ソニーグループ(6758)の2026年度第1四半期の営業利益は、前年同期比40%増の4,765億円となった。これを受けて、同社は通期の営業利益ガイダンスを8%引き上げ、1兆7,200億円とした。好調な業績と通期見通しの上方修正は、主に米国の関税還付と円安進行を反映したものである。
<重要なポイント>
第1四半期の営業利益が当社予想を大幅に上回った要因は、主として関税還付と円安効果である。ただしそれ以上に、イメージセンサー事業における製品ミックスの改善が想定以上に進んだことをわれわれは前向きに受け止めている。これらの要因を踏まえ、当社はソニーの今期および来期の営業利益予想をそれぞれ12%、9%引き上げる。
- イメージング&センシング・ソリューション事業の営業利益率は23.8%となり、第1四半期としては過去10年間で最高水準を記録した。われわれは、第2四半期には製品ミックスの一段の改善に伴う更なる利益率の上昇を見込んでいる。以上から、ソニーの今年度の営業利益率ガイダンスである19.9%は特に下期の需要失速に対する保守的な見方を反映していると考えている。
<結論>
モーニングスターは、ソニーの適正価値推計値を8%引き上げ1株当たり5,400円とする。また、米国ADRの適正価値推計値も5%引き上げ、34ドルとする。ソニーのファンダメンタルズは堅調であるにもかかわらず、株価は依然として昨年11月の水準を下回っている。これは、AIがソニーのコンテンツ事業に悪影響を与えるとの懸念が過度に織り込まれているためであろう。
- 音楽事業では、米ドルベースのストリーミング収入は音楽制作で10%、音楽出版で8%増加となり、AIによる影響の兆候は見られない。また、映画『Michael』の世界的な成功は、ソニーが共同保有するマイケル・ジャクソンの楽曲カタログからの収益を押し上げた。これはソニーのカタログ投資の価値を改めて示すものである。
- PlayStation全体の月間アクティブユーザー数は前年同月比2%増の1億2,500万人となった。当社は、強力な自社タイトルの発売計画に加え、『グランド・セフト・オートVI』の発売が、今年度後半におけるアクティブユーザー数およびユーザーエンゲージメントのさらなる拡大を後押しすると予想している。
<行間を読む>
7月28日に発生した熊本地震による業績への影響は限定的となる見通しである。熊本テクノロジーセンターの設備は8月4日に再稼働し、8月中旬までには震災前の操業水準に回復する予定である。
ソニーは7月1日、2028年1月以降に発売される新作PlayStationゲームについて、物理ディスク版の製造を終了すると発表した。今後の新作タイトルはPlayStation Storeおよび小売店を通じたデジタル販売に移行する。一方で、それ以前にディスク版として発売されたタイトルへの影響はない。
この決定については一部ユーザーから批判も寄せられている。ユーザーの懸念としては、物理ソフトの貸与や中古販売ができなくなること、中古市場を通じた低価格購入の機会が減少すること、さらにソニーやパブリッシャーがオンラインにおける販売を終了した場合には、当該ゲームの入手そのものが困難になることなどが挙げられる。熱心なゲーマー層は長年にわたりPlayStationコミュニティを支えてきた重要な存在であり、ソニーはこれらの懸念に引き続き配慮すべきであるが、現実的には、PlayStation向けソフトウェア販売の大半はすでにデジタル流通が占めているため、今回の移行がソニーの業績に与えるマイナスの影響は限定的であろう。
ソニーの立場から見れば、この決定は経済合理性に適うものであろう。物理ソフトの販売にはディスク製造、パッケージング、物流、小売マージンなどのコストが伴うため、デジタル販売に切り替えることで、ソニーおよびパブリッシャーがバリューチェーン上の収益をより多く確保できる。加えて、完全デジタル化によって、中古ゲーム購入による新作販売の代替効果も抑制できる可能性がある。ただし、その恩恵の大きさは価格設定や消費者行動によっても左右されるだろう。
ソニーはすでにPlayStation Networkのアカウントやデジタル取引を通じて豊富なユーザーデータを取得している。しかし販売モデルの完全デジタル化により、購入データや利用状況データはさらに網羅的なものとなる。これによって、より精緻なマーケティング施策やコンテンツの推奨、販促活動が可能になると考えられる。
メモリー価格の上昇を含む製造コストの上昇は、依然としてゲーム機メーカーにとっての課題である。そのため、ゲーム販売におけるバリューチェーン上の収益をより大きく確保することは、ゲーム&ネットワークサービス事業の収益の柔軟性を高めるうえで重要であろう。例えばこれにより、ソニーはゲーム機価格へのコスト転嫁圧力を抑制し、販促施策やコンテンツ・サービスへの再投資を進めやすくなるかもしれない。ただしソニーは、今回の決定に伴い新たに得られる見込みのキャッシュについて、現時点では使途を説明していない。
一部では、物理メディアの廃止によってPlayStationとゲーミングPCとの違いが薄れ、ユーザー離れにつながると懸念する主張も聞かれるが、モーニングスターはその見方には懐疑的である。消費者の観点から見れば、PlayStationは依然としてゲーミングPCよりも低コストかつ手軽にハイエンドゲームを楽しめるプラットフォームである。また開発者にとっては、確立された大規模ユーザーベースに効率的にアクセスできる重要なプラットフォームであり続けている。PlayStationの競争優位性は、物理メディアではなく、豊富なコンテンツ群、ハードウェアとソフトウェアの最適化、優れたユーザー体験、オンラインサービス、そして強力なネットワーク効果にある。われわれは、物理メディアはPlayStationの競争優位性の中核ではないとする経営陣の見解に同意している。◇
<モーニングスターによる指標>
● エコノミック・モート・レーティング:「広い(Wide)」
● 適正価値推計値:5,400円
● モーニングスター株式レーティング:★★★★★(非常に割安)
● 不確実性レーティング:「中程度(Medium)」
● 資本配分レーティング:「模範的(Exemplary)」
<ソニーグループの財務概要および主要指標>
| 2025年 実績 | 2026年 実績 | 2027年 予想 | 2028年 予想 | |
|---|---|---|---|---|
| 収益(10億円) | 12,957 | 12,480 | 12,900 | 13,200 |
| 収益成長率(%) | -0.5 | -3.7 | 3.4 | 2.3 |
| 営業利益(10億円) | 1,407 | 1,448 | 1,850 | 1,910 |
| 営業利益率(%) | 10.9 | 11.6 | 14.3 | 14.5 |
| 調整後EBITDA(10億円) | 2,560 | 2,628 | 2,460 | 2,545 |
| 調整後EBITDAマージン(%) | 19.8 | 21.1 | 19.1 | 19.3 |
| 1株当り利益(希薄化後・円) | 188.71 | 172.51 | 230.21 | 238.67 |
| 調整後1株当り利益(希薄化後・円) | 188.71 | 172.51 | 230.21 | 238.67 |
| 調整後EPS成長率(%) | -76.1 | -8.6 | 33.5 | 3.7 |
| PER | 19.0 | 18.6 | 16.5 | 15.9 |
| PBR | 2.7 | 2.4 | 2.4 | 2.1 |
| EV/EBITDA倍率 | 6.9 | 9.1 | 8.9 | 8.6 |
| FCF利回り(%) | ー | ー | ー | ー |
出所:Morningstar Valuation Model. データは2026年8月3日時点
※ 本稿はモーニングスターのエクイティ・リサーチ ディレクター伊藤和典による8月3日付アナリスト・ノートの一部を抜粋してモーニングスター・ジャパンが翻訳したものです。英語原文と翻訳に相違がある場合は原文が優先されます。
※ 本稿は、情報提供のみを目的としており、特定の金融商品、銘柄などを推奨するものではありません。投資における判断は、ご自身の投資目的、投資期間、資金性格、投資への姿勢などを勘案して、ご自身の責任において慎重に行ってください。

