先日、シカゴ大学傘下の証券価格研究センター(CRSP、2026年2月にモーニングスターが買収)の新しい同僚たちにプレゼンテーションを行う機会を得た。筆者が用いたスライドの一枚は、米国株式市場が時価総額でみると上位企業に大きく偏っている現状を示すもので、現在上位10社が占める市場シェアは、1990年代の.comバブルの時よりよりも大きいことが分かるグラフであった。
CRSPの指数分析部長であるアレックス・プークチャンスキー氏から「もっと遡ってみてはどうか?」という提案があった。その後、「われわれのデータによれば、2025年の市場集中度は1932年の歴史的なピークを越えている」との指摘とともに、彼は以下のグラフを送ってくれた。上位10社が市場に占める割合を1世紀前の1926年まで遡って示したもので、2025年末時点で37.32%と、この100年で最大の集中度の水準になっている。
下のグラフは1926年から2025年末までの米国株式市場における上位10社の時価総額占有率の推移である。
米国株式上位10銘柄の市場シェア 推移
投資の文脈で 1930 年代について言及されるたびに、誰もが警鐘を聞くような気がするだろう。特に私は、『大恐慌』の引き金となった株式市場の暴落について書かれたアンドルー・ロス・ソーキンの傑作『1929』を読み終えたばかりなので、まさに警戒心が惹起された。前世紀の「狂乱の20年代」と今日の状況との類似点が、本書から鮮やかに浮かび上がってくるからである。
未来は誰にも分からないが、市場の集中化に直面して投資家がポートフォリオの配分に苦慮している現在、歴史的な視点は考慮に値する。
歴史的な「頭でっかち」市場を振り返る
CRSPの米国株式市場100年分のデータを見ると、上位企業への集中度は昔の方がはるかに高かったことが分かる。
1920年代から1960年代後半にかけて、上位10銘柄が占める比率は市場全体の時価総額の4分の1を超えることが常態化していた。その後、1970年代の弱気相場から1980年代、90年代の強気相場にかけて、数十年にわたって分散化が進行していった。
それ以降で上位10銘柄の合計時価総額が20%を超えたのは、1990年代後半にIT・メディア・通信バブルがIntel(INTC)、Cisco(CSCO)、General Electricなどの巨大企業の株価を急騰させた時期になってからのことである。2000年3月のバブル崩壊後も、この「頭でっかち」な市場構造は数年間持続した。これは1929年の大暴落後に1932年の市場集中度のピークが到来した状況と似ている。本格的な市場の分散化が始まったのは2003年のことだった。
上位10社の時価総額が再び市場の20%を超える水準に達したのは2020年である。この年、パンデミックが長年のテクノロジートレンドを加速させ、FANG(Facebook/Meta Platforms(META)、Apple(AAPL)、Netflix(NFLX)、Google/Alphabet(GOOG))と呼ばれた企業群が拡大を続け、FAAMG、MAMAA、BATMAANなどという扱いにくい頭字語を次々に生み出しながら増殖していった。時価総額1兆ドル倶楽部に名を連ねる企業が増えるにつれ、「勝者総取り」という議論が盛んになった。
それから2022年の弱気相場を経て、ChatGPTの登場がAIブームに火をつけ、市場集中度は新たな次元に突入した。「マグニフィセント・セブン」と「ハイパースケーラー」の時代になり、NVIDIA(NVDA)の時価総額は2025年10月に驚異の5兆ドルに到達した。CRSPのデータによると、2025年10月31日時点で上位10社の時価総額は米国株式市場全体の37.7%に達し、1932年5月31日の月末ベースの史上ピーク37.3%という記録を塗り替えた。
1932年と2025年の時価総額トップ10は以下の通りである(簡便化のために、いずれも年末時点のデータを使用している)。
過去100年間で最も「頭でっかち」な市場トップ2
これは、新たな「狂騒の20年代」なのか?
1920年代は、2020年代と同じく技術革新の時代だった。1932年の先端的な大企業は、自動車、ラジオ、通信が大衆化しつつあった時代を反映している。家庭の電化が進みつつあり、一方で現在と同様に富の格差は大きく、実業家はセレブリティであった。
「しかし1920年代において最も偉大な商品、何もかもを手の届くものにした商品は『クレジット(販売信用)』であった。今すぐ手に入り、支払いは後回しで大丈夫。クレジットは一種の魔法の具現であった」とソーキンは記している。アメリカ人は自動車やラジオだけでなく、株式までもクレジットで購入するようになったのである。
「狂騒の」2020年代に、クレジットカード債務は記録的な水準に達していたことも注目すべきであろう。金融業界規制機構(FINRA)によると、信用取引口座の残高は2025年12月に1兆2000億ドルを超え、2024年12月に比べて36%増加している。
1920年代には「FOMO(Fear Of Missing Out/取り残されることへの恐怖)」という表現は無かったが、過剰な投機はいたる所で蔓延していた。ソーキンは「株式プール」「バケットショップ」、そして「ウォール街の占い師」について記している(※)。今日では、モバイルアプリが投資、スポーツ賭博、予想賭博の境界線を曖昧にしている。
※ 訳注:いずれも当時ウォール街で横行していた投機的、詐欺的な仕組みや手法を指す。エドウィン・ルフェーブルの名著『欲望と幻想の市場―伝説の投機家リバモア(Reminiscences of a Stock Operator)』の世界である。
1920年代の投資家も、現在と同様に対立する見解を慎重に検討する必要があった。当時、イェール大学のアーヴィング・フィッシャーは「株式価格は恒久的に高い水準に達したように見える」と宣言した。これに対して経済学者のロジャー・バブソンは「暴落が迫っている」と反論している。そして最近、モーニングスターのサイトでも、「AIバブルが崩壊寸前である理由」という記事と「NVIDIA決算:短期的なAIバブルの兆候は見られない」という相反する見解の記事が並んで掲載されている。
集中は必ずしもバブルを示唆しないが、リスク要因であることは確か
1920年代と2020年代には、いくつかの大きな類似があることを指摘したが、もちろん多くの違いもある。市場の力学は変化し、規制も大きく進歩した。FRB(連邦準備制度理事会)のような機関は、はるかに洗練されたものになっている。
また、市場の集中度は市場のストレスを予測する良い指標と言うわけでも無い。歴史を見ると、頭でっかちな市場が驚異的なリターンを生み出した例もあり、この数年を見れば、それも明らかである。
モーニングスターの「2026年グローバル投資見通し」では、2020年終盤に米国の上位10銘柄の時価総額比率が.comバブル期の水準を超えたものの、「その時に投資から手を引いた投資家は、(2022年のインフレによる売り圧力による一時的な調整があったにもかかわらず)その後数年間続く並外れた上昇を逃すことになった」と指摘している。これは、市場のタイミングを狙う投資をすべきではない、ということを示唆している。
「市場の集中そのものは、悪いとも良いとも言えない」と、モーニングスターのマネージャーリサーチ・チームは最近発表されたレポート『大胆なポートフォリオ:そのリスクに見合う価値はあるのか?』で述べている。市場を牽引する企業の株式が上昇する時には、集中は高いリターンをもたらす可能性がある。効率的市場仮説の信奉者なら、集中はファンダメンタルズの強さによる正当な結果だと考えるであろう。
しかし、裏を返せば集中には別の面もある。モーニングスター・アウトルックは、「集中が必ずしも景気後退を招かないとしても、分散投資のメリットを損ない、市場はセンチメントの反転に対してより脆弱になる」と指摘している。筆者のマネージャーリサーチ部門の同僚たちはまた、上位10銘柄の時価総額比率は集中の一つの側面に過ぎないと指摘している。市場内における業種や経済セクターの構成比率も同様に考慮する必要があるからだ。
その観点では現在の米国株式市場においては、セクター集中度も高まっている。テクノロジーセクターは、1990年代後半よりもさらに大きな割合を占めているが、これには通信サービスセクターのAlphabetやMeta Platforms、また景気循環型消費財・サービスセクターのAmazon.com(AMZN)は含まれていない。
現在、テクノロジー株式は米国株式市場の時価総額の3分の1以上を占めております。
テーマの集中化という問題もある。ハイパースケーラー企業がAIへの投資を拡大するにつれ、それらの企業の業績が不確実な新技術に左右されるリスクが高まっている。AIは市場に大きなボラティリティをもたしてきた。その破壊力は、最近特に顕著に表れている。2026年初頭に見られた市場のローテーションが今後どのように展開するかは、時が経たなければ分からないだろう。
集中化については、多くのファンドがSEC(証券取引委員会)に「非分散型」として登録せざるを得なかったことは注目に値する。市場を広くカバーするインデックスファンドでさえ、1940年投資会社法で定められた分散投資の要件を満たさない可能性があり、これは懸念すべき事態である。
投資家はどうすべきか?
以前にも述べた通り、投資家はたとえAIバブルの存在を想定していなくても、AIがもたらした市場集中リスクについては認識すべきだと筆者は考えている。米国株式市場の頭でっかちな状況に不安を感じているなら、市場全体を保有する必要は無い。自分で、あるいはアクティブファンドを通じて、銘柄選択をするアプローチを取ることが可能だ。また、パッシブファンドを使うなら、株式を時価総額ではなく均等配分する指数もある。バリュー株、配当株、小型株、あるいは割安で優良な企業(Morningstar ワイド・モート・フォーカス株式指数参照)に比重を置くこともできる。また、米国市場への広範なエクスポージャーを、グローバルな株式や債券など他の資産と組み合わせることもできる。つまり、分散投資を行うさまざまな方法が存在しているのである。
「投資における唯一の無料のランチは、分散投資である」というのは、私のお気に入りの投資格言の一つである。未来は本質的に不確実なものである。投資家として私たちにできることは、リスクを分散し、様々なシナリオに耐えられるポートフォリオを構築することだけである。2026年に入ってから現在まで、投資対象の多様化(分散化)は勝者の戦略となっている。
ポートフォリオの構築は極めて個人的なものである。筆者にとっては、主にファンドを通じて保有する株式、債券、コモディティといった資産がそれにあたる。株式では、新興国市場を含む国際株式を多めに保有しており、成長株とバリュー株、大型株・中型株・小型株へのエクスポージャーを維持している。ロング・ショート戦略、マネージド・フューチャーズ、プライベート資産といった代替戦略には手を出していないが、それらを原理的に全否定しているわけではない。◇
※ 現在の米国株式市場における集中化リスクについて懸念がありますか?対策として何か実行されたことがあれば、共有して下されば幸いです:dan.lefkovitz@morningstar.comすべてのメールに返信することはできませんが、頂いたメールは全て拝読しております。
※ 本稿はモーニングスターの「Stock Market Concentration Has Surpassed Its 1930s Peak. Should Investors Worry?」をモーニングスター・ジャパンが翻訳したものです。原文と翻訳に相違がある場合は、原文が優先されます。

