<決算の概要>
Taiwan Semiconductor Manufacturing(TSMC)(TSM)は、2026年の設備投資(CAPEX)予算を中央値ベースで80億ドル増額し、620億ドルとした。通期売上高成長率の見通しも米ドルベースで40%超に上方修正した。さらに、アリゾナ州への追加投資として1,000億ドルを投資する計画を発表している。これにより同州への投資計画の総額は2,650億ドルに達する見通しである。
<重要なポイント>
通期の売上高見通しと設備投資計画の引き上げは、AI(人工知能)分野の成長の持続性やサプライチェーンのボトルネックに対する市場の懸念を和らげるものと考える。今回の設備投資増額は、ハイパースケーラー各社による2027年度の投資予算拡大を受けたものである。モーニングスターは、TSMCの2026年から2030年までの設備投資見通しを平均で22%引き上げる。
- TSMCによるアリゾナ州での投資拡大計画は、米国のAIデータセンター顧客による需要の伸びが持続すると同社がみていることを示している。また、潜在的な関税関連や地政学的なリスクへのヘッジとしての意味もある。われわれは、AIインフラ整備が一時的に失速した場合に備えて柔軟性を確保するために、TSMCが時期について明確にしないのではないかと推測している。
- 2027年には、原材料費の高騰や供給逼迫により値上げが実施されると、われわれは予想している。一方、2026年の売上高見通しの上方修正は、AI需要が最先端プロセスのみならず成熟プロセスにも恩恵をもたらしていることに加え、高価格帯の2ナノメートルチップの量産が予想以上に速いことを反映している。
<結論>
エコノミック・モート・レーティングで「広い(Wide)」を獲得しているTSMCの適正価値推計値を、ADR 1株あたり534ドルへ引き上げる。今後数年間にわたってハイパースケーラーの高水準な投資が続くとの見方から、TSMCの設備投資予算の拡大は十分に正当化されると考えるためである。
- また、市場はデータセンター増設に向けた最近の資金調達活動に対して、過度に慎重になっているとわれわれは考えている。Nvidia(NVDA)のレベニューシェア・モデル(収益分配型の資金調達モデル)は警戒感を招く可能性があるものの、ネオクラウド事業者の規模は、Microsoft(MSFT)やAlphabet(GOOGL)などのハイパースケーラーが行っている巨額投資と比較すれば極めて小さい。
<今後の展望>
TSMCは、生産能力拡大において深刻なボトルネックは存在しないとの見方を示している。この自信の背景には、主要なサプライヤーであるASML(ASML)が2027年に生産能力を30%拡大し、さらに2028年にも30%増強する計画があるとわれわれは考えている。モーニングスターがTSMCの設備投資予測を引き上げた理由の一部も、ASMLがこうした拡大計画を着実に実行できるとの前提に基づいている。◇
※ データは7月16日時点。
<モーニングスターの主要指標>
- 適正価値推計値:534.00ドル
- モーニングスター・株式レーティング:★★★★(割安)
- エコノミック・モート・レーティング:「広い(Wide)」
- 不確実性レーティング:「中程度(Medium)」
- 資本配分レーティング:「標準的(Standard)」
※ 本稿はエクイティ・リサーチによるアナリスト・ノートに基づくモーニングスターの記事「Taiwan Semiconductor Earnings: Lifting Fair Value Estimate After a Beat-and-Raise Quarter」をモーニングスター・ジャパンが翻訳したものです。原文と翻訳に相違がある場合は、原文が優先されます。
※ 本稿は、情報提供のみを目的としており、特定の金融商品、銘柄などを推奨するものではありません。投資における判断は、ご自身の投資目的、投資期間、資金性格、投資への姿勢などを勘案して、ご自身の責任において慎重に行ってください。

