ソニーグループ(6758)の2025年度の営業利益は1兆4,475億円となり、一時的な要因でガイダンスは下回ったものの、事業そのものは好調を維持した。2026年度のガイダンスでは営業利益を1兆6,000億円とし、5,000億円の自社株買いを発表した。
<重要なポイント>
2026年度のガイダンスは、前年度に記録した一時的な損失を除けば実質的には前年比横ばいにとどまっており一見やや物足りないが、これは、高まる不確実性を踏まえソニーが慎重な見通しを示した結果であろう。一方、経営陣のコメントは、市場が抱いていたいくつかの中期的な懸念の一部を鎮めるものとなった。
- プレイステーション5(以下、PS5)の販売台数は、合理的な価格で調達できるメモリの数量に制約されるため、前年比では半減程度となるとわれわれは推定している。ただしその結果、メモリ価格の高騰による収益へのマイナス影響は限定的なものに留まるだろう。
- ソニーは、AIが既に多様な分野で活用されており、生産効率の向上、新たなゲーム体験の創出、プラットフォームとハードウェアの価値向上に貢献していると述べた。加えて、同社はクリエイターの役割の重要性や、IP(知的財産)としてのフランチャイズの価値は長期的に維持されるとの考えを強調した。
<結論>
モーニングスターはソニーの適正価値推計値を5,000円で据え置く。中期的な懸念への経営陣のコメントや堅調なガイダンスは、われわれの中長期的な業績予想を裏付けるものだと考えている。株価は2025年11月のピークから30%以上下落しており、2026年の予想PERは15倍である。したがって、エクイティ・モート・レーティングで「広い(Wide)」を獲得しているソニーの株式は現在5つ星の割安な水準にあると考える。
- 株価の低迷は、AIに対する市場の懸念を色濃く反映したものであろう。ソニーは、既存のフランチャイズへの積極的な投資とAIの戦略的活用によって、急速に変化する事業環境に対応できるとわれわれは考えている。ただし、市場の懸念が完全に払拭されるまでには、時間を要する可能性がある。
ソニーのメモリ価格上昇に対する対応は、任天堂(7974)とは対照的である。任天堂は生産コストの上昇や米国の関税の影響など約1,000億円のマイナス影響を新年度のガイダンスに織り込んだが、ソニーは2026年度のゲーム関連ハードウェアの利益額を前年度と同水準に維持するとの見通しを示した。これは、4月にPS5の本体価格を100ドル引き上げたこと、合理的な価格で調達できるメモリの数量の範囲内にコンソールの生産台数を制限すること、そして必要であれば広告宣伝費などを削減することなど複数の手段を通じて達成可能だろう。ソニーはPS5をすでに9000万台以上出荷しており、ゲーム機としてライフサイクルの終盤に入っている。そのため、コンソールの普及を優先せざるを得ない任天堂とは異なり、収益性を優先する柔軟な戦略をとることが可能となっている。
同日、ソニーはTSMC(TSM)と合弁会社設立の可能性も視野に入れた、次世代イメージセンサーに関する戦略的パートナーシップについての覚書を締結したと発表した。ソニーの現行モデルでは、ロジック処理はTSMCに委託しているが、画素ウェハは内製している。十時裕樹CEOは、提案されている合弁事業ではTSMCのプロセス技術をピクセルレイヤーにも拡張する意向を示した。われわれは、この取り決めによりソニーは需要増加に伴う生産能力拡大コストと投資リスクをTSMCと分担しつつ、自社リソースを競争優位性の中核となるピクセル設計や積層技術に集中することが可能になると考えている。また今後の展開としては、TSMCとの関係強化が一層進むことで、ソニーは将来TSMCの米国工場を通じてイメージセンサーを供給できるようになり、Apple(AAPL)の米国製造プログラムの適用対象になる可能性もあるだろう。◇
<ソニーグループの財務概要および主要指標>
| 2025年 実績 | 2026年 実績 | 2027年 予想 | 2028年 予想 | |
|---|---|---|---|---|
| 収益(10億円) | 12,957 | 12,480 | 12,500 | 12,900 |
| 収益成長率(%) | -0.5 | -3.7 | 0.2 | 3.2 |
| 営業利益(10億円) | 1,407 | 1,448 | 1,650 | 1,750 |
| 営業利益率(%) | 10.9 | 11.6 | 13.2 | 13.6 |
| 調整後EBITDA(10億円) | 2,560 | 2,628 | 2,770 | 2,885 |
| 調整後EBITDAマージン(%) | 19.8 | 21.1 | 22.2 | 22.4 |
| 1株当り利益(希薄化後・円) | 188.71 | 172.51 | 208.20 | 220.05 |
| 調整後1株当り利益(希薄化後・円) | 188.71 | 172.51 | 208.20 | 220.05 |
| 調整後EPS成長率(%) | -76.1 | -8.6 | 20.7 | 5.7 |
| PER | 19.0 | 18.6 | 15.0 | 14.2 |
| PBR | 2.7 | 2.4 | 2.0 | 1.8 |
| EV/EBITDA倍率 | 6.9 | 9.1 | 6.4 | 6.2 |
| FCF利回り(%) | ー | ー | ー | ー |
出所:Morningstar Valuation Model. データは2026年5月10日時点
<モーニングスターによる指標>
● エコノミック・モート・レーティング:「広い(Wide)」
● 適正価値推計値:5,000円
● モーニングスター株式レーティング:★★★★★(非常に割安)
● 不確実性レーティング:「中程度(Medium)」
● 資本配分レーティング:「模範的(Exemplary)」
※ 本稿はモーニングスターのエクイティ・リサーチ ディレクター伊藤和典による5月11日付アナリスト・ノートの一部を抜粋してモーニングスター・ジャパンが翻訳したものです。英語原文と翻訳に相違がある場合は原文が優先されます。
※ 本稿は、情報提供のみを目的としており、特定の金融商品、銘柄などを推奨するものではありません。投資における判断は、ご自身の投資目的、投資期間、資金性格、投資への姿勢などを勘案して、ご自身の責任において慎重に行ってください。

