投資家が今、自問すべきこと――不確実な時代に生きる不変の問い

AI投資はバブルか?プライベート資産への投資は必要か?モーニングスター・インベストメント・カンファレンスからの示唆。

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6月に開催されたモーニングスター・インベストメント・カンファレンスの初日、シカゴのネイビー・ピアを襲った高さ約2.4メートルの波は、まさに現状を象徴するような出来事でした。

ピアのグランド・ボールルームやフェスティバル・ホールに集まった人々は、屋外の荒波に驚き、不安を抱いたものの、年次カンファレンスはつつがなく開催されました。同様に、戦争、インフレ、株式のバリュエーション、AIが波及的にもたらす影響への懸念などが市場を揺さぶるものの、今のところ市場を呑みこむほどではありません。米国および世界の株式市場は、カンファレンス後の調整局面を経ても、6月26日時点で年初来ベースでも各種中長期期間ベースでも上昇を維持しています。

カンファレンスの参加者は、慎重ながらも楽観的な姿勢を示していました。市場と自身のポートフォリオが、今までさまざまなショックや脅威を乗り越えてきたことに満足し、今後も持ちこたえられることを期待しつつも、この穏やかな状況がいつまで続くのか疑問を抱き始めていました。

「いずれはこの状況も終わるでしょう」と、アメリカン・ファンズの「Growth Fund of America」(AGTHX)を長年運用しているカール・カワジャ氏は述べました。

『今回は違う』のか?

カンファレンスの参加者は、今回の強気相場が2000年に崩壊したインターネット・バブルと似ているという指摘を改めて耳にしました。複数の登壇者が、ジョン・テンプルトン卿の有名な格言「英語で最も高くつく4つの言葉は『今回は違う(This time it’s different)』である」を引き合いに出しました。しかし、企業の収益や市場リターンを押し上げてきたAIインフラへの投資が、いつ鈍化するのかについては、明言する人も、できる人もいませんでした。

懐疑的な人々でさえ、AIは「誇大広告(hype)」以上の存在であることを認めていました。AIは社会、経済、市場を変革しつつあります。それが、米国株式市場の高いバリュエーションや、米国債と社債のスプレッド縮小を説明する要因となっています。「クレジット・スプレッドの現在の水準が維持されるためには、多くのことが上手くかみ合う必要があります」と、アメリカン・ファンズの「American Funds Bond Fund of America(ABNDX)」を運用するプラモド・アトルリ氏は述べました。

しかしこうした状況は、私たちにとって落ち着いて考える機会なのかもしれません。テンプルトン卿はまた、「(悲観の頂が最高の買い時であり)楽観の頂が最高の売り時である」とも述べています。まだ楽観のピークではないかもしれませんが、すぐ手前まで来ている可能性があります。「Champlain Small Company Fund(CIPSX)」のベテラン運用者であるスコット・ブレイマン氏は、今年初めにAllbirdsがそうであったように、靴メーカーまでもがAIインフラプロバイダーへと転身を図る事例について「それは明らかな兆候だ」と語りました。

「AI企業の幹部らが『がんを治せる』と豪語しているのも同様です」と、Wasatch Core Growth(WGROX)を運用するマイク・バレンタイン氏は述べました。「彼らは、起こり得る可能性ではなく、起こり得るかもしれないという『夢』を売っているのです」と、同氏は指摘しました。

Causeway International Value(CIVIX)を運用するコナー・マルドゥーン氏は、AI分野への数兆ドル規模の設備投資は、たとえ平凡なリターンを達成するだけでも、それに見合う驚異的な利益が必要だろうと述べ、「果たしてそれは現実的なのでしょうか?」と問いかけました。

プライベート資産をめぐる問題

個人投資家やそのアドバイザーが、プライベート資産(非上場資産)に投資するインターバル・ファンドを今後も購入し続けると期待するのは現実的なのか、という疑問も生じます。こうしたファンドは投資家にとって、流動性が低い資産への投資を可能にする代わりに、売却時期と売却額について定期的かつ限定的な機会しか設けない仕組みです。一方で、資産運用会社にとっては成長分野であり、注力してきた分野でもあります。しかし、ポートフォリオの質や将来のリターンに対する懸念が高まるにつれて、ここ数四半期で一部のファンドでは解約請求が急増しています。

ブラックストーン、ブラックロック、クリフウォーターの幹部らは、非公開資産に投資するセミリキッド・ファンドの投資テーゼは依然として妥当であると主張しています。こうしたファンドは、一般の投資家に対し、大手機関投資家や富裕層が長年享受してきたような分散投資とリターンの可能性を提供するものだといいます。

とはいえ、この種のファンドは依然として複雑かつ不透明で、コストも高額です。さらに、一部の資産運用会社は、流動性の低いプライベート資産から期待される追加リターンである「流動性プレミアム」が、近年縮小していると認めています。競争の激化や情報開示の改善によって、将来はコストが低下する可能性もありますが、資産運用会社が手数料引き下げを急ぐ様子は見られません。

低コストのインデックス・ファンドやETF(上場投資信託)を通じて投資信託のコスト削減をリードしてきたバンガードでさえ、ウェリントン・マネジメントやブラックストーンと共同で、公開市場とプライベート市場の両方に投資するインターバル・ファンドを立ち上げる予定です。このファンドのコストは、平均的なプライベート市場ファンドより低くなるものの、バンガードの典型的な商品よりは高くなる見込みです。

同社のプライベート市場ポートフォリオ・リサーチの責任者であるアンクル・ダガ氏は、プライベート市場の投資家は「付加価値をもたらす運用会社に対して、相応の対価を支払う覚悟を持つべきです」と述べています。これは、「コストこそが重要である(The Cost Matters)という仮説」を説いた創業者の理念を掲げるバンガードから、まさかこのような言葉を聞くことになるとは思いもしませんでした。

リスク・オン/リスク・オフの切り替え

運用担当者はどこに価値を見出しているのでしょうか?Pimco Diversified Income(PDIIX)を運用するソナリ・ピア氏は、投資家は必ずしもプライベート・クレジットに手を出す必要はないと述べています。一部の社債は、歴史的に見ても魅力的な利回りを提供しており、より高い信用力も備えているからだと説明しています。

コーズウェイのマルドゥーン氏は、欧州の金融機関は、米国の同業他社に比べて高いリターンと低いバリュエーションを提供していると述べました。Royce Small-Cap Total Return(RTRIX)を運用するマイルズ・ルイス氏は、収益性が高くバリュー寄りの小型株は、大型株に比べて大幅な割安水準で取引されていると指摘しました。歴史的に見れば、こうした企業はしばしば割高で取引されてきました。

ただし、こうした意見はある程度割り引いて聞く必要があります。報酬を得て運用を行っている以上、自らの運用対象を推奨しない人はほとんどいません。ポートフォリオの調整は、投資に伴うリスクを十分に検討した上で行ってください。

心に響いたのは、Fidelity Contrafund(FCNTX)の運用責任者を今年末に退く予定のウィル・ダノフ氏が語った、リスクにまつわる逸話です。彼は、35年にわたる輝かしいキャリアの初期に、20年間にわたりFidelity Destiny(現Fidelity Advisor Diversified Stock(FDTOX))を運用し、当時伝説的存在だったジョージ・ヴァンダーハイデン氏と交わした会話を振り返りました。ヴァンダーハイデン氏がダノフ氏に語ったのは、「毎日仕事に出勤して最初にするのは『投資家に託された資金を失う最大のリスクは何か』と自問することだ」ということでした。一方、ダノフ氏は毎朝その逆のことを考えていたといい、「どうすれば顧客に利益をもたらせるか」を思案していたそうです。

私はこの話に、ある種の悪い予感のようなものを感じました。26年前のインターネット株バブルの絶頂期にヴァンダーハイデン氏が引退した際、一部の人々は、ニュー・エコノミーに適応できない、あるいは適応しようとしない旧来型の運用者の敗北であると見なしました。しかし、やがてそれはヴァンダーハイデン氏の正しさが証明される始まりだったことが明らかになりました。その後7年連続で、オールド・エコノミーのバリュー株がニュー・エコノミーのグロース株を上回るパフォーマンスを記録したのです。

カンファレンス初日にネイビー・ピアを襲った高波は収まりましたが、脅威は依然として残っています。シカゴに長く住む人々なら、ミシガン湖の波が高さ3メートルを超えてレイクショア・ドライブを冠水させることがあるのを知っています。そこには、市場を象徴する比喩もあります。先頃のAI関連株式の乱高下は収まるかもしれませんし、あるいはミシガン湖のように、再び荒れ狂うかもしれません。この不確実な状況は、時にはヴァンダーハイデン氏のような自問自答が必要だと、私たちに思い出させてくれます。◇

※ 本稿はモーニングスターの「The Question Investors Should Ask Themselves Now」をモーニングスター・ジャパンが翻訳したものです。原文と翻訳に相違がある場合は、原文が優先されます。

※ 本稿は、情報提供のみを目的としており、特定の金融商品、銘柄などを推奨するものではありません。投資における判断は、ご自身の投資目的、投資期間、資金性格、投資への姿勢などを勘案して、ご自身の責任において慎重に行ってください。

著者はこの記事で言及されたいかなる有価証券も保有していません。詳細はこちらをご覧ください: モーニングスターの編集方針