っています。これまでの所、このレバレッジ(借り入れ)が与える影響が過小評価されている懸念があると報道されています。より大きな問題として、セミリキッド(半流動性)型ビークルの価格決定の不透明性も指摘されています。
検察当局がTCPCに注目している背景には、1月に発覚した深刻な問題があります。当時、このファンドは2025年第4四半期の純資産価額(NAV)を19%引き下げると発表し、これがプライベート・クレジット市場全体の健全性に対する懸念を高めるものとなったのです。
多くの資産運用会社は、自社のプライベートローン評価額を検証するために第三者価格情報サービスを利用していますが、評価の最終的な責任は資産運用会社にあります。非上場資産は、比較可能な公開取引データが存在せず、市場価格を参照できません。そこで評価に際していわゆる「観測不能なインプット」、つまり他の手段による裏付けのない数字に依存しています。これらの保有資産は、公開書類において「レベル3資産」という分類で記載されています。
「レベル3」に指定されている資産の評価基準には、裁量の余地がかなりあります。運用会社は通常、価格を月に1回しか推計せず、その評価額はあまり大きく変動しない傾向にあります。報道されている連邦当局の調査が示唆しているのは、ブラックロックが評価額の大幅な引き下げを行う前に、保有資産を本来よりも高い価格で評価していた可能性があるということです。
ブラックロックは、この評価額引き下げの約3分の2が、問題を抱えた6社の企業に起因するとしていますが、その他企業への投資も行っており、単に6社への融資にとどまらず、株式および株式類似資産の保有分が損失を拡大させています。Eコマース・アグリゲーターのRazorについては、貸付に対する典型的な信用リスクの顕在化に見えます。一方、教育テクノロジー企業のEdmentumについては、ポートフォリオの1.9%に相当する株式を保有していました。
TCPC全体では、2025年第3四半期末時点で、資産の9.9%を株式に投資していました。プライベート・クレジット市場では、必ずしも債務不履行が起きなくても巨額の損失が生じる可能性があります。回収見通し、契約条項、スポンサーの想定など、何かひとつに変更が生じれば、損失を引き起こす可能性があります。加えて、株式的特性を持つ資産、たとえばワラント、優先株、普通株といった資産が組み合わされば、市場への感応度がさらに高まり、小さな評価額の変化が大幅な価格変動につながることもあります。
しかし、この問題の核心は前述の通り、多くのBDCが活用している財務レバレッジです。2025年9月時点で、TCPCは7億4000万ドルの純資産に加え、約10億ドルの借入金で投資を行っており、TCPCのポートフォリオの市場エクスポージャーは、純資産の230%以上にまで拡大していました。これが、2025年第4四半期に19%という巨額の損失を発生させる主因となりました。比較のために付け加えると、もし借入金なしで同じポートフォリオを運用していたならば、評価損は8%前後にとどまっていたと見られます。
短期間の損失としては痛手ですが、仮に、レバレッジを一切かけなくても、特定の株式への集中投資を行い、株式への投資比率が高いポートフォリオであれば、この程度の損失は決して不自然な数字ではないでしょう。そうなると、レバレッジを多用するファンドのポートフォリオの価格評価についての連邦捜査当局の刑事捜査は、過剰反応ではないかという疑問が生じます。現状では、それを判断するに足る公開情報がありません。資産運用会社が意図的に資産評価額を操作したと規制当局が結論付けた例は過去にもありますが、過去30年間で報告された事例はごくわずかです。
本当に問題なのは、ブラックロックの状況に特別な点は何もないということかもしれません。競合他社のほぼすべてが、何らかの財務レバレッジを利用しています。同社の投資判断が不適切だった可能性もありますが、少ない頻度で、人手によって変動の少ない価格評価を行うことは、この種のビークル全体に見られる現象です。これは構造上本質的に不透明な作業であり、評価額変更についての適切な規模やタイミングを判断する余地が非常に大きいものです。もし検察がブラックロックのプライベート・クレジット・ポートフォリオの価格評価手法を問題視して追及すれば、検察の行く手には、ほかにも調査対象となるウォール街の会社が行列を成して並ぶことになるでしょう。◇
※本稿はモーニングスターの「Private Credit Pricing: Are Prosecutors Opening Up Pandora’s Box?」をモーニングスター・ジャパンが翻訳したものです。原文と翻訳に相違がある場合は、原文が優先されます。

