最高裁判決は出たがトランプ大統領は怒り心頭。関税はさらに引き上げられるのか?

政権には関税を高く維持する別の手段もあるが、果たして大統領にその官僚的な手続を成しとげる忍耐力があるか?

ワシントンD.C.にて、夕暮れ時に米国最高裁判所が見えます。
Kevin Carter 通じて Getty

米最高裁によるトランプ大統領の関税に関する違憲判決は、現時点ではモーニングスターの見通しに大きな影響を与えない。この判決が広く予想されていただけでなく、別の法令を用いて高い関税を維持することで、判決の影響が相殺される可能性があるためである。おそらくより重要なニュースは、この判決に激怒したドナルド・トランプ大統領が、結局、これまで以上に関税を高く押し上げる可能性があるということである。

最高裁判所はトランプ氏の2025年関税引き上げの大部分を無効とする判決を下したが、モーニングスターは既にこの結果が75%の確率で発生すると想定していた。当社の見解は市場の見通しと一致しており、ここ数ヵ月間、市場予測ではこの結果が70~80%の確率で起きると見込まれていた。だからこそ金融市場はこのニュースに対して冷静な反応を示したのである。

事態がどう展開するかはまだ判然としない。裁判所の決定の影響は、トランプ政権が無効とされた関税に代わる新たな関税を課すために、他の法的根拠による権限を行使する意思と能力次第である。モーニングスターは、平均関税率はわずかに低下すると予想しているが、それが確実であると言える段階ではない。

より高い関税率シナリオが浮上

実際、最高裁判所の判決を受けた後の最初の発言で、トランプ大統領は122条の権限に基づき、新たに10%の全世界的な関税引き上げを発表した。122条は、米国の深刻な国際収支赤字や通貨危機に際して、大統領が議会の承認なしに最大15%の輸入課徴金(追加関税)を150日間のみ課すことを認める暫定措置である。しかし今後数ヵ月で、トランプ政権は301条(※)に基づく調査を準備し、多くの国々に対して大幅な関税引き上げを承認する見込みである。301条に基づく関税は、無期限に継続することが可能である。

※ 1974年通商法122条。

※ 同301条は、米国の貿易相手国による不公正な貿易慣行(知的財産権侵害、技術移転強要など)に対し、米国通商代表部(USTR)の調査に基づき、大統領が一方的に関税引き上げや輸入制限などの報復措置を講じる権限を持つ米国の法律。2018年以降、対中追加関税の根拠として頻繁に活用されている。

皮肉なことに、この判決によって関税がさらに高くなる可能性すらあり、これが信憑性のあるシナリオとして浮上してくる。トランプ大統領は最高裁判決に憤慨しており、関税による保護は「この判決によって実際に増加するだろう」と述べ、高水準の関税を維持する決意を固めている。興味深いことに、大統領はここ数ヵ月間、さらなる引き上げを抑えていた理由として「裁判所の判断に影響を与えるような行動は取りたくなかった」とも示唆している。

232条および301条がどう働くのか

米国通商代表部のジェイミーソン・グリア氏によると、301条に基づくUSTRの調査の詳細は、今後数日から数週間のうちに発表される見込みである。また、特定の製品に対して適用される傾向のある232条(※)の権限による新たな関税引き上げが行われる可能性もあり、半導体や医薬品が対象となると言われている。

※ 米1962年通商拡大法232条は、輸入品が米国の「国家安全保障」を脅かすと判断された場合、大統領の権限で追加関税や輸入制限(クォータ)を課すことができる米国の法律。主に鉄鋼・アルミの追加関税などで利用され、近年は半導体や重要鉱物、自動車なども対象に調査されている。

イェール大学予算研究所(The Budget Lab at Yale)によれば、トランプ大統領の第二期政権開始から最高裁判決当日までの間に、米国輸入品に対する平均公定関税率は累計14.5%上昇していた。今回の判決により、最高裁は1977年国際緊急経済権限法に基づくすべての関税を無効とし、この累積上昇幅は7.8ポイント低下し、6.7%となる。同法は、主要な貿易相手国に対して国全体で10~20%の関税引き上げを課すために引用された。その他の関税引き上げ権限は、今回の判決の影響を受けていない。残る6.7%の引き上げの大部分は、自動車、鉄鋼、その他の製品に対する関税を課すための232条の権限行使によるものである。

トランプ政権は新たな122条に基づく10%の基準関税について、詳細を明らかにしていない。しかし、10%の包括的関税は、裁判所の判決による7.8ポイントの関税引き下げを相殺して余りあることは明らかである。メキシコとカナダがIEEPA(国際緊急経済権限法)に基づく関税引き上げの支払いの多くを回避できたような、大幅な例外(免除)措置が取られる可能性が高いだろう。しかし、例外措置として数パーセントポイントの引き下げがあったとしても、122条に基づく関税が適用される今後150日間は、平均関税率はほぼ横ばいにとどまることになるだろう。

301条に基づく関税引き上げがどの程度の規模になるかは予測が難しい。トランプ大統領の最初の任期中、301条の権限で中国に対する平均関税率は15%以上上昇した。実際にはさらに大幅に引き上げられる可能性もあったと考えられる。一方、中国に対する301条の適用は、中国独自の経済慣行(経済への国家による強力な介入や、広く認められている知的財産権の侵害など)が存在したため、比較的容易であった。もっとも、301条を根拠にその他の国々に対して大規模な関税引き上げを課すことは正当化が難しく、法的に争われることになる可能性がある。

しかしながら、総合的に見ると、301条と232条の権限を組み合わせることで、最高裁が違憲と判断したIEEPA関税を上回る無期限の累積的な関税引き上げが可能となるかもしれない。これが実現するかどうかは、法的側面だけでなく、トランプ大統領個人の意向に大きく左右される。IEEPAがなければ、トランプ大統領は即座に満足できる形で新たな関税を課すことはできないだろう。301条および232条の権限行使には、数ヵ月という長期にわたる調査を必要とする。この行政手続きの過程で、大統領の関税に対する関心が薄れる可能性もあるだろう。◇

※ 本稿はモーニングスターの記事「Could Tariffs Go Still Higher Despite the Supreme Court Ruling?」をモーニングスター・ジャパンが翻訳したものです。原文と翻訳に相違がある場合は、原文が優先されます。

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