IPO近づくSpaceX:財務を読み解く6つの図表

各部門の損益構造と赤字の実態。そして主要投資家のイグジットの行方。

建物に掲げられたSpaceXのロゴの全体像です。
AaronP/Bauer-Griffin/GC 通じて Getty

SpaceXは5月20日、画期的なS-1届出書を公開し、これまでで最も包括的な財務状況を明らかにした。主要な財務指標によると、スターリンクの開発企業である同社の2025年の連結ベースでの売上高は180億ドル、純損失は49億ドル、EBITDAは65.8億ドルとなった。

この急成長の軌跡は、約20年かけて築き上げられたものである。SpaceXは2002年にイーロン・マスク氏によって設立され、非公開企業として設立以来100億ドル以上のベンチャーキャピタル資金を調達してきた。現在、Founder’s Fund、DFJ、D1 Capital、Fidelity、Thrive Capitalなど多数の投資家や、数千人に上る創業期の従業員が、前代未聞の大規模な流動性イベントに備えている。

2025年のSpaceXの売上高は前年比33%増となり、2026年第1四半期は、前年同期比15%増となっている。しかしその内訳を見ると、状況ははるかに複雑なことが分かる。SpaceXは当初は宇宙探査企業と位置付けられていたが、現在最も収益性の高い事業部門は、高速インターネットを提供する衛星コンステレーション『スターリンク』である。スターリンクは、2025年に前年比で調整後EBITDAが86%増加し、加入者総数は2倍になっている。

以下は2023年~2025年の、SpaceXのスターリンク部門、宇宙部門と、xAIなどAI事業部門の売上高の推移を示している。売上のほとんどがスターリンク事業によるものであることが分かるだろう。

それでも、SpaceXは純損失を計上しており、これはRivianやTesla等EVメーカー以上に、同社の事業が資本集約的であることを反映している。

以下は、SpaceXとPalantirなどAI企業、前出のEV企業Rivian、航空宇宙企業Rocket Labの売上高と、純利益/純損失を比較している。SpaceXは資本集約的なビジネスであり、2025年には180億ドル以上の売上高があっても49億ドルの純損失を計上した。PalantirやCoreWeaveと比べると、その額の大きさが分かるだろう。ロケット事業は容易ではない。

SpaceXは、2026年2月のxAI買収後、支出がさらに拡大した。スターリンクの成功が、xAIの巨額の支出を実質的に補填している。2025年にAI部門が63.5億ドルの営業損失を計上し、SpaceXは赤字となった。

以下は、SpaceXのxAI合併による”効果”を示している。SpaceXは、Grok開発元のxAIの合併により、2025年に赤字に転落した。左から、2024年営業利益、連結利益、宇宙部門利益率の縮小、AI部門利益率の縮小、2025年結合事業体の純損失である。

SpaceXのIPOによって生み出されるイグジット価値は、市場の歴史に残る規模となる。想定評価額1兆6,750億ドルと言われるこのIPOは、過去10年間のベンチャーキャピタル(VC)出資企業のIPOの合計を上回るだろう。

また、これはVC待望の、その他企業の上場ラッシュの口火を切る可能性もある。2026年は、AI大手のOpenAIやAnthropicが上場を予定している。SpaceXの株式を保有するファンドに投資しているLP(リミテッド・パートナー)にとって、今回のIPOは近年で最大規模の流動性供給の機会となる可能性が高い。これは、この資産クラス全体に恩恵をもたらす可能性もある。

以下は、2016年から10年間の各年のIPO時点の評価額合計(棒グラフ)とIPO件数(折れ線グラフ)。2026年、SpaceX1社で過去10年間の合計額を超えると予想されている。

この大規模なIPOは、SpaceXの主要株主、とりわけイーロン・マスク氏に莫大な富をもたらすだろう。そうした幸運を手にする単独創業者は珍しくないが、今回の規模は異例である。SpaceXの成長により、マスク氏は今後数年のうちに世界初の「兆万長者(トリリオネア)」になるかもしれない。

SpaceXに早期から投資したVC各社も、莫大な利益を得る可能性が高い。DFJ、Founders Fund、Craft Ventures、Adapt Venturesはいずれも、SpaceXの評価額が10億ドルに達する前から投資を行っていた。

以下はSpaceXの大株主、出資者らの一覧である。イーロン・マスク氏のみが、SpaceXの5%以上の持ち分を保有している。

同社とその投資家にとって次の試練は、この野心的な企業価値が、VCのロックアップ期間が満了するまで公開市場で十分に維持されるかどうかである。

以下は、横軸が企業設立からIPOまでの年数、縦軸が2025年会計年度の売上高を示している。グラフの左寄りの企業は設立から上場までの年月が短いウサギ型、右寄りの企業ほど上場までの時間が長いカメ型IPOである。SpaceXはIPOに至るまでに時間をかけたため、企業価値の上昇の大部分は上場前に達成された。◇

※ 本稿はPitchBook.comに掲載された記事をモーニングスターが「6 Charts on SpaceX’s Pre-IPO Financials」として掲載し、モーニングスタージャパンが翻訳したものです。原文と翻訳に相違がある場合は、原文が優先されます。

※ 本稿は、情報提供のみを目的としており、特定の金融商品、銘柄などを推奨するものではありません。投資における判断は、ご自身の投資目的、投資期間、資金性格、投資への姿勢などを勘案して、ご自身の責任において慎重に行ってください。

編集者注記: この記事は、もともとピッチブック.comに掲載されたものです。

著者はこの記事で言及されたいかなる有価証券も保有していません。詳細はこちらをご覧ください: モーニングスターの編集方針