FIREの洗礼:経済的自立を支える大切なこと

「普通の人」がより長く働き、柔軟に生き、享楽的な習慣を見直す

エイミー・アーノットのアイコンとシェイプのコラージュイラスト

数か月前のこと。CampFI(経済的自立を目指す人々のリトリート)の主催者であるスティーブン・バウアー氏から、4月下旬にスペインのサンティアゴ・デ・コンポステーラで4日間にわたって開催される、同団体初の海外キャンプで講演するよう依頼がありました。CampFIの 「FI」は「Financial Independence(経済的自立)」の略です。つまりこの企画に参加する人のほとんどは多額の貯蓄など資金作りに取り組んで、投資によって資産を作り、その資金で生活することを目指しています。FIはFIRE運動(Financial Independence, Retire Early;経済的自立と早期退職)と関連がありますが、FIに参加する人すべてが退職しているわけではありません。

FIREに賛同する多くの人たちと、主にポッドキャスト 『The Long View』を通じて知り合い、長年尊敬の念を抱いてきました。たとえば、クリス・マムラ、ポーラ・パント、ジョーダン・グルメット、ジャッキー・カミングス・コスキー、ブラッド・バレット、JLコリンズなどの人々です。そして、スペインは大好きですが、サンティアゴやガリシア地方に行ったことはありません。今回は主催者が食事と宿泊を負担してくますし、有名なカミーノ・デ・サンティアゴの巡礼の終着点であるこの町が、シカゴからかなり行きやすいこともわかりました。また、参加者が50人と小規模で、ボーグルヘッズの友人たちも参加する予定だったのは嬉しいことでした。私は参加者の中でおそらく最年長だろうと思いましたが、スティーブンに参加すると返事をしました。

仕事が目的の旅ではなかったので、休暇をとっての旅行でした。しかし、私はいくつかの素晴らしい、仕事に関連した学びを得ることができました。

経済的自立を自分の言葉で定義する

FIを目指す人々に対して、世間は歪んだイメージを持つ傾向があります。35歳で仕事をやめるために1日10ドルで生活しようとする人たちだというイメージです。確かに、私は実際にお金のために仕事をするのをやめるために、生活を切り詰めて、退職に成功したとても若い人々に会ったこともあります。トラベル・ハッキング(クレジットカード等のポイントを貯めて、無料または大幅に割引された旅行をすること)のような話題は、飽きることなく語られています。

しかし私はまた、50代で順調に事業をしている人や、運用会社で高収入の仕事をして幼い子供を育てている人、早期退職して充実した年金生活を送っている人々にも会いました。多くの人は働き続けていますが、仕事が自分に合わなくなったと思った時にやめることができるよう、蓄えを作っておきたいと考えていました。

FIREを目指す人々が、多くの人が思っているよりも多様で、繊細な違いがあることはすでに知っていましたが、彼ら自身の話を聞いてそのことがよく分かりました。誰もが早期退職や、倹約生活をしているわけではありません。「経済的自立」という考え方が人々を結び付けていて、誰にとっても価値ある理想なのです。

仕事が辛いなら、他の仕事を探そう

とはいえ、FIREにおいて「早期退職」は健在です。経済的に自由だと思えるために必要な資産額を目標として定め、sれを達成した人々についての話題がたくさん出ました。擦り切れて病気になるほど仕事に圧迫されたことが、FIREを運用担当者たちは、自分の仕事生活が不健康なまでに完全な苦行であり、それがFIREを志向するきっかけになったという体験も語られました。燃え尽きるまで働くことがどれほど不健全かを、私はつくづく考えさせられました。

参加者のほとんどは、仕事が好きなら働き続けるべきだと認めていました。しかし、私自身は仕事について少し擁護したい気持ちになり、仕事がもたらす恩恵について彼らが過小評価しているように感じました。私は長年仕事を通じてお金以上のものを享受してきました。私が何者であるか、他の人とどこが違うのか、そして長く続く友情などです。ですから、仕事とは惨めな苦行の連続だという考え方には同意できません。もしあなたの仕事が魂を打ち砕くほどの苦痛なら、ぜひとも辞めてください。そうではない仕事も存在しています。

長く働く必要が無いなら、自分のモチベーションを評価しよう

同時に、この経験は私自身のライププランについてより深く考えるきっかけとなりました。FIREを目指す人の多くは、規範に縛られたくないタイプのようです。彼らはアメリカの消費文化を軽蔑し、世の中が作った規範、たとえば65歳での退職するといった決め事に「ノー」と答えることに喜びを感じています。彼らの多くは子どもを持たず、中にはひとところに居を定めない人もいます。私は彼らのそういうところが大好きですが、私自身はもっと型にはまったタイプです。私は、自分が働き続けているのは、「自分の周囲の人がよく選ぶ行動に合わせたい」という欲求に、どれくらい影響をされているのだろうかと考え始めました。

若くして、より少ない資産で退職した人々の話を聞いて、いったい自分には 「十分 」という確かな感覚があるのだろうかと自問自答するようになりました。私が働き続けたいと思う理由のひとつは、お金を貯めるのは快適で慣れ親しんだ習慣であるのに対して、お金を使うことは少し怖いからかもしれません。その可能性は否定できません。以前にも書きましたが、私は退職後は支出を抑制する人間になりそうです。

柔軟性はスーパーパワー

退職後の支出に関して考えるとき、私がFIREで最も技術的に問題視しているのは、人々が従来25~30年で想定された支出期間についての研究を、40年、50年、あるいはそれ以上の非常に長い時間軸に適用していることです。FIREを目指す人々の間では、たとえば退職後の支出を資産に対して年4%として資産するのをよく見かけます。しかし、期間が長くなるについれて、安全な支出率は必然的に少しずつ低下します。4%が安全かどうかは、よく分かりません。

しかし、今回の体験を通して、FIREを信奉する人々は、とても貴重な特性を持っていることに気づきました。それは、柔軟に支出行うという能力です。彼らのほとんどは、生涯を通じて綿密に予算を立てて生活し、「必要なもの」と「欲しいもの」をしっかり区別することに長けています。そして最悪の場合には、まだ若ければリタイアメントを諦めて仕事に復帰することさえ可能です。これは従来の年齢で退職した場合には無い選択肢です。

柔軟性、特に市場が低迷している時期には積極的に支出を抑制する姿勢は、ポートフォリオを長持ちさせるためにとても貴重な資質です。これはモーニングスターによるの退職支出調査が証明していることです。

享楽的な習慣から抜け出すことの重要性

もうひとつ、この企画を経験して考えるようになったことがあります。それは私が「hedonic treadmill(快楽のランニングマシーン)」と呼ぶ習慣についてです。これは、収入が増えるにつれて、より良い物品や体験に慣れてしまい、感動しにくくなるという人間につきものの傾向についてです。

今回の企画に参加する際に、私はこのマシーンから降りました。宿泊したのはかなり質素な宿で、食事もボリュームはたっぷりでしたが美食ではありませんでした。しかし、サンティアゴにはミシュランの星を獲得したレストランが数件あることを知り、私は最終日にそのうちのひとつで一人ランチを予約しました。

それはまさに新たな体験でした。目を見張るような8品からなるコースを、信じがたいほどの心遣いで提供され、一口一口を夢心地で味わい尽くしました。この経験は、バランス、コントラスト、そして何事も当たり前だと思わないことの大切さを改めて教えてくれました。これからは、「快楽のトレッドミル」からもっと頻繁に降りて、贅沢なひとときが訪れたならば、あのサンティアゴの雨の午後のように、心からその素晴らしさを味わえるようにしたいと思っています。

結論

最終的に、私は仲間の参加者たちから刺激を受け、いくつかの貴重な教訓を学びました。

重要なことは、私たちはそれぞれが「経済的自立(FI)」について、そこに仕事が含まれるか否かも含めて、自分なりに定義するべきだということです。また、一般的な退職年齢まで、あるいはそれ以降も働くという計画を含めて、従来の自分の傾向を改めて見直す気持になりました。そして何よりも、今回の経験で、時には自分の安穏としたやり方から踏み出して、先入観を覆すような人々や考え方に触れることの大切さを改めて認識しました。

私たちは年齢を重ねるにつれて、まさにこれとは逆の行動を取りがちです。年をとるにしたがって、似たようなライフスタイルを持ち、似たような環境で育ち、よく似た育ちや出身で、そっくりの考え方をする人々のグループに細分化されていくのです。

しかし、健康的に歳をとっていく秘訣は、まさにその逆の道を行くことだと私は考えるに至りました。◇

※本稿はMorningstarによる「 My Baptism by FIRE: Lessons on Financial Independence」をモーニングスター・ジャパンが翻訳したものです。原文と相違がある場合は原文が優先されます。

著者はこの記事で言及されたいかなる有価証券も保有していません。詳細はこちらをご覧ください: モーニングスターの編集方針