高く評価されているファンドに投資したにもかかわらず、期待したような成果が得られなかった、という経験はありませんか?
もちろん、投資した後にファンドの運用実績が悪くなるケースはありますが、その他にも理由はあります。それは多くの場合、そのファンドの売買のタイミングが適切でなかったことによるものです。
このように、ある期間(例えば3年、5年など)において、その期初にファンドを購入して持ち続ける場合と、期中にファンドの売買を行う場合とでは、投資家が得られるリターンは異なります。モーニングスターでは、このリターンの差、つまり「ギャップ」について、長年、世界各地域で調査をしています。今回は、日本における2025年3月末時点の調査結果を、以下で分かりやすくご紹介します。
「ギャップ」とは何か?
まず、2種類リターンについて説明します。
- トータル・リターン: ファンドを一度購入して、その期間ずっと持ち続けた場合の収益率です。これは、ファンド自体の純粋な運用成績を示します。
- インベスター・リターン: 投資家によるファンドの購入や売却などの資金の出し入れを考慮し、実際に得られた収益率です。
- ギャップ: このトータル・リターンとインベスター・リターンの差を「ギャップ」と呼びます。もしインベスター・リターンがトータル・リターンを下回っていれば「負のギャップ」、上回っていれば「正のギャップ」となります。過去の調査では、投資家はファンドのトータル・リターンよりも低いインベスター・リターンを得る、つまり「負のギャップ」が生じることが多いとされています。
なぜ「ギャップ」が生じるのか?
主な原因は、投資家自身の「売買タイミング」にあります。
- パフォーマンスを後追いする投資: 例えば、最近成績が良い人気のファンドに「尻馬に乗って」飛びつき、高値で買ってしまい、その後値下がりして「肩を落として」安値で売却するといったケースが挙げられます。以下のインド株式ファンドの例では、5年間でトータル・リターンが年率37.2%と極めて高かったにもかかわらず、インベスター・リターンは年率-3.8%と大きく負のギャップが生じました。これは、市場が好調な時に多額の資金が流入し、その後パフォーマンスが軟調になった際に資金流入が減少したためと考えられます。
HSBC インド・インフラ株式オープンの資金流出入額と累積リターンの推移
- 市場タイミングを見極めようとする試み: 短期的な市場の動きに応じて売買を繰り返すことです。株価が下がったら購入し、上がったら売却するなどです。タイミングを上手く見極められるのであれば、インベスター・リターンは向上しますが、失敗するとインベスター・リターンは悪化します。
2025年3月末時点の分析結果
- ETFと公募投信: 過去10年間では、ETFと公募投信では結果が異なります。2010年代後半に日本銀行は、ETFを多く購入していました。株価が下がったときが購入タイミングでしたので、結果としてETFのインベスター・リターンを押し上げる形となり、ETFは正のギャップとなりました。つまり、ETFの投資家(主には日銀)の投資行動は良かったということです。しかし、直近5年や3年の期間ではその影響は限定的になります。ETFは日銀や機関投資家の投資行動を含むものとなります。個人投資家の動向をより反映する公募投信に絞ると、全ての分析期間でETFよりも大きな負のギャップを示しています。つまり、平均的な個人投資家は、「思ったよりもリターンが上がっていない」と感じているかもしれません。
ETF、公募投信別のリターン・ギャップ
- パッシブ(インデックス)運用: NISAではインデックス・ファンドが大人気です。つみたて投資枠でコツコツ投資をしている人が多い一方、成長投資枠で一気に投資をする人も少なくありません。2025年1月に、新NISAの2025年分の成長投資枠が利用できるようになったことで、同月に人気のインデックス・ファンドに多くの資金流入がありました。しかしその後、世界の株式市場が低迷したころで、インベスター・リターンが大きく低下し、負のギャップにつながりました。テーマ性の高い株式のインデックス・ファンドでも、大きな負のギャップが見られました。
パッシブ(インデックス・ファンド)のカテゴリ別リターン・ギャップ
- アクティブ運用: 債券型の一部では正のギャップが見られましたが、株式型では10年の期間で大きな負のギャップを示しました。アクティブ・ファンドの場合、銀行や証券会社の販売員を通じて、テーマ性やストーリー性を重視したファンドが「単品」として販売される傾向があり、投資家がパフォーマンスを後追い投資する結果、売買タイミングが適切でなかった可能性が考えられます。
- アロケーション型: さまざまな資産クラスが組み合わされており、投資家自身がリバランスを行う必要がなかったりするため、比較的ギャップが小さい傾向にあります。
賢明な資産形成のために
これらの結果をふまえて、以下のようなことに留意して投資を行うと良いでしょう。
- 短期的なパフォーマンスや周囲の状況に惑わされないこと: 人気のファンドを後追い購入したり、売買タイミングを見極めようとしすぎると、思ったようなリターンが得られない可能性があります。
- 自身の投資目標とリスク許容度に基づく長期的な分散投資: 株式のインデックス・ファンドが流行っているから、という理由で投資を始めたものの、市場が急落して怖くなって売却してしまい、その後の回復局面を逃してしまった。これは、そのファンドが自身のリスク許容度に合っていないから起きることです。リスク許容度に合った長期分散投資を心がけましょう。
- 時間分散を意識した投資: NISAの成長投資枠で一気に投資できる資金があったとしても、市場が確実に値上がりする保証はないので、一括購入ではなく、購入タイミングを複数回に分ける(時間分散)ことを検討することが重要です。
- アロケーション型ファンドの活用: 自動でリバランスされるため、投資家が売買タイミングを間違えるリスクを減らすことができます。近年では低コストのアロケーション型ファンドも増えてきていますので、検討してみるのも良いでしょう。
ご自身の投資を振り返り、上記のポイントを参考に、長期的な視点に立って計画的な資産形成を進めていくことが大切です。

