【The Long View】バンガードのジョー・デイビス氏に訊く:「メガトレンド」で何が起きるのか?

バンガードのグローバル・チーフ・エコノミストが、景気後退とインフレ上昇の確率、AIで注目すべき投資先、米国の財政赤字増大の時代に投資家が成功する方法について語る。

ポッドキャスト「ザ・ロング・ビュー」のコラージュ・イラスト

※ 本稿はモーニングスターによる2025年9月2日付ポッドキャスト「The Long View―Joe Davis: How to Capitalize on ‘Megatrends’」をモーニングスター・ジャパンが翻訳したものです。内容はその時点での情報です。

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今回のゲストは、バンガード(The Vanguard Group)のグローバル・チーフ・エコノミストであり、同社の投資戦略グループのグローバル・ヘッド、ジョー・デイビス氏です。彼はバンガードの戦略的資産配分委員会の委員長もつとめており、マルチアセット投資戦略部門を統括しています。また、バンガード債券グループのシニア・ポートフォリオ・マネジメント・チームのメンバーでもあります。

クリスティン・ベンツ:こんにちは、「The Long View」にようこそ。モーニングスターでパーソナル・ファイナンスとリタイアメント・プランニングを担当しているクリスティン・ベンツです。

ダン・レフコヴィッツ:モーニングスター・インデックスのストラテジスト、ダン・レフコヴィッツです。

ベンツ:今日のゲストは、バンガードのジョー・デイビス氏です。デイビス氏は、『Coming Into View: AI and Other Megatrends Will Shape Your Investments』(見えてきた:AIなどのメガトレンドがあなたの投資をどう形成するか)を最近上梓されました。セント・ジョセフ大学で学士号を、デューク大学で経済学の修士号と博士号を取得されました。ジョー、「The Long View」へようこそ。

ジョー・デイビス氏(以下デイビス、敬称略):今日は、また話す機会をいただき、どうもありがとう。

ベンツ: 対談の後半では、ジョーの新著について掘り下げていくつもりですが、その前に、まず関税問題の影響について、現在の状況を少しチェックしておきたいと思います。春以降、米国株式は関税が引き起こした懸念からかなり脱却したように見えます。投資家は楽観的過ぎると思いますか?

<景気は減速しても後退はしない>

デイビス: そうですね、明るい側面では、関税率がかなり上がったにもかかわらず、景気後退に陥る可能性は低そうです。我々は社内予測で、確かに景気減速を見込んでいました。今後、減速は見られるでしょうが、景気後退には陥っていません。ですからある意味では株式市場や金融市場は、この点について慎重ながらも楽観的な見方だったと思います。

とはいえ、短期的な成長という視点では、すべての悪影響が出尽くしたわけではありません。また、関税率が高止まりした場合、企業がその影響を最小限に抑えていることも一因となって、今後のインフレにつながる可能性があります。

多少の変動は避けられないと思います。それでも信じていただきたいのは、株価にはこうした予測がすでに織り込まれていて、景気は後退していないということです。もし株式市場が急落するようなことがあれば、私にとってはむしろ驚きです。

レフコヴィッツ: たしかに、スタグフレーションの話題はすっかり下火になりました。インフレが再燃するリスクはあると思いますか?

デイビス: インフレ率の急上昇よりも重要なのは、インフレ率がしぶとく2%を上回り続けている現状です。今も2%台前半から中ば程度です。債券市場が何らかの形でひっくり返ることは、まず無いでしょう。しかし、人々は明確なニュースを待望しているので、何かしらの報道に過剰反応するリスクはあります。それでも、少なくとも債券市場では、双方向に影響を及ぼすと思います。なぜなら、インフレは成長の足かせになるからです。ですから、我々はスタグフレーションについてはそれほど懸念していません。

皆さんが本当に懸念しているのは、「もし本当に急激な金利上昇が起き、それに追い打ちをかけるような動きが何か起きたら?」、ということだと思いますが......私たちはただ、労働市場の活力と力強さが続き、FRBが金利を据え置き、市場がそれを織り込んでくれることを望むだけです。

ベンツ: 春の株式市場の急落について伺いたいのですが。最悪の時期に、株式と同時に国債も下落しました。今までは国債と株式は良好な逆相関を成していましたが、これが何らかの形で崩れつつあると危惧すべきでしょうか。その心配をしている人もいます。あなたはどうお考えですか?

デイビス: 繰り返しになりますが、我々は、先ほどクリスティンが指摘したように負の相関があるため、今後数年間は債券が重石として機能し続けると考えています。もっとも、我々は3年以上前からいずれ高金利の環境が到来することを予測していましたし、今直面しているのはまさにそれです。3年前というと、金利がゼロ近辺に張り付いていた時期です。ここで重要なのは、そうした環境では、10年以上もの間、本当に負の相関があったことです。

分散効果が続くかどうを案じておられるようですが、私たちはまだ債券を重石(バラスト)として機能させています。相関はおそらく0.1かゼロくらいですから、株式市場が下落すれば、一般的には債券価格はいずれ上昇することになります。さて、では平均的に過去と同様に素早く上昇するでしょうか?おそらく金利がわずかに高くなるだけではなく、非常にポジティブな力学が働く可能性があります。つまり、債券ポートフォリオ全体のインカム収益が増大するということです。

レフコヴィッツ: 金利は長期で高止まりしているものの、年初からドル安が進んでいます。ドル安の主な要因は何でしょうか?ドル安は懸念材料ですか?

デイビス: それほど心配をする必要はないでしょう。心配には2つの形があります。ひとつはリスク管理の観点からそれを「意識する」こと、もうひとつは「非常に警戒する」ことです。私は警戒はしていませんが、潜在的な将来の可能性のひとつとして見ています。

そろそろ本の話に移る頃合いでしょうか。ドル安の究極的な要因のひとつは、積み上がっていく国家債務と財政の力学、つまり歳入と歳出のギャップだと思います。関税が見出しでは目立っていましたが、その裏にあるのは財政力学による事実上の資金調達です。ですから、私は極度に警戒はしていませんが、海外投資家から要求される金利がもう少し高くなる可能性があり、債務を維持するために要求されることになる未来を垣間見た気がします。しかし、繰り返しますが、大きな憂慮の種とは考えていませんが、万一、AIの普及が頓挫すれば、起こり得るひとつの可能性と言えるでしょう。

<米国以外の市場に目を向ける理由はバリュエーションではない>

ベンツ:さて、 年初来、米国以外の株式は米国に比べてかなり良いパフォーマンスを見せていますね。

デイビス: ようやくその話題が来ましたね。

ベンツ: そうですね、それについてお聞きしたいのですが、あなたとチームはこの数年、そして今年に入っても米国以外の株式は米国に比べて割安だと指摘してこられました。株価上昇を考慮しても、それは変わらないですか?

デイビス: そうです。ただ、ひと昔前の考え方かもしれませんが、リスナーや読者に公平を期すために申し上げたいのは、予想には責任が伴うということです。親切な人なら、「ああ、バンガードは早すぎた」と言うかもしれません。また、5年間に限って見て、「海外株式がアウトパフォームする見込みがあると言っていたのは間違いだ」と言うこともできるかもしれません。

さて、クリスティンが取り上げたバリュエーションの話にもどります。

少し立ち止まって考えてみましょう。私たちはこの問題を徹底的に調査してきました。いわゆる「米国は例外だ」問題――つまり、この米国株式市場の輝かしいアウトパフォーマンスは何によってもたらされ、長続きするものなのかどうかという問題です。

すべての投資家が米国以外の株式へのエクスポージャーを持つべきだという我々の主張は、実はバリュエーション、言い換えれば、特定の市場がどれだけ割安か割高かということは全く関係がありません。それは、たとえば米国以外の株式をどれだけ保有しているか、という話なのです。

しかし、なぜ海外投資なのでしょうか?バンガードの創業者であるジャック・ボーグルは海外投資にあまり賛成ではありませんでした。理由は2つあり、いずれもリスク管理に関係があります。

ひとつは、長い歴史を平均すると、米国株式の約4%、世界株式の約2%が、世界の株式リスク・プレミアムの約半分を占めてきたという事実です。このことはこの番組や他の機会にも話されてきたことでしょう。この10年間、こうした稼ぎ頭の企業はほぼすべて米国に拠点を置いた企業でした。ですから、リスク管理の観点からは、もしあなたが米国以外の国へのエクスポージャーを持っていなければ、将来その4%の企業がすべて米国拠点になるはずだという、非常に強力なテクノロジー的な賭けをしていることに気づかないかもしれません。

その可能性はありますが、私には100%そうなるという確信はありません。そして、米国以外のエクスポージャーを持つという大枠の基準、あるいは経験則として投資地域の分散によって、賭けの要素をひとつ消すことができます。

もうひとつは、通貨のリスク管理です。財政的な圧力について先ほど触れました。私は米ドルを警戒しているわけではありませんが、リスク管理の観点からは、(米国外の企業への投資を通じて)米ドル以外の通貨のエクスポージャーを持てることも、適切な理由です。これは米国株式と海外株式の相対的な価値評価とは無関係です。では、米国以外をどの程度オーバーウェイトするのか。

<財政赤字は重要な要素のひとつ>

レフコヴィッツ: ジョー、あなたは財政赤字と債務について著書の中で触れていますね。しかし、あなたは――ここで「心配」という言葉は使いませんが――借金が増えていることについて他の人ほど気にしていないように見えます。なぜでしょうか?

デイビス: ダン、あなたの言葉に戻ると、これは手ごわい問題です。ある意味で、私がこの本でこの問題について書かざるを得なかった理由は、私たちが懸念しているあらゆる要因の中で、少なくとも私たちのデータに基づく枠組みを通して、財政赤字が深刻な問題であることがますます明らかになってきているからです。一部の人々が考えている以上に、そしておそらく政治の世界にいる人々が考えている以上に深刻な問題です。実際、財政赤字は少しずつ影響を及ぼしています。

我々の枠組みを踏まえると、水面下では緩やかに金利を引き上げ、インフレ期待を押し上げ、私たちが最初に話した結論であるいわゆる中立金利、つまりFFレートが長期にわたって横ばいになる水準にも、影響していることが分かります。しかし、まだ警戒すべき水準ではなく、10年物国債の金利が6%、7%になるような状況でもありません。今後1、2年でそうなる可能性も非常に低いと考えています。

ですから、そういう意味では私はそこまで深刻に捉えておらず、「ええ、『警戒』していません」と言えます。しかし、4~5年先を見据えた場合、テクノロジーによる景気の追い風がなければ、債券市場が認識している以上に大きな影響を受けることになるでしょう。それは債券投資家にとって魅力的な実質金利を意味しますが、それは過渡期に過ぎません。

しかし、強調しておきたいのは、私たちの枠組みでは、これは差し迫った話ではないということです。ある意味では、「まあ、警戒はしていない」と言えるかもしれません。しかし、3年、5年、7年という投資期間を考えるのであれば、将来のリスクを慎重に検討する上で、このことを意識しておく必要があります。

<グローバル化は終わっていない>

ベンツ: さて、グローバリゼーションについて話したいのであなたの著書『Coming Into View』について話題を移しましょう。最近の通説では、自由貿易とグローバリゼーションの時代は終わった、あるいは少なくとも衰退しつつあると言われます。しかし、あなたは著書で、グローバリゼーションの後退という考えの誤りについて触れておられます。そこで、通説のどこが間違っているとお考えか、話していただけますか?

デイビス: そうですね、これまで話題に上らなかった貿易の重要な要素に注目したものだと思います。とはいえ、関税と商品の移動は――それがチーズであろうと自動車部品であろうと、サプライチェーンや製造品、つまり私たちが家庭用に購入するあらゆるものにとって――不可欠です。

しかし俯瞰してみると、そうした商品つまりモノは米国における個人消費の約3分の1に過ぎず、残りの3分の2をサービスが占めています。そして、モノの中でも製造品は、誰もが知るように技術と生産性の向上、技術革新の速度、そして新製品の開発が重視されます。長期で見ると、これらが収益成長の大きな原動力となるので、既存製品の生産効率や生産地よりも重要なのです。

ですから、貿易と関税はたしかに重要です。しかし、私が特に注目すべきだと思うのは、「製品のアイデアはどこから来るのか」ということです。ここで、iPhoneのような人気の消費財について、イノベーションの本質がどのように変化し、私が「アイデアの流通」と呼ぶものがいかにグローバルに広がって恩恵をほどこしているかを考えてみましょう。

さて、「アイデア」はどこから生まれたのでしょうか?100年前であれば、それはほぼ一国、アメリカに集中しており、誕生する主な原動力は競争でした。しかし、今は競争だけでなく協力も含めてアイデアの供給は、中国もその一部ですが、よりグローバルになっています。たとえ各国に課す関税率が高く設定されたとしても、アイディアの流通がグローバル化しているので、成長について前向きな見方ができると思います。

これが、私が「グローバリゼーションの後退」の誤りと言っていることです。文字通りインターネットを完全に遮断し、人間やあらゆる物品の活動やグローバルな移動を止めない限り、グローバリゼーションが本質的に後退する可能性は非常に低いのです。

<ひとつずつは小さな変化でも、やがて大きな変革をもたらすかもしれない>

レフコヴィッツ: 著書では「メガトレンド」という概念を扱っておられます。メガトレンドをどのように定義しているのか、なぜそれほど重要だとお考えなのか、また、どのようにメガトレンドを分析で活用されているのかについて、少しお話しいただければと思います。中には、非常に長期的で予測が難しいものもあるように思います。

デイビス: そうですね。メガトレンドは、私にとって目からウロコが落ちるものでした。20年以上エコノミストとして働き、歳を重ねてきたわけですが、大学院で学んで以来今日に至るまで、一般的なアプローチとして、経済に関心を持ち、金融市場に関心を持つのであれば、短期から中期の見通しについては、経済紙や経済誌、主要な報告書、GDPやFRBの今後6ヵ月の動向に注目します。これらはたしかに重要なことで、私は社内外で意見を求められることもあります。私のチームも短期的な見通しについてリサーチを行っています。

しかし、業界が本当に過小評価しているのは、2つの側面です。1つは、いわゆるトレンドと呼ばれるものが、ある意味ではダンが指摘するように非常にゆっくりと進行するため、「20年先のことなど気にする必要はない」と考えられがちだということです。トレンドは、海中の氷河のようなものです。あまりにも動きがゆっくりなので、まるで塗料が乾いていくのを凝視しているような感じがします。しかし、こうしたトレンドのわずかな変化が、景気循環に大きな影響を及ぼすことが判明しています。

例を挙げてみましょう。過去2年間を振り返ると、インフレ率の上昇や、株式市場の動向もありますが、最大のサプライズは、移民政策の変化でした。これは人口動態に関わるものですが、現れる変化は小さなものです。関税率やサプライチェーンにも当然ながら変化がありました。これらもある種のメガトレンドのように見えますが、主軸はグローバル化です。そして水面下では、AIをめぐる投資や、ここ1、2年の生産性向上が労働市場や企業収益に影響を及ぼしています。

いずれもゆっくりした動きで、少し視線がずれると見逃がしそうな些細な変化です。しかし、細部に目を凝らして変化を把握していくと、予測の精度が向上します。このような変化をいわゆる「メガトレンド」と呼び、S&P500の前月比、四半期比の変動の約半分を説明することができます。つまり、たとえ短期的な投資家であっても、こうした力学を通して事象を見ることが非常に重要なのです。

これは金融の専門家にとっても新しい認識で、マクロ経済予測へのアプローチを変えるものです。業界全体の予測手法にも影響を与える可能性があります。メガトレンドはコンスタントなものではなく、むしろ私たちが考えている以上に、日々変化を与える、生きて、呼吸し、変化するものです。

レフコヴィッツ: とても興味深いですね。どうやって定量化するのでしょうか?

<データを基に未来を覗く枠組み>

デイビス: ダン、的を射た質問です。まず私たちのフレームワークの背景を少し説明させてください。私たちの顧客や投資家の方々は非常に賢明で、AIやグローバリゼーション、そして今日私たちが取り上げた話題について鋭い視点をお持ちです。彼らはこのポッドキャスト・シリーズを聞いています。

しかし、私が意見を聞かれたとき、私は情報に基づいた回答をすると思いますが、「AIがどれくらい成長を促進するのか」、あるいは「グローバリゼーションが後退した場合にインフレ率がどの程度上昇するのか」などについて、定量的な推計値は持ち合わせていませんでした。つまり、成長率や株式市場について語るならば、確率と影響の度合い(マグニチュード)を示す必要があります。そうした見通しがなければ、ポートフォリオにおけるリスク管理を語ることは難しいでしょう。

そこで私たちは、インフレ率を示すCPIや連邦準備制度理事会(FRB)の金利、債券市場の10年物国債利回りなど人々が関心を持つ短期的な指標と、AIやグローバリゼーションなどの「動的なトレンド」を、統合する道を歩みはじめました。私たちは、データサイエンス分野と経済学の最良の知見を活用して、それらをひとつの動的なシステムに組み込み、実用化しました。私たちは何か新しい理論を生み出したわけではありません。私たちは抱えている実際的な問題への回答を得るために、経済学界の異なる3つのグループ――景気循環、株式や債券などの資産価格、そして長期的な成長トレンド――を統合したのです。

なぜなら、たとえば、株式市場とは何か?AIによって自動化が進んだら、あるいは進まなかったら、株式市場はどう反応するのか?そうなった場合のタイムラインは?といった問への回答が必要だったからです。もちろん、私たちが目指していたのはモデルである以上、限界はあります。しかし、私たちはそれらをひとつのシステムに統合したことを誇りに思っています。そして、私たちの経済診断と定量化の結果は、(従来当然だと考えていたのとは異なるもので)目が覚めたように感じました。だからこそ、この本を書くことになったのです。もし私たちの診断結果が、私の予想や市場のコンセンサスと似たようなものであったなら、私は本を書かなかったと思います。

ベンツ: 先ほどあなたは金融業界の専門家について言及されましたが、最新のインフレレポートや雇用統計など、非常に短期的なデータに注目する傾向があるのはなぜだと思いますか?あなたが話されているように、長期的なトレンドを観察し、それを考察に取り入れることは大変有益な方向だと思うのですが。短期的な情報に強い引力があるのはなぜでしょうか?

デイビス: その理由を3つ挙げてみましょう。

第一に、アクティブ運用者の視点です。リスナーの中には自分でポートフォリオを管理している人もおいででしょう。そうした方は長期的な目標に対して適度なリスクを取ろうとしています。たとえば、クリスティーン、あなたの著書で紹介されている退職金プランに沿って運用している人が、少しだけアクティブなリスクを取りたいと考えるケースです。私はポートフォリオ運用チームと一緒に働いていますが、ベンチマークに対してやや控えめなポジションを取る場合、6ヵ月から1年の短期的な視点に注目する傾向があります。なぜなら、それがビジネス・サイクルだからで、FRBが予想以上または以下の行動を取る可能性がある期間だからです。それは自然なことだと思います。

第二に、近い過去の情報に対する安心感です。「直近バイアス」とまでは言いませんが、今目の前にある情報に注目しやすいということです。それが目につくので、重きを置いてしまいがちです。GDPが予想より高ければ、それは消費者の需要が増えて、支出が増加したからだと考えるわけです。我々の分析の枠組みに照らしてみると、それが正しい場合もありますが、実際には生産性が向上したことで労働者の所得が増加したため、消費支出が増える場合もあり、これはテクノロジーが主因です。つまり、根本的な原因に目を向けるべきなのです。

たとえば、いわゆる「ソフトランディング」の時のことです。多くの人は、FRBが金利調整を的確に行ったことで「ソフトランディング」に成功したと考えました。FRBはインフレ率を維持しつつ労働市場の成長率を鎮火し、驚くべきことに景気後退を回避したのです。しかし我々の分析では、ソフトランディングの要因の80%はメガトレンドの進展によるものだったのです。国境を越えた移民の急増が労働市場を冷却し、FRBの政策以上の効果をもたらしたのです。また、テクノロジーによる生産性の向上も幸運な要因でした。クリスティーン、これも目から鱗が落ちる知見でした。

これは株式市場の評価にも影響を与え、金利政策も異なる意味を持ちます。もし需要が過熱しているならばFRBは金利を引き上げるべきです。しかし、高成長がメガトレンドによってもたらされて、非常にポジティブにその年の景気を刺激しているならば、インフレなき経済成長が進行しているのでFRBは利上げをする必要はありません。つまり、どう読み解くかは短期的にも重要な意味があります。

最後ですが第三に、分散投資の観点です。基本的な考え方の1つとして、いくつかの理論的根拠を紹介します。かつてジャック・ボーグルに「収益と金利の合理的な期待値を予想するフレームワークは何か?」と訊かれたことがあります。彼はまさにメガトレンドの力学の本質に迫っていたのです。

もし投資委員会の一員ならば、米国金利を4%と想定してよいのか?もし投資委員会やファイナンシャル・アドバイザーとしてポートフォリオを構築するなら、どのようなリスク評価を行うべきか?個人的には、業界はメガトレンドにもう少し重きを置くべきだと考えています。なぜばら、今後7年間のGDP成長率や企業収益のほぼすべてを、メガトレンドで説明することができるからです。

<未来をかけた綱引きを読み解く>

レフコヴィッツ: ジョー、あなたの本では根本的な前提として、米国の成長、インフレ、金融のリターンなど、アメリカ経済において現状が続く可能性は低いとしてますね。それはなぜですか?

デイビス: バンガードのチーフ・エコノミストとして、これまでコンセンサス調査に答えてきました。今後3年、5年、7年の株式市場の成長率、GDP、あるいはインフレ率の見通しは?という問いに対して、GDP成長率とインフレ率については、多くの人と同様に、当時は私も「2%成長、2%インフレ」と回答していました。怠けていたというわけではありませんが、みんなが同じ回答をしているという安心感があったのかもしれません。

実際、約9割のエコノミストが同じ予測をしており、私もその一員でした。頭の中でそれとなく、「AIによって多少の恩恵は得られるだろうが、ベビーブーム世代の高齢化によって人口動態は鈍化する。だから結局のところ、経済成長率とインフレ率は過去10~15年の平均とほぼ同じ2%になるだろう。つまりつまりステータス・クオ(現状)維持、実質的な変化はない」などとストーリーを考えていました。

しかし、これは私自身にとっても驚きでしたが、データに基づく分析の枠組みを開発して初めて、それが単に確率の低い見通しに過ぎないと分かりました。先のようなシナリオが成立する確率は、実際には20%未満です。

なぜなら、こうした中期的な圧力のせめぎ合い、特に財政赤字による成長率の低下と、インフレ率の上昇と金利の変動は、構造的なものであり、時間の経過とともに事態は累積していきます。一方で、AI――便宜上AIと呼んでいますが、その他のテクノロジーである可能性もありますが、おそらく最も可能性が高いのはAIでしょう――が成長を押し上げ、インフレを抑制する方向に働きます。

そして、驚いたことに、今後3~5年間のこうした力学の綱引きによって、統計的に事実上2つのピーク(二峰性/バイモーダル)が生じる分布になると判明しました。これは、通常の現状維持シナリオに見られるような、ピークは成長率とインフレ率がそれぞれ2%で、そのどちらかに小さなブラックスワンのリスクがあるというものではありません。そのような際立った一つのピークを得られる可能性は非常に低く、むしろシーソーのような状態で、どちらかの力が強く働いて一方に大きく振れることになるでしょう。

ベンツ: ジョー、その点についてもう少し詳しくお聞きしたいのですが、著書の中で、あなたはこの「綱引き」から起こりうる2つのシナリオについて触れられています。それについて説明していただけますか?つまり、技術革新(おそらくAI)と、高齢化・財政赤字の増大との綱引きです。

デイビス: 地政学的リスクや不確実性、さらには気候変動など、影響を及ぼし得る重要な要因は他にもありますが、クリスティン、最も影響力の大きな2つの要因は、おっしゃる通りです。「高齢化と財政赤字」が、金利上昇と技術革新を後押しします。「技術革新(おそらくAI)」は、ご承知の通りコンピューターとインターネットの登場で1990年代に見られたようなテクノロジーによる社会の変化をもたらします。

私たちはこの枠組みを用いて過去130年分にわたって分析しましたが、常にこのシーソーのような力学で変化が現れるわけではありません。ただ、歴史の中でこうしたメガトレンドが特定の方向に強く働くことがあるのです。

では、ひとつずつ見ていきましょう。楽観的なシナリオの方が、可能性が高いと考えています。リスク管理の観点から重要なのは、確率とその影響の大きさ(マグニチュード)を定量化したことです。

ざっくり言うと、今後5年から7年の間に、GDP成長率がコンセンサス予想を大きく上回る確率はおよそ50%で、米国は3%超となり、現在の予想の約2倍の伸びになります。これは財政赤字が深刻化しないという前提での見通しです。赤字から脱却したわけでも、赤字が消えてなくなったわけでもありませんが、1990年代後半のように、強い収益成長と経済成長のおかげで財政赤字を話題にせずに済むということです。

そして、もう一つの前提はAIの発展により生まれる2つの効果で、このシナリオが実現します。

まず、自動化が進み始めます。たしかに雇用の枠組みは大きく崩れ、雇用の喪失も発生します。しかし我々の枠組みによれば、実際のところ、米国の経済成長における最大の問題は自動化が進んでいないことにあり、これが過去130年間で最大の経済成長の足かせとなっています。これは、多様な要素を網羅して組み込んだ私たちの枠組みだからこそ、指摘できることです。

AIの発展による自動化の促進は、実に適切なタイミングで起きています。米国ではベビーブームの最後の世代がピークを迎え、実質的に65歳で退職していきます。2025年に65歳人口がピークを迎えますが、今後2032年にかけての労働人口の減少を、AIによる自動化が補完するため、あたかもアメリカには退職者がいないかのような状況が生まれます。

このように、人口動態が国の運命を決めるのではなく、テクノロジーによって活路が開かれるわけです。非常に前向きな力学が存在するのです。その結果、現在の米国株式のバリュエーションに見合った成長が実現します。投資という観点から見ると、最大の恩恵を受けるのは米国のテクノロジーセクターではなく、それ以外のセクターで、特に低迷してきた分野です。それは「マグニフィセント7」以外の企業です。なぜならAIは例えばヘルスケアや金融のようなバリュー株企業の生産性を少しずつ向上させるからです。新しい製品も生まれると思いますが、それは未知数です。何が出てくるのか分かれば、私はバンガードから引退できるのですが(笑)。

バリュエーションについても少し触れています。クリスティーン、米国以外に目を向けたあなたの質問に戻ると、過去のテクノロジー・サイクルの後半でも、米国以外のセクターが好調になるという同様の現象が見られました。これは「良い収束」と言えます。AIが勝利し、少なくとも今後7~10年間は財政赤字が牙をむくことはないと考えています。

しかし、多くのことがAIの発展に依存しています。AIは重要で、すでに成長にそれなりの影響を与えていますが、今後の進化が成り行きを左右するでしょう。

我々の予測によれば、多くの場合AIは進歩します。しかし、もしAIが進歩し続けなければ、つまりAIがその性能を向上させ続けなければ――AIの歴史は始まったばかりなので、3分の1の確率で成長率が頭打ちになる可能性もあります。悲観的なシナリオです。

もしそうなれば――考えてみてください、自動化やAIによる新製品開発が実を結ばず、何のイノベーションも無かったとしたら、GDPは後押しを受けることができません。

そうなると、直面するのは人口動態の問題です。GDP成長率は2%に達せず1%に近づいていきます。一方で財政赤字は、不況でもないこの平時でさえ対GDP比で8%から9%に居座っています。我々の枠組みで見ると、これはインフレ期待を押し上げ、FRBは対抗して利上げを行います。それが、成長に対する逆風となっていきますが。成長の恩恵を伴わない高金利の環境に対して、株式市場は備えができていません。経済成長率低下によって、企業収益は期待を下回り、景気はプラスからややマイナスに転じてしまいます。米国市場の現在のバリュエーションを考えると、悲観したくはありませんが、米国株式市場は「失われた10年」到来のリスクが高まる可能性があります。

こうして見ると、この綱引きの行方にかかっているものがいかに大きいかが分かるでしょう。私にとっても目を見張る発見でした。今後7年から10年というまだ備えをする時間のある話なので、私はエコノミストとして投資家を支援したいと思いました。「ここに二つの扉があり、ひとつは良い道、もうひとつはそうでもない道へとつながっています。あとはあなたの運しだいです」などとは言えません。そこで私たちは、リスク管理の観点から、いずれのシナリオにも耐えられるポートフォリオを、どのように構築できるかを考える必要があるのです。

レフコヴィッツ: まさにポートフォリオのポジショニングにどのような影響があるか、お聞きしようと思っていました。グローバルな分散投資が鍵になるとお考えのようですが、いかがですか?

<財政赤字とFRBと債券投資>

デイビス: 言い訳ではありませんが、少し詳しい人向けの話になるということを最初にお詫びをしておきます。3、4年前にこの「The Long View」に招かれて「米国以外(の資産への投資)」と言いましたが、それはバリュエーションの視点からでした。今回の話は、リスク管理の観点からです。

資産配分比率については議論の余地があります。誰かのベンチマークが何であるかといえば、答えは星の数ほどあるでしょう。そこで私はこの本の中で、ひとつの代表的な例として「米国のみに投資をする株式60%債券40%」のベンチマークを仮定しました。米国の投資家は自国(ホーム)バイアスが強い傾向があり、過去10年間は実にうまく機能していたポートフォリオです。

しかし、米国外のポジションも、ある程度保有すべきです。私たちの枠組みでは、少なくとも20%程度は米国外に配分すべきだと考えています。

皮肉なことに、財政赤字が深刻化するシナリオでは、AIはソーシャルメディアのような存在になってしまう可能性があります。私たちはあらゆるテクノロジーを使っていますが、――ここではAIを取り上げますが――50年も前からあるテクノロジーであるにもかかわらず、今だにごく初期段階に過ぎません。AIはまだ十分に活用されていないため、このまま成長が停滞すれば現在のソーシャルメディアのような存在になるかもしれません。つまり、私たちは日常的に使ってはいるものの、パーソナル・コンピューターのように経済成長を押し上げる力にはなっていないということです。これが、私たちがもっとも可能性が高いと考えるシナリオの悲観サイドにあります。

そこから先の移行期では、リスク管理の観点からは、債券投資が選好されると思います。なぜなら、財政赤字が支配的な環境にあるシナリオですから、実質金利が高い(平均2%)現在、たとえば10年物国債利回りが4%で、インフレ率2%を差し引くと、7年後の10年物国債利回りは6%になる可能性があります。その一方で、FRBは依然としてインフレ率を2%前後に抑えようとしています。

つまり、債券投資家は財政のツケを引き受けることになりますが、その分の見返りを得ることができます。したがって、資産配分の観点からは、ディフェンシブな債券投資へと向かうことになります。財政赤字が支配的な状況では、債券投資は避けた方がいいと考える人もいるはずですが、皮肉なことに戦略的には正反対になります。

アセット・アロケーターとしての私にとって、新たな発見だったのは、AIに最も強気な姿勢をとるなら、マグニフィセント7やテクノロジー分野以外の企業に投資すべきだという点です。AIによる変革の恩恵が、セクターの外へと波及するからです。テック企業を非難しているわけではなく、AIによる変革というゲームの後半について話しているのです。

そしてもし、あなたが財政赤字とAIのいずれにも悲観的であるなら、債券投資を検討することを提案します。もちろん、私たちのバランス・スコアカードでは、どちらのシナリオの確率も上昇すると予測しているので、株式60%債券40%のポートフォリオから大きく逸脱する必要はありません。

もし、リスクがどちらか一方のシナリオに偏るのであれば、資産配分もそれに見合ったものを考えられます。しかし、現状は二峰性(バイモーダル)の将来を予測しているため、どちらかに賭けるわけにはいきません。とはいえ、私なら債券投資を選びます。

金(ゴールド)や、その他世界の終末シナリオに関する懸念に対処する唯一の方法は、今年に入って金価格が大幅に上昇した(けれど世界は終わっていない)ことを目の当たりにしたという事実です。まさに「財政赤字が支配的なシナリオ」への懸念です。

私たちはこのようなシナリオもモデル化しています。財政赤字が支配的な状況で、FRBが何らかの理由でインフレを気にしなくなり、財務省の方針に従属して、FRBが果たすべき責務に足踏みをするような状況です。その場合、インフレ率の高い世界になります。私たちのデータに基づいた枠組みでは、約5%の確率でそうなる可能性があります。

もしその道を進むなら、検討すべき資産が2つあります。金と為替ヘッジなしの債券などですが、確率はあくまでも5%にすぎません。これはテールリスク(極端なケース)です。FRBがインフレ抑制の姿勢を保っているため、そうした極端な動きは見られないのです。

ベンツ: 政治の話は避けたいかもしれませんが、FRB議長の独立性と、私たちの経済システムにとっての、その重要性についてどうお考えですか?お話いただけるでしょうか?

デイビス: FRBという機関、そしてその独立性は、我々が持っている最も優れた制度の一つだと思います。投資家であれ、そうではないこの世界の一人であれ、FRBは経済の安定、特にインフレ率を概ね安定させる公共財として、最大の貢献を果たしてきました。もちろん、彼らも無謬ではありません。どんな個人が集まったとしても過ちを犯すことがあるように、彼らも間違う可能性はあります。

しかし、米国金融市場の深さと信頼度、そして新型コロナウイルスによるあらゆるショックや財政赤字を抱えながらも、インフレ期待が依然として比較的安定していることを考えると、これはまさにFRBの信頼性を証明していると言えるでしょう。

確かにFRBについて、そうした報道を見かけますが、私はFRBの独立性が維持されると信じています。ただ、もしそれが気になるなら、私が言いたいのは「昔とは違う」ということです。たとえFRBが自由を脅かされる状況になったとしても、今は債券市場、特にリアルタイムでインフレ期待を示してくれるインフレ連動債市場が存在しています。

もし誰かが本気でFRBの独立性を奪おうと検討しているのなら、あるいはFRBが事実上、インフレに対してこれまで以上に緩和的な姿勢で臨もうとしているのなら、市場がそれに対応して舵取り役を果たすでしょう。債券市場が先導して反応するので、FRBの独立性やその基本的な力学がすぐに変わることはないと思います。

<AIで「仕事」はどう変わるのか>

レフコヴィッツ: さて、AIとその影響に話を戻すと、著書の中で多くの輝かしい歴史に触れておられます。また、テクノロジーによる破壊的な変化について歴史上の前例を見出そうとされていますが、その例として2つの職業、電話交換と投資信託の会計(計理)業務を対比しています。その対比について、そしてその先例がAIについて何を示唆しているのか、少し話していただけますか?

デイビス: ええ、私たちは10年ほど前にAIに関するリサーチを始めました。当時読み漁った数多の研究の中で......特にテクノロジーの分野では、「AIは今後重要な存在になる」と言うものが増えていました。そこで私たちは、テクノロジーやAIが仕事の性質をどう変えて行くかに注目しました。その例として挙げたのが、先の2つの職業です。

パーソナル・コンピューターとそれに関連する通信技術は1990年代に登場しましたが、そのテクノロジーが二つの仕事に全く異なる影響を与えました。ある種の仕事では、実質的に将来性を大きく広げ、仕事や雇用、平均賃金を大幅に押し上げました。そのひとつがファンドの会計業務で、それまでの仕事の在り方が根本から変わりましたが、賃金は上昇し、雇用も増加しました。この場合、「コンピューター」は人間の仕事を補完する存在でした。一方、電話交換ではこの同じテクノロジーが、オペレーターの仕事を徹底的な自動化に置き換え、ひとつの職業に最後のとどめを刺したことは明らかです。

私たちのトップダウン型のデータに基づく分析の枠組みの優れた点は、AIを含むあらゆるテクノロジーを考察するとき、仕事の内容(タスク)に注目すると、未来が見えてくるということです。もちろん、私たちが最初というわけではなく、仕事の構成要素を念頭に研究してきた多くの人々が既に経験していることですが、今後10年間でテクノロジーが労働にどんな影響を与えるかをある程度予測できるということです。

言い換えれば、未来を正確に知ることはできなくても、影響の度合いを高、中、低といった予測ができるのです。実際、1980年代後半に『コンピュータ』 誌を読んでいた人なら、ファンド会計と電話交換の仕事内容をよく見れば、将来この2つの職業に何が起こるか、ある程度の推測ができたはずです。

しかし、本当に重要なのは、テクノロジーはこれからも進歩し続けるということです。AIは今も確かに目を見張るような能力を備えていますが、「汎用知性」も、「意識」も、「ロボット工学との融合」も、高度なレベルで実現しているわけではありません。ですから、これらの予測には常に不確実性が伴います。

それでも、先の2つの職業の例から未来の一端を垣間見ることができます。我々はアメリカの全職業に匹敵する800種の職業を考察し、本書では4つの職業に絞りましたが、起こり得る影響は様々です。しかし、平均して見ると今後7年間で、少なくともパーソナルコンピュータの登場以降で最大の、「働き方の変化」が起きる可能性が高いでしょう。これは非常に大きな変革になるでしょう。

<キャリア激変時代に向けた2つのアドバイス>

ベンツ: キャリアに関するアドバイスについて伺いたいのですが。新卒者はおそらく金融危機以来で最も厳しい就職市場に置かれているようです。著書の中で、若い人が成功への道を切り開き、将来に備えるためのアドバイスをされています。キャリア・レベルによらず、誰もが心に留めておくべき重要なメッセージについてお話いただけますか?

デイビス: ええ、最善を尽くします。私は教育者ではありませんが、30年のキャリアの中で苦労しながら「やってはいけないこと」「知っていればよかったと思うこと」を経験から学びました。

特にAIに関してはよく「これから社会人になるにあたって、何を専攻すべきか?」と訊かれます。私が45歳の頃、オフィスで自分のパソコンのデスクトップに「Microsoft Excel」というソフトが表示されていたことを思い出します。そのとき、『これを使うべきなのだろうか?それとも使わなくても大丈夫だろうか?』と迷いました。時代遅れのように聞こえるでしょうが、同僚の中には「もうすぐ定年だから、新しいことには手を出さないし、学ぶつもりもない」と言う人もいました。

AIに限らずすべてのテクノロジーに言えることですが、とにかく学ぶこと、とはいってもテクノロジーそのものではなく、「知識の幅を広げること」です。誰にでもできることで、私自身も実践してきて非常に役に立ったことです。自分の専門分野かそれに関連する分野の本を毎日、少なくとも3時間読むことを心がけています。なぜなら、そうすれば私が実際にテクノロジーを使っているかどうかに関係なく、意識して読書をすればするほど、様々な文脈の中で情報の点と点をつなぐ力が身につくからです。

私は大学生になった二人の子供たちには、「SNSは読書にカウントしない」と言っています。どこの親も言いそうなことですが、SNSは読書ではなく、むしろペナルティとしてSNSに1時間費やしたら、4時間本を読まなければならないと言ってやります。でも、時代遅れな考えだと思われるかもしれませんが、貪欲に本を読み、他の賢人たちの知見に触れれば、そして ロング・ビュー』もその一つですが、間違いなく役に立つと思います。そうすれば、何百人もの人々の知を得られます。

さらに私は、バンガードの100人のリサーチャーとともに仕事をすることでも恩恵を受けています。こうして私はクリスティンやダンの質問に答えていますが、それは研究のおかげではなく、多くの書物を読むことで「私」が形作られているからです。特にキャリアの初期には、それが極めて大きな意味を持つでしょう。

バンガードに入社した当初、私はミューチュアル・ファンドの基本的な知識しか持たず、ETFが何なのかさえ知りませんでした。私が大学院で学んだのは行列代数で、それが役に立つこともあれば、役に立たないこともあります。

二つ目のアドバイスは「テクノロジーを使ってみること」です。たとえば20歳の大学生でも、あるいは35歳でキャリアが急速に上向いてきた人でも、あるいは私のように50代前半で退職まであと10年ほどあるような人でも。「どうしたらよいか?」と訊かれたら、過激に聞こえるかもしれませんが、「AIを使って自分の仕事を自動化してみよう」と言っています。

私が言いたいのは、「実際にやってみることで学ぼう」ということです。私は『AI』の機能をすべて把握しているわけではありませんが、それでもできる限り私がAIを最大限に活用すれば、2つの効果が得られます。第1に生産性が30~40%向上し、年末には昇給の交渉ができるかもしれないし、同僚の役にも立てます。第2に、労働市場が停滞している状況では、正直なところ人生は競争です。隣のエコノミストよりも生産性が高ければ、それは強みになります。

もう一つのポイントとして、ある時点で、『今すぐではないにせよ、自分の仕事の6〜7割は自動化される可能性がある』と気づくことがあります。6つの職業のうち1つ程度ではありますが、そういう職種が存在します。

こうした視点を備えれば、関連分野や隣接する職種について考え始めるための、若干の猶予が得られます。もちろん、楽しいことではありませんが、電話交換についての例に戻れば、たとえば1985年の時点なら、多少の時間が残されていたでしょう。1995年に突然変化に投げ込まれるのではなく、1994年以前に、自分の『キャリアの第2章』で何をすべきか考える時間の余裕があったのです。

私はこのことを謙虚な気持と思いやりを込めて話しています。エコノミストとして統計データを扱っていると、時に冷淡になりがちですが、数字の背後には必ず人々の人生があります。私自身の家族の中でも、テクノロジーがもたらす恩恵と同時に、困難も目の当たりにしてきました。

だからこそ、私からのアドバイスは2つです。ひとつは読書をすること。そしてもうひとつはテクノロジーを可能な限り実際に使ってみることです。これらを実践すれば、必ず何かを学べるはずです。たとえば2年後には、きっと皆さんにとって有益なものになるでしょう。

<ファイナンシャル・アドバイザーの仕事はAIでどう変わるか>

レフコヴィッツ: 「The Long View」のリスナーや読者にはファイナンシャル・アドバイザーの方が大勢いらっしゃいます。著書の中で、AIがファイナンシャル・アドバイスに与える影響について触れておられますね。どのような影響を与えるとお考えですか?

デイビス: 一つは、Vanguardが長年強く提唱してきた概念で、トレードマークにもなっている『アドバイザーズ・アルファ(Advisors’ Alpha)』、つまり行動を促すコーチングがもたらす価値です。これはアドバイスの価値を構成する基本的な要素の一つで、定量化は難しいものの、私たちが取り組んできた中でもその効果は明確に確認されています。

特に市場が不安定な局面において、ファイナンシャル・アドバイザーが果たす役割の大きさは、私自身の経験からも実感しています。人は自分一人でも決断できるかもしれませんが、より自信を持って意思決定ができるという『感情面での価値』がアドバイスにはあります。

テクノロジー、特にAIもこうした価値の一部を担えると思いますが、私は人間中心のアドバイザーの役割は、強気の市場環境でより大きいと長年感じています。とはいえ、AIによって仕事は変化することは確実なので、だからこそファイナンシャル・アドバイザーを代表的な職業の1つに選んだのです。

ご承知の通り、私はファイナンシャル・アドバイザーではありません。アドバイザー業務をしているふりをするつもりはないし、実務の奥深さを知っているわけでもありません。それでも、ファイナンシャル・アドバイザーを他の800の職種と比較して見ることで、私に言えることもあります。

過去10年間そうしてきた結果、テクノロジーの観点から言えることは、私は行動コーチングの重要性を理解しているということです。多くの人がこの点に注目し、「それなら、それだけに集中すればいい」と言うかもしれません。しかし、それほど単純な話ではないと思います。それは労働塊の誤謬(ろうどうかいのごびゅう、lump of labor fallacy)だと思います。

実際には、今後アドバイスの価値がさらに高まり、アドバイス業務の規模が拡大すると思います。テクノロジーによって、ファイナンシャル・プランの質やサービスの内容への期待も高まるでしょう。例えば、5年後には(もう少し先かもしれませんが)、iWatchにある私のヘルスケアやその他の診断情報が、すべてファイナンシャル・プランに組み込まれるようになっていても私は驚きません。

これが基本的な考え方です。自動車の組み立て工程に何が起こったかを考えてみてください。100年前とはまったく違う職業になっています。組み立てラインの自動化で、自動車製造にかかる時間は減り、製造に携わる労働者の数も減ったのに、自動車整備士の賃金は上がり、出荷される車体の価値も上がりました。なぜかといえば、自動車に設計上の付加価値が増えたからです。今の自動車には、500馬力の車があり、エアバッグがあり、その他たくさんの診断機能がついています。今や自動車はまるでコンピューターです。

AIの普及やAIにできること、そしてファイナンシャル・アドバイザーの仕事内容を鑑みると、ファイナンシャル・プランも同じように進化すると考えています。ファイナンシャル・プランに含まれるべき内容の「基本項目」は今後増えていくでしょう。そして、プランひとつひとつにかける時間が減れば、それを活用できるアドバイザーは業務の規模を拡大できる可能性があります。

ですから、もし私がファイナンシャル・アドバイザーなら、これはワクワクする話です。エコノミストや看護師やその他の職業分野と同様に、何らかの変化が起きるはずです。私はこの業界に強気ですが、ただ現状維持で今と同様の仕事をすればいいという意味ではなく、仕事のしかたが変わるということです。

繰り返しますが、私はファイナンシャル・アドバイザーではなく、ただ、ファイナンシャル・アドバイスという仕事を、これまで分析してきた800の職業と比較してどう見えるかという話です。

<低コスト運用の重要性とアクティブ運用>

ベンツ: 本書では、アクティブ運用とAIの関連についても触れられていますね。バンガードはこの5年ほど、アクティブ運用にかなり積極的に取り組んでいるとも聞いています。この点について、バンガード自身の取り組みと結びつけて話していただけますか?

デイビス: 私はバンガードに20年以上勤め続けていますが、ある意味では、「バック・トゥ・ザ・フューチャー」的な話だと思います。そして、誰もが認めてくれると思いますが、バンガードが深く信じているのは、「低コスト投資の力」です。

プライベート市場であれ公開市場であれ、どんな市場でも資産の50%は市場平均を上回り、残りの50%は下回ることを、私たちは知っています。ですから、コストを最小限に抑えることができれば――これはジャック・ボーグルの研究の中でも非常に美しい原理ですが――コストを抑えるほど、最終的に投資家、つまりあなたの手元に残る金額が増えるのです。それは本当に素晴らしいことです。

重要なのは、そして私たちが言っているのは「低コスト投資を信じるべき」だという点です。これはバンガードだけでなく、すべての投資家が信じるべきことだと思います。ただし、この議論で時々誤解され、見落とされるのは、低コスト投資が常にインデックス投資を意味するわけでは無いと言う点です。

バンガードの初期の頃を思い出すと、2本のゴールポストの一方に高コストの投資商品があり、当時はアクティブ運用戦略が主流でした。そして、もう一方には低コストのインデックス運用戦略がありましたが、インデックス運用そのものがまだ黎明期でした。しかし、私がずっと考えてきたのは、(アクティブかインデックスかではなく)「低コストの投資手段」を提供することです。

ですから、もし運用経費が1.5%のインデックス・ファンドを持っている方がいたら、――もちろん、私は金融アドバイスを提供できませんし、自分が保有している金融商品もありますから、助言はできませんが――強く売却を勧めたいと思います。

一方で、運用経費が0.2~0.3%のファンドなら、考えるべきはネットリターンでしょう。もしあなたが「このマネージャーは平均よりも賢くて、運用スキルがある」と思えて、たとえば株式投資で長期的に50ベーシスポイント~1%の超過リターンが期待できるなら、そのマネージャーが0.3%の手数料を取っていたとしても、差し引きで0.7%のアルファを期待できます。

ですから、「低コスト」と「運用者の能力」という組み合わせは常に重要だと思います。ジャック・ボーグルは、バンガードの歴史の中で、おそらく最も多くのアクティブ・ファンドを立ち上げた人物です。意外に思われるかもしれませんが、変わらないのは、彼の「低コストへのこだわり」です。

だからこそ、多くの投資家にとって「低コストのインデックス運用」と「低コストのアクティブ運用」の戦略を組み合わせることが、有効だと思っています。アクティブ運用だけに100%投資することは、長期にわたってパフォーマンスが低迷する可能性があるので、一般的に推奨されません。

一方で、ある程度のアクティブ・リスク許容度を持つ投資家が100%インデックス運用のポートフォリオを保有していることも、実は稀だと思います。バンガードからの発言としては意外に聞こえるかもしれませんが、私はこの点をはっきりさせたいと思っています。私のグループが過去20年間行ってきたすべてのリサーチが、この考えを裏付けています。

<ふたたび、テックセクター以外の魅力について>

レフコヴィッツ: ジョー、先ほど、バリュー株式がAIの恩恵を受けて意外な勝利をおさめる可能性についてコメントされました。もう一度、少し詳しく説明していただけますか?

デイビス: そう、私は知らなかったので、これは驚きでした。もちろん、潮の満ち引きのように絶対的なものではありません――潮は引けば、必ずまた満ちますが、そういう確実性はありません。でも、確率としてはその方向に傾いていると思います。

テクノロジー革新のサイクルにはざっくり言って2つの段階があります。まず重要なのは、テクノロジー・サイクルが革新的な変革期にあるかどうかを見極めることです。例えば、今でこそパーソナル・コンピューターが変革的なテクノロジーだったということは知っていますが、1992年にパーソナル・コンピューターが変革の核を成すものだと知っていたかというと、おそらく本当に知っていたとは言えないでしょう。

私たちのシステム、つまりデータ主導の分析の枠組みは、1992年当時もリアルタイムで(PCの重要性について)控えめながら兆候を捉えることができましたが、不確実性がぬぐえませんでした。現在では、私たちは更なるテクノロジー・サイクルに入っている可能性が非常に高く、汎用テクノロジーが出現するであろうと言うことができます。

こうしたテクノロジーによる変革の事例が何百とあれば良いのですが、あまり無いのが現実です。「電気」、「内燃機関」などが代表例です。汎用テクノロジーとは何かについては、エコノミストの間でも議論があります。何かを頻繁に使っているからといって、必ずしもそれが人々の生活を向上させ、社会を根本的に変えたとは限りません。たとえば電子レンジは新しいテクノロジーですが、汎用テクノロジーとまでは言えません。

しかし我々は、現在テクノロジーサイクルの変革期にあり、AIが汎用テクノロジーである可能性が高いと考えています。テクノロジーサイクルの2つの段階のうち、第一段階では、テクノロジーの生産が普及し始めます。その分野に対して、莫大な投資が行われ、テクノロジーを生産するために多数の新しい企業が誕生します。パーソナル・コンピューターの時代には、ハードウエア、ソフトウエア、そしてインターネットも少々含まれていました。PCを例に挙げるのは、具体的なイメージを持ちやすいからです。

この段階で、「バブルが起きている」と言う人もいます。一般的にはそう言えるのかもしれませんが、私はそのような主張はしたくありません。そして、重要なのは投資サイクルの第2段階です。

もしこのテクノロジーが、私たちが考えている変革をもたらすものならば、企業はその技術を活用することで収益性と生産性が向上し、そのテクノロジーをプラットフォームとした新製品の開発などを通じて、恩恵を受けるようになります。

実例を挙げましょう。PCの分野では、今だからこそ分かるのですが、オンライン・ショッピングなどが登場し、ありとあらゆる物を販売するようになりました。本や音楽を販売する会社だったのに、それらの売り上げはいまでは企業収益全体の4%程度です。

私は社名を出さずに話しましたが、「ジャングル」と暗喩すれば誰もがAmazonを思い浮かべるでしょう。厳密に言えばAmazonは法的にはテクノロジー企業ではなく、生活必需品セクターの企業でした。

電気について考えてみましょう。何が組立ラインを動かしたといえば、まさに電力です。そこで2つの勝者が生まれました。フォードとGM(ゼネラル・モーターズ)です。電気そのものが2社の収益を生んだわけではありませんが、破壊的なテクノロジーである電力がなければ、今日、この2社について語ることは無かったでしょう。

つまり、電気やコンピューターはセクターの壁を越えて、他のセクターにも影響が波及していきました。これがテクノロジーの本質です。そして、もしそのテクノロジーが変革的なものでなければ、成長の触媒にはならず、そもそも不発に終わることになります。

ですから、もしこのテクノロジーサイクルが本当に展開されるなら――それには5~7年の時間を要しますが――その影響はテクノロジー分野の外に広がるということです。

皮肉なことに、ハイテクセクター以外の投資対象には、いわゆるマグニフィセント7やテクノロジー株式のように何倍にも値上がりした企業は見当たりません。しかし、テックセクター以外は価値を生み出していないという意味ではありません。AIはPCと同じくらい劇的な変革をもたらすテクノロジーである可能性が高いという、非常に高い評価なのです。もしAIが本当に変革をもたらす技術であるならば、他の分野にも新たな投資機会が広がるはずです。

だからこそ、投資の観点では、米国以外の市場や、バリュー株に目を向けるべきだと言っているのです。私はテクノロジーセクターに懐疑的なわけではありません。むしろその逆で、もしこの技術が本物であるなら、その影響はシリコンバレーの外にクモの巣を描くようにあまねく広がっていくだろうと考えています。

<ジャック・ボーグルとのランチが「メガトレンド」の始まり。そしてリーダーとしての「ペイ・フォワード」>

ベンツ: ジョー、最後の質問ですが、著書の冒頭にあったエピソードについてお聞きしたいと思います。とても素敵な話です。あなたが入社してすぐ、あるいは面接の時だったかもしれませんが、ジャック・ボーグルと昼食を共にされたエピソードです。その時のことをぜひお聞きしたいと思います。またジャックがあなたとあなたのキャリアに与えた影響についてもお話いただけますか。

デイビス: それは、私がジャック・ボーグルと昼食を取ったときの話です。バンガードでは「航海」をテーマにしてすべてが統一されているので、その昼食も「ギャレー(船の厨房)」と名付けられたカフェテリアで行われました。実は、今日この収録前にもギャレーに寄ってきました。

この時のことで私が伝えたいのは、多くの企業には素晴らしい企業文化があること、そしてリーダーが時間をどう使うかで企業文化が見えてくるということです。ジャックは、私が入社して間もない頃――社員証をもらったばかりで、まだ入社半年の、大学院を出たばかりの頃。まだ何もわかっていない時期に――多忙な彼が時間を取って会ってくれたのです。

会社の創設者でノーベル賞を受賞してもおかしくないような人なのに。しかも彼は時間を割いてくれただけでなく、私の経歴やバックグラウンドについて質問をしてくれました。そのやり取りは本の中でも少し触れていますが、それは私がエコノミストとして誰にも聞かれたことのないような、すばらしい、本質的な質問で、その後6か月はその質問について考えました。

「ジョー、君がバンガードに来てくれて嬉しいよ。シンプルなフレームワークがあるんだが、それを考えるのを手伝ってくれないか?」という調子で、彼は実に謙虚でした。しかし実際には、ファイナンシャル・プランの観点からバリュエーションや株式市場について考えるための、非常に優れた枠組みを持っていました。

そして彼は、「経済の観点から企業収益についてどう考えればいいか、一緒に考えてくれないか?」と言ってくれたのです。それが、「メガトレンド」の始まりでした。当時は、この言葉を使っていませんでしたし、もっとふさわしい表現があればよかったのですが。彼は確かに本質的な何かを捉えており、それは彼の洞察力の深さを示しています。

しかし、それ以上にとても印象的だったのは彼の謙虚さです。彼は、私という何者でもない者――本当に無名の新人――に貴重な時間を割いてくれたました。それは私にとってかけがえのない経験でした。だからこそ、この話を本書の冒頭に書いたのです。

私の人生において常に心に留めておきたいことは、リーダーとしてどんなに忙しくても、たくさんの人が私のために時間を割いてくれたということです。クリスティン、私はその恩を次の世代に「ペイ・フォワード」(本人ではなく第三者へ恩を返して広げていく)できているでしょうか?

私は今モーニングスターに来ていますが、ここにも同様の文化があります。与えること、人の役に立つことを大切にする「サーバント・リーダーシップ」の文化です。だからこの話をしたのです。ええ、もちろん(新著の宣伝という)経済的な動機もありますが。

ところで、ジャックが私に訊いたあのプロジェクトを完了するのに、結局20年かかりました。ジャックならおそらく2年でやり遂げたでしょう。

最後にお伝えしたいことがあります。私は今、当時バンガードのトップだったジャック・ブレナンが立ち上げたグループを率いています。彼は当時バンガードのCEOで、ジャック・ボーグルの高齢化を見据えて、「彼の思想的リーダーシップを継承するためのグループが必要だ」と考えて、このグループを作りました。ジャック・ブレナンの、その先見の明には敬意を表します。

今では、100人以上のクルー(乗組員)、つまり100人以上の社員がそのグループに所属しています。ジャック・ボーグルの足跡を埋めるには、それだけの人数が必要なのだと思います。ジャック・ボーグルは今日に至るまで私にインスピレーションを与え続けてくれています。

私はジャック・ボーグルに多くの恩を受け、彼の後に続いたバンガードのリーダーたち、さらには業界外の専門家からも多くのことを学びました。人は、誰からでも学ぶことができるからです。

そして、学んだことを自分の思考や読書に反映させ、自分の10%でもそこに注ぎ込むことができれば、キャリアにおいてきっと良い結果を生むことができると思います。

ベンツ: ジョー、素晴らしいアドバイスです。今日は本当にありがとうございました。『Coming Into View』の出版、おめでとうございます。お話できて本当に楽しかったです。

デイビス: ありがとう、クリスティーン。また番組に出演できて光栄です。

レフコヴィッツ:どうもありがとう、ジョー。

<ご参考(英語)>

ジョー・デイビス氏のプロフィール

Coming Into View: How AI and Other Megatrends Will Shape Your Investments 見えてきた:AIとその他のメガトレンドがあなたの投資をどう形成するか

・関税と財務省債券

「関税と市場のボラティリティ:投資家のための展望」ジョー・デイビス著、vanguard.com、2025年4月7日。

「赤字が膨らみ続ければ、バンガードは国債利回り9%を警告する」、サム・ブルギ著、investorsobserver.com、2025年6月17日。

「米国株式のアウトパフォーム」ジョー・デイビスによる解説動画、vanguard.com、2025年2月4日。

・人工知能とメガトレンド

「米州が債務問題から脱却するにはAIブームが必要。保証はない」ジョー・デイビス著、barrons.com、2025年5月23日。

「AIが生産性と労働力に与える影響」ジョー・デイビス著、vanguard.com、2025年3月4日。

「アクティブ投資?AI時代のバリューを見逃すな」(ジョー・デイビス著、vanguard.com、2025年2月20日)。

「メガトレンドと米国経済、1890-2040年」ジョー・デイビス、ルーカス・ブランドルチェン、ケビン・カン著、papers.ssrn.com、2024年6月10日。

・その他

ジョー・デイビス:「米国では一時的に中国のようなグロースが見られるだろう」、 ロング・ビュー・ポッドキャスト、モーニングスター・ドット・コム、2021年4月14日。

<クリスティン・ベンツの本>

『How to Retire お金を使いきる、リタイア生活のすすめ』

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著者はこの記事で言及されたいかなる有価証券も保有していません。詳細はこちらをご覧ください: モーニングスターの編集方針