『マグニフィセント・セブン』と『マグニフィセント・フュー』の邂逅

市場が注視するスペースXやAIユニコーンのメガIPO。だが、そのインパクトは冷静に見極めるべきである。

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既にご存知の方が多いと思うが、米国株式市場には間もなく「メガIPO」の波が押し寄せてくるだろう。報道によると、SpaceXは750億ドル規模の株式を対象とするIPO(新規株式公開)について、非公開(コンフィデンシャル)で申請したと報じられ、その結果、同社の評価額は驚異の1兆7500億ドルに達すると報道されている。さらに、AnthropicOpenAIDatabricksといった 人工知能(AI)関連企業もIPOを控えている。これらのIPOは、Saudi Aramco(2222)、Facebook(現Meta META)、Alibaba(BABA)など過去の大型上場を凌駕する規模になると予想されている。

こうしたIPOは、一部の人々にとっては長らく待ち焦がれていた非公開企業への投資機会の拡大となる。一方で、これらの新規上場企業を指数やインデックスファンドに急速に組み入れることは、「個人投資家に割高なIPOを押し付けることになりかねない」という批判の声もある。

何はともあれ、こうしたIPO見込み企業群については、頭を冷やして観測することが重要である。メガIPOは非公開市場・公開市場の両方に影響を与えるであろうが、その影響を過大評価すべきではない。

非上場市場の集中度と、驚異的な評価額

先日、シカゴ大学証券価格調査センター(CRSP※)の過去100年にわたる株式市場データを用いて、米国株式市場では時価総額上位企業への集中化が高まっているという記事を書いた。ところが、主にSpaceXやAI企業の存在により、非公開市場はそれ以上に集中化していることが判明した。モーニングスター・ピッチブック・グローバル・ユニコーン指数の上位10銘柄は、現在、評価額10億ドル以上のベンチャー支援企業全体の約40%を占めている。これは、NVIDIA(NVDA)、Apple(AAPL)、Alphabet(GOOGL)、Microsoft(MSFT)、Amazon.com(AMZN)、Meta(META)、Tesla(TSLA)の「マグニフィセント・セブン」が支配するCRSP米国総合株式市場指数よりも、さらに上位企業に著しく偏っている状態である。

以下は、モーニングスター・ピッチブック・グローバル・ユニコーン指数とCRSP米国総合株式市場指数、それぞれの上位企業と時価総額比率を示している。上位10社の合計は非公開市場が38.5%、公開市場が33.2%である。

※モーニングスターは2026年2月、CRSPを買収している。

非公開市場は、米国株式市場よりもさらに上位企業に偏った集中化が進んでいる

確かにユニコーン企業の数は上場企業に比べてはるかに少ないが、時価総額が10億ドルを超える非公開企業は、2013年頃にユニコーンと言われた当時ほど稀な存在ではなくなっている。現在、ユニコーン指数には1,424社が組み入れられている(CRSP USトータル・マーケット・指数は3,477社)。

ピッチブックのアナリストは、「市場がこれほどまでにセクターレベルで集中した例は稀であり、これはAIが持つ独自の可能性と、あらゆるセクターで活用される無限の機会を反映している」と、「The Magnificent Few」と題する新たな調査レポートの中で述べている。「IPO前夜」の企業には投資が殺到しており、ベンチャーキャピタルだけでなく、「クロスオーバー」投資家もユニコーン企業を追い求めている。その中にはポートフォリオへの配分が小さいリテール向け投資信託もあれば、巨額の賭けに出るファンド、さらにはより疑わしい投資戦略を採用する投資家まで含まれているのである。

「マグニフィセント・フュー」企業の評価額は眩暈がするほどの高さである。前述の通り、報道によればイーロン・マスク氏が設立したAI企業xAIとの統合構想を背景に、SpaceXは評価額1兆7500億ドルでIPOを行う可能性がある。ピッチブックは、OpenAIが最大8,400億ドル、Anthropicが3,300億ドルという極めて高い評価額で上場する可能性があることを示唆している。

比較として挙げると、2025年の大型IPOのひとつであるFigma(FIG)の評価額はわずか120億ドルであった。Facebookは2012年のIPO時に約1,040億ドル、Alibabaは2014年に約1,680億ドルの評価額で上場した。

メガIPOが及ぼす非公開市場への影響

非公開市場を調査するピッチブックのリサーチ担当者は、メガIPOが他の潜在的なイグジット機会を奪うことを懸念している。ピッチブックのベンチャーキャピタル調査ディレクターであるカイル・スタンフォードは、2026年に幅広い企業の上場ラッシュとなるはずだった市場について、「3社が市場を独占するかもしれない」と指摘している。この3社とは、SpaceX、OpenAI、Anthropicである。

もし、これらの企業の上場後の業績が期待外れに終われば、他の企業の上場意欲を削いでしまう懸念もある。スタンフォードはまた、「非伝統的な投資が大量に非公開市場に流入している現状を踏まえると、ベンチャーキャピタリストはIPOから当初期待したほどの利益を得られないだろう」とも述べている。

SpaceX、OpenAI、Anthropicの3社が2026年に上場すると噂されている。もしそれが実現すれば、これらはベンチャーキャピタル(VC)出資企業による史上最大規模のIPOとなる可能性が高く、2000年以降のVC出資企業のIPOが生み出した総合計額を上回る可能性もある。これは、ここ数年流動性危機に陥っていたVC市場にとって朗報となるだろう。しかし、こうしたリターンは比較的集中した形となり、価値の大部分は企業やVC以外の投資家が保有することになるだろう。

カイル・スタンフォード

巨大非公開企業のイグジットは、非公開市場の様相を根本から変えることになろうが、ユニコーン企業の世界は激しい入れ替わりには慣れている。10年前のトップ非公開企業を見ると、そのほとんどが上場を果たしている。たとえば、Palantir(PLTR)やUber(UBER)は現在大型株となっており、Xiaomi(01810)は中国を代表する企業の一つとなっている。

以下は、10年前の非公開市場の上位10社である(モーニングスター・ピッチブック・グローバル・ユニコーン指数採用企業のトップ10)

2016年のユニコーン企業には、現在では大型株となったものもある

比較のために付け加えると、現在の米国上場企業上位10社のうち5社は、10年前の2016年のトップ10にも入っていた。Apple、Microsoft、Berkshire Hathaway(BRK.A/BRK.B)、Facebook(現Meta)、そしてAmazon.comである。

非公開企業として長期間活動したとしても、株式上場は依然として目標となる。時間はかかるかもしれないが、メガIPOによって生じた非公開市場の空白は他の企業が埋めていくことになるだろう。

公開市場はメガIPOによってどんな影響を受けるのか

「マグニフィセント・フュー」と呼ばれる企業群が、まもなく一般投資家の株式ポートフォリオに組み込まれることになるかもしれない。指数プロバイダー各社は、こうした大型IPOをどう扱うべきか検討を進めているが、その過程で議論も巻き起こしている。一方、CRSPは、市場を最新の状態で反映させるため、長年にわたりベンチマークへの組み入れに向けたIPOの審査を迅速化してきた。しかし、同社は、企業が公開しなければならない株式の割合に関する要件を緩和しつつある。SpaceXの予想される750億ドル規模の公募額は、同社の総合価値のほんの一部に過ぎないのである。

一部の人々にとっては、これらのIPOにより、変革をもたらす新産業やテクノロジーの最前線に立つ企業への投資機会がより身近なものとなるだろう。SpaceXは、宇宙インフラとAIという事業分野を持つ点で、紛れもなくユニークな存在である。OpenAIやAnthropicは、MicrosoftやAlphabetとは異なり、ある意味では純粋な専門企業と言える。

非公開企業として、これらの企業は驚異的なリターンを生み出してきた。「モーニングスター・ピッチブック・ユニコーン20指数」は、セカンダリー取引プラットフォームの価格データを用いて、規模が大きく流動性の高いユニコーン企業を追跡している。同指数は2023年第1四半期以降で3倍に上昇し、米国の株式市場全体を大きく上回るパフォーマンスを上げている。

以下は、2023年3月末を起点とする非公開市場(緑)と公開市場(赤)の 動きである。

ユニコーン企業は驚異的なリターンを上げています

累積トータル・リターン(%)

IPO後の上場企業としての将来性はどうだろうか。強気派は、IPO後に時価総額が急騰した企業の例を挙げている。Metaの株価は、2012年の上場以来、20倍近く上昇した。Palantirの株価は、過大評価の指摘が絶えないにもかかわらず、2020年の13ドルから、現在では150ドル以上にまで上昇している。

とはいえ、逆の例も多数ある。IPOの価格設定は、公開市場の投資家を犠牲にして、プライベート・エクイティの保有者や銀行関係者を豊かにするように行われることがしばしばある。前述のFigmaをはじめ、Klarna(KLAR)、Chime(CHYM)、Navan(NAVN)など、2025年の大型IPOの一部で株価のパフォーマンスが低迷していることを思い出してほしい。(CoreWeave(CRWV)とCircle(CRCL)は、比較的良好な結果を残している)。

一方で懐疑派は、こうした大型IPOがAIバブルではないかと懸念している。ピッチブックのリサーチャー、ハリソン・ロルフェスの分析では、非公開の巨大AI企業では、評価額と収益の質との間にかい離があり、「ほとんど将来性への期待を基に値付けされている」と言う。同氏は、データインフラ企業であるDatabricksの評価額はOpenAIの6分の1で放置されているが、OpenAIよりも質が高いと評価している。ピッチブックのSpaceXに関する調査では、1.5兆ドルという評価額を「高すぎるが、理不尽ではない」と評しているが、その調査が公表されて以降も、評価額はさらに上昇しているという。AIをめぐる現状と、歴史上の新テクノロジーが見せたバブルは、相似形だという指摘もある

メガIPOを冷静に捉える

メガIPOによって株式市場が劇的に変わることはない。少なくとも当面はないことを肝に銘じておくことが重要である。メガIPO企業も、浮動株比率を調整して企業価値を再評価すると、それほど大きな規模には見えなくなる。CRSP指数は、構成銘柄を浮動株調整後の時価総額で加重平均して算出している。たとえばSpaceXの浮動株調整後の時価総額は750億ドルとなるが、これは市場の上位100社には入らない。確かに、非公開市場の投資家のロックアップ期間が満了するにつれて浮動株比率は上昇するが、その間も、投資家は市場での企業価値評価に影響力を持つだろう。

IPOの可能性を持つ企業群は、たしかに巨大である。特にベンチャーキャピタルの支援を受けている分野では、ある企業のイグジットが非公開市場に大きな隙間を生むため、その存在感は一層大きい。一方、公開市場にとっては、IPOは需要の高い企業へのアクセスを格段に楽にするものだ。ただし、IPO企業の株式には大きな価格リスクがある。さらに、そうした企業が上場市場に加われば、米国株式市場におけるAIや、テクノロジーセクターへの集中化がより高くなる。こうした影響については、冷静に見極める必要がある。

実のところメガIPO企業は、市場で扱われる浮動株数が限られているため、上場企業の規模としてはさほど巨大とは言えないのである。◇

※ 本稿はモーニングスターの「When the Magnificent Seven Meet the Magnificent Few」をモーニングスター・ジャパンが翻訳したものです。原文と翻訳に相違がある場合は、原文が優先されます。

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著者はこの記事で言及されたいかなる有価証券も保有していません。詳細はこちらをご覧ください: モーニングスターの編集方針

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