大型IPOは市場構造にどんな影響を与えるのだろうか?SpaceXがIPOを申請し、 Anthropicや OpenAIなどその他のユニコーン企業も上場を控えているため、この種の質問が様々な形で寄せられている。質問の背景にあるのは、間違いなく、株式・セクター、両方のレベルで存在する『市場の集中化』に対する懸念である。
幸いなことに、モーニングスター・インデックスの同僚であるアレックス・ポウチャンスキーとアレックス・ブライアン(以下、「アレックスたち」と呼ぶ)が、このテーマに関するレポートを発表した。彼らは、スペースXやその他の大型IPOを、CRSP市場指数がどのように扱うことになるかに焦点を当てている。CRSP市場指数は、モーニングスターが証券価格研究センター(CRSP/シカゴ大学の元関連機関)を2月に買収したため、モーニングスターに引き継がれた包括的な株式ベンチマーク群である。
アレックスたちのレポートは、大型IPOが市場に与える影響について、上場直後および中期の両面から考察している。このようにフェーズを分けた分析は重要である。「浮動株」や「ロックアップ期間」など聞き慣れない用語は、指数への組み入れ手法や、新規上場企業の株式市場への影響を理解する鍵となる。
大型IPOの当初影響は限定的だろう
モーニングスターの非公開市場調査部門であるピッチブックによると、SpaceXの現在の企業価値は1兆7500億ドルと評価されているという。同社はロケットや人工衛星の開発だけでなく、同じくイーロン・マスク氏が設立したxAIを買収しており、複数のメガトレンドの中心に位置している。評価額(時価総額)1兆7500億ドルといえば、CRSP米国トータルマーケット指数の上位10社に入る規模である。
以下は、CRSP米国トータルマーケット指数の4月30日時点の上位10社である。
CRSP米国総合市場指数における上位10社
しかしSpaceXは、公開市場の投資家にすべての株式をまるごと公開するわけではない。2026年6月12日頃に予定されている同社のIPO(新規公開)は、おそらく750億ドル規模となり、これは1兆7500億ドルという企業価値の5%にも満たないだろう。OpenAI、Anthropic、Stripe、Databricksなどその他の大型IPO候補企業も同様に、企業価値のごく一部だけを公開市場を通じて投資家に開放する見込みである。
他の指数プロバイダーと同様、CRSPも銘柄のウェイト付けを行う際に浮動株調整を採用している。指数構成銘柄の配分比率は、浮動株(市場で取引される株数)で調整された時価総額によって決定される。この調整は、投資家が実際に取引できる株式の割合を反映したものとなる。
アレックスたちは、浮動株調整後時価総額に基づいて、CRSP市場指数における大型IPOの当初配分比率を推計した。その影響はトータルマーケット指数では最も小さいが、CRSP米国大型株指数およびCRSP米国超大型株指数ではより大きくなる。浮動株調整後時価総額が750億ドルの場合、SpaceXがトータルマーケット指数に占める割合は、12ベーシスポイント(0.12%)となり、上位100社には遠く及ばない。※ ウェイトの調整や構成銘柄の入れ替えに伴い、指数は変動するが、その点は当該レポートで定量化されている。
以下は、CRSPの各指数における大型IPO企業の配分比率を推計した結果の一覧である。
CRSPの各米国市場指数における大型IPOのウェイトを推計
ただし、株式を規模別に超大型株、大型株、中型株、小型株に分類する際には、CRSPは浮動株調整を行わず、発行済株式総数の時価総額に基づいている。CRSPの規模別指数は定期的な構成見直しを行っており、次回の見直しは6月に予定されている。この時、発行済株式総数に基づく時価総額を用いて構成銘柄を見直し、ウェイトが再調整される。現在の評価額を前提とすると、SpaceX、Anthropic、OpenAIは、もし上場していれば、この基準では上位25社に入るだろう。そうなれば、これらは超大型株指数の組入れ対象となり、他の企業を指数から押し出し、規模別指数全体に連鎖的な影響を及ぼすことになる。
しかし、やがては市場にさらに影響が拡大する可能性がある
企業が上場した後、株価がどのように推移するかは誰にも予見できない。しかし、インサイダーによる株式売却を制限するロックアップ期間が終了すれば、市場に出回る株式数が増加し、浮動株比率が上昇することは明らかである。一般的にロックアップ期間は、IPOから120営業日後(暦日換算で180日後)に終了する。SpaceXは、一部の株式については早期売却を認める段階的なロックアップ期間を採用すると発表している。
以下はIPO後の浮動株数が時価総額に占める割合について、規模別に中央値の推移を示している。
規模別IPOの中央値による浮動株数

ロックアップ期間の終了時点までに、企業の浮動株比率は時価総額の50%から60%まで上昇するのが一般的である。浮動株比率が高まるにつれ、指数における当該株式の比率も上昇する。CRSP米国市場指数群は四半期ごとに見直しを行っており、ロックアップ期間終了後、最初の四半期見直しの時に、浮動株調整を実施する。スペースXの企業価値が1兆7500億ドルのままであると仮定すると、浮動株調整後の時価総額は8750億ドルとなる。もしそうなると、CRSP米国トータルマーケット指数における構成比率は1.33%になり、大型株指数や超大型株指数ではさらに高い構成比率を占めることになる。
大型IPOによるセクターへの影響
SpaceXは資本財・サービスセクターに分類され、OpenAI、Anthropic、Stripe、Databricksはテクノロジーセクターに分類される。浮動株比率が最終的に現在の時価総額の50%まで上昇すると仮定した場合、これらの新規上場企業がCRSP米国トータルマーケット指数の資本財・サービスセクターに占める比率は1.1ポイント、テクノロジーセクターに占める比率は0.4ポイント、それぞれ上昇することになる。
以下はこれら大型IPO企業の浮動株数を50%と仮定した場合、CRSP米国トータルマーケット指数に占める各セクターのウェイトがどの程度変化する可能性があるかを示している。
CRSP米国トータルマーケット指数のセクター比率の変化を推計(大型新規IPOを浮動株比率50%で組み入れると仮定した場合)

劇的な変化ではないが、CRSP米国トータルマーケット指数のうち、すでに高いテクノロジーセクターの比率をさらに押し上げる結果となる。同指数のテクノロジー比率は、4月30日時点で33.5%であったが、わずか5年前は22.5%だった。
大型IPOはセクター指数に大きな影響を与えるだろう。興味深いことに、テクノロジーセクターへの新規上場企業は、組入れトップ企業であるNvidia(NVDA)、Apple(AAPL)、Microsoft(MSFT)の指数への影響力を薄めることになる。これにより、テクノロジーセクターのファンドは、個別株式レベルでは若干、分散化が進む可能性がある。
時代の変化に応じた指数規則の改定
多くの指数プロバイダーと同様、CRSPも大型IPOに対応するために規則を調整している。CRSPは、最新の市場動向を反映するために、以前からベンチマークへのIPO企業組み入れを迅速化してきた。2017年以降、CRSPの指数では、上場後5営業日目に新規上場企業を組み入れている。しかし、今後予定されている大規模なIPOを踏まえ、現在、株式公開比率に関する要件を緩和している。
「最近の浮動株要件の変更は、IPO市場が直面する根本的な課題を反映している。企業規模が拡大し、一方で公開市場に開放される浮動株数は過去の基準と比べて大幅に少ないケースが増えている」とアレックスたちは述べている。企業はより長く非上場の状態を維持し、株式を公開する前に巨大な規模に成長している。こうした大型IPOは、米国株式市場の様相を大きく変えることになる。だが、その変化は急激なものではなく、一気に押し寄せるものでもないだろう。◇
※ 本稿はモーニングスターの「How Will Mega-IPOs Change the Face of the US Stock Market?」をモーニングスター・ジャパンが翻訳したものです。原文と翻訳に相違がある場合は、原文が優先されます。
※ 本稿は、情報提供のみを目的としており、特定の金融商品、銘柄などを推奨するものではありません。投資における判断は、ご自身の投資目的、投資期間、資金性格、投資への姿勢などを勘案して、ご自身の責任において慎重に行ってください。

