アドバンテスト(6857)の株価は、25年度の第4四半期決算において前年同期比41%の増収と過去最高となる67%の粗利益率を計上して以来、約10%下落している。こうした状況を踏まえ、モーニングスターは同社の成長見通しを再評価した。
<重要なポイント>
株価の低迷は、2025年における当社のシステムオンチップ(SoC)テスタ市場におけるシェアが56%から66%へと急拡大し、プロダクトミックスの改善から利益率も大きく改善したことを受けて、成長が当面のピークに達したのではないかと市場が懸念した結果であろう。しかしながら、半導体製造工程の複雑化に伴うテスト機会の長期的な増加は、引き続き当社の構造的な成長要因となるとわれわれは考えている。
- テラダインが2026年にNVIDIA向けSoCテスタの認定を取得し参入したことで、アドバンテストはNVIDIAのAIチップテストにおける独占的な地位を失った。しかし、NVIDIAがデュアルソーシング化を進めるのは、今後のプラットフォーム開発に伴う膨大なテスト機会を見据えた戦略的なものであり、アドバンテストの事業が競争力を失った結果ではない。テラダイン参入に対する市場の懸念は行き過ぎであろう。
- アドバンテストのSoCテスタ「V93000」は、SoCテスタ市場において60%以上のシェアを誇り、業界標準となっている。NVIDIAなどのファブレス企業はV93000上でテストプログラムを開発し、ファウンドリでもこれらの要件に対応するため同じシステムを採用している。そのためアドバンテストの競争優位性は強固であり、競合他社が侵食することは困難である。
<結論>
業績予想を精査し、SoCテスタの売上高想定を3%引き上げた結果、アドバンテストの適正価値推計値を3%引き上げ、35,000円とする。株価は引き続き割安な水準にあると見ており、アドバンテストを「モーニングスター ベストアイデアリスト」に6月より加えることとする。
- 4月下旬の2025年度決算発表以降アドバンテストの株価は停滞している一方で、ウエハ製造装置や受動部品メーカーなど、AIの恩恵を受けると見込まれる他の多くの企業の株価は急上昇している。その結果、アドバンテストの株価の相対的な割安感が強まったことが、その背景である。
- われわれは、市場がSoCテスタの市場シェア頭打ちやAI投資の減速といった短期的な収益ピークアウトのリスクに過度に注目し、半導体パッケージングの複雑化に伴うテスト機会の構造的な増加を過小評価していると考えている。
市場は、NVIDIAのサプライチェーンにおけるテラダインのSoCテスタ採用をアドバンテストの市場シェア低下リスクと見ているが、当社は見解を異にする。テラダインの採用は、2027~2028年に予想される需要の爆発的な増加を見据え、単一のサプライヤーでは安定的に供給できないリスクを回避するためのNVIDIAの調達戦略の一環と捉えている。したがって、この一連の動きはアドバンテストの地位の低下というよりも、むしろ供給量を確保するためのリスク管理手段だと解釈すべきだろう。
テストプログラムは各プラットフォームに特化しているため、第2のプラットフォームを導入する際はプログラムをゼロから再構築し、両プラットフォーム間でテスト結果の相関性を検証する必要がある。そのため、純粋なエンジニアリングの観点からは、デュアルソース化のメリットは乏しい。特に最先端のAIデバイスでは、パッケージの大型化・多層化が進み、熱および電力管理の課題が急激に深刻化している。そのため、2つのプラットフォームが生み出す膨大なテストデータを処理する運用上の負担は決して小さくない。それでもNVIDIAがアドバンテストとのシングルソース体制からテラダインを含むデュアルソース体制へと踏み切る背景には、価格交渉力を維持したいとの意図だけでなく、それ以上に、十分なテスト能力を確保する狙いがあるとわれわれは考えている。
特に、2027年後半に発売予定のRubin Ultraプラットフォームは、より大型で発熱量の多いパッケージ上に、さらに多くの高帯域幅メモリ(HBM)スタックを搭載する見込みである。当初の設計は演算ダイを倍増させるものだったが、規模縮小の可能性も報じられており、正式なスペックについては依然として流動的ではある。しかし、HBM搭載量の増加、パッケージサイズと消費電力の増大という構造的なトレンドについては、変更される可能性はかなり低いと見ている。このようなパッケージに求められるテスト強度(テスト時間と測定項目の増加)の加速度的な急増と相まって、 1プラットフォームあたりのテスト強度は、前世代のVera Rubinの3~4倍、あるいはそれ以上に達する可能性があると推測される。
この見方は、アドバンテストの生産能力拡大計画の加速によってさらに裏付けられている。同社は当初、SoCテスタの年間生産能力を2026年度末までに5,000台、中期的に7,500台に引き上げることを目標としていたが、この計画を前倒しし、2029年初頭までには年間生産能力10,000台を確保することを目指している。これは最大の顧客であるNVIDIAに対し予め十分な生産能力を用意していることをアピールすることで、受注を安定的に獲得する狙いがあるものと思われる。
Rubin Ultraの発売遅延の可能性や技術的な課題による仕様の妥協(スペックダウン)などのリスクは依然として残るものの、総じてみれば2028年以降のテスト需要が飛躍的に増加する確度は大幅に高まったとわれわれは考えている。◇
<アドバンテストの財務概要および主要指標>
| 2025年 実績 | 2026年 実績 | 2027年 予想 | 2028年 予想 | |
|---|---|---|---|---|
| 収益(100万円) | 779,707 | 1,128,610 | 1,500,000 | 1,900,000 |
| 収益成長率(%) | 60.3 | 44.8 | 32.9 | 26.7 |
| 営業利益(100万円) | 249,693 | 496,479 | 675,000 | 905,000 |
| 営業利益率(%) | 32.0 | 44.0 | 45.0 | 47.6 |
| 調整後EBITDA(100万円) | 254,265 | 526,195 | 699,500 | 933,000 |
| 調整後EBITDAマージン(%) | 32.6 | 46.6 | 46.6 | 49.1 |
| 1株当り利益(希薄化後・円) | 218.67 | 515.15 | 680.89 | 915.21 |
| 調整後1株当り利益(希薄化後・円) | 218.67 | 515.15 | 680.89 | 915.21 |
| 調整後EPS成長率(%) | 158.9 | 135.6 | 32.2 | 34.4 |
| PER | 29.6 | 39.5 | 41.4 | 30.8 |
| PBR | 11.1 | 29.2 | 21.7 | 13.3 |
| EV/EBITDA倍率 | 19.8 | 8.8 | 28.8 | 21.6 |
| FCF利回り(%) | ー | ー | ー | ー |
出所:Morningstar Valuation Model. データは2026年6月5日時点
<モーニングスターによる指標>
● エコノミック・モート・レーティング:「広い(Wide)」
● 適正価値推計値:35,000円
● モーニングスター株式レーティング:★★★★(割安)
● 不確実性レーティング:「高い(High)」
● 資本配分レーティング:「標準的(Standard)」
※ 本稿はモーニングスターのエクイティ・リサーチ ディレクター伊藤和典による6月5日付アナリスト・ノートの一部を抜粋してモーニングスター・ジャパンが翻訳したものです。英語原文と翻訳に相違がある場合は原文が優先されます。
※ 本稿は、情報提供のみを目的としており、特定の金融商品、銘柄などを推奨するものではありません。投資における判断は、ご自身の投資目的、投資期間、資金性格、投資への姿勢などを勘案して、ご自身の責任において慎重に行ってください。

