任天堂【決算】:保守的なガイダンスに市場は失望も、長期的な成長力は不変

フェアバリューは12%引き下げでも、株価は割安な水準

General views of the Nintendo corporate headquarters and the Nintendo Development Center.
AaronP/Bauer-Griffin/GC 通じて Getty

任天堂(7974)は、発売初年度となった2025年度におけるSwitch2の出荷台数が1,986万台であったと発表した。当社は2026年度の出荷台数はSwitch2コンソールが17%減、ゲームソフト全体は11%減を見込んでいる。また任天堂は、メモリ価格高騰を中心としたコスト上昇を理由として、コンソール本体価格の値上げを発表した。

<決算のポイント>

任天堂の控えめなコンソール出荷台数見通しに市場はネガティブな反応を示すと考えられるが、モーニングスターはこれは過度に保守的だと捉えている。われわれは普及率の伸びが当初想定よりは緩やかになると見込み出荷台数の前提をやや下方修正したが、それでもなお当社予測はSwitch2コンソールで15%、ゲームソフト全体で12%、ガイダンスを上回っている。

  • メモリコストの高騰が当面の間は続くことを踏まえると、本体価格の値上げは不可避とみられる。同社の慎重なコンソール出荷台数の見通しは、値上げが需要に与える影響を一定程度織り込んだものと見られるが、値上げ幅自体は特に欧米地域ではさほど大きくないため、実際には同社予想よりは堅調に推移するだろうとわれわれは見込んでいる。
  • 一方、ソフト全体の出荷数のガイダンスが前年比で減少していることは、任天堂が今年度の開発パイプラインに自信を持っていないのではないかと市場に受け止められる懸念がある。ただし、通常コンソール発売の翌年にはユーザーエンゲージメントが加速する傾向があるため、このガイダンスは悲観的に過ぎるだろう。当社は、ソフト出荷数を前年比10%増の2億500万本と予測している。

<結論>

モーニングスターは、任天堂のピークサイクルにおける営業利益予測を14%下方修正した結果、同社株式の適正価値推計値を12%引き下げ、11,000円とした。今回の修正は、長期化しているメモリコストの高騰と、Switch2の普及ペースが従来の想定よりも緩やかになるとの見通しを反映している。

  • 当社は任天堂の株式が割安な水準にあると判断している。市場は短期的な逆風や保守的な業績見通しに過度に焦点を当てており、1億人を超えるSwitchユーザーが新プラットフォームに移行し、ソフトの売り上げが増加するという長期的な収益成長の可能性を過小評価している。

<指標を読む>

モーニングスターは、2026年度のSwitch2本体およびゲームソフトの出荷数予測を、従来予測の2,000万台と2億1,000万本から下方修正し、それぞれ1,900万台と2億500万本とした。とはいえ、いずれもガイダンスの1,650万台と1億6,500万本を上回る水準である。

従来われわれは、任天堂がSwitch2のコンソール普及を優先し本体価格の値上げを行わないと想定していた。しかし、メモリ価格が当社予想を大幅に上回る水準となり、少なくとも今後2年は高止まりする可能性が高くなっていることから、ゲーム機本体で発生する損失はもはや無視できないほど大きくなっている。したがって、ゲーム機本体の値上げは妥当な判断だったとわれわれは考えている。

米国におけるSwitch2本体の価格は50ドル値上げされ、499.99ドルになる。すでに4月にソニーがPlayStation 5を100ドル値上げして649.99ドルとしており、任天堂の今回の値上げを消費者が受け入れる素地ができていると考える。Switch2の値上げ幅がPS5に比べて小さいのは、そもそもコンソール1台あたりのメモリ搭載量が少ないためでもあるが、同時に、発売から1年弱の新コンソールにとって重要な長期的なユーザー基盤の拡大と、短期的な収益性とのバランスを取るための価格設定であろう。そのため、値上げによる収益性改善効果は限定的となるものの、出荷台数へのネガティブな影響も最小限に抑えられるだろう。

最近の注目すべき話題として、Switch2専用タイトルである『ぽこ あ ポケモン』の好調な出荷が挙げられる。ユーザー基盤がまだ小さい新プラットフォームであるSwitch2向けに発売され、ポケモンのスピンオフとはいえ新ジャンルのゲームであるにもかかわらず、発売後わずか5週間で世界で400万本を売り上げたことは驚くべき成果である。同社は、このソフトの発売がSwitchからSwitch2へのユーザー移行を加速させた模様だと述べており、これは任天堂のIPの強さを改めて示すとともに、魅力的なゲームソフトの発売がハードウェア出荷台数を押し上げるという当社の見解を裏付けている。

とはいえ、業界全体でゲーム開発サイクルは長期化する傾向にあり、その結果として注目タイトルの発売ペースが当社予想をやや下回っているため、われわれはソフト出荷数の予想を若干下方修正した。それでもなお、任天堂は強力なIPポートフォリオを順次展開することで、Switch2の普及率を高め、ユーザーあたりのソフトウェア販売数を増加することが可能であるとわれわれは考えている。任天堂の長期的な成長可能性について、懸念は抱いていない。◇

<任天堂の財務概要および主要指標>

2025年 実績
2026年 実績
2027年 予想
2028年 予想
収益(10億円)1,1652,3132,4502,700
収益成長率(%)-30.398.65.910.2
営業利益(10億円)283360420500
営業利益率(%)24.315.617.118.5
調整後EBITDA(10億円)332538476561
調整後EBITDAマージン(%)28.523.319.420.8
1株当り利益(希薄化後・円)239.47364.51331.36386.87
調整後1株当り利益(希薄化後・円)239.47364.51331.36386.87
調整後EPS成長率(%)-43.252.2-9.116.8
PER42.224.123.119.8
PBR4.33.52.82.7
EV/EBITDA倍率22.817.913.911.8
FCF利回り(%)

出所:Morningstar Valuation Model. データは2026年5月10日時点

<モーニングスターによる指標>

  • エコノミック・モート・レーティング:「広い(Wide)」
  • 適正価値推計値:11,000円
  • モーニングスター株式レーティング:★★★★★(非常に割安)
  • 不確実性レーティング:「中程度」(Medium)」
  • 資本配分レーティング:「標準的(Standard)」

※ 本稿はモーニングスターのエクイティ・アナリスト部門ディレクターの伊藤和典による5月10日付アナリスト・ノートの一部を抜粋してモーニングスター・ジャパンが翻訳したものです。英語原文と翻訳に相違がある場合は原文が優先されます。

※ 本稿は、情報提供のみを目的としており、特定の金融商品、銘柄などを推奨するものではありません。投資における判断は、ご自身の投資目的、投資期間、資金性格、投資への姿勢などを勘案して、ご自身の責任において慎重に行ってください。

著者はこの記事で言及されたいかなる有価証券も保有していません。詳細はこちらをご覧ください: モーニングスターの編集方針