TSMC【決算】:旺盛なAI需要により設備投資ガイダンスは想定以上、フェアバリューを2,700台湾ドルへ引き上げ

切迫する需要を追い風にTSMCは中期的な見通しを引き上げ、株価は5つ星水準にある

The Taiwanese semiconductor contract manufacturing and design company building.
Walid Berrazeg/SOPA Images 通じて Getty

TSMC(台北市場:2330)は、2026年の米ドルベース売上高は前年比30%増、設備投資は最大で560億米ドルになるとのガイダンスを示した。また、2025年第4四半期の売上高は前四半期比6%増の1兆台湾ドル(337億米ドル)、粗利益率は前四半期比で287ベーシスポイント改善し62.3%となった。

<重要なポイント>

2026年の設備投資ガイダンス(520億~560億米ドル)は、当社事前予想の470億米ドルを大幅に上回った。TSMCはこれを極めて強いAI需要の拡大によるとして、2024~2029年の売上高成長率を年率20%から20%台半ばへ、うち、AI関連売上高成長率を年率40%台半ばから50%以上へそれぞれ引き上げている。

  • 同社の経営陣は従来保守的なガイダンスを提示する傾向があり、さらにMetaなど間接顧客からの収益を示唆していることから、TSMCが2029年に8.8兆台湾ドルの売上高を達成し、2025~2029年の売上高成長率が23.3%となる可能性が高いと当社は確信を深めている。
  • われわれはこれまで、OpenAIの急速な資金消費がTSMCの売上目標に波及してリスクとなる事態を懸念していた。しかし現在は、GoogleがTPU(テンソル・プロセッシング・ユニット)の提供を拡大し、Broadcomが顧客基盤を広げていることから、AI関連投資に対する見通しは改善してきている。

<結論>

AI関連投資が持続的に拡大するとの期待が高まっていることを踏まえ、モーニングスターはTSMCの適正価値推計値を1,900台湾ドルから2,700台湾ドルへ(ADRは310米ドルから428米ドルへ)引き上げる。われわれは、競合他社製のカスタムチップがより汎用性の高いNvidia製品の代替となり、AI市場のさらなる拡大に寄与すると想定しているが、市場はこれをより懐疑的に見ていると考える。

  • Nvidiaが米国で輸出ライセンスを確保しており、中国のAI企業はTSMCの先端プロセスで製造される最も電力効率の高いチップを求めていることを踏まえ、当社は中国のAI需要の見通しにおいて以前より強気である。
  • 当社は2026~2029年の売上高およびEPSの予想をそれぞれ10~45%、7~53%引き上げる。TSMCは技術的リーダーシップと高い信頼性を具現してきたことから、半導体メーカーの中でAI需要の最大の受益者になると考えている。

<業界を俯瞰する>

TSMCの設備投資の上振れはLam Research、ASML、東京エレクトロンなどの半導体製造装置メーカーに追い風となるだろう。当社は、これらのWFE企業への投資が、TSMCへの投資におけるIntelファウンドリとの競争リスクや台湾特有の政治リスクに対するヘッジとしての役割を果たすと考える。

2026年第1四半期のガイダンスについては、売上高が前四半期比6.3%増加(レンジの中間値)し、1.11兆台湾ドル(352億米ドル)になるとの予測を示した。粗利益率と営業利益率の中間値は、それぞれ64%、55%と前四半期を上回っている。より迅速な納品のために顧客が追加料金を支払うケースも多く、さらに上限寄りの達成となる可能性もあると当社は見ている。

同社はまた、長期の粗利益率目標を53%以上から56%以上へ、ROE目標を25%から20%台後半へ引き上げた。TSMCのこの自信は、社内の生産能力拡大計画を、顧客の需要予測を若干割り引いたものを照らし合わせた結果から来ているものと思われる。過去のサイクルにおいては、顧客が供給確保のために需要見通しを過大に見積もり、それが1~2年後の短期的な供給過剰につながることがしばしば見られたが、同社は需要予測確認のために間接的な顧客とも対話を行っていると強調しており、この自信は根拠の無いものではないようだ。唯一、われわれの小さな不満を挙げるなら、TSMCが2021年のように複数年の設備投資見通しを示さず、2026~2028年の投資が過去3年間を大幅に上回ると述べるにとどまった点である。

当社の5年間予測にとって最大のリスクはこの設備投資である。2026年の見積もりは非常に信頼性が高いものの、2027年、2028年の数値は、SamsungとIntelの市場シェア拡大を防ぐための先制的な投資拡大によって歪められる可能性がある。AI需要が旺盛な中、TSMCの既存の供給能力が既にフルに押さえられているため、顧客はSamsungやIntelとの契約を検討せざるを得なくなっている。現在、Samsungはファウンドリとメモリのセット提案や、2025年7月の契約を利用して2ナノメートルプロセスの性能を披露して顧客獲得を狙っている。Intelも同様に、EMIBパッケージングを活用して懐疑的な潜在顧客との関係構築を進めている。SamsungとIntelはともに米国内で生産能力を拡大しており、それらをTSMCのアリゾナ工場の代替として顧客に訴求している。◇

<TSMCの財務概要および主要指標>

2024年 実績
2025年 実績
2026年 予想
2027年 予想
収益(10億台湾ドル)2,8943,8094,8796,164
収益成長率(%)33.931.628.126.3
営業利益(10億台湾ドル)1,3221,8272,4433,013
営業利益率(%)45.747.950.148.9
調整後EBITDA(10億台湾ドル)1,9912,5253,3314,078
調整後EBITDAマージン(%)68.866.368.366.2
1株当り利益(希薄化後・台湾ドル)48.7565.4082.37105.18
調整後1株当り利益(希薄化後・台湾ドル)48.7565.4082.37105.18
調整後EPS成長率(%)55.134.226.027.7
PER22.123.720.816.3
PBR6.57.46.44.9
EV/EBITDA倍率7.410.312.810.4
FCF利回り(%)

出所:Morningstar Valuation Model. データは2026年1月15日時点

<モーニングスターによる指標>(2026年1月15日時点)

  • エコノミック・モート・レーティング:「広い(Wide)」
  • 適正価値推計値:2,700台湾ドル (ADR; 428米ドル)
  • モーニングスター・株式レーティング:★★★★★(非常に割安)
  • 不確実性レーティング:「中程度(Medium)」
  • 資本配分レーティング:「標準的(Standard)」

※本稿はモーニングスターのエクイティ・アナリスト、フェリックス・リーによる1月15日付アナリスト・ノートの一部を抜粋してモーニングスター・ジャパンが翻訳したものです。英語原文と翻訳に相違がある場合は原文が優先されます。

※ 本稿は、情報提供のみを目的としており、特定の金融商品、銘柄などを推奨するものではありません。投資における判断は、ご自身の投資目的、投資期間、資金性格、投資への姿勢などを勘案して、ご自身の責任において慎重に行ってください。

著者はこの記事で言及されたいかなる有価証券も保有していません。詳細はこちらをご覧ください: モーニングスターの編集方針