ソニーグループ【決算】:株価はメモリ不足の影響とAIの脅威を過大評価している

エンタテインメント事業におけるクリエイティブ性や、入り組んだ権利関係のあるメディアミックス展開などは、AIの模倣が及びにくく短期での脅威とはならないだろう

Sony Corporation's headquarters building.
Koichi Kamoshida 通じて Getty

ソニーグループ(6758)の第3四半期における売上高および営業利益は、それぞれ前年同期比1%増、22%増となった。営業利益の力強い伸びはソニーフィナンシャルのパーシャル・スピンオフに伴う未実現利益の実現によるところが大きい。ソニーは2025年度の継続事業における営業利益ガイダンスを8%引き上げ、1兆5,400億円とした。

<重要なポイント>

ソニーの第3四半期決算は、一時的な利益の影響を除けば概ね当社の想定に近いものであった。PlayStation事業の営業利益がプロモーション費用の増加により当社予想を下回る一方で、イメージセンサー販売における製品ミックスが予想以上に改善したことがその影響を相殺したと考える。

  • プレイステーション5(以下、PS5)の出荷台数は800万台に達し、発売から6年目であるにもかかわらず2年前と同水準を維持しており、月間アクティブユーザー数も前年同期比2%増となった。これらの数字は、同事業が期待通りの健全なモメンタムを保っていることを示唆しているため、われわれの中期的な見通しに変更はない。
  • イメージセンサー事業の予測についても概ね従来通りとする。スマートフォン生産の減速や競争激化に伴うシェア前提の変更を背景にセンサー出荷の予測を若干引き下げているが、第3四半期に確認された製品ミックスの改善効果を織り込んだ結果、これらは概ね相殺されている。

<結論>

モーニングスターはソニーの適正価値推計値を5,000円で据え置く。2025年度の営業利益予想を、一時的利益を反映し1兆4,900億円から1兆5,700億円へと上方修正するが、それ以降の年度予想は概ね据え置いている。

  • 市場は、急騰するメモリ価格がゲーム機事業に悪影響を与えること、ならびにAI生成コンテンツがゲーム、映画、音楽を含むソニーのエンタテインメント事業を脅かすとの懸念を過度に織り込んでいるとわれわれは考えている。このため、ソニーの株式は現在割安な水準にあると考える。

決算説明会において、同社が少なくとも2026年の年末商戦まで、長期契約を通じてPS5向けの十分なメモリを確保しているとのコメントを確認できたことは心強い材料である。これは、同社のコンソール生産が現在のメモリ供給不足の制約を受けないことを意味する。

PS5は任天堂(7974)のSwitch 2と比較するとコンソール当たりのメモリ使用量が多いと考えられるため、メモリー価格急騰の影響を相対的に受けやすいことは事実だが、PS5は発売から6年が経過しているのに対し、Switch 2は発売からまだ1年未満であり、コンソールサイクルにおいて別々の立ち位置にある点に留意したい。任天堂はSwitch 2の普及を優先する必要があり、コンソール価格を据え置くことで短期的な収益性が犠牲になることは避けられないが、PS5は既に9,200万台以上出荷しコンソールサイクルの後半にきているため、ソニーにはより柔軟な価格戦略を採る余地があり、例えばコスト上昇を相殺するためにコンソール価格引き上げることも可能だろう。その結果、今後数年間のメモリー価格上昇のマイナスの影響は、任天堂よりもソニーの方がはるかに小さなものに留まるだろう。

むしろ、直近のソニーの株価下落の背景にあるより大きな懸念は、AI生成コンテンツがソニーのエンタテインメント事業に脅威を与える潜在的な可能性に対する危機感であろう。AIがエンタテインメント事業に広範な影響を及ぼす可能性は極めて大きいが、プラスとマイナスの両面が存在する。総じて、現時点では、AIが短期的にソニーの事業を脅かすとはわれわれは考えていない。

コンテンツ制作工程の多くがAIに置き換わる可能性はあるものの、作品に感動を生むクリエイティブな要素は引き続き人間が強みを発揮できる領域であろう。例えば、アーティストやクリエイターは、ゲーム制作・開発における包括的なコンセプトの構築や精巧なゲームバランスの設計、映画・アニメーションにおけるストーリーラインの構築、音楽におけるアーティストへの共感やライブ体験の醸成などを通じて引き続き付加価値を生むことが可能だろう。

また長年にわたる事業運営の中で、各IPが培ったブランド力や、ソニーが構築してきた広範なユーザーエコシステムも短期的に脅かされることも難しいと考える。さらに、ゲームIPを映画に展開したり、ソニー所属アーティストの楽曲をゲームに組み込んだりといった、保有IPをプラットフォーム横断的に活かす手法は、権利関係の問題からAIが容易に模倣できない領域である。総合的に見れば、ソニーはIPの品質とブランド力を維持し、取得したIPの効果的活用を加速することで、AIによる脅威から自らの地位を守ることができるだろう。

<ソニーグループの財務概要および主要指標>

2024年 実績
2025年 実績
2026年 予想
2027年 予想
収益(10億円)13,02112,95712,30012,600
収益成長率(%)18.7-0.5-5.12.4
営業利益(10億円)1,2091,4071,5701,570
営業利益率(%)9.310.912.812.5
調整後EBITDA(10億円)2,3542,5602,7102,725
調整後EBITDAマージン(%)18.119.822.021.6
1株当り利益(希薄化後・円)788.29188.71202.82204.71
調整後1株当り利益(希薄化後・円)788.29188.71-25.14204.71
調整後EPS成長率(%)-5.6-76.1-113.3-914.2
PER3.119.0-139.517.1
PBR0.42.72.32.0
EV/EBITDA倍率7.59.47.57.5
FCF利回り(%)

出所:Morningstar Valuation Model. データは2026年2月7日時点

<モーニングスターによる指標>

● エコノミック・モート・レーティング:「広い(Wide)」

● 適正価値推計値:5,000円

● モーニングスター株式レーティング:★★★★(割安)

● 不確実性レーティング:「中程度(Medium)」

● 資本配分レーティング:「模範的(Exemplary)」

※ 本稿はモーニングスターのエクイティ・リサーチ ディレクター伊藤和典による2月9日付アナリスト・ノートの一部を抜粋してモーニングスター・ジャパンが翻訳したものです。英語原文と翻訳に相違がある場合は原文が優先されます。

※ 本稿は、情報提供のみを目的としており、特定の金融商品、銘柄などを推奨するものではありません。投資における判断は、ご自身の投資目的、投資期間、資金性格、投資への姿勢などを勘案して、ご自身の責任において慎重に行ってください。

著者はこの記事で言及されたいかなる有価証券も保有していません。詳細はこちらをご覧ください: モーニングスターの編集方針