村田製作所:ほか電子部品5社のフェアバリューを引き上げ。ただし市場のMLCCへの期待は過大。

顧客との長期的な関係を重視する業界慣行により、値上げ幅は限定的に留まるだろう。

Bicyclist robot 'Murata Seisaku-kun', or Murata Boy, a cycling humanoid robot from Murata Manufacturing Co., Ltd.
Andia 通じて Getty

3月期決算後のフォローアップミーティングを踏まえ、モーニングスターはAIデータセンター需要の見通しを見直し、以下5社の業績予想および適正価値推計値を更新した:村田製作所(6981)、Samsung Electro-Mechanics(SEMCO、KRX 009150)、Yageo(TPE 2327)、太陽誘電(6976)、TDK(6762)。

<重要なポイント>

当社は、AIデータセンターの需要が従来想定よりも長期間にわたり高水準で推移すると見ている。背景には、AI投資拡大のペースが想定以上に速いことに加え、推論用途の急拡大に伴いワークロードが増大していることがある。この結果、特に受動部品とハードディスク関連部品について、需要見通しを引き上げた。

  • AIサーバーでは消費電力の増大に伴い、受動部品(MLCC(積層セラミックコンデンサ)、タンタルコンデンサ、インダクタなど)のサーバー当たり搭載量が急増している。こうした搭載量の増加に加え、製品ミックスの改善、価格下落圧力の緩和、選択的な値上げにより、各社の利益率は今後大きく改善していくと予想する。
  • ハイパースケーラーによるGPU投資は、今後数年にわたり堅調に推移すると見込まれる。また、その結果として構築された大量のAIインフラが推論用途で長期間にわたって高稼働を続けることで、データストレージ需要は従来の投資サイクルに連動した上下動の大きいパターンではなく、変動が相対的に小さく、かつ長期的な成長が期待できると判断している。

<結論>

これらを踏まえて、モーニングスターは各社の適正価値推計値を以下の通り引き上げ、村田製作所は8,000円、サムスン電機は900,000ウォン、Yageoは700台湾ドル、太陽誘電は12,500円、TDKは4,000円とする。ただし、TDKの株価はおおむね適正水準にある一方で、他の4社の株価は現在割高な水準にあると考えている。

  • TDKを除く4社の株価は、年初来で約3倍~8倍に上昇しており、現在の株価水準には、AIデータセンター向け受動部品の数年分の成長がすでに織り込まれているとみている。
  • 半導体メモリとは異なり、MLCC価格は短期的な需給動向による変動が生じにくい。これは、村田製作所を中心にMLCC業界が顧客との長期的な関係を重視しつつ、規律ある価格戦略を維持しているためである。当社は、市場は将来のMLCCの値上げについて過度に楽観的すぎると考えている。

データセンター向けMLCCでは、村田製作所とサムスン電機が高いシェアを有しており、その二社と比べると規模は小さいものの、太陽誘電が堅実に三位のポジションを確保していると当社は推定している。これは、3社の高密度サーバー向け小型・大容量MLCCにおける高度な製造能力を有していることの証左と言える。

われわれは、これら3社のデータセンター関連売上高について、2026年度に前年比でおよそ2倍、2027年度にはさらに70~80%増加すると予測している。その結果、2025年度に10%強だったデータセンター向けの売上比率は、2027年度には30%弱まで上昇すると見込んでいる。

データセンター向けMLCCは生産負荷が高いことから、供給は今後数年にわたり逼迫が続くと予想され、その結果、製品価格の下落ペースは、通常の年と比べてかなり緩やかなものになるだろう。村田製作所、サムスン電機、太陽誘電以外のMLCCメーカーは、データセンター向け事業への直接的な関与は限定的とみられるものの、MLCC全体の需給がひっ迫するため価格下落ペースの鈍化という形で間接的な恩恵を受けると考えている。

もっとも当社は、採算性の低い汎用品の価格是正や、製造コスト上昇分の価格転嫁といったケースを除けば、MLCC価格が全面的かつ大幅に引き上げられるとは見込んでいない。これは、長期的な顧客関係の維持を重視し、価格規律を保とうとするMLCC業界の長年の姿勢を反映したものである。

このアプローチは、業界にとって、供給が極めて不足する局面で短期な利益最大化の機会を逃す可能性がある一方で、深刻な供給過剰局面では製品価格の暴落を防ぎ、キャッシュフロー創出能力を守ることで、需要の回復局面において迅速に供給を立ち上げることに寄与してきたと当社は考えている。

したがって、今回の「スーパーサイクル(特需局面)」においても、半導体メモリで見られたような劇的な利益率の改善が起こるとは当社は考えていない。それでも、製品ミックスの改善、MLCC価格に対する下落圧力の緩和、稼働率の上昇などといった複合的な要因により、業界全体の利益率は中長期的に過去のピークを上回る水準まで上昇すると見込んでいる。

Yageoは、ポリマータンタルコンデンサ市場でほぼ独占的地位を確立しており、強力な価格決定力を有している。AIデータセンター向けの需要が顕在化した昨年下期以降、同社はすでに複数回の値上げを実施しており、これらは今後の利益率の改善に大きく寄与すると予想される。一方でYageoのAIデータセンター向けMLCC事業への直接的な関与は限定的と見積もっているが、AI需要に起因するMLCC全体の供給不足を通じて間接的に恩恵を受けると考えている。市場全体で価格下落圧力が緩和されることは、データセンター向け事業の比重が大きくないサプライヤーにとっても追い風となるためである。

TDKについては、データセンター向けニアラインHDDの需要拡大により、磁気ヘッドの出荷数量が2026年度に約40%、2027年度にはさらに25%増加すると予測している。また、データセンターのバックアップ電源用途を中心に、中型二次電池の売上高も今後3年間でおおむね倍増すると見込んでいる。今後数年間で導入されるAIインフラが推論処理のために大規模に稼働し続けるにつれて、データストレージ需要は堅調に推移すると予想されるが、特にTDKの磁気ヘッド関連の収益見通しについては確信度が高く、当社がカバーする企業の中でも最も先行きが明確で、かつ持続性の高い成長ドライバーの一つであると捉えている。

当社の2027年度の営業利益予想は、市場コンセンサスから大きく乖離しているわけではない。村田製作所、Yageo、太陽誘電については、当社の予想は市場予想の前後5%以内の範囲に収まっている。また、新たな適正価値推計値と現在の株価との乖離が最も大きいサムスン電機の場合でも、当社の営業利益予想は市場予想を約9%下回る程度に過ぎない。それにもかかわらず、これら4社において当社の適正価値推計値と現在の株価に大きな乖離が生じているのは、市場が2028年度以降も高い売上成長と利益率の拡大が続くと織り込んでいるためとみられる。当社も2028年度までは利益率の一段の改善を想定しているが、それ以降は横ばいになると予想している。

TDKについては、2027年度の当社の営業利益予想は市場予想を約13%上回っており、これが、当社の適正価値推計値が現在の株価を約12%上回っている主な要因となっている。◇

<村田製作所の財務概要および主要指標>

2025年 実績
2026年 実績
2027年 予想
2028年 予想
収益(10億円)1,7431,8312,0002,350
収益成長率(%)6.35.09.217.5
営業利益(10億円)291319420600
営業利益率(%)16.717.421.025.5
調整後EBITDA(10億円)453460598790
調整後EBITDAマージン(%)26.025.129.933.6
1株当り利益(希薄化後・円)125.11127.71185.18262.46
調整後1株当り利益(希薄化後・円)125.11127.71185.18262.46
調整後EPS成長率(%)30.72.145.041.7
PER18.426.758.241.0
PBR1.72.37.06.2
EV/EBITDA倍率10.98.231.724.0
FCF利回り(%)

出所:Morningstar Valuation Model. データは2026年6月26日時点。

出所:以下モーニングスターによる指標は2026年6月29日時点。

<村田製作所のモーニングスターによる指標>

  • エコノミック・モート・レーティング:「広い(Wide)」
  • 適正価値推計値:8,000円
  • モーニングスター・株式レーティング:★★(割高)
  • 不確実性レーティング:「中程度(Medium)」
  • 資本配分レーティング:「標準的(Standard)」

(参考)

<サムスン電機のモーニングスターによる指標>

<Yageoのモーニングスターによる指標>

<太陽誘電のモーニングスターによる指標>

<TDKのモーニングスターによる指標>

※ 本稿はモーニングスターのエクイティ・リサーチ ディレクター伊藤和典による6月29日付アナリスト・ノートの一部を抜粋してモーニングスター・ジャパンが翻訳したものです。英語原文と翻訳に相違がある場合は原文が優先されます。

※ 本稿は、情報提供のみを目的としており、特定の金融商品、銘柄などを推奨するものではありません。投資における判断は、ご自身の投資目的、投資期間、資金性格、投資への姿勢などを勘案して、ご自身の責任において慎重に行ってください。

著者はこの記事で言及されたいかなる有価証券も保有していません。詳細はこちらをご覧ください: モーニングスターの編集方針