AIスーパーサイクルは、まだ始まったばかりなのか?投資機会とリスクはどこにある?

ヌビーンのローラ・クーパー氏に聞く:人工知能は長期的な投資テーマに発展する端緒にある。

The AI Supercycle Is Just Beginning and Won’t Be Limited to Tech Stocks
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<今回のポイント>

  • 電力、用地、送電網など物理的な制約が、AIインフラ整備のスピードを左右しており、必要を満たすには数年を要するだろう。
  • AI投資の次の段階は、「マグニフィセント・セブン」にとどまらず、ヘルスケア、物流、製造業、公益事業、そして非公開市場などにも広がっていく可能性がある。
  • AIは、地域エコシステムへと細分化されつつある。

ヴァレリオ・バセリ:こんにちは。モーニングスターへようこそ。AIは既に市場を変革しましたが、これはまだ、壮大な物語の序章に過ぎないのかもしれません。

次のチャンスの波とリスクはどこに在るのか?投資家が理解する一助として、ヌビーンのマクロ戦略責任者であるローラ・クーパー氏をお招きしました。

ローラさん、あなたの最新の調査では、AIは単なる新たなテクノロジーの潮流ではなく、「複数年にわたる大規模投資のスーパーサイクル」であると論じています。では今回のサイクルは過去のテクノロジーブームと何が違うのでしょうか。また、なぜ投資家により長期的な影響をもたらすとお考えなのでしょうか。

ローラ・クーパー:過去のテクノロジー・ブームを牽引していたのは、主に低金利のレバレッジによる投機的な資金で、明確な収益化の見通しがないまま現金を使っていく企業も多く見られました。現在、非常に大規模な設備投資が進んでいます。当社の推計では、2026年には約7,000億ドルにのぼり、2027年には1兆ドル規模に拡大する可能性があります。しかも、すでにAI収益化の初期的な動きや投資リターン、利益率の増加といった兆候も見え始めています。もちろん、このAIサイクルが進む中で、現在投資対象となっているすべての企業が勝ち残るとは限りません。しかし、こうした設備投資を支える強力な需要を目の当たりにしています。

また、私たちがこれをスーパーサイクルと見なすもう一つの重要な理由は、電力、土地、送電網などがインフラ構築を真に支えており、これらの供給面の制約がAI拡大のスピードを左右している点です。ですから需要にみあった状態まで完全に展開されるには、四半期単位ではなく、数年を要すると考えています。ですからご指摘の通り、私たちはより広範なAI普及の初期段階にあり、今後何年もかけて進化していくと考えています。

Mag 7の先へ:次なるAI関連株式の勝者はどこに出現するのか

バセリ:これまでのところ勝者といえば上場株式が優勢で、とりわけ「マグニフィセント7」と呼ばれる企業の株式が注目の的となってきました。今後もこれらの企業に主導権は集中し続けるのでしょうか、それとも、AIによる生産性向上が経済全体に波及しながら新たな段階に入るのでしょうか?

クーパー:確かにAIの構築と普及では、マグニフィセント7企業が先行者利益を獲得してきました。また、その成果もはっきり表れています。過去20年だけでも、約300%のリターンを上げています。これはS&P 500種指数全体の約80%というリターンと比較すると、非常に高い数字です。当面はテクノロジーセクター主導の展開が続くと見ています。なぜなら、直近四半期の業績だけを見ても、利益成長率は40%を超えており、アナリストの予想を大幅に上回っているからです。

しかし今後、AI導入が他のセクターにも浸透していくと考えています。そうなれば、物流、ヘルスケア、サイバーセキュリティ、産業オートメーションなどの分野で、生産性向上が実現すると考えています。これこそが、まだ株価に織り込まれていないAIの次の波だと考えています。さらに重要なのは、これは米国だけの話ではないことです。欧州や日本の製造業は、米国の同業他社よりも魅力的なバリュエーションとなっています。ですから、このAIの普及が拡大するにつれて、世界中の投資家にとって魅力的な投資機会が生まれると考えています。

クレジット、インフラ、非公開市場にあるAI投資の機会

バセリ:興味深い話ですね。これは、もう一つの非常に重要なテーマにつながります。現在、投資機会は米国の超大型株に留まらず、大きく広がっているとお考えですね。では、最も魅力的な機会はどこに見出せるのでしょうか。たとえば非公開市場、クレジット、実物資産の分野はどうですか。

クーパー:鋭いご指摘です。基本的には挙げられた「すべて」と言えるでしょう。なぜなら、現在、資本構造のあらゆる層で機会が広がっているからです。先ほども申し上げたように、テクノロジー分野の主要企業やその他のセクターに対する株式投資は依然として有効でしょう。同時に私たちは、さらにAIインフラの整備への投資に注目しています。ですからクレジット分野でも、バリュエーション面で魅力が出てきている分野があります。

たとえば米国の投資適格社債では、極めて大規模な投資を伴う送電網の更新期に入ろうとしている公益事業会社があり、ハイイールド市場では、製造業やテクノロジー関連企業の発行体の中に魅力的な企業があります。 さらに重要なのは、プライベート・クレジット市場で、今後はAIインフラ構築でさらに重要な役割を果たすようになるでしょう。データセンター事業者や冷却・電力管理専門企業への直接融資が挙げられます。特に、送電網の拡張や蓄電池など、インフラ分野での資金調達は非常に重要になります。

背景にあるのは、過去の生産性向上ブームで見られたパターンです。初期には確かにテクノロジー企業のような先駆的な企業が目を惹きましたが、最終的に恩恵を受けたのは長期的な実物資産でした。ですから、デジタルインフラや発電設備などの実物資産は、今回のAIインフラ整備関連ポートフォリオで重要な要素になると私たちは考えています。これらはインフレヘッジ効果に加え、契約に基づくキャッシュフローや長期的な収益を提供してくれます。これらはポートフォリオの安定性を高め、株式セクターで生じうるボラティリティを相殺する上で非常に有効な手段となるでしょう。

グローバルなAI競争が、地域ごとの勝者を生んでいる

バセリ:地政学や産業政策も、このスーパーサイクルでは中心的な役割を果たしているようです。AIというと、私たちはすぐに米国や中国が頭に浮かび、残念ながらあまり欧州に思い至りません。投資家はAIの地域的な分断化をどのように捉えるべきでしょうか。また、最も魅力的な投資機会は世界のどこにあるとお考えですか?

クーパー:AIは地域ごとのエコシステムへと分断されつつあります。これは主に、産業戦略、資金調達、規制などさまざまな要因によるものです。その中で、米国はまさにイノベーションのリーダーとしての地位を確立しました。AIを大規模かつ迅速に展開できる米国の能力は、少なくとも短期的には投資家にとって最も魅力的な投資機会を提供しています。一方、欧州について考えてみると、欧州の潜在的な競争優位性は、規制への注力にあると思います。現状ではそれが多少の障壁となっていますが、今後、AI分野で規制強化が進むにつれ、おそらく欧州は、より多くの機会を捉えることができるようになるでしょう。ただし、現段階ではイノベーターというより、むしろ採用者という立場にあります。日本についても同様で、AIの導入は、労働力不足や生産性ギャップなど構造的な課題の解決に重点が置かれてきました。

こうした状況は株式市場にも反映されています。私たちが日本株を引き続きオーバーウェイトしている理由の一つでもあります。また、アジアは現在極めて重要な役割を担っています。たとえば中国は、ロボティクス、物流、スマートシティの分野で強力な牽引役です。中国は高度な垂直統合を実現しており、今後も重要な役割を果たしていくでしょう。さらにアジア太平洋地域(APAC)全体を見渡すと、半導体製造をはじめとするAIサプライチェーンにおいて極めて重要な地域であり、今後ますます重要になっていくでしょう。つまり、これは地域的な要素からなるより広範なエコシステムであり、投資家にとっては特定の規制体制に縛られることなく、より多様な選択肢や分散投資の機会を提供してくれるものだと考えています。

AIブームが直面する最大のリスク

バセリ:最後に、現在のAIスーパーサイクルで、投資家が過小評価している可能性のある最大のリスクを挙げるとしたら、何でしょうか。また、その理由は何でしょうか。

クーパー:主に3つのリスクがあります。集中リスク、実行リスク、政策リスクです。

集中リスクについては、設備投資と収益の多くが、米国のハイテク企業に集中していることは明らかです。ですから、設備投資が縮小される兆候が表れたり、投資に対して十分なリターンを生み出せるかどうか懸念が生じたりすれば、特にこの分野でより大きな下振れ圧力がかかる可能性があります。

実行リスクは、AIが極めて資本集約的であり、サプライチェーンへの依存度が高いという構造が要因となります。AIインフラ構築過程で、供給網に何らかの障壁やボトルネックが生じる兆候があれば、需要がかなり強い状況であっても、リターンが鈍化する可能性があります。

そして、政策リスクでは、物理的な容量に関わるリスクを考慮する必要があります。政策面でさらなる地域差が進むと、規制がおよぼす影響がますます強くなり、AIを導入するためのインフラ整備が制限されるリスクがあります。すでに一部の国では、データセンター建設についてその兆候があります。電力についても同様です。電力は物理的な容量の制約要因です。米国では、2040年までに電力需要が約40%増加すると予測されています。データセンターだけでも、2030年までに米国の総電力の約8%を消費する可能性があります。しかし、その需要を完全に満たす送電網の容量が、現時点ではありません。これは極めて重要なリスク要因です。

とはいえ、これらのリスクがAIへの投資を控える理由にはならないと考えています。特に、AIの普及によって実現すると予想される収益の多くを手にするチャンスを逃す理由にはならないでしょう。なぜなら、このAIスーパーサイクルは、今後10年ほどの投資環境において、一番の目玉になると考えられるからです。

バセリ:ローラさん、お時間をいただき、どうもありがとうございました。モーニングスターのヴァレリオ・バセリでした。ご視聴ありがとうございました。◇

※ 本稿はモーニングスターのビデオ記事「Is the AI Supercycle Just Beginning?」をモーニングスター・ジャパンが翻訳したものです。原文と翻訳に相違がある場合は、原文が優先されます。

※ 本稿は、情報提供のみを目的としており、特定の金融商品、銘柄などを推奨するものではありません。投資における判断は、ご自身の投資目的、投資期間、資金性格、投資への姿勢などを勘案して、ご自身の責任において慎重に行ってください。

著者はこの記事で言及されたいかなる有価証券も保有していません。詳細はこちらをご覧ください: モーニングスターの編集方針